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①
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「エリシア。お前は今日から屋根裏部屋で過ごしなさい」
「お父様!?」
「自分の過ちをよく反省なさい!」
「そんな…………」
エリシアは怒鳴る父親に涙を流す。
自分がやった過ちなんて、何一つないはつなのに…………。
父親の後ろには、エリシアを見つめる可愛らしい少女が、笑みを浮かべてエリシアを見つめていた。
◇
屋根裏部屋に閉じ込められたエリシアは立ち直ることが出来ず、ずっと泣き続けた。
(マシュー様に何とか知らせなければ……!)
今の現状を婚約者である第三王子マシューに何とか伝える事が出来たら、助けてくれるかも知れない。
そう考えたエリシアは、屋根裏部屋から逃げる方法を考える。
屋根裏部屋には小さな窓が一つだけあり、鍵は掛かっておらず、簡単に開いた。
開けた窓には、美しい景色とともに、絶望を示すかのような屋敷の壁が地面まで続いていた。
(この窓から逃げるのは無理だわ…………それならば、メイドが来てくれた時に逃げられないか待ちましょうか)
エリシアは暫くの間、どうしてこういう事になったのが考える。
腹違いで生まれた妹のセーナ。
お父様が娼婦との間に儲けた子供である。
そんなセーナは幼い頃から自分を目の敵にしていて、母が他界して娼婦であったお義母様が屋敷に来るようになってからは、さらにエスカレートしていた。
お父様を思い、ずっと我慢をして良い子として振る舞っていたエリシア。
それがこのような結果を産むとは考えもしなかった。
(もっと自分にわがままになれば良かったわ…………)
後悔していても現実は変わらない。
開けた窓には素晴らしい景色が広がっていたが、すっかり夕方になっている地平線には、無情にも世界を照らしてくれる太陽が沈み掛けていた。
美しい夕陽を眺めながら、止まらない涙を流す。
(泣くのはこれで最後よ。明日からは自分のために生きるわ)
エリシアは大好きだった母を亡くして以来、決してわがままを言わないと誓っていた決意を覆そうとした。
その日の夜。
外から鍵が掛けられている扉が乱暴に開く。
「あら、お姉様。ごきげんよう」
「っ! セーナ!」
「うふふっ。どうかしら? 屋根裏部屋の居心地は?」
「…………ええ。最高ね」
「ぷっ。あははは~! 本当にお姉様に相応しい部屋だわ!」
「…………それで? 私に何の用なの?」
「あら? ここに入れられたのがそんなにもショックだったかしら? いつもと雰囲気は違うわね」
「貴方もここに入ってみれば?」
「あら、それは嫌よ。ここはお姉様のように醜い人間が入るべき部屋だもの」
「くっ……」
込み上がる怒りをぐっと堪えるエリシア。
ここで手を上げてしまっては、セーナの思うつぼである。
「ふん。いいわ。こんなところで凍えて死んで貰ってもいけないので、毛布を持って来てあげたの。感謝しなさいよ?」
「…………」
「あら? その態度でいいの? ――――ありがとうございます。セーナ様」
「くっ!」
「言わないと、あげないわよ?」
「…………」
エリシアの表情が屈辱に染まる。
(ここで生き延びなければ…………)
「あり……がとう、ございます…………セーナ……さま……」
「あーははははっ! いいわ! これからも屋根裏部屋で過ごしてなさいよ!」
そう言い残すセーナは、メイドが持って来た毛布をエリシアに向けて投げ捨てて、屋根裏部屋を後にした。
「お父様!?」
「自分の過ちをよく反省なさい!」
「そんな…………」
エリシアは怒鳴る父親に涙を流す。
自分がやった過ちなんて、何一つないはつなのに…………。
父親の後ろには、エリシアを見つめる可愛らしい少女が、笑みを浮かべてエリシアを見つめていた。
◇
屋根裏部屋に閉じ込められたエリシアは立ち直ることが出来ず、ずっと泣き続けた。
(マシュー様に何とか知らせなければ……!)
今の現状を婚約者である第三王子マシューに何とか伝える事が出来たら、助けてくれるかも知れない。
そう考えたエリシアは、屋根裏部屋から逃げる方法を考える。
屋根裏部屋には小さな窓が一つだけあり、鍵は掛かっておらず、簡単に開いた。
開けた窓には、美しい景色とともに、絶望を示すかのような屋敷の壁が地面まで続いていた。
(この窓から逃げるのは無理だわ…………それならば、メイドが来てくれた時に逃げられないか待ちましょうか)
エリシアは暫くの間、どうしてこういう事になったのが考える。
腹違いで生まれた妹のセーナ。
お父様が娼婦との間に儲けた子供である。
そんなセーナは幼い頃から自分を目の敵にしていて、母が他界して娼婦であったお義母様が屋敷に来るようになってからは、さらにエスカレートしていた。
お父様を思い、ずっと我慢をして良い子として振る舞っていたエリシア。
それがこのような結果を産むとは考えもしなかった。
(もっと自分にわがままになれば良かったわ…………)
後悔していても現実は変わらない。
開けた窓には素晴らしい景色が広がっていたが、すっかり夕方になっている地平線には、無情にも世界を照らしてくれる太陽が沈み掛けていた。
美しい夕陽を眺めながら、止まらない涙を流す。
(泣くのはこれで最後よ。明日からは自分のために生きるわ)
エリシアは大好きだった母を亡くして以来、決してわがままを言わないと誓っていた決意を覆そうとした。
その日の夜。
外から鍵が掛けられている扉が乱暴に開く。
「あら、お姉様。ごきげんよう」
「っ! セーナ!」
「うふふっ。どうかしら? 屋根裏部屋の居心地は?」
「…………ええ。最高ね」
「ぷっ。あははは~! 本当にお姉様に相応しい部屋だわ!」
「…………それで? 私に何の用なの?」
「あら? ここに入れられたのがそんなにもショックだったかしら? いつもと雰囲気は違うわね」
「貴方もここに入ってみれば?」
「あら、それは嫌よ。ここはお姉様のように醜い人間が入るべき部屋だもの」
「くっ……」
込み上がる怒りをぐっと堪えるエリシア。
ここで手を上げてしまっては、セーナの思うつぼである。
「ふん。いいわ。こんなところで凍えて死んで貰ってもいけないので、毛布を持って来てあげたの。感謝しなさいよ?」
「…………」
「あら? その態度でいいの? ――――ありがとうございます。セーナ様」
「くっ!」
「言わないと、あげないわよ?」
「…………」
エリシアの表情が屈辱に染まる。
(ここで生き延びなければ…………)
「あり……がとう、ございます…………セーナ……さま……」
「あーははははっ! いいわ! これからも屋根裏部屋で過ごしてなさいよ!」
そう言い残すセーナは、メイドが持って来た毛布をエリシアに向けて投げ捨てて、屋根裏部屋を後にした。
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