上 下
102 / 102
最終章

エピローグですか?

しおりを挟む
 カーンカーンカーン

 『ベータ領』に鐘の音が響いた。

 普段は緊急を知らせる鐘の音だが、今回は違う。

 真逆の意味合いだった。


 広場には多くの人で賑わっている。

 中央にはアイが神父服を着込んでおり、祭壇の上で嬉しそうに待っていた。

 大きな歓声と共に、広場の中央に敷かれている美しい真っ赤な絨毯の道を一人の男性が歩いてくる。

 さぞ緊張した面持ちで、表情は硬い。

 彼が通る度に「表情が硬いぞ~!」という声援が飛び交う。

 彼が祭壇に到着後、後方から一人の女性が現れる。

 真っ白な純白のドレスに身を包んだ女性は、この世界で最も美しい女性だと言っても過言ではないだろう。

 少し恥じらうように下を向き、ゆっくり、でも一歩ずつ確実に祭壇に向かい、歩き続けた。

 彼女が通る度に「綺麗だぞ~」「新婦には勿体ないぞ~」という声援が沢山飛び交う。

 ほんの少しだけ、顔を緩める彼女はそれ程までに新郎が愛されている事を知っていた。


 祭壇の手前で顔を上げた新婦。

 祭壇の上には緊張気味に待っている新郎が見えた。

 二人の目が合う。

 自然と笑顔が零れた。

 二人にとって最高に幸せな瞬間だった。



 ◇



 ◆とある大総統◆

「はあ? 俺様が本当の勇者だ? クーハハハハッ、そうかそうか、そりゃそうだ。何故なら俺様は最強だからな!」

 大総統は大きく笑い、自分が勇者である事を知った。

 だがそんな事なんてどうでも良かったのだ。

 自分が今更勇者であろうが、なかろうが、大総統は既に多くの仲間と国を手にしているのだから。

 大総統は夫婦が帰ると溜息を吐いた。

「ねえ……大丈夫?」

「あん? ああ、ちょっと吃驚びっくりしただけだ」

「そう……ならいいけど……」

「ふっ、心配すんな。それはそうと、お前に聞きたい事がある」

「え? 珍しいわね? どうしたの?」

「……その、なんだ…………大総統の婦人になるつもりはないか?」

「ぷっ! 何それ! プロポーズのつもり!? ――――はい、謹んでお受けいたします、こちらこそ不束者ですが……宜しくお願いします」



 ◆とある領主◆

 とある領主は幼馴染に無理矢理お見合いに参加させられていた。

「くっ……あいつ……覚えてろよ……」

 女性には全く興味がなかった領主は、幼馴染を恨んでいた。

 扉にノックの音が聞こえ、一人の女性が入って来る。

 綺麗な金髪が特徴な、それはとても美しい女性だった。

「初めまして、ベータ領主様。私はペデル家の長女、マーガレットと申します」

「は、初めまして、どうぞよろしくお願い致します……」

 思いのほか、自分の理想に近い女性像の彼女は、会話を重ねる度にますます理想に思えた。

 領主は数か月後、プロポーズに成功し、『自由国』の将来に大きく貢献する事になるのだが、今の彼にそれは分かるはずのない話だ。



 ◆とある魔王◆

「ヘルハザード、久しぶりだな」

 ――――

「ああ……更に新しい主人が決まったんだって? ――――ああ、妻の方だろう? 良いではないか。あやつらは英雄じゃ。人間と我々魔族の架け橋になってくれる大事な人だぞ?」

