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第28話 地下の隠れ場所
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一週間が経過した。
その間、俺は毎日森に通いながら、いつものことをやり続けている。
現在、エンガリア森はアルキバガン森の呪いと同じ状況に陥っていると王都中に噂が広まっている。
ただし、それでも流通に穴は開いていない。
その理由は、それが採取した全てを冒険者ギルドに――――――秘密裏に流しているからだ。
冒険者ギルドも秘密裏に市場に流して、値段が高騰することはなく済んでいる。が、エンガリア森で生計を立てていた冒険者達はエンガリア森で利益を出せずにいる。
そんな彼らは冒険者ギルドから別の依頼を回しているので、今のところ誰も困っている事はない。
つまり、全ては予定通りに順調に進んでいるという事だ。
「よく来てくれた。アルマくん」
「こちらこそ。やっと動きましたか。マスター」
「ああ。君が頑張ってくれたおかげで、遂に彼らも動いた」
ずっと待っていた朗報――――遂に『理の教団』が動いたのか。
「ようやく『理の教団』が声明を発表した。その中身は――――もちろんエンガリア森も呪いが移った事になった。それによって、祝福の増額を求めてきた。そこで王国側は――――予定通り、全ての支援を辞める運びとなった」
「それはよかった。呪いではない事がやっと伝わったんですね」
「そうだな。誰よりも王女様が強く現実を後押ししてくれたおかげだと聞く」
「王女様か…………一体どんなお方なんですかね~」
「ふふっ。それよりも、例の件はどうなったんだ?」
「それはもちろんばっちりですね」
ギルドマスターがにっこりと満面の笑みを浮かべる。
これから起こる出来事を想像しているのだろう。ちょっと怖い。
「反撃の時だ。すまないがあと少し付き合ってくれ」
「もちろんです。こちらもタダ働きではないし、仕事はきっちりやらせていただきますよ」
その場に立ち上がり、ギルドマスターと握手を交わす。
これから詐欺集団を懲らしめてやりますか。
◆
王都の貴族区のど真ん中にある派手なお店『シルビア』。
貴族の御用達のお店は、注文を受ければあらゆる物を用意してくれる便利屋の一つだ。
食品から珍しいモノまで、最上階には高級宝石まで売っている大手の商会だ。
俺とギルドマスターは外套を深く被り、商会の裏手側に回る。
案の定、私兵達が裏口を守っている。
小石を反対側に素早く投げ込むと、石がぶつかる音に引っ張られ私兵達の視線がそちらに移る。
その瞬間に俺とギルドマスターが一気に間合いを詰めて、彼らを殴り飛ばす。
すぐに裏口から中に入っていく。
道しるべの地図を利用して迷いのない動きで中を進んでいき、地下へ通じる道を進める。
途中守っている私兵達も難なく殴り飛ばしながら、地下に続いている道を進んで行く。
洞窟のような場所が続き、やがて奥に不思議な紫色が輝いている空間が現れた。
そこには一面に咲いた美しい紫色の花が所狭しと並んでいた。
「間違いない。依存型薬草『デスブリンガー』だ」
多くの人が奴隷堕ちとなる原因。
それが目の前に広がっている花から作られる薬だ。
前世でも医薬として開発されたはずの薬物を、快楽のために使う事で依存症となり大きな社会問題となった。
麻薬と呼ばれるそれらは国をも亡ぼす力を持つと言われる。
いま俺の前に並んでいる紫の花も、それと同じ力を持つ。
少量なら医学的な面で高い効果を持つはずなのに、使用量が違えば劇薬となるはずだ。
その時、後ろから拍手の音が聞こえて来る。
「これはこれは~冒険者ギルドのマスターではありませんか~まさか我々の商会の地下に無断侵入をするとは、大したものです~」
「お前は……! シルビア商会の王都支部長…………フォルダク…………」
「お久しぶりでございます」
優雅な挨拶を披露する彼は、一切油断を見せず、隙一つない。
間違いなく戦闘に長けている人物だ。
「大変失礼ですが、ここはお客様が入って良い場所ではないのですが…………どうやってここが分かったのか、もろもろ聞かないといけませんね」
「そう簡単に聞けるとでも?」
「元Aランク冒険者とはいえ、年齢には抗えないでしょう。ここで私達に勝てるとでも?」
「ふっ。それはどうかな?」
ギルドマスターが一枚の護符を取り出した。
「それは!? や、やめなさい!」
「ふっ。残念だったな!」
マスターが後ろの花畑に目掛けて護符を投げ込むと同時に、焦ったフォルダクが飛びついた。
その隙を見て、俺も全速力で殴りつけた。
しかし、難なく止められて、冷たい視線を俺に刺すと同時に後方が火の海に変わった。
「…………お前達は決して許さん。ここで生きて帰れると思うなよ!」
「さすがにお前でも焦るのか。デスブリンガーは残念だったな。それに俺達はそう簡単にやられないぞ!」
