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16話
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「そよ風! どうだ? 俺達の連携は」
「う、うん! みんなすごいね」
「だろう? これからそよ風に俺らのところに参加したら、いい感じで連携できると思うぜ!」
「う、うん……ありがとう。もうちょっと考えさせて」
「もちろんだ。これからどんどん行くぞ!」
それからラマ達はどんどんコボルト達を倒していった。
鮮やかな連携はお互いがお互いを知り尽くして信用しているからだ。
僕が憧れたような……そんな冒険者パーティーそのものだ。
「ハウ? どうしたの?」
「……ちょっと羨ましいなと思って。僕にも才能があったら、ラマくん達に混ざってあんな風に戦って……立派な冒険者になれたのかなって思って」
「……そうだったかも知れないね。でも今のハウの才能も私はとても好きだよ?」
「ありがとう。この才能がなかったモモ達とも出会えなかったし、イマイルおじさんのためになることもできなかったもんね」
「うんうん。何でも前向きに考えないとね。ラマ達のパーティーに入るの?」
「えっと……ちょっと悩んでるよ。リーゼはどう思う?」
「私? 私は……あまり入って欲しくないかな。でも決めるのは私じゃなくてハウだから。ハウのやりたいようにやったらいいと思う」
どこか寂しそうな笑顔が見えたリーゼは、僕の手を引いてラマ達の後を追いかけた。
次々と倒しながら渓谷の奥に進んでいく。
「ラマくん!? こんな奥まで入って大丈夫!?」
「おう! 俺達がいれば心配ないぜ! そよ風」
いわゆる狩場というのは、瘴気から魔物が現れる場所を指す。
狩場はどこも奥に入れば入る程に魔物が強くなる。だから油断して奥に進むのは良くないとされている。
けれど、それからの狩りも僕の心配をよそに、ラマ達の連携によってスムーズに進んだ。
渓谷の奥からはウォーウルフというコボルトの上位種が現れ、かなり強力なはずなのにラマ達の相手にはならなかった。
「!?」
一緒に見守っていたリーゼがビクッとなって渓谷の上を見つめた。
「リーゼ? どうしたの?」
「う、ううん……何でもない……よ」
もしかして歩き続けて疲れたのかな……?
ちらっとこちらの雰囲気を見つめたラマくんが、足を止めた。
「一度ここで休憩するぞ」
「は~い」
ミリアが軽そうに返事し、みんなで道の傍に移動して座り込んだ。
「うちはアンリがいるおかげで、狩場での長期狩りも可能だぜ。こうして休憩時間もゆっくりできるからな」
「周囲を見張るスキルがあるからね。任せておいて」
「ああ。いつも頼りにしてるぜ」
ダリルが背負っていたカバンからヤカンを取り出して、不思議な台の上に乗せる。
さらに小さな黒色の石を取り出して、台の中にセットすると、台の上が赤色に染まる。
「魔道具まで買ってるんだ。すごいね」
「おうよ! Dランク冒険者になった祝いに買ったんだぜ。これで休憩時間もゆっくりできてリフレッシュできてすごくいい」
「さあ、二人の分もだ」
水筒から水をヤカンで沸かして茶を淹れてくれる。
こういう狩場で茶が飲めるのはとても助かる。
「リーゼ。大丈夫?」
「う、うん。ちょっとだけ寒気がしてるだけなの」
「狩場は瘴気が濃い場所だからな。慣れてないと辛いのかもな。そよ風はオルゲンさんのところで慣れているしな」
「うん」
茶を一口飲むと、久しぶりの狩場での疲れが一気に吹き飛んだ。
これでリーゼも少し楽になってくれたらいいな。
「きゅぴ~」
「モモ達も食べる?」
事前に持って来たどんぐりを取り出してあげると、ボリボリと美味しそうに食べる。
食べている姿を見つめるリーゼの顔が少し緩んだ気がした。
「今日はこれ以上入らないようにしよう」
「ご、ごめんなさい……」
「気にすんな。リーゼは狩場の奥地なんて初めてだろうからな」
少し申し訳なさそうにするリーゼ。
モモ達もリーゼを心配してか、彼女の肩に乗り、優しく頬をぺたぺたと触ってあげた。
「みんな……ありがとう」
ようやくリーゼが笑顔になった。
――――そのとき。
