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一章
第25話 決別……です
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「みんな、先に帰ってください」
僕の言葉に、アイリスちゃんは「絶対に帰って来てよ」と小さく呟いて、みんなと一緒にヴァレン町に帰って行った。
「よう、シーマが奪われたと聞いて、アレクの仕業だと分かったよ」
「そっか」
「…………アレク、俺と戦ってくれ」
ピエルくんは覚悟を決めた瞳をしていた。
「俺は、お前らを裏切った…………だから、俺と戦ってくれ」
「……そうか、でも今なら――」
「それはダメだ」
ピエルくんは一つ息を深く吸い込んで、口を開いた。
「俺はな――――アイリスが好きだ。でも、お前が現れてから変わってしまった。お前を見るアイリスを…………それを見る度にお前が消えて欲しいと何度も思った。お前から友達だと言われる度に、友達ならアイリスの隣から消えて欲しいと……ずっとそう思っていた。
あの日……お前が死んだら……俺はアイリスと一緒になれると思った。だから……だから! あの日、俺はお前を助けなかった! どうだ、アレク! 俺と戦え! 俺はお前を倒して、アイリスを手に入れる!!」
「ピエルくん………………そうだったのね……気づいてあげれなくてごめん…………でも、もっとごめん。アイリスちゃんを……君には絶対に渡さない」
「そうかよ! 力づくでも奪ってやる!!」
ピエルが剣を抜いて、僕に飛びかかって来た。
僕はすぐにピエルの前方に石材ゴミを召喚した。
彼は驚くも、石材ゴミを避け、回り込んで走ってきた。
しかし、それを読んでいた僕は、ピエルが回り込む直前に『デッドゴミ』を投げつけていた。
顔を出した瞬間、ピエルに『デッドゴミ』で命中し、吹き飛ばされた。
「あ、あはは……強いなアレクは…………俺なんかよりも、ずっと……」
僕は、泣いているピエルを置き去りにして、その場を後にした。
――「もう……二度とお前らの前には現れないよ……」
――「ああ…………アイリスちゃんは物じゃない。彼女が生きたいように僕は応援したいと思う」
――「そうか……俺は……最後まで最低だったな…………」
◇
ギャザー町の響く悲鳴を後に、僕はヴァレン町に帰って来た。
ヴァレン町では、また宴会が開かれていた。
遠くからも、宴会の楽しさが伝ってくる。
入口付近の大きな岩に、人影が見えた。
その人影は、僕を見つけると、こちらに全力で走って来た。
そして、その人影から、有無を言わさずに胸に飛び込まれた。
――彼女は僕の胸で「心配……したんだから……ばか」と言っていた。
彼女の柔らかい肌の感触が、ピエルとの戦いをますます現実だと、実感させてくれた。
◇
◆アレクが屋根の上で刺されて落ちた日◆
アレクが何者かに刺されて、屋根の上から落ちる姿を見た。
俺は……一体何をしているんだ。
今すぐアレクを助けに…………、屋上に見える影がシーマを連れて行った。
ああ……あの影は自分では到底叶う相手じゃないと悟った。
それから俺は親と共に、領主の屋敷に招かれ、報奨金をたんまり貰った。
両親は初めて得た大金に喜び、領主様からの勧めで空き家に案内される事となった。
俺は、その隙にアレクが落ちた所に戻って来た。
ゴミの山がまだ残っていて、大通りから既に野次馬達が噂をしている。
俺は急いで、アレクを探した。
落ちたと思われるゴミの山を覗くと、その中に気絶しているアレクを見つけた。
刺されたと思っていたのに、何処にも傷跡は見えない。
服には痛々しい穴が空いてるのに――。
そして、俺はアレクを人がいない所に運んだ。
でも、俺にアレクと一緒にいる資格なんてない……。
そんな事を思っていると、足音が聞こえて、俺は身を潜めた。
もしもの時は……俺がアレクを……守る。
現れた青年は、どうやらアレクを知っているようだった。
彼がアレクを担いでいるのを、俺は隠れて見つめていた。
アレクの無事も確認出来たので、俺は決着を付けるべく、親が入れられた空き家に来た。
――――しかし。
空き家の前には既に多くの人で一杯だった。
――――ああ、そういう事だったのか。
あのクソ領主が…………報奨金なんて出すはずもないのに……両親は………………。
あれから俺は町の中で物乞いとして潜んでいた。
既に十日以上経っている。
そんな中、町のはずれにある屋敷がゴミだらけになったと噂が流れた。
――――ゴミ。
恐らく、アレクの仕業だろう。
