14 / 14
⑭
しおりを挟む
「では王城攻略戦を行う! 我々には王太子であるリアム様が付いている! 正義は我らにあり!」
「「「「おー!」」」」
多くの冒険者達が歓声を上げる。
その先陣には美しい金色の髪をなびかせた王太子の姿が見えていた。
その日、王城の前に王都全ての冒険者達が押し寄せた。
あまりにも多い数に兵士達はどうしていいか分からず、足が竦んでいた。
その時。
「俺は王国王太子リアムである! 兵士達よ! 道を開けろ!」
そして、右手を空高く上げ、王家唯一伝わると言う爆炎の魔法を空に放つ。
王国民なら誰もが知るその魔法に、兵士達がその場に跪く。
こうして兵士と冒険者が衝突する事なく、王太子リアムは王城に登城した。
◇
「兄上!?」
「久しいな。マシュー」
「その髪は…………まさか、魔力を取り戻したのか!?」
「ああ。俺には最強の薬師が味方しているからな。まさか長年苦しんでいた『魔力暴走病』すら治してくれるとは思いもしなかったさ」
長年『魔力暴走病』により、周囲の人々を傷つけ、王城に居場所がなくなった王太子リアム。
そんな彼の病気をエリシアは亡き母から教わった薬師の知識で見事に回復させたのである。
「悪魔の子が今更出てくるんじゃねぇ!」
「……マシュー。俺はずっとお前達を傷つけてしまうかも知れないと恐れていた。だが、それももうおしまいだ。弟の愚行は兄である俺が止めよう」
「く、クソが!」
マシューの腕から爆炎魔法が放たれる。
だが、慈悲の笑みを浮かべたリアムの腕から放たれた爆炎に全てが飲み込まれる。
生まれながら『魔力暴走病』に掛かるほどの強力な魔力を持つリアムの前に全ての魔法は無に等しい。
第三王子マシュー及びセイルド子爵家、事件に関わった全ての者が一晩で全員投獄される事となった。
この日を『リアム王太子の奇跡』と讃え、長い王国の歴史にその名を刻んだのである。
◇
「んもぉ~! また抜けて来たんですか!?」
「すまない。どうしても報告したい事が……」
「またそんな口実を! いいですか! リアムさんは、仮にも王国宮廷魔術師なんですよ!?」
「で、でも……」
「でもじゃありません! 私は逃げも隠れもしませんから、自分のやるべき事をちゃんとやってくださいね!」
頭こなしに怒るエリシアに苦笑いを浮かべるリアム。
すっかり慣れたこのやり取りである。
リアムはマシューを捕まえてから王太子の座を放棄、政治能力が高い第二王子のヘンリー王子に王太子を譲るとリアムの推薦もあり、すぐに王となり良き王として日々奮闘している。
現在リアムは類まれない魔法の才能を活かすため、王国を守る宮廷魔術師に就任。
爆炎の支配者という仇名で敵国に恐れられる程になっている。
そして、エリシアは宮廷薬師として、亡き母の跡を追っている。
「エリシア様」
リアムが困っていると、いつものように助け船がくる。
「マリー!」
「リアム様も大切な話があるのでしょう。怒らないで聞いてあげてください」
マリーに宥められると、エリシアが少し落ち着いたタイミングを見計らったように、リアムが前に出る。
「エリシア、君が探していた『ユグドラシルの葉』が見つかったので、持って来たのだ」
「!? ほ、本当ですか!?」
凄い食いつきに自然と笑みが零れる。
「エリシア様、だから怒らずに聞いてくださいと言ったんです」
「うぅ…………ごめんなさい」
「あはは、いつもの事だ。そう言えば、ヘンリーから予定が決まったとの事で、そちらに合わせていいか?」
そう話すリアムは幸せ一杯の笑顔を見せる。
少し顔を赤らめるエリシア。
「え、ええ。いいですよ。でも少し恥ずかしいかも……」
「王様直々に立ち会ってくださるのだからな」
「うぅ…………でもこれでようやく一緒になるんですね」
「ああ。エリシア。これからもずっと俺の隣にいて欲しい」
「もちろんです。リアムさんは危なっかしくて見てられませんからね!」
「ふふっ。そうだな。俺は君がいなくちゃ何も出来ないかも知れない」
「もぉ! マリーが聞いているんですよ!」
「そうだったな」
「あら? マリー!?」
驚くエリシアとリアムがマリーを見つめる。
「エリシア様? どうかしましたか?」
「ま、マリー!」
エリシアがマリーを抱きしめる。
「やっと…………やっと笑ってくれた! マリー、ありがとう」
あの日から一度も笑う事がなかったマリー。
エリシアとリアムの正式な結婚式が決まった事に、心の底から嬉し笑みを浮かべる。
そんな姿にエリシアとリアムも幸せ一杯の笑みを浮かべるのであった。
屋根裏部屋から始まった彼女の勇気はやがて、希望の光となり世界に降り注いだ物語りである。
――――【完結】――――
ここまで『屋根裏部屋令嬢が幸せになるまで~陰謀に巻き込まれて死にかけたましたが、奇跡的に生還して陰謀を暴きます~』を呼んでくださりありがとうございます!
