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 3日後。

「リアムさん!?」

 エリシアが驚くのも無理はない。

 あの病気から長い間衰弱してまともに歩けなかったリアムが、ウォーウルフを一匹を抱えて歩いて来たからである。

「お、に、く」

「リアムさん! 危ない事はしちゃいけませんよ!?」

「で、も、え、り、し、あ、に、お、に、く、あ、げ、た、い」

「うう…………危ない事はして欲しくないけど…………ありがとう。リアムさん」

 少し困った表情を見せていたエリシアが笑顔に染まる。

 エリシアの心の底から溢れ出る笑顔に、リアムは着実に心を開いていた。

 昔の自分なら想像も出来ないように。


 周辺から拾って来た枝を1か所に集める。

 途中で意図を把握したマリーも手伝う。

 完成した枝の集まりにリアムが声にならない声を呟くと、目の前の枝に小さな炎が灯った。

「わあ! 火だわ! これでまた違う薬草も作れるかも!」

 本当はウォーウルフを焼いて食べるために付けた焚き火なのだが、どこまでも純粋なエリシアに苦笑いが零れるリアムだ。

 少し大きな枝にウォーウルフを括りつける。

 ここに来るまでに血抜きや内臓処理は終えており、リアムは慣れているようにウォーウルフを焼き始めた。

 肉が焼かれるにつれ美味しそうな匂いが周囲に充満していく。

 さすがのエリシアも久しぶりの肉に腹太鼓が音を鳴らす。


 ウォーウルフは元々凛々しかった姿を変え、美味しそうな肉となった。

 リアムは以前自分達を襲った連中が落とした中から短剣を持って来ており、短剣を使い、器用に捌いていく。

 意外な姿にエリシアがワクワクした気持ちで見守る。

 次第に捌かれたお肉が皿代わりにしている石の上に綺麗に並ぶ。

「お、た、べ」

 先に勧めるリアムに断ろうと思うが、彼の慈悲色に染まっている目と目が合うと、エリシアは恥ずかしそうに、目の前の肉を一つ、自分の口の中に運んだ。

「ん!? お、美味しい! こんな美味しいお肉は食べたことがないわ!」

 決して嘘ではない。

 子爵家の令嬢であるエリシアですら食べた事がなく、口の中に入れた肉からは野生の匂いもしなければ、独特な匂いもせず、しつこい油もなく肉汁が口の中に広がり、久々に忘れていた食欲を駆り立てる。

 その姿を見て安堵したリアムは、マリーの分も急ぎ準備し、彼女に渡す。

 マリーもまた久しぶりのお肉に幸せな気持ちになるが、表情は相変わらずの無表情である。

 ただ、ここまで長い時間一緒に過ごした二人は、マリーが笑わなくても彼女の本当に心を読み取れるようになっている。

 リアムも久しぶりのお肉を食べると、今まで食べたどんな食事よりも、美味しいと感じた。
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