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二章

第36話 ダークエルフの里ですか?

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 僕とアイリスはダークエルフ達に丁寧に迎え入れられ、大きな木にある貴賓室で寛いでいた。

「ううっ……痛い……」

 僕は頭の上に出来た三段のタンコブを優しく撫でた。

 滅茶苦茶痛くて、涙も出た。

「アレクが馬鹿言うから!」

「だって! 皆さんが魔王様って土下座したじゃん! 僕もしないとなんか、こう、気まずかったんだよ」

「そんな割にずっとクスクスって笑ってたでしょう!」

「それは~アイリスが物凄く面白い顔をしていたからね」

 ジト目で右拳を前に出すアイリス。

 魔女パンチ痛いんだからやめてほしい。


 トントントン

 扉からノックの音と共に、シグマくんと共に、ダークエルフが一人、一緒に入って来た。

「初めまして、わたくしはテザイオンと申します。この度、わが里を救ってくださりありがとうございました」

 ダークエルフお爺さんは深々と頭を下げた。

 シグマくんも一緒に頭を下げる。

「いえいえ、隣人・・が困っている時は、お互い様ですから」

 僕の言葉に、テザイオンさんが驚いた。

「人族は、亜人族を毛嫌いしているとばかり思っておりましたが…………」

「ええ、大半の人族はそうかも知れません。ですけど、僕は皆が仲良く暮らしたいと思ってますから」

「ほほほっ、これは良き隣人・・のようですね」

 テザイオンの顔に明るい笑顔が浮かんだ。

 自然とテザイオンさんと握手を交わした。

 僕らにとって、初めての良き隣人が出来た瞬間だった。



 ◇



 シグマくんに連れられ、ダークエルフの里中を歩き回った。

 亜人だからと言って、人族と何ら変わりもなく、殆どが良く聞く建物だった。

 形や色が違うだけで、人族、ううん、僕達と同じだ。


 最後に町の外れにある施設が気になって聞いてみた。

「シグマくん、向こうの建物は行かないの?」

「えっ!? あそこ行くの!? 後悔しても知らないよ?」

「いいんじゃない? 折角だからどんな建物なのか見てみたいし」

「えーー、分かったよ……」

 シグマくんも渋々承諾し、その建物に向かった。



 ――――ああ、近づいて、その建物が何なのか分かった。

「ゴミ処理場ね」

「そうなんだよ、どうしても臭いモノとか多いから、皆はあまり近寄らないよ」

「そうか、中を見せて貰っても?」

「ええ!? アレク兄ちゃん、物凄く臭いんだよ!?」

「ふふっ、大丈夫、慣れてるから」

 嫌がるシグマくんだったが、手を繋いだアイリスによって、強制的に連れ込まれた。


 建物の中には、ゴミやら排泄物やらが整理整頓されていた。

 どうしても匂いはするみたい。

 それにしても綺麗に整理整頓しているのね?

 ――――と思っていると。

「誰だ!」

 奥から綺麗な美人ダークエルフが一人、現れた。

「シェーン姉ちゃん! 僕だよ!」

「シグマくん!? どうしてこんな所に? ……それにそちらは?」

「あ! こちらの二人は今回の襲撃から里を守ってくれた二人だよ!」

「ああ! これは大変失礼しました。この度は本当にありがとうございました」

 シェーン姉ちゃんと呼ばれた美女さんも、テザイオン同様、深々と頭を下げてくれた。

 褐色肌だけど、ダークエルフの中では明るい色で、長く綺麗な髪と瞳、そして整った顔が美人である事を示していた。

「そんな英雄殿が何故、このような・・・・・場所に?」

「里の案内をしていたら、最後にここが見たいってさ」

「ここの匂いでも入ったって事は……モノ好きなのですね」

 ふふっと笑顔になるシェーンさん。

 正直、ヴァレン町にいた頃の綺麗なアイリスを思い浮かべる程に、あまり、場に似合わない。

「ダークエルフの里ではゴミはどうやって処分しているのですか?」

「はい、私が火魔法が使えるので、ここでゆっくり燃やしています」

 確かに、部屋の角にはゴミを燃やすと思われる窯のようなモノがあった。

「でも、私、元々魔力が少ないので、あまり火魔法が長く使えないので、ここでんでいるんです」

「「ここで!?」」

 アイリスも一緒に驚いた。

 それもそのはずだ。

 外は華やかな里で建物や生活も美しいとさえ思えたのだから。

 でもここは…………。



「はい、私……欠陥品・・・ですから」
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