 ――――

「そうだな……これからは平和な時代が続くじゃろう。それでもいつかまた脅威が迫ってきたら、悪いが……ヘルハザードも全力であいつらを助けて欲しい」

 ――――

「ああ、私も嬉しいよ。またこうして話せるなんてな――――友よ」



 ◆とあるエロ魔族◆

「ちょっと! ねえ! 聞いてる!?」

「聞いている、寧ろ、そんな近くでずっと喋られては聞きたくなくても聞こえるものだ」

 エロ魔族はイケメン魔族に言い寄っていた。

「んも~この前、新たな魔王様、めちゃくちゃ綺麗だったからね? 真っ白いドレス…………はぁ、私はいつ着れるのかしら……」

「そう遠くない未来に着れるだろう」

「え?」

「あと三か月。それなら『自由国』との連携も全て終わる。それからは平和な日々が始まるだろう……その時になら着れる」

「えっ!? えっ!?」

「……三か月だけ、待ってくれ」

「ぅ、ぅん……わか……た」

 顔が真っ赤になったエロ魔族は何処か可愛らしく恥じらい始めた。



 ◆とある艦長◆

「艦長!」

「うん? どうした?」

「私達、いつの間にゴミ町からこんな凄い船に乗るようになりましたね」

「ああ……そうだな。今では大型旅客船・・・だものな」

「とても、ゴミの町で生きていたとは思えないくらいの生活です」

「ああ、これも……全てあいつのおかげだな」

「……でも船長も頑張ったからでしょう?」

「……俺の頑張りは、あいつに比べりゃ大したことないよ」

「――――そんな事ないと思います! …………この前の花嫁さんめちゃ美人でしたね」

「……」

「彼女が好きな人でしたっけ」

「あ、ああ……」

「…………その、私……彼女ほど綺麗じゃないですけど……どうですか?」

「え? い、いや……俺には……」

「……やっぱり私じゃ無理ですよね……」

「そ、そんな事はない! 君はとても綺麗だと思ってる! 寧ろ、俺なんか勿体ないと――」

「船長は今では大型旅客船の唯一船長ですよ? …………私はずっと頑張って来た船長が好きです」

「そうか、ありがとう……………………もしよろしければ……俺の奥さんになってくれないか?」

「――――ええ! 喜んで!」



 ◆とある元暗殺者◆

「ねえ、マスターのボス達、結婚したんだって」

「ふ~ん、良かったじゃん~あの時、斬らなくて」

「まあね~あの時……あんなに弱っちぃだったのに……それにしても花嫁さん綺麗だったな~」

「そうか? 俺は全くそう思わなかったけど」

「ふ~ん」

「だってあんな人より綺麗な人をずっと隣で見てるからな」

「え?」



 ◆とある元子爵令嬢◆

「シスター! この前、シスターのお兄様の結婚式、良かったですね!」

「え? ええ、お兄様の結婚式は凄かったですね」

「それにしても、シスター達は凄い兄妹ですね~」

「あはは……私はそんな……」

「だって、シスターったら魔法も沢山使えますし、町の住民達から評判も凄いですからね~」

「そ、そうだと……いいんですけど……私は凄すぎるお兄様の背中を追うので精一杯です」

「あ~あの方は……確かにそれは大変かも知れませんね」

「ええ、でも……自慢のお兄様ですよ」

 笑顔のシスターは今日も張り切って、活動を始めた。



 ◆とある元女店主◆

「貴方! リースちゃんがまた泣き出したよ!」

「お、おう! 今すぐ行く!」

 彼女の旦那は急ぎ、自分の娘に急行した。

 オムツが濡れていて泣き出したようで、旦那は慣れた手付きで娘のオムツを変える。

「そういや、貴方? 新しい部下達はどうなの?」

「あ~あいつらか。五人とも大人しくなってきたよ。最近はちゃんと人助けも率先して行うようになったしな」

「そう~それは良かった」

「そう言えば、昨日、領主様から恋愛について相談されてね」

「げっ、よりによって貴方なの? ちゃんと相談乗るのよ? 昔みたいに自分を犠牲にして女から去れ、なんて言ったら……分かるよね?」

「も、勿論だとも! あの時は本当に悪かった…………お前に危害が及ぶとばかり思い込んで……」

「……いいわよ。ちゃんと生きていてくれていたもの……こうして一緒にもなれたし」

 夫婦は静かになった娘を覗くと、幸せな笑顔のまま唇を重ねた。



 ◆とある聖女◆

「全く……あの方ったら……めかけにもしてくださらないし……どうしたものか……」

「あれ? 聖女様」

「ん? 君は…………元勇者くん、何だか久しぶりね」

