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翌日。
一階の食堂で朝食を食べる。
昨日も結局、仮眠から起きて夕飯を食べては、また眠ってしまって、一日中寝てばかりだった。
「ハウ! 仕事手伝って~」
「いいよ~」
彼女の目的は知っているので断ることなんてせずに追いかける。
宿屋の裏手に出ると、リアタさんが洗濯をしていた。
「リアタさん。おはようございます」
「おはよう」
オリアナさんの旦那さんであり、リーゼのお父さん。すごく寡黙で、あまり喋らない。いつも無表情でムスッとしていると怒るお客さんもいるみたいだけど、すごく心優しくて、僕を引き取ると決めたのは、他ならぬリアタさんだ。
「洗濯物干しは任せてください」
「ああ。頼んだ」
リアタさんが洗濯して綺麗になったシーツを、僕とリーゼで両端を持って広げる。
「風魔法発動!」
僕の体からふわりと風が吹き出して、シーツがふわっと空を飛び、物干し竿に綺麗に置かれた。
それを何回も繰り返して、後は自然の風に飛ばされないように、洗濯バサミで止めておく。
「お父さん! 仕事早く終わったから遊んできていい?」
「ああ。お小遣いだ」
「わあ! ありがとう!」
これもいつもの流れだ。
僕とリーゼは宿屋から城壁に向かった。
「ラインさ~ん! 上がっても~いいですかぁ~?」
城壁の上に立っていた兵士さんがこちらを見て、「いいぞ~!」と返してくれたので、僕とリーゼは速足で階段を上り、城壁に登った。
「わあ~! 綺麗~!」
リーゼが嬉しそうに声を上げる。
城壁から見える景色は、どこまでも広い空と、遠くに見える山や森、大きな川なんかも見える。
そして、僕がいつもここに来る一番の目的は、丁度ここから少しだけ離れた場所に見える、綿花の畑だ。
純白の綿が所せましと並んだ畑は、高いところから見ると、絵本でしか見たことがない雪景色のように見える。まあ、実際見た事はないんだけどね。
本当は普通の人はここに登らせてくれないけど、ラインさんは僕の両親の古くからの友人で、こうやって高いところが好きな僕によくしてくれている。
「ハウくん。お仕事はどうだ?」
「だいぶ慣れました! 魔法も上手く使えるようになったから、ある程度の荷物なら重くないです」
「そっか。それは良かった」
十歳に覚醒する才能。誰しもが何かしらの才能を持つ。
才能は強さで上級、中級、下級に分けられているが、下級の中でもとりわけ弱い才能をハズレと呼ぶ。
僕が覚醒させた才能は――――『極小風魔法』。
下級である『風魔法』、中級である『強風魔法』、上級である『暴風魔法』。それらは非常に強力で、魔物を倒す術となるのだが……『極小』という名が付く才能は、ハズレ中の中でもハズレと言われている。
僕ができるのは、とても弱い風を吹き出すことだけ。
例えば、さっき運ばせたシーツを空に飛ばして狙った場所に落とすことは簡単だが、人は持ち上げることはできない。それに鋭い風の刃のようにして魔物を切り裂くこともできない。
だから僕についたあだ名は――――『そよ風のハウ』。
僕が吹かせる風はまるでそよ風のようだと言われる所以だ。
それからはまたリーゼと街を散策した。
少しして、夕方の準備のためにリーゼを一足先に宿屋に見送り、僕はとある場所に向かった。
扉を入っていくと、すぐに空気が重苦しいものに変わる。
ガヤガヤして建物の中は、左にカウンター、正面に大きな掲示板、左に広く休憩スペースがあって、多くの――――冒険者達が座って作戦を練っていたりしている。
ここは冒険者ギルド。冒険者達が日々仕事を求めてやってくる場所だ。
僕が真っ先に向かうのは、依頼掲示板の隣にあるパーティー募集掲示板。
そこには求めている人材が細かく書かれている。
前衛や後衛、魔法使いなど。どの募集にも僕は当てはまらない。
「そよ風くんじゃねぇか! がーはははっ!」
体格のいい男が僕を見下ろしながら、大きな声で笑うと、少し離れている冒険者達も一緒に笑い始める。
「コワさん……ど、どうも……」
「おい、そよ風。ちょっと暑くてよ~お前の力で風を吹かせてくれ」
「あ、あはは……は、はい……風魔法発動」
僕の両手から風がコワさんに当たる。
当然、吹き飛ぶはずもなく、髪や服が少し揺らぐくらいだ。
「がはははっ! 涼しいじゃねぇか! さすがだな、無能風魔法使いさんよ!」
また周りから大きな笑い声が聞こえる。
コワさんはそのまま顔を近付けてきて、僕を睨みつける。
「おい。雑魚。ここはてめぇみたいなゴミが来る場所じゃねぇ。前も言ったよな? ああん? 舐めてんのか?」
「ひい!? ご、ごめんなさい……」
「次ここに来たらぶっ飛ばすからな? あいつらのところで一生ポーターやってろ。クズ」
僕は逃げるように急いで冒険者ギルドから走り出した。
