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カーンカーンカーン
『ベータ領』に鐘の音が響いた。
普段は緊急を知らせる鐘の音だが、今回は違う。
真逆の意味合いだった。
広場には多くの人で賑わっている。
中央にはアイが神父服を着込んでおり、祭壇の上で嬉しそうに待っていた。
大きな歓声と共に、広場の中央に敷かれている美しい真っ赤な絨毯の道を一人の男性が歩いてくる。
さぞ緊張した面持ちで、表情は硬い。
彼が通る度に「表情が硬いぞ~!」という声援が飛び交う。
彼が祭壇に到着後、後方から一人の女性が現れる。
真っ白な純白のドレスに身を包んだ女性は、この世界で最も美しい女性だと言っても過言ではないだろう。
少し恥じらうように下を向き、ゆっくり、でも一歩ずつ確実に祭壇に向かい、歩き続けた。
彼女が通る度に「綺麗だぞ~」「新婦には勿体ないぞ~」という声援が沢山飛び交う。
ほんの少しだけ、顔を緩める彼女はそれ程までに新郎が愛されている事を知っていた。
祭壇の手前で顔を上げた新婦。
祭壇の上には緊張気味に待っている新郎が見えた。
二人の目が合う。
自然と笑顔が零れた。
二人にとって最高に幸せな瞬間だった。
◇
◆とある大総統◆
「はあ? 俺様が本当の勇者だ? クーハハハハッ、そうかそうか、そりゃそうだ。何故なら俺様は最強だからな!」
大総統は大きく笑い、自分が勇者である事を知った。
だがそんな事なんてどうでも良かったのだ。
自分が今更勇者であろうが、なかろうが、大総統は既に多くの仲間と国を手にしているのだから。
大総統は夫婦が帰ると溜息を吐いた。
「ねえ……大丈夫?」
「あん? ああ、ちょっと吃驚しただけだ」
「そう……ならいいけど……」
「ふっ、心配すんな。それはそうと、お前に聞きたい事がある」
「え? 珍しいわね? どうしたの?」
「……その、なんだ…………大総統の婦人になるつもりはないか?」
「ぷっ! 何それ! プロポーズのつもり!? ――――はい、謹んでお受けいたします、こちらこそ不束者ですが……宜しくお願いします」
◆とある領主◆
とある領主は幼馴染に無理矢理お見合いに参加させられていた。
「くっ……あいつ……覚えてろよ……」
女性には全く興味がなかった領主は、幼馴染を恨んでいた。
扉にノックの音が聞こえ、一人の女性が入って来る。
綺麗な金髪が特徴な、それはとても美しい女性だった。
「初めまして、ベータ領主様。私はペデル家の長女、マーガレットと申します」
「は、初めまして、どうぞよろしくお願い致します……」
思いのほか、自分の理想に近い女性像の彼女は、会話を重ねる度にますます理想に思えた。
領主は数か月後、プロポーズに成功し、『自由国』の将来に大きく貢献する事になるのだが、今の彼にそれは分かるはずのない話だ。
◆とある魔王◆
「ヘルハザード、久しぶりだな」
――――
「ああ……更に新しい主人が決まったんだって? ――――ああ、妻の方だろう? 良いではないか。あやつらは英雄じゃ。人間と我々魔族の架け橋になってくれる大事な人だぞ?」
――――
「そうだな……これからは平和な時代が続くじゃろう。それでもいつかまた脅威が迫ってきたら、悪いが……ヘルハザードも全力であいつらを助けて欲しい」
――――
「ああ、私も嬉しいよ。またこうして話せるなんてな――――友よ」
◆とあるエロ魔族◆
「ちょっと! ねえ! 聞いてる!?」
「聞いている、寧ろ、そんな近くでずっと喋られては聞きたくなくても聞こえるものだ」
エロ魔族はイケメン魔族に言い寄っていた。
「んも~この前、新たな魔王様、めちゃくちゃ綺麗だったからね? 真っ白いドレス…………はぁ、私はいつ着れるのかしら……」
「そう遠くない未来に着れるだろう」
「え?」
「あと三か月。それなら『自由国』との連携も全て終わる。それからは平和な日々が始まるだろう……その時になら着れる」
「えっ!? えっ!?」
「……三か月だけ、待ってくれ」
「ぅ、ぅん……わか……た」
顔が真っ赤になったエロ魔族は何処か可愛らしく恥じらい始めた。
◆とある艦長◆
「艦長!」
「うん? どうした?」
「私達、いつの間にゴミ町からこんな凄い船に乗るようになりましたね」
「ああ……そうだな。今では大型旅客船だものな」
