そよ風と蔑まれている心優しい風魔法使い~弱すぎる風魔法は植物にとって最高です。風の精霊達も彼にべったりのようです~

御峰。

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20話

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「リーゼちゃん! ハウくん!」
 
 ソレイユ街に着いて誰よりも先にオリアナさんとリアタさんが走ってきて、僕とリーゼを一緒に抱きしめてくれた。
 
「無事で本当に良かった……」
 
「お母さん……ごめんなさい」
 
「オリアナさん……ごめんなさい」
 
「ううん。謝らなくていいわ。こうしてちゃんと帰ってきてくれたんだもの……」
 
 みんなで一緒に宿屋に帰り、その日はゆっくり休んだ。
 
 
 
 翌日。
 
 庭園に行くと、イマイルおじさんが出迎えてくれて、昨日の件を労ってくれた。
 
 こうして心配してくださる皆さんに囲まれて、僕はとても幸せ者だと思う。
 
 
 
 その日の夕方。
 
 いつもの美味しい夕飯を食べて、厨房の裏で手伝いをする。
 
「きゅぴ~」
 
「ん? 手伝ってくれるの?」
 
「きゅぴっぴっ!」
 皿洗いの手伝いをしていると、モモ達が声を上げて、体に緑色の光を灯す。
 
 僕が展開させた風魔法は相変わらず弱いけど、物を軽くしたり、持ち上げたりはできる。シーツのように。
 
 モモ達は僕の風を操れるらしくて、それを利用して食器が入った水をぐるぐると回し始めた。
 
「ハウ? モモ達は何をしてるの?」
 
「手伝うって言って、こう水を掻き回しているんだ。どうしてかはわからないけどね」
 
 正直、僕からしたら水遊びをしているようにしか見えない。
 
 でもモモ達がせっかく手伝うって言ってやってくれるから、見守ることにした。
 
 リーゼと一緒に食器がぐるぐる回る流し台を覗き込む。
 
「あれ? 食器がどんどん綺麗になってる?」
 
「本当だね」
 
「きゅぴ~っ!」
 
「もしかして食器を水の中でぐるぐる回すと綺麗になる?」
 
「そうかな? ハウもやってみる?」
 
「うん。僕も隣の流し台をやってみるよ」
 
 僕も展開させている風を利用して、隣の流し台に入った水に風を吹かせて水流を発生させる。
 
 すると食器が流し台の中をぐるぐると周り始めた。
 
 次第に食器から汚れが取れてキレイになった。
 
「すごい~! 魔法で食器を綺麗にできるなんて!」
 
「これはとても便利だね! これなら……これから食器洗いは僕達に任せて!」
 
 すると、僕の頭の上に乗っていたモモが、ペチっと僕の頭を叩いた。
 
「うん? モモ達だけで頑張る?」
 
「きゅぴっ~♪」
 
「あはは、じゃあ、これから食器洗いはモモ達に任せるね? 僕とリーゼは運ぶ仕事を頑張るよ」
 
「ありがとうね~モモ達~」
 
 モモ達も手伝ってくれるようになって、より仕事が効率よくなったし、簡単になった。
 
 しばらく食べ終わったお客さんの食器を運んでいると、ピカピカに輝いている皿が目に入った。
 
「あれ? いつの間にか洗った皿まで上がってて……あれ? しかも、全部吹いている?」
 
「きゅ~ぴっぴっ~♪」
 
 モモ達が僕の前に整列して、ドヤ顔をする。
 
 うん。可愛い。
 
 次の瞬間、洗い終わった皿が宙に浮く。
 
 そのまま置かれるのかと思ったら、僕の風魔法で水滴を全て落とす。
 
 へぇ……僕の風魔法でこんなことができるなんて、想像だにしなかった。
 
 水滴が綺麗に落ちた皿が、いつものところに並んで、皿洗いが全て完了した。
 
「すごい……! 僕の風魔法にこんな使い方があるなんて、モモ達はすごいね! こんなすごいことも思いついて!」
 
「きゅぴ~」
 
「ん? 思いついたんじゃなくて、エルフの皆さんはこうやって皿を洗う? ふむふむ……ほえ~エルフの皆さんは精霊の力を借りて、こうして弱い風魔法で皿を洗ったり洗濯まですると……。じゃあ、明日から洗濯も見せてもらっていい?」
 
「きゅぴ~♪」
 
 それからオリアナさんに事情を話すと、目を大きくして驚いてくれた。
 
 これで毎日皿洗いと洗濯を手伝うと言うと、「ありがとう」と僕とモモ達の頭を優しく撫でてくれた。
 
 
 
 翌日。
 
 朝食を食べることよりも先に朝食作りの手伝いをする。
 
 モモ達って僕が思っていたよりもずっと賢くて、配膳の準備もすぐに覚えて、僕の風魔法を利用して配膳準備を手伝ってくれる。
 
 六匹、それぞれがそれぞれの担当があるようで、配膳担当、リーゼの手伝い担当、オリアナさんの手伝い担当、リアタさんの手伝い担当、僕の手伝い担当、全体を見ながらほうきを使って掃除をしてくれたりする。
 
「モモちゃん達が手伝ってくれると、すごく助かるわね~」
 
「きゅ~ぴ~♪」
 
 朝食の時間帯が終わると、四人で朝食を食べる。
 
 今度は洗濯のために裏庭に出て、大きな桶を持ってきて、井戸から水を汲む。
 
 本来なら中々重くて力がないと持ち上げるのも大変だけど、荷物を持ち上げるのは得意なので楽々持ち上げて水を汲む。
 
 水を溜めて、粉石鹼を水に溶かす。
 
 泡立った水の中にシーツを入れると、モモ達がまた水をぐるぐる掻き回す。
 
「お~! シーツも綺麗になるんだね! すごいなぁ~こんな使い方があるって知ってたら、もっと早くから手伝えたのになぁ……」
 
「きゅぴっ!」
 
「あはは、そうだね。モモ達に出会えたおかげだね。ありがとう。これからも一緒に手伝おうね?」
 
「きゅぴ~」
 
 モモ達が仕事を手伝ってくれたので、かなり余裕がある状態でリーゼと一緒に庭園に向かった。
 
 これなら……あれをお願いすることもできるかも知れない。
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