俺達の頭の上から、狼の遠吠えが響き渡った。
――――今まで感じたことがない強烈な。
「う、うん! みんなすごいね」
「だろう? これからそよ風に俺らのところに参加したら、いい感じで連携できると思うぜ!」
「う、うん……ありがとう。もうちょっと考えさせて」
「もちろんだ。これからどんどん行くぞ!」
それからラマ達はどんどんコボルト達を倒していった。
鮮やかな連携はお互いがお互いを知り尽くして信用しているからだ。
僕が憧れたような……そんな冒険者パーティーそのものだ。
「ハウ? どうしたの?」
「……ちょっと羨ましいなと思って。僕にも才能があったら、ラマくん達に混ざってあんな風に戦って……立派な冒険者になれたのかなって思って」
「……そうだったかも知れないね。でも今のハウの才能も私はとても好きだよ?」
「ありがとう。この才能がなかったモモ達とも出会えなかったし、イマイルおじさんのためになることもできなかったもんね」
「うんうん。何でも前向きに考えないとね。ラマ達のパーティーに入るの?」
「えっと……ちょっと悩んでるよ。リーゼはどう思う?」
「私? 私は……あまり入って欲しくないかな。でも決めるのは私じゃなくてハウだから。ハウのやりたいようにやったらいいと思う」
どこか寂しそうな笑顔が見えたリーゼは、僕の手を引いてラマ達の後を追いかけた。
次々と倒しながら渓谷の奥に進んでいく。
「ラマくん!? こんな奥まで入って大丈夫!?」
「おう! 俺達がいれば心配ないぜ! そよ風」
いわゆる狩場というのは、瘴気から魔物が現れる場所を指す。
狩場はどこも奥に入れば入る程に魔物が強くなる。だから油断して奥に進むのは良くないとされている。
けれど、それからの狩りも僕の心配をよそに、ラマ達の連携によってスムーズに進んだ。
渓谷の奥からはウォーウルフというコボルトの上位種が現れ、かなり強力なはずなのにラマ達の相手にはならなかった。
「!?」
一緒に見守っていたリーゼがビクッとなって渓谷の上を見つめた。
「リーゼ? どうしたの?」
「う、ううん……何でもない……よ」
もしかして歩き続けて疲れたのかな……?
ちらっとこちらの雰囲気を見つめたラマくんが、足を止めた。
「一度ここで休憩するぞ」
「は~い」
ミリアが軽そうに返事し、みんなで道の傍に移動して座り込んだ。
「うちはアンリがいるおかげで、狩場での長期狩りも可能だぜ。こうして休憩時間もゆっくりできるからな」
「周囲を見張るスキルがあるからね。任せておいて」
「ああ。いつも頼りにしてるぜ」
ダリルが背負っていたカバンからヤカンを取り出して、不思議な台の上に乗せる。
さらに小さな黒色の石を取り出して、台の中にセットすると、台の上が赤色に染まる。
「魔道具まで買ってるんだ。すごいね」
「おうよ! Dランク冒険者になった祝いに買ったんだぜ。これで休憩時間もゆっくりできてリフレッシュできてすごくいい」
「さあ、二人の分もだ」
水筒から水をヤカンで沸かして茶を淹れてくれる。
こういう狩場で茶が飲めるのはとても助かる。
「リーゼ。大丈夫?」
「う、うん。ちょっとだけ寒気がしてるだけなの」
「狩場は瘴気が濃い場所だからな。慣れてないと辛いのかもな。そよ風はオルゲンさんのところで慣れているしな」
「うん」
茶を一口飲むと、久しぶりの狩場での疲れが一気に吹き飛んだ。
これでリーゼも少し楽になってくれたらいいな。
「きゅぴ~」
「モモ達も食べる?」
事前に持って来たどんぐりを取り出してあげると、ボリボリと美味しそうに食べる。
食べている姿を見つめるリーゼの顔が少し緩んだ気がした。
「今日はこれ以上入らないようにしよう」
「ご、ごめんなさい……」
「気にすんな。リーゼは狩場の奥地なんて初めてだろうからな」
少し申し訳なさそうにするリーゼ。
モモ達もリーゼを心配してか、彼女の肩に乗り、優しく頬をぺたぺたと触ってあげた。
「みんな……ありがとう」
ようやくリーゼが笑顔になった。
――――そのとき。
俺達の頭の上から、狼の遠吠えが響き渡った。
――――今まで感じたことがない強烈な。
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