「とても、ゴミの町で生きていたとは思えないくらいの生活です」
「ああ、これも……全てあいつのおかげだな」
「……でも船長も頑張ったからでしょう?」
「……俺の頑張りは、あいつに比べりゃ大したことないよ」
「――――そんな事ないと思います! …………この前の花嫁さんめちゃ美人でしたね」
「……」
「彼女が好きな人でしたっけ」
「あ、ああ……」
「…………その、私……彼女ほど綺麗じゃないですけど……どうですか?」
「え? い、いや……俺には……」
「……やっぱり私じゃ無理ですよね……」
「そ、そんな事はない! 君はとても綺麗だと思ってる! 寧ろ、俺なんか勿体ないと――」
「船長は今では大型旅客船の唯一船長ですよ? …………私はずっと頑張って来た船長が好きです」
「そうか、ありがとう……………………もしよろしければ……俺の奥さんになってくれないか?」
「――――ええ! 喜んで!」
◆とある元暗殺者◆
「ねえ、マスターのボス達、結婚したんだって」
「ふ~ん、良かったじゃん~あの時、斬らなくて」
「まあね~あの時……あんなに弱っちぃだったのに……それにしても花嫁さん綺麗だったな~」
「そうか? 俺は全くそう思わなかったけど」
「ふ~ん」
「だってあんな人より綺麗な人をずっと隣で見てるからな」
「え?」
◆とある元子爵令嬢◆
「シスター! この前、シスターのお兄様の結婚式、良かったですね!」
「え? ええ、お兄様の結婚式は凄かったですね」
「それにしても、シスター達は凄い兄妹ですね~」
「あはは……私はそんな……」
「だって、シスターったら魔法も沢山使えますし、町の住民達から評判も凄いですからね~」
「そ、そうだと……いいんですけど……私は凄すぎるお兄様の背中を追うので精一杯です」
「あ~あの方は……確かにそれは大変かも知れませんね」
「ええ、でも……自慢のお兄様ですよ」
笑顔のシスターは今日も張り切って、活動を始めた。
◆とある元女店主◆
「貴方! リースちゃんがまた泣き出したよ!」
「お、おう! 今すぐ行く!」
彼女の旦那は急ぎ、自分の娘に急行した。
オムツが濡れていて泣き出したようで、旦那は慣れた手付きで娘のオムツを変える。
「そういや、貴方? 新しい部下達はどうなの?」
「あ~あいつらか。五人とも大人しくなってきたよ。最近はちゃんと人助けも率先して行うようになったしな」
「そう~それは良かった」
「そう言えば、昨日、領主様から恋愛について相談されてね」
「げっ、よりによって貴方なの? ちゃんと相談乗るのよ? 昔みたいに自分を犠牲にして女から去れ、なんて言ったら……分かるよね?」
「も、勿論だとも! あの時は本当に悪かった…………お前に危害が及ぶとばかり思い込んで……」
「……いいわよ。ちゃんと生きていてくれていたもの……こうして一緒にもなれたし」
夫婦は静かになった娘を覗くと、幸せな笑顔のまま唇を重ねた。
◆とある聖女◆
「全く……あの方ったら……妾にもしてくださらないし……どうしたものか……」
「あれ? 聖女様」
「ん? 君は…………元勇者くん、何だか久しぶりね」
「はい~、聖女様こそ、珍しいですね?」
「ええ、あの方から捨てられちゃったわ……」
「そうでしたか~仕方ありませんよ。あの方には姉御がお似合いですから」
「なっ! あんたね! 私じゃ不足だと言うの!?」
「う~ん、どちらかと言えば、そのままを見せていれば、良かったと思っただけですよ?」
「…………こんな私を誰が好きになんかなるのよ……」
「えー、僕はそっちの方が好きですよ?」
眩しい笑顔に、聖女は初めて心臓の高鳴りを感じだ。
――――【完結】――――
ここまで【能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました】を読んで頂きありがとうございました。
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こちらの作品は作者が人生初めて完結させた作品となっております!
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もしこの作品が面白かったら、新作も楽しめると思いますので、ぜひ覗いてみてください!
では短い期間でしたら、また違う作品で会いましょう!