後ろに火の海を背負いフォルダクと数人の暗殺者達との戦いが始まった。
その間、俺は毎日森に通いながら、いつものことをやり続けている。
現在、エンガリア森はアルキバガン森の呪いと同じ状況に陥っていると王都中に噂が広まっている。
ただし、それでも流通に穴は開いていない。
その理由は、それが採取した全てを冒険者ギルドに――――――秘密裏に流しているからだ。
冒険者ギルドも秘密裏に市場に流して、値段が高騰することはなく済んでいる。が、エンガリア森で生計を立てていた冒険者達はエンガリア森で利益を出せずにいる。
そんな彼らは冒険者ギルドから別の依頼を回しているので、今のところ誰も困っている事はない。
つまり、全ては予定通りに順調に進んでいるという事だ。
「よく来てくれた。アルマくん」
「こちらこそ。やっと動きましたか。マスター」
「ああ。君が頑張ってくれたおかげで、遂に彼らも動いた」
ずっと待っていた朗報――――遂に『理の教団』が動いたのか。
「ようやく『理の教団』が声明を発表した。その中身は――――もちろんエンガリア森も呪いが移った事になった。それによって、祝福の増額を求めてきた。そこで王国側は――――予定通り、全ての支援を辞める運びとなった」
「それはよかった。呪いではない事がやっと伝わったんですね」
「そうだな。誰よりも王女様が強く現実を後押ししてくれたおかげだと聞く」
「王女様か…………一体どんなお方なんですかね~」
「ふふっ。それよりも、例の件はどうなったんだ?」
「それはもちろんばっちりですね」
ギルドマスターがにっこりと満面の笑みを浮かべる。
これから起こる出来事を想像しているのだろう。ちょっと怖い。
「反撃の時だ。すまないがあと少し付き合ってくれ」
「もちろんです。こちらもタダ働きではないし、仕事はきっちりやらせていただきますよ」
その場に立ち上がり、ギルドマスターと握手を交わす。
これから詐欺集団を懲らしめてやりますか。
◆
王都の貴族区のど真ん中にある派手なお店『シルビア』。
貴族の御用達のお店は、注文を受ければあらゆる物を用意してくれる便利屋の一つだ。
食品から珍しいモノまで、最上階には高級宝石まで売っている大手の商会だ。
俺とギルドマスターは外套を深く被り、商会の裏手側に回る。
案の定、私兵達が裏口を守っている。
小石を反対側に素早く投げ込むと、石がぶつかる音に引っ張られ私兵達の視線がそちらに移る。
その瞬間に俺とギルドマスターが一気に間合いを詰めて、彼らを殴り飛ばす。
すぐに裏口から中に入っていく。
道しるべの地図を利用して迷いのない動きで中を進んでいき、地下へ通じる道を進める。
途中守っている私兵達も難なく殴り飛ばしながら、地下に続いている道を進んで行く。
洞窟のような場所が続き、やがて奥に不思議な紫色が輝いている空間が現れた。
そこには一面に咲いた美しい紫色の花が所狭しと並んでいた。
「間違いない。依存型薬草『デスブリンガー』だ」
多くの人が奴隷堕ちとなる原因。
それが目の前に広がっている花から作られる薬だ。
前世でも医薬として開発されたはずの薬物を、快楽のために使う事で依存症となり大きな社会問題となった。
麻薬と呼ばれるそれらは国をも亡ぼす力を持つと言われる。
いま俺の前に並んでいる紫の花も、それと同じ力を持つ。
少量なら医学的な面で高い効果を持つはずなのに、使用量が違えば劇薬となるはずだ。
その時、後ろから拍手の音が聞こえて来る。
「これはこれは~冒険者ギルドのマスターではありませんか~まさか我々の商会の地下に無断侵入をするとは、大したものです~」
「お前は……! シルビア商会の王都支部長…………フォルダク…………」
「お久しぶりでございます」
優雅な挨拶を披露する彼は、一切油断を見せず、隙一つない。
間違いなく戦闘に長けている人物だ。
「大変失礼ですが、ここはお客様が入って良い場所ではないのですが…………どうやってここが分かったのか、もろもろ聞かないといけませんね」
「そう簡単に聞けるとでも?」
「元Aランク冒険者とはいえ、年齢には抗えないでしょう。ここで私達に勝てるとでも?」
「ふっ。それはどうかな?」
ギルドマスターが一枚の護符を取り出した。
「それは!? や、やめなさい!」
「ふっ。残念だったな!」
マスターが後ろの花畑に目掛けて護符を投げ込むと同時に、焦ったフォルダクが飛びついた。
その隙を見て、俺も全速力で殴りつけた。
しかし、難なく止められて、冷たい視線を俺に刺すと同時に後方が火の海に変わった。
「…………お前達は決して許さん。ここで生きて帰れると思うなよ!」
「さすがにお前でも焦るのか。デスブリンガーは残念だったな。それに俺達はそう簡単にやられないぞ!」
後ろに火の海を背負いフォルダクと数人の暗殺者達との戦いが始まった。
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