作者が思いつきと勢いだけで書いたこの物語は、初めての異世界恋愛への挑戦作品となります。
短い物語でしたが、読者様の記憶に少しでも残るような物語だったら嬉しいなと思います。
これからも沢山の物語を紡いでいく予定でございます。これからも見守って頂けると嬉しいです。
既に完結&連載中の作品も多数ありますので、ぜひ読んでくださると嬉しいです!
ではまたいつか、別な物語で会いましょう!
ありがとうございました!
「「「「おー!」」」」
多くの冒険者達が歓声を上げる。
その先陣には美しい金色の髪をなびかせた王太子の姿が見えていた。
その日、王城の前に王都全ての冒険者達が押し寄せた。
あまりにも多い数に兵士達はどうしていいか分からず、足が竦んでいた。
その時。
「俺は王国王太子リアムである! 兵士達よ! 道を開けろ!」
そして、右手を空高く上げ、王家唯一伝わると言う爆炎の魔法を空に放つ。
王国民なら誰もが知るその魔法に、兵士達がその場に跪く。
こうして兵士と冒険者が衝突する事なく、王太子リアムは王城に登城した。
◇
「兄上!?」
「久しいな。マシュー」
「その髪は…………まさか、魔力を取り戻したのか!?」
「ああ。俺には最強の薬師が味方しているからな。まさか長年苦しんでいた『魔力暴走病』すら治してくれるとは思いもしなかったさ」
長年『魔力暴走病』により、周囲の人々を傷つけ、王城に居場所がなくなった王太子リアム。
そんな彼の病気をエリシアは亡き母から教わった薬師の知識で見事に回復させたのである。
「悪魔の子が今更出てくるんじゃねぇ!」
「……マシュー。俺はずっとお前達を傷つけてしまうかも知れないと恐れていた。だが、それももうおしまいだ。弟の愚行は兄である俺が止めよう」
「く、クソが!」
マシューの腕から爆炎魔法が放たれる。
だが、慈悲の笑みを浮かべたリアムの腕から放たれた爆炎に全てが飲み込まれる。
生まれながら『魔力暴走病』に掛かるほどの強力な魔力を持つリアムの前に全ての魔法は無に等しい。
第三王子マシュー及びセイルド子爵家、事件に関わった全ての者が一晩で全員投獄される事となった。
この日を『リアム王太子の奇跡』と讃え、長い王国の歴史にその名を刻んだのである。
◇
「んもぉ~! また抜けて来たんですか!?」
「すまない。どうしても報告したい事が……」
「またそんな口実を! いいですか! リアムさんは、仮にも王国宮廷魔術師なんですよ!?」
「で、でも……」
「でもじゃありません! 私は逃げも隠れもしませんから、自分のやるべき事をちゃんとやってくださいね!」
頭こなしに怒るエリシアに苦笑いを浮かべるリアム。
すっかり慣れたこのやり取りである。
リアムはマシューを捕まえてから王太子の座を放棄、政治能力が高い第二王子のヘンリー王子に王太子を譲るとリアムの推薦もあり、すぐに王となり良き王として日々奮闘している。
現在リアムは類まれない魔法の才能を活かすため、王国を守る宮廷魔術師に就任。
爆炎の支配者という仇名で敵国に恐れられる程になっている。
そして、エリシアは宮廷薬師として、亡き母の跡を追っている。
「エリシア様」
リアムが困っていると、いつものように助け船がくる。
「マリー!」
「リアム様も大切な話があるのでしょう。怒らないで聞いてあげてください」
マリーに宥められると、エリシアが少し落ち着いたタイミングを見計らったように、リアムが前に出る。