俺は、決着を付けるため…………いや、俺なんか忘れさせるため、アレクの元に向かった。
僕の言葉に、アイリスちゃんは「絶対に帰って来てよ」と小さく呟いて、みんなと一緒にヴァレン町に帰って行った。
「よう、シーマが奪われたと聞いて、アレクの仕業だと分かったよ」
「そっか」
「…………アレク、俺と戦ってくれ」
ピエルくんは覚悟を決めた瞳をしていた。
「俺は、お前らを裏切った…………だから、俺と戦ってくれ」
「……そうか、でも今なら――」
「それはダメだ」
ピエルくんは一つ息を深く吸い込んで、口を開いた。
「俺はな――――アイリスが好きだ。でも、お前が現れてから変わってしまった。お前を見るアイリスを…………それを見る度にお前が消えて欲しいと何度も思った。お前から友達だと言われる度に、友達ならアイリスの隣から消えて欲しいと……ずっとそう思っていた。
あの日……お前が死んだら……俺はアイリスと一緒になれると思った。だから……だから! あの日、俺はお前を助けなかった! どうだ、アレク! 俺と戦え! 俺はお前を倒して、アイリスを手に入れる!!」
「ピエルくん………………そうだったのね……気づいてあげれなくてごめん…………でも、もっとごめん。アイリスちゃんを……君には絶対に渡さない」
「そうかよ! 力づくでも奪ってやる!!」
ピエルが剣を抜いて、僕に飛びかかって来た。
僕はすぐにピエルの前方に石材ゴミを召喚した。
彼は驚くも、石材ゴミを避け、回り込んで走ってきた。
しかし、それを読んでいた僕は、ピエルが回り込む直前に『デッドゴミ』を投げつけていた。
顔を出した瞬間、ピエルに『デッドゴミ』で命中し、吹き飛ばされた。
「あ、あはは……強いなアレクは…………俺なんかよりも、ずっと……」
僕は、泣いているピエルを置き去りにして、その場を後にした。
――「もう……二度とお前らの前には現れないよ……」
――「ああ…………アイリスちゃんは物じゃない。彼女が生きたいように僕は応援したいと思う」
――「そうか……俺は……最後まで最低だったな…………」
◇
ギャザー町の響く悲鳴を後に、僕はヴァレン町に帰って来た。
ヴァレン町では、また宴会が開かれていた。
遠くからも、宴会の楽しさが伝ってくる。
入口付近の大きな岩に、人影が見えた。
その人影は、僕を見つけると、こちらに全力で走って来た。
そして、その人影から、有無を言わさずに胸に飛び込まれた。
――彼女は僕の胸で「心配……したんだから……ばか」と言っていた。
彼女の柔らかい肌の感触が、ピエルとの戦いをますます現実だと、実感させてくれた。
◇
◆アレクが屋根の上で刺されて落ちた日◆
アレクが何者かに刺されて、屋根の上から落ちる姿を見た。
俺は……一体何をしているんだ。
今すぐアレクを助けに…………、屋上に見える影がシーマを連れて行った。
ああ……あの影は自分では到底叶う相手じゃないと悟った。
それから俺は親と共に、領主の屋敷に招かれ、報奨金をたんまり貰った。
両親は初めて得た大金に喜び、領主様からの勧めで空き家に案内される事となった。
俺は、その隙にアレクが落ちた所に戻って来た。
ゴミの山がまだ残っていて、大通りから既に野次馬達が噂をしている。
俺は急いで、アレクを探した。
落ちたと思われるゴミの山を覗くと、その中に気絶しているアレクを見つけた。
刺されたと思っていたのに、何処にも傷跡は見えない。
服には痛々しい穴が空いてるのに――。
そして、俺はアレクを人がいない所に運んだ。
でも、俺にアレクと一緒にいる資格なんてない……。
そんな事を思っていると、足音が聞こえて、俺は身を潜めた。
もしもの時は……俺がアレクを……守る。
現れた青年は、どうやらアレクを知っているようだった。
彼がアレクを担いでいるのを、俺は隠れて見つめていた。
アレクの無事も確認出来たので、俺は決着を付けるべく、親が入れられた空き家に来た。
――――しかし。
空き家の前には既に多くの人で一杯だった。
――――ああ、そういう事だったのか。
あのクソ領主が…………報奨金なんて出すはずもないのに……両親は………………。
あれから俺は町の中で物乞いとして潜んでいた。
既に十日以上経っている。
そんな中、町のはずれにある屋敷がゴミだらけになったと噂が流れた。
――――ゴミ。
恐らく、アレクの仕業だろう。
俺は、決着を付けるため…………いや、俺なんか忘れさせるため、アレクの元に向かった。
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