神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。

文字の大きさ
上 下
13 / 48

第13話 受けてもらえない依頼

しおりを挟む
「アルマくん~ここの掲示板から欲しい依頼書をとって、受付に持って行くと依頼を受けられるよ~」

 シャリーが次に案内してくれた場所は掲示板だ。

 ここから依頼を受ける事ができるのか。

 乱雑に掛けられていると思いきや、綺麗な並びで紙が掲示板に並んでいた。

 紙には目的の絵が描かれていて、その下に説明や金額、期間などが書かれている。

 絵も以外と鮮明に描かれていて、魔物はともかくとして素材類は非常に分かりやすい。

「それとCランク冒険者から一般依頼ではなく、上位依頼と呼ばれているモノは、あの2階にあるんだ。黄色プレートからしか2階には上がれないから注意ね。と言っても、アルマくんはもう上がれるけどね」

 冒険者ギルドに入って一番先に目立っていた2階の吹き抜け部分か。

 少し興味はあるけど、冒険者としてまだ駆け出しなので、暫くは下で経験を積もうか。

 と、みんなで良さげな依頼のために掲示板を眺めていると、後方から大きな声が聞こえてきた。

「どうしても必要なんだ! お金に糸目は付けない! 頼む!」

 少し気になってちらっと見ると、ミールさんに何かを懸命に訴えている、細身で眼鏡をかけた若い男性だ。

 何を言っているのかは分からないけれど、随分と困った表情を浮かべるミールさんを一緒に見ていたシャリーが気になるようだ。

 シャリーは冒険者の仲間はいないため、普段は依頼を受けるくらいしかしないけど、冒険者ギルドで唯一仲良く話せるのはミールさんだけだという。

 気さくな彼女はギルド内でもかなり人気だという。

 それも相まって、ギルド内の冒険者達から殺気めいた視線が男に送られる。

 しかし、それに気づくことなく、何かを訴え続けた。

「アルマくん。ミールさんが困ってそうなので、話してくるね?」

「ああ」

 シャリーは急いで男の隣に立った。

「あんた! 受付嬢が困っているでしょう! あまり無茶な事は言わないで!」

「な、なんだ!? ん? 黄色という事は、君はCランク冒険者だな! 頼みがある! 取って来て貰いたい植物があるんだ!」

「ビゼルさん。その依頼は冒険者ギルドとして受けるわけにはいきません。シャリーさんも受けちゃダメですよ」

 男の名前