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第27話 新しい道
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外の鉄檻の前。
俺と後ろには黒い装束の集団である『リベレイト』達が集まっている。
「奴隷達よ。初めまして。俺はアルマ。本日から君達のオーナーとなった。これから君達の将来について大切な事を伝えなくてはならない。しっかり聞いて欲しい」
そう話すと鉄檻の中の奴隷達全員が鉄檻の入口付近までやってくる。
実は全ての扉は今でも空いたままになっているはずだ。
全員が閉めているという事は、心を閉ざし、現実から目をそらしていると感じてしまう。
彼らが受けた悲惨な現実。
俺が前世で先輩や家族から受けていた事を考えれば、彼らの気持ちが痛いほどに分かる。
死にたくはないが、生きている意味を見失っているのが伝わってくる。
「これから君達には生きてもらう! そのためには、働かないといけない。しかし、ただ働けと言っても難しい人も多いだろう。そのためにこれから君達には――――――奴隷達の礎になってもらいたい」
「い、礎ってどういうことですか!?」
目の前の奴隷が驚いた表情を浮かべて聞いて来た。
彼だけじゃない。ここにいる全員がその言葉の意味を求めて俺に注目している。
それだけで彼らは生きるという意志を感じるには十分だ。
「これからとある事業を始める。君達はそこで働いてもらう。契約の事とか色々あるが、まずは行動で示そうと思う」
リベレイトのみんなが手分けして鉄檻の扉を開いた。
そして――――
「私達は『リベレイト』。貴方達を助けにきました。ここから出て――――――共に歩みましょう」
トレッサが伸ばした手を恐る恐る手に取った奴隷が鉄檻から一歩出る。
彼女の満面の笑みは、彼らに大きな希望となるだろう。
全員を外に出したリベレイト達は、彼らと共にとある場所に向かったもらった。
「さて、シャリーの方がちゃんとできたかな?」
リベレイト達を見送って独り言をつぶやくと、空を美しい赤い鳥が飛んでくる。
【お兄ちゃん! 向こうは完璧だよ~シャリーちゃんの交渉が上手くいったって】
「おお! それは良かった! 早速行こう!」
【あい!】
俺の肩に乗ったクレアと共に走り出す。
久しぶりに外を走るのはとても気持ちが良くて、向かい風がとても心地よい。
奴隷達が一歩前に歩き出したことに、どこか自分が救われた気分になっている。
前世での出来事は、この世界に来ても忘れた事はない。
母さんと過ごしていた時でさえ、優しさが伝わってくる度に、それでも受けた傷は簡単に癒える事はなかった。
だからこそ、彼らの気持ちが痛いほど伝わってくる。
勇気を出して一歩前に歩き出す彼らの姿が、俺に勇気をくれた気がした。
道を走り抜けてたどり着いたのは――――――俺達が愛用している洋食店『猫ノ手』である。
「アルマ様! いらっしゃいませ」
可愛らしい猫耳族の店員ソリューちゃんが出迎えてくれた。
「こちらにどうぞ」
案内されて洋食屋の中に入ると、店主のガイルさんとシャリーとルークが待っていてくれた。
「此度はこちらの申し出を受け入れてくださってありがとうござます」
「いや、俺も困っている獣人族を救いたいと思ってはいた。でも俺に出来る事はなにもなかったが…………こうして彼らのためになれるなら、力になりたいと思っていた。だから、こちらこそありがとう」
ガイルさんと握手を交わす。
彼の熱い想いが手に伝わってくる。
俺達はその足で店を後にして、とある場所に向かった。
◆
「アルマさん~こちらです~!」
こちらに向かって笑顔で元気に手を振っているのは、可愛らしい犬耳の獣人族の女の子だ。
「あれ!? トレッサって獣人族だったのか!?」
「そうですよ? 気づきませんでしたか?」
「ああ……あの帽子にはそういう効果があったのか……」
「いえ、ありませんよ?」
「なん……だと…………」
彼女と戦った事もあるのに、可愛らしい犬耳に全く気付かなかったし、何なら腰の後ろに尻尾まで見える。
尻尾。
そう。尻尾。
そうか。獣人族って尻尾があるのが当然か。
ふと一緒に来たソリューちゃんを見ると、可愛らしい猫の尻尾が生えている。
それに気づかなかった自分に、無性に腹が立つ!