「エリシア、君が探していた『ユグドラシルの葉』が見つかったので、持って来たのだ」
「!? ほ、本当ですか!?」
凄い食いつきに自然と笑みが零れる。
「エリシア様、だから怒らずに聞いてくださいと言ったんです」
「うぅ…………ごめんなさい」
「あはは、いつもの事だ。そう言えば、ヘンリーから予定が決まったとの事で、そちらに合わせていいか?」
そう話すリアムは幸せ一杯の笑顔を見せる。
少し顔を赤らめるエリシア。
「え、ええ。いいですよ。でも少し恥ずかしいかも……」
「王様直々に立ち会ってくださるのだからな」
「うぅ…………でもこれでようやく一緒になるんですね」
「ああ。エリシア。これからもずっと俺の隣にいて欲しい」
「もちろんです。リアムさんは危なっかしくて見てられませんからね!」
「ふふっ。そうだな。俺は君がいなくちゃ何も出来ないかも知れない」
「もぉ! マリーが聞いているんですよ!」
「そうだったな」
「あら? マリー!?」
驚くエリシアとリアムがマリーを見つめる。
「エリシア様? どうかしましたか?」
「ま、マリー!」
エリシアがマリーを抱きしめる。
「やっと…………やっと笑ってくれた! マリー、ありがとう」
あの日から一度も笑う事がなかったマリー。
エリシアとリアムの正式な結婚式が決まった事に、心の底から嬉し笑みを浮かべる。
そんな姿にエリシアとリアムも幸せ一杯の笑みを浮かべるのであった。
屋根裏部屋から始まった彼女の勇気はやがて、希望の光となり世界に降り注いだ物語りである。
――――【完結】――――
ここまで『屋根裏部屋令嬢が幸せになるまで~陰謀に巻き込まれて死にかけたましたが、奇跡的に生還して陰謀を暴きます~』を呼んでくださりありがとうございます!
作者が思いつきと勢いだけで書いたこの物語は、初めての異世界恋愛への挑戦作品となります。
短い物語でしたが、読者様の記憶に少しでも残るような物語だったら嬉しいなと思います。
これからも沢山の物語を紡いでいく予定でございます。これからも見守って頂けると嬉しいです。
既に完結&連載中の作品も多数ありますので、ぜひ読んでくださると嬉しいです!
ではまたいつか、別な物語で会いましょう!
ありがとうございました!
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
262
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
楽しかったです!二人の幸せいっぱいな家庭を築くことでしょう未来を見たいですね~😄完結おめでとうございます。後日談を期待してしまいますね~
最後まで読んで頂きありがとうございます(*´▽`*)余裕が出来たら後日談も書いていきます~!
報われて良かったですね😃
読ませていただきありがとうございます♪
こちらこそ読んでいただきありがとうございます(*´ω`*)
たまたまよって面白かったので一気読み。
ここで完結は残念と思い、他の作品はと見てみると……
剣聖1もどるが、が,が……あえ?
後でまた読もうと思い、ブクマします。
出来れば、実家とかの成れの果ても読みたいなぁ、と思う。
ありがとうございます!2万字で完結させようとして色々抜けた部分も多かったですね(´;ω;`)今後はそういう所も注意します!