ありがとうございました!
『ベータ領』に鐘の音が響いた。
普段は緊急を知らせる鐘の音だが、今回は違う。
真逆の意味合いだった。
広場には多くの人で賑わっている。
中央にはアイが神父服を着込んでおり、祭壇の上で嬉しそうに待っていた。
大きな歓声と共に、広場の中央に敷かれている美しい真っ赤な絨毯の道を一人の男性が歩いてくる。
さぞ緊張した面持ちで、表情は硬い。
彼が通る度に「表情が硬いぞ~!」という声援が飛び交う。
彼が祭壇に到着後、後方から一人の女性が現れる。
真っ白な純白のドレスに身を包んだ女性は、この世界で最も美しい女性だと言っても過言ではないだろう。
少し恥じらうように下を向き、ゆっくり、でも一歩ずつ確実に祭壇に向かい、歩き続けた。
彼女が通る度に「綺麗だぞ~」「新婦には勿体ないぞ~」という声援が沢山飛び交う。
ほんの少しだけ、顔を緩める彼女はそれ程までに新郎が愛されている事を知っていた。
祭壇の手前で顔を上げた新婦。
祭壇の上には緊張気味に待っている新郎が見えた。
二人の目が合う。
自然と笑顔が零れた。
二人にとって最高に幸せな瞬間だった。
◇
◆とある大総統◆
「はあ? 俺様が本当の勇者だ? クーハハハハッ、そうかそうか、そりゃそうだ。何故なら俺様は最強だからな!」
大総統は大きく笑い、自分が勇者である事を知った。
だがそんな事なんてどうでも良かったのだ。
自分が今更勇者であろうが、なかろうが、大総統は既に多くの仲間と国を手にしているのだから。
大総統は夫婦が帰ると溜息を吐いた。
「ねえ……大丈夫?」
「あん? ああ、ちょっと吃驚しただけだ」
「そう……ならいいけど……」
「ふっ、心配すんな。それはそうと、お前に聞きたい事がある」
「え? 珍しいわね? どうしたの?」
「……その、なんだ…………大総統の婦人になるつもりはないか?」
「ぷっ! 何それ! プロポーズのつもり!? ――――はい、謹んでお受けいたします、こちらこそ不束者ですが……宜しくお願いします」
◆とある領主◆
とある領主は幼馴染に無理矢理お見合いに参加させられていた。
「くっ……あいつ……覚えてろよ……」
女性には全く興味がなかった領主は、幼馴染を恨んでいた。
扉にノックの音が聞こえ、一人の女性が入って来る。
綺麗な金髪が特徴な、それはとても美しい女性だった。
「初めまして、ベータ領主様。私はペデル家の長女、マーガレットと申します」
「は、初めまして、どうぞよろしくお願い致します……」
思いのほか、自分の理想に近い女性像の彼女は、会話を重ねる度にますます理想に思えた。
領主は数か月後、プロポーズに成功し、『自由国』の将来に大きく貢献する事になるのだが、今の彼にそれは分かるはずのない話だ。
◆とある魔王◆
「ヘルハザード、久しぶりだな」
――――
「ああ……更に新しい主人が決まったんだって? ――――ああ、妻の方だろう? 良いではないか。あやつらは英雄じゃ。人間と我々魔族の架け橋になってくれる大事な人だぞ?」
――――
「そうだな……これからは平和な時代が続くじゃろう。それでもいつかまた脅威が迫ってきたら、悪いが……ヘルハザードも全力であいつらを助けて欲しい」
――――
「ああ、私も嬉しいよ。またこうして話せるなんてな――――友よ」
◆とあるエロ魔族◆
「ちょっと! ねえ! 聞いてる!?」
「聞いている、寧ろ、そんな近くでずっと喋られては聞きたくなくても聞こえるものだ」
エロ魔族はイケメン魔族に言い寄っていた。
「んも~この前、新たな魔王様、めちゃくちゃ綺麗だったからね? 真っ白いドレス…………はぁ、私はいつ着れるのかしら……」
「そう遠くない未来に着れるだろう」
「え?」
「あと三か月。それなら『自由国』との連携も全て終わる。それからは平和な日々が始まるだろう……その時になら着れる」
「えっ!? えっ!?」
「……三か月だけ、待ってくれ」
「ぅ、ぅん……わか……た」
顔が真っ赤になったエロ魔族は何処か可愛らしく恥じらい始めた。
◆とある艦長◆
「艦長!」
「うん? どうした?」
「私達、いつの間にゴミ町からこんな凄い船に乗るようになりましたね」
「ああ……そうだな。今では大型旅客船だものな」
「とても、ゴミの町で生きていたとは思えないくらいの生活です」
「ああ、これも……全てあいつのおかげだな」
「……でも船長も頑張ったからでしょう?」
「……俺の頑張りは、あいつに比べりゃ大したことないよ」
