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二章

第43話 ただの町民達ですか?

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 第一陣が壊滅したので、全部回収すると、そこには気絶している五十人の兵士達が倒れていた。


 ブォオオオオー!

 二度目の大笛の音がした。

 更に兵士五十人と騎兵十人がこちらに向かってきた。

 さっきとは違い、陣形も変わり、広く位置を取っている。

 そして、両脇から騎兵は五人ずつ分かれて、こちらに向かってきた。


「第二陣が来る! 騎兵はセイ隊で対応! 左翼、右翼分かれているからな!」

「「あいよ!!」」

 セイくん率いる獣人族の足が速い人で構成されている遊撃隊の面々が、練習通り分かれて、左翼と右翼に散って行った。

「正面の兵士達の数は五十! 皆、普段通り、怪我した者は無理せず、絶対に撤退する事!」

「「「おおおお!」」」

 セイくん達の他、戦いに心得がある人達で構成されている戦闘隊の皆が前に出た。

 そして、皆はとあるを飲み込んだ。

 全員の身体から光が小さく発せられる。

 これは『戦闘用ポーション』だ。

 全て、シーマくんの作品である。

 戦場でも非常に大きい成果をもたらすと言われている『ポーション』。

 それは、飲んだ数十分間、ステータス増加等の効果をもたらす。

 今回の『戦闘用ポーション』は、なんと、『力と素早さ』が段階も上がる優れものだ。

 これでシーマくんがどれくらい優秀なのかを示せるだろう。

 何せ、本来の『ポーション』は、一つのステータスを段階しか上げられないのだから。

 因みに、重複は不可能という事で、基本的には上書きになるみたい。

 依存症とかもないらしいけど、一度ステータスが上がった事を体験すれば、依存になる人も多いみたい。

 なので、『錬金術師』はそれぞれの有力者達から狙われているのだ。


 大きな怒声と共に、兵士達と戦闘隊がぶつかった。

 もみくちゃの戦いも、遠い目では、どちらが優勢なのかも分からない。

 僕は、ただひたすら、皆の無事を祈るしか出来なかった。



 ◇



 連邦国の兵士達は、一つ、大きな勘違いをしていた。

 外からでも分かるボロい町。

 更に聞けば、この町では『ゴミ』を集めているという事ではないか。

 全員、この遠征を楽しみにしていた。

 ――――そう、自分達が蹂躙する事を楽しみにしていたのだ。


 しかし、自分達は狙っていたような事は起きなかった。

 何故なら……。

 蹂躙されるのが、自分達だったからである。



 始めに、ステータスが大幅に上がった上に、元々、ランクの高い魔物と戦った経験により、レベルも高く、命の危機に迫る戦いを経験している彼らは――――凄まじく強かった。

 彼らは、ただの町民のはずだ。

 そのただの町民が問題だった。

 自由の町『ベータ』。

 その町の異常性を、相手からの兵士達は何一つ知らなかった。

 兵士一人に対して、町民一人。

 最初、笑顔のまま斬りかかる兵士達の剣や槍は、空しくも町民達にかすりもしなかった。

 寧ろ…………町民達の驚いた顔で「え? そんなもんなの?」という表情を全ての兵士達が味わう事となった。

 町民達は溜息を一つ吐き、呆れたように目の前の兵士をボコボコにする。

 兵士達五十人、全員が町民達によって一対一でボコボコにされた。



 ◇



「へぇー、連邦国の馬は大したことないんだね?」

 走っている馬の隣をセイくんが同じ速度で走りながら話した。

 馬に乗っている騎兵は、長い槍でセイを突くが、当たるはずもなく。

 そもそも、馬と同速度で走れるがいる事に驚いた上に、それが一人だけじゃない事に更に驚く事となる。


 セイ率いる遊撃隊は、全員が獣人族で構成されている隊だ。

 何故なら、獣人族達の殆どは、レベルアップの恩恵が『素早さ』に出る。

 それは、どんな能力だったとしても、『素早さ』が必ず上昇するという種族特有の特性だ。

 遊撃隊も戦闘隊同様、数々の死の戦場を潜り抜けてきた。

 今では、遊ぶようにギルティファング達に追いかけられているセイくんでさえ、一度足を止めれば、待っているのは『死』そのものだ。

 そんな究極ともいう状況に、彼ら遊撃隊もまた大きく進化を遂げた。

 その先にあったのは……まさに『神速』隊であった。


 騎兵達、遊撃隊により、一人、また一人、馬から落とされ、全ての馬がベータ町の馬の所有物となり、騎兵達全員、成す術もなく、遊撃隊にボコボコにされるのであった。
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