「はい~、聖女様こそ、珍しいですね?」

「ええ、あの方から捨てられちゃったわ……」

「そうでしたか~仕方ありませんよ。あの方には姉御がお似合いですから」

「なっ! あんたね! 私じゃ不足だと言うの!?」

「う~ん、どちらかと言えば、そのまま・・・・を見せていれば、良かったと思っただけですよ?」

「…………こんな私を誰が好きになんかなるのよ……」

「えー、僕はそっちの方が好きですよ?」

眩しい笑顔に、聖女は初めて心臓の高鳴りを感じだ。







――――【完結】――――

 ここまで【能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました】を読んで頂きありがとうございました。
 明日から開催されるファンタジー小説大賞の投票が始まりますので、ぜひ投票してくださると嬉しいです。

 こちらの作品は作者が人生初めて完結させた作品となっております!
 ファンタジー小説大賞のために書き下ろした完全新作【チュートリアルスキルが便利過ぎて、チートスキルがなくても異世界ライフは楽です。】が連載中でございます。
 もしこの作品が面白かったら、新作も楽しめると思いますので、ぜひ覗いてみてください!

 では短い期間でしたら、また違う作品で会いましょう!

 ありがとうございました!
しおりを挟む
感想 5

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(5件)

A・l・m
2022.09.06 A・l・m

完結おめでとうございまス!

……切り落としドール回収するかとおもったけど、要らない!ってことならそれはそれて納得。

最終話いそぎすぎなとこはあるけど、皆が見れたのは良いことですね。

完結おめでとう&ありがとうです!

御峰。
2022.09.06 御峰。

こちらこそ完結まで読んで頂きありがとうございます(*´ω`*)最後焦ってる感じは作者の力量不足が否めないですね……今後の作品作りで活かせるように頑張ります!

解除
すずしろ
2022.08.30 すずしろ

ピエル君、良かったああ( ;∀;)
神様(作者様)ありがとう

御峰。
2022.08.30 御峰。

ピエルくんの最後にも注目です!(*´ω`*)

解除
A・l・m
2022.08.28 A・l・m

……地獄風呂……クズ勇者に、ざばぁが来ましたね!
(クリーンしないところが流石です!)


……ゴミクズ勇者回収もありうるのだろうか……。

御峰。
2022.08.28 御峰。

ある意味勇者ごと回収……( ´艸`)

解除

あなたにおすすめの小説

赤毛のアンナ 〜極光の巫女〜

桐乃 藍
ファンタジー
幼馴染の神代アンナと共に異世界に飛ばされた成瀬ユウキ。 彼が命の危機に陥る度に発動する[先読みの力]。 それは、終焉の巫女にしか使えないと伝えられる世界最強の力の一つだった。 世界の終わりとされる約束の日までに世界を救うため、ユウキとアンナの冒険が今、始まる! ※2020年8月17日に完結しました(*´꒳`*) 良かったら、お気に入り登録や感想を下さいませ^ ^ ------------------------------------------------------ ※各章毎に1枚以上挿絵を用意しています(★マーク)。 表紙も含めたイラストは全てinstagramで知り合ったyuki.yukineko様に依頼し、描いて頂いています。 (私のプロフィール欄のURLより、yuki.yukineko 様のインスタに飛べます。綺麗で素敵なイラストが沢山あるので、そちらの方もご覧になって下さい)

【前編完結】50のおっさん 精霊の使い魔になったけど 死んで自分の子供に生まれ変わる!?

眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
ファンタジー
リストラされ、再就職先を見つけた帰りに、迷子の子供たちを見つけたので声をかけた。  これが全ての始まりだった。 声をかけた子供たち。実は、覚醒する前の精霊の王と女王。  なぜか真名を教えられ、知らない内に精霊王と精霊女王の加護を受けてしまう。 加護を受けたせいで、精霊の使い魔《エレメンタルファミリア》と為った50のおっさんこと芳乃《よしの》。  平凡な表の人間社会から、国から最重要危険人物に認定されてしまう。 果たして、芳乃の運命は如何に?