「――――そんな事ないと思います! …………この前の花嫁さんめちゃ美人でしたね」
「……」
「彼女が好きな人でしたっけ」
「あ、ああ……」
「…………その、私……彼女ほど綺麗じゃないですけど……どうですか?」
「え? い、いや……俺には……」
「……やっぱり私じゃ無理ですよね……」
「そ、そんな事はない! 君はとても綺麗だと思ってる! 寧ろ、俺なんか勿体ないと――」
「船長は今では大型旅客船の唯一船長ですよ? …………私はずっと頑張って来た船長が好きです」
「そうか、ありがとう……………………もしよろしければ……俺の奥さんになってくれないか?」
「――――ええ! 喜んで!」
◆とある元暗殺者◆
「ねえ、マスターのボス達、結婚したんだって」
「ふ~ん、良かったじゃん~あの時、斬らなくて」
「まあね~あの時……あんなに弱っちぃだったのに……それにしても花嫁さん綺麗だったな~」
「そうか? 俺は全くそう思わなかったけど」
「ふ~ん」
「だってあんな人より綺麗な人をずっと隣で見てるからな」
「え?」
◆とある元子爵令嬢◆
「シスター! この前、シスターのお兄様の結婚式、良かったですね!」
「え? ええ、お兄様の結婚式は凄かったですね」
「それにしても、シスター達は凄い兄妹ですね~」
「あはは……私はそんな……」
「だって、シスターったら魔法も沢山使えますし、町の住民達から評判も凄いですからね~」
「そ、そうだと……いいんですけど……私は凄すぎるお兄様の背中を追うので精一杯です」
「あ~あの方は……確かにそれは大変かも知れませんね」
「ええ、でも……自慢のお兄様ですよ」
笑顔のシスターは今日も張り切って、活動を始めた。
◆とある元女店主◆
「貴方! リースちゃんがまた泣き出したよ!」
「お、おう! 今すぐ行く!」
彼女の旦那は急ぎ、自分の娘に急行した。
オムツが濡れていて泣き出したようで、旦那は慣れた手付きで娘のオムツを変える。
「そういや、貴方? 新しい部下達はどうなの?」
「あ~あいつらか。五人とも大人しくなってきたよ。最近はちゃんと人助けも率先して行うようになったしな」
「そう~それは良かった」
「そう言えば、昨日、領主様から恋愛について相談されてね」
「げっ、よりによって貴方なの? ちゃんと相談乗るのよ? 昔みたいに自分を犠牲にして女から去れ、なんて言ったら……分かるよね?」
「も、勿論だとも! あの時は本当に悪かった…………お前に危害が及ぶとばかり思い込んで……」
「……いいわよ。ちゃんと生きていてくれていたもの……こうして一緒にもなれたし」
夫婦は静かになった娘を覗くと、幸せな笑顔のまま唇を重ねた。
◆とある聖女◆
「全く……あの方ったら……妾にもしてくださらないし……どうしたものか……」
「あれ? 聖女様」
「ん? 君は…………元勇者くん、何だか久しぶりね」
「はい~、聖女様こそ、珍しいですね?」
「ええ、あの方から捨てられちゃったわ……」
「そうでしたか~仕方ありませんよ。あの方には姉御がお似合いですから」
「なっ! あんたね! 私じゃ不足だと言うの!?」
「う~ん、どちらかと言えば、そのままを見せていれば、良かったと思っただけですよ?」
「…………こんな私を誰が好きになんかなるのよ……」
「えー、僕はそっちの方が好きですよ?」
眩しい笑顔に、聖女は初めて心臓の高鳴りを感じだ。
――――【完結】――――
ここまで【能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました】を読んで頂きありがとうございました。
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こちらの作品は作者が人生初めて完結させた作品となっております!
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では短い期間でしたら、また違う作品で会いましょう!
ありがとうございました!
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神様(作者様)ありがとう
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(クリーンしないところが流石です!)
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