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連載

148話

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 鬼人族の里のダンジョンを攻略して、数日掛けてみんなでシェーン街に戻って来た。

 もちろん、僕達は飛べるので一足先に戻っていて、帰って来たゲラルトさんにエリアナさんが抱き着いたのは少し嬉しい。いつも気の強いエリアナさんだけど、やっぱりゲラルドさんのことが大好きなんだなと分かる。

 それから鬼さんや謎の仮面ベンジャミンさんも街に帰ってきてすぐにお酒を飲んで攻略を祝った。

 それくらいダンジョンでの戦いは長かったからね。

 シェーン街も平穏が訪れるかと思っていた矢先、次なる問題が起きた。



「「毛?」」

 僕とエレナちゃんの声が被る。

『そうなんだ。僕達はこの時期になると毛がいっぱい抜けてしまうんだけど、他の種族からいつも苦情がくるんだ』

 アルトくんの相談にエヴァさんは表情を曇らせた。

「エヴァさん?」

「それは困ったわね。白狐族の毛変わりは…………大変よ!」

「「ええええ!?」」

 毛変わりが大変?

 エヴァさんは「こうしてはいられないわ! 知らせてくれてありがとうね! アルトくん!」と言い残してその場を後にした。

 僕達も気になって急いで白狐族が過ごしている区にやってきた。

 白狐たちが外でひなたぼっこをしていて、それを見て癒されている観光客が大勢いた。

 一応、見世物とかそういう類ではないので観光客には遠くの場所から眺めるようにしている。

「グレースさん」

『ワタルくん。来てくれたのね』

「ええ。アルトくんから報告をもらって、何か大変なことが起きると……」

『そうね。私達白狐族の毛変わり時期でね。私達の毛が一気に抜けてしまう時期なのよ』

「毛変わりがそんなに大変なんですか?」

『そうね。人族は毛変わりがないし、他の種族もそれほど大変ではないものね。私達もどちらかというと大変ではないの。ただ、周りが大変になるだけね』

「周りが?」

 遠くからエヴァさんが声を響かせる魔道具を使って周りに声を拡げていた。

「みんなあああ~! 白狐族が毛変わりするらしいので、白狐族の住処には決して近づかないように! 特に子供達を近づかせないでちょうだい!」

 すると、周りにいた大勢の人達がその場から離れ始めた。

 観光客の魔族さんたちもみんな当然のようにそこから離れて行った。

「ワタルくんたちも離れるのよ!?」

「えっ? 一体何が起きるんですか!?」

「ワンワン!」

 僕と同時にコテツが吠えると、エヴァさんが驚いた表情を見せた。

「えっ? それは本当? コテツくん」

「ワフッ!」

 エヴァさんとコテツが何かを話し合うと、少しびっくりしたエヴァさんが僕の隣にやってきた。

 エレナちゃんと一緒に並んでコテツを見つめる。

「本当に信じていいのね?」

「ワンワン!」

「分かった。それなら私も近くで見るわね?」

「ワン!」

 今度はコテツが僕を見つめた。

「ワンワン!」

「えっ!? 勇者モードになりたいの?」

「ワフン」

 どうやら勇者モードになりたいらしくて、理由は分からないけどコテツがそう言うならばと、聖剣エクスカリバーを召喚してあげると、コテツが勇者モードに変わった。

 普段あまり使わなくなった空飛ぶマントも着用して、その場から浮き上がって白狐族の前にやってきた。

 何が起きるのか楽しみにしていると、白狐たちから何やら怪しい動きが見え始めた。
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