アルゴノートのおんがえし

朝食ダンゴ
ファンタジー
『完結済!』【続編製作中!】  『アルゴノート』  そう呼ばれる者達が台頭し始めたのは、半世紀以上前のことである。  元来アルゴノートとは、自然や古代遺跡、ダンジョンと呼ばれる迷宮で採集や狩猟を行う者達の総称である。  彼らを侵略戦争の尖兵として登用したロードルシアは、その勢力を急速に拡大。  二度に渡る大侵略を経て、ロードルシアは大陸に覇を唱える一大帝国となった。  かつて英雄として名を馳せたアルゴノート。その名が持つ価値は、いつしか劣化の一途辿ることになる。  時は、記念すべき帝国歴五十年の佳節。  アルゴノートは、今や荒くれ者の代名詞と成り下がっていた。 『アルゴノート』の少年セスは、ひょんなことから貴族令嬢シルキィの護衛任務を引き受けることに。  典型的な貴族の例に漏れず大のアルゴノート嫌いであるシルキィはセスを邪険に扱うが、そんな彼女をセスは命懸けで守る決意をする。  シルキィのメイド、ティアを伴い帝都を目指す一行は、その道中で国家を巻き込んだ陰謀に巻き込まれてしまう。  セスとシルキィに秘められた過去。  歴史の闇に葬られた亡国の怨恨。  容赦なく襲いかかる戦火。  ーー苦難に立ち向かえ。生きることは、戦いだ。  それぞれの運命が絡み合う本格派ファンタジー開幕。  苦難のなかには生きる人にこそ読んで頂きたい一作。  ○表紙イラスト:119 様  ※本作は他サイトにも投稿しております。

猫カフェを異世界で開くことにした

茜カナコ
ファンタジー
猫カフェを異世界で開くことにしたシンジ。猫様達のため、今日も奮闘中です。

僕のおつかい

麻竹
ファンタジー
魔女が世界を統べる世界。 東の大地ウェストブレイ。赤の魔女のお膝元であるこの森に、足早に森を抜けようとする一人の少年の姿があった。 少年の名はマクレーンといって黒い髪に黒い瞳、腰まである髪を後ろで一つに束ねた少年は、真っ赤なマントのフードを目深に被り、明るいこの森を早く抜けようと必死だった。 彼は、母親から頼まれた『おつかい』を無事にやり遂げるべく、今まさに旅に出たばかりであった。 そして、その旅の途中で森で倒れていた人を助けたのだが・・・・・・。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※一話約1000文字前後に修正しました。 他サイト様にも投稿しています。

異世界生活研修所~その後の世界で暮らす事になりました~

まきノ助
ファンタジー
 清水悠里は先輩に苛められ会社を辞めてしまう。異世界生活研修所の広告を見て10日間の研修に参加したが、女子率が高くテンションが上がっていた所、異世界に連れて行かれてしまう。現地実習する普通の研修生のつもりだったが事故で帰れなくなり、北欧神話の中の人に巻き込まれて強くなっていく。ただ無事に帰りたいだけなのだが。

元四天王は貧乏令嬢の使用人 ~冤罪で国から追放された魔王軍四天王。貧乏貴族の令嬢に拾われ、使用人として働きます~

大豆茶
ファンタジー
『魔族』と『人間族』の国で二分された世界。 魔族を統べる王である魔王直属の配下である『魔王軍四天王』の一人である主人公アースは、ある事情から配下を持たずに活動しいていた。 しかし、そんなアースを疎ましく思った他の四天王から、魔王の死を切っ掛けに罪を被せられ殺されかけてしまう。 満身創痍のアースを救ったのは、人間族である辺境の地の貧乏貴族令嬢エレミア・リーフェルニアだった。 魔族領に戻っても命を狙われるだけ。 そう判断したアースは、身分を隠しリーフェルニア家で使用人として働くことに。 日々を過ごす中、アースの活躍と共にリーフェルニア領は目まぐるしい発展を遂げていくこととなる。

異世界転生した、くま

くま
ファンタジー
異世界転生した、オタクの番外編です!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。