一階の食堂で朝食を食べる。
昨日も結局、仮眠から起きて夕飯を食べては、また眠ってしまって、一日中寝てばかりだった。
「ハウ! 仕事手伝って~」
「いいよ~」
彼女の目的は知っているので断ることなんてせずに追いかける。
宿屋の裏手に出ると、リアタさんが洗濯をしていた。
「リアタさん。おはようございます」
「おはよう」
オリアナさんの旦那さんであり、リーゼのお父さん。すごく寡黙で、あまり喋らない。いつも無表情でムスッとしていると怒るお客さんもいるみたいだけど、すごく心優しくて、僕を引き取ると決めたのは、他ならぬリアタさんだ。
「洗濯物干しは任せてください」
「ああ。頼んだ」
リアタさんが洗濯して綺麗になったシーツを、僕とリーゼで両端を持って広げる。
「風魔法発動!」
僕の体からふわりと風が吹き出して、シーツがふわっと空を飛び、物干し竿に綺麗に置かれた。
それを何回も繰り返して、後は自然の風に飛ばされないように、洗濯バサミで止めておく。
「お父さん! 仕事早く終わったから遊んできていい?」
「ああ。お小遣いだ」
「わあ! ありがとう!」
これもいつもの流れだ。
僕とリーゼは宿屋から城壁に向かった。
「ラインさ~ん! 上がっても~いいですかぁ~?」
城壁の上に立っていた兵士さんがこちらを見て、「いいぞ~!」と返してくれたので、僕とリーゼは速足で階段を上り、城壁に登った。
「わあ~! 綺麗~!」
リーゼが嬉しそうに声を上げる。
城壁から見える景色は、どこまでも広い空と、遠くに見える山や森、大きな川なんかも見える。
そして、僕がいつもここに来る一番の目的は、丁度ここから少しだけ離れた場所に見える、綿花の畑だ。
純白の綿が所せましと並んだ畑は、高いところから見ると、絵本でしか見たことがない雪景色のように見える。まあ、実際見た事はないんだけどね。
本当は普通の人はここに登らせてくれないけど、ラインさんは僕の両親の古くからの友人で、こうやって高いところが好きな僕によくしてくれている。
「ハウくん。お仕事はどうだ?」
「だいぶ慣れました! 魔法も上手く使えるようになったから、ある程度の荷物なら重くないです」
「そっか。それは良かった」
十歳に覚醒する才能。誰しもが何かしらの才能を持つ。
才能は強さで上級、中級、下級に分けられているが、下級の中でもとりわけ弱い才能をハズレと呼ぶ。
僕が覚醒させた才能は――――『極小風魔法』。
下級である『風魔法』、中級である『強風魔法』、上級である『暴風魔法』。それらは非常に強力で、魔物を倒す術となるのだが……『極小』という名が付く才能は、ハズレ中の中でもハズレと言われている。
僕ができるのは、とても弱い風を吹き出すことだけ。
例えば、さっき運ばせたシーツを空に飛ばして狙った場所に落とすことは簡単だが、人は持ち上げることはできない。それに鋭い風の刃のようにして魔物を切り裂くこともできない。
だから僕についたあだ名は――――『そよ風のハウ』。
僕が吹かせる風はまるでそよ風のようだと言われる所以だ。
それからはまたリーゼと街を散策した。
少しして、夕方の準備のためにリーゼを一足先に宿屋に見送り、僕はとある場所に向かった。
扉を入っていくと、すぐに空気が重苦しいものに変わる。
ガヤガヤして建物の中は、左にカウンター、正面に大きな掲示板、左に広く休憩スペースがあって、多くの――――冒険者達が座って作戦を練っていたりしている。
ここは冒険者ギルド。冒険者達が日々仕事を求めてやってくる場所だ。
僕が真っ先に向かうのは、依頼掲示板の隣にあるパーティー募集掲示板。
そこには求めている人材が細かく書かれている。
前衛や後衛、魔法使いなど。どの募集にも僕は当てはまらない。
「そよ風くんじゃねぇか! がーはははっ!」
体格のいい男が僕を見下ろしながら、大きな声で笑うと、少し離れている冒険者達も一緒に笑い始める。
「コワさん……ど、どうも……」
「おい、そよ風。ちょっと暑くてよ~お前の力で風を吹かせてくれ」
「あ、あはは……は、はい……風魔法発動」
僕の両手から風がコワさんに当たる。
当然、吹き飛ぶはずもなく、髪や服が少し揺らぐくらいだ。
「がはははっ! 涼しいじゃねぇか! さすがだな、無能風魔法使いさんよ!」
また周りから大きな笑い声が聞こえる。
コワさんはそのまま顔を近付けてきて、僕を睨みつける。
「おい。雑魚。ここはてめぇみたいなゴミが来る場所じゃねぇ。前も言ったよな? ああん? 舐めてんのか?」
「ひい!? ご、ごめんなさい……」
「次ここに来たらぶっ飛ばすからな? あいつらのところで一生ポーターやってろ。クズ」
僕は逃げるように急いで冒険者ギルドから走り出した。
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