「アルマさん? 変な顔になっておりますよ?」
「へ? こほん。ひとまず、例の大先生を連れてきたよ」
「ありがとうございます。初めまして。私はトレッサと申します」
「私はソリューと申します。でも多分大先生はこちらのガイルさんだと思いますよ?」
「へ!? し、失礼しました!」
トレッサの意外なドジっぷりに周囲から大きな笑い声が響いた。
「俺はガイル。料理人をしている。こうしてみんなの力になれるのを嬉しく思う」
「はいっ! よろしくお願いいたします!」
二人が握手を交わして遂に役者がそろった。
「みなさん! これから――――――――レストラン『スザク』のために頑張って生きましょう!」
トレッサの掛け声と共に、すっかり綺麗になったみんなが大きな声をあげた。
俺と後ろには黒い装束の集団である『リベレイト』達が集まっている。
「奴隷達よ。初めまして。俺はアルマ。本日から君達のオーナーとなった。これから君達の将来について大切な事を伝えなくてはならない。しっかり聞いて欲しい」
そう話すと鉄檻の中の奴隷達全員が鉄檻の入口付近までやってくる。
実は全ての扉は今でも空いたままになっているはずだ。
全員が閉めているという事は、心を閉ざし、現実から目をそらしていると感じてしまう。
彼らが受けた悲惨な現実。
俺が前世で先輩や家族から受けていた事を考えれば、彼らの気持ちが痛いほどに分かる。
死にたくはないが、生きている意味を見失っているのが伝わってくる。
「これから君達には生きてもらう! そのためには、働かないといけない。しかし、ただ働けと言っても難しい人も多いだろう。そのためにこれから君達には――――――奴隷達の礎になってもらいたい」
「い、礎ってどういうことですか!?」
目の前の奴隷が驚いた表情を浮かべて聞いて来た。
彼だけじゃない。ここにいる全員がその言葉の意味を求めて俺に注目している。
それだけで彼らは生きるという意志を感じるには十分だ。
「これからとある事業を始める。君達はそこで働いてもらう。契約の事とか色々あるが、まずは行動で示そうと思う」
リベレイトのみんなが手分けして鉄檻の扉を開いた。
そして――――
「私達は『リベレイト』。貴方達を助けにきました。ここから出て――――――共に歩みましょう」
トレッサが伸ばした手を恐る恐る手に取った奴隷が鉄檻から一歩出る。
彼女の満面の笑みは、彼らに大きな希望となるだろう。
全員を外に出したリベレイト達は、彼らと共にとある場所に向かったもらった。
「さて、シャリーの方がちゃんとできたかな?」
リベレイト達を見送って独り言をつぶやくと、空を美しい赤い鳥が飛んでくる。
【お兄ちゃん! 向こうは完璧だよ~シャリーちゃんの交渉が上手くいったって】
「おお! それは良かった! 早速行こう!」
【あい!】
俺の肩に乗ったクレアと共に走り出す。
久しぶりに外を走るのはとても気持ちが良くて、向かい風がとても心地よい。
奴隷達が一歩前に歩き出したことに、どこか自分が救われた気分になっている。
前世での出来事は、この世界に来ても忘れた事はない。
母さんと過ごしていた時でさえ、優しさが伝わってくる度に、それでも受けた傷は簡単に癒える事はなかった。
だからこそ、彼らの気持ちが痛いほど伝わってくる。
勇気を出して一歩前に歩き出す彼らの姿が、俺に勇気をくれた気がした。
道を走り抜けてたどり着いたのは――――――俺達が愛用している洋食店『猫ノ手』である。
「アルマ様! いらっしゃいませ」
可愛らしい猫耳族の店員ソリューちゃんが出迎えてくれた。
「こちらにどうぞ」
案内されて洋食屋の中に入ると、店主のガイルさんとシャリーとルークが待っていてくれた。
「此度はこちらの申し出を受け入れてくださってありがとうござます」
「いや、俺も困っている獣人族を救いたいと思ってはいた。でも俺に出来る事はなにもなかったが…………こうして彼らのためになれるなら、力になりたいと思っていた。だから、こちらこそありがとう」
ガイルさんと握手を交わす。
彼の熱い想いが手に伝わってくる。
俺達はその足で店を後にして、とある場所に向かった。
◆
「アルマさん~こちらです~!」
こちらに向かって笑顔で元気に手を振っているのは、可愛らしい犬耳の獣人族の女の子だ。
「あれ!? トレッサって獣人族だったのか!?」
「そうですよ? 気づきませんでしたか?」
「ああ……あの帽子にはそういう効果があったのか……」
「いえ、ありませんよ?」
「なん……だと…………」
彼女と戦った事もあるのに、可愛らしい犬耳に全く気付かなかったし、何なら腰の後ろに尻尾まで見える。
尻尾。
そう。尻尾。
そうか。獣人族って尻尾があるのが当然か。
ふと一緒に来たソリューちゃんを見ると、可愛らしい猫の尻尾が生えている。
それに気づかなかった自分に、無性に腹が立つ!
「アルマさん? 変な顔になっておりますよ?」
「へ? こほん。ひとまず、例の大先生を連れてきたよ」
「ありがとうございます。初めまして。私はトレッサと申します」
「私はソリューと申します。でも多分大先生はこちらのガイルさんだと思いますよ?」
「へ!? し、失礼しました!」
トレッサの意外なドジっぷりに周囲から大きな笑い声が響いた。
「俺はガイル。料理人をしている。こうしてみんなの力になれるのを嬉しく思う」
「はいっ! よろしくお願いいたします!」
二人が握手を交わして遂に役者がそろった。
「みなさん! これから――――――――レストラン『スザク』のために頑張って生きましょう!」
トレッサの掛け声と共に、すっかり綺麗になったみんなが大きな声をあげた。
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