神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。

文字の大きさ
上 下
25 / 48

第25話 粛清

しおりを挟む
「ほぉ。その件、詳しく聞かせてもらいましょうか。ドスグ殿」

 廊下に響く冷たい声。

 一斉にみんなの視線が廊下の遥か先から声を響かせた張本人に向く。

 美しい金色の髪と冷たい瞳がドスグを睨んでいた。

「あ、貴方様は!?」

 ゆっくりと一歩ずつこちらに近づいてくる。

 夜の明かりを受けても光り輝く純白な鎧とマント。

 そこにはアルハマラン王国の紋様が美しく描かれていた。

「なんの騒ぎかと思って来てみれば、面白い事が起きていたようだな。それはそうと、さっきの話を詳しく聞かせてもらおうか? 奴隷達を騙したというのは?」

「ひい!? い、いえ! そ、それは、ち、違う……」

「ふむ。ドスグ殿に後ろめたさは全くないんだな?」

「もももも、もちろんですとも!」

「じゃあ、屋敷を調べさせてもらっても問題あるまいな?」

「!? か、か、かしこまり……ました…………」

 分かりやすく意気消沈する豚は、その場で座り込んだ。

「ア~シツムシツノ~ホンダナガ~」

「!? お、お前は何を言い出すんだ!」

「へ? いえ、俺はただ独り言を言ってみただけです」

「怪しい事を言うんじゃない!」

「別に怪しい事は何も言っていませんよ? ただ執務室と本棚が~としか」

「それは怪しいというモノじゃ!」

 この豚…………分かりやすいな~。

 俺達のやり取りを見ていた美形の彼は、小さく笑みを浮かべて俺達を通り抜ける。

 恐らくそのまま執務室に向かうのだろう。

「べ、ベルハルト様!? ど、どちらに!?」

「自由に調べてもいいのだろ? ドスグ殿の執務室にな」

「ま、待ってくだされ~!」

 次の瞬間、廊下の奥から現れた無数の兵士達が俺達を囲む。

「全員動くな! この一件が終わるまで動く事は許さん!」

 あとから現れた緑色のマントを着用したイケメンが声を上げる。

 俺と私兵はすかさず両手を上げる。

 彼らは王国正規軍で、彼らの介入により今回の奴隷市場は幕を閉じた。



 ◆



「さて、アルマくんと言ったな?」

「はい。アルマです」

「君のおかげでドスグの悪事を全て暴く事が出来た。陛下に代わり感謝を伝えよう。ありがとう」

「いえいえ~こちらこそ、助かりました。あの時、来てくださらないとどうなった事やら……」

 ドスグの執務室に集まった俺と騎士ベルハルト様、その横にソワソワしているシャリーやギルドマスターがいる。

「思っていた以上に黒かったんですか?」

「ああ。想像以上だった。とてもじゃないがドスグ一人でやったとは思えん」

「でしょうね。まぁ、そっちも近々……」

「…………これ以上は何も話すまい。それはそうと、今回の功労者であるアルマくんには報酬がある。何か欲しいモノはあるかい?」

「ええ。ドスグが持っていた全ての奴隷達の権利と、俺が捕まえた黒い装束の人達の権利をください」

「それはいくらなんでも無茶苦茶では?」

 美男子とはいえ、その目は上に立つ者として、威圧感が凄まじい。

 普通の人なら睨まれただけで立つことも出来なさそうだ。

「そもそも黒い装束の人達の事がバレると国としても良くないのでは? なかった事にするだけですよ?」

「…………」

「ですから報酬として奴隷達の権利をください。あ~外の奴隷達だけで構いません。ベルハルト様が鑑賞奴隷を欲していたとは思いもしませんでした」

「――――――くっくっ、あーははは!」

 美男子の美しい金髪が揺れ動く。

 笑うだけで絵になるってズルいっ!

「まさかここまで交渉上手だとはな。俺の負けだ。アルマくんの提案を全て飲もう。ただし、一つだけ伝えておこう」

「どうぞ?」

「奴隷達を蔑ろにした場合、俺は君を一生許さないだろう」

「それはもう。ただ、そういう気持ちがあるなら、二度とああいう風にならないように頑張ってください」

「……それもそうだな」

「それと、メイドさんは引き渡します」

「………………どこまで知っている?」

「全く分かりません。ただそういう・・・・人なんだろうなと思っただけです」

「…………分かった。感謝する」

 ベルハルト様と握手を交わす。

 部屋を後にしたベルハルト様を見て、ギルドマスターが大きな溜息を吐く。

「マスター? 黒い装束の人達の正体は知ってるんですか?」

「いや。正確には知らないが、聞いた事はある。恐らくだが、奴隷を解放する力を持った集団――――――『リベレイト』という集団だと思われる」

 リベレイト……か。覚えておこう。

「では彼女達と話し合ってみましょうか」

「…………よろしく頼む」

 ギルドマスターに頼まれるのも不思議だが、奴隷問題で悩んでいる人は俺が思っていた以上に多い。彼もまたその一人だという事だ。もちろん、ベルハルト様も、王国もね。

 執務室を後にして、彼女達を捕まえている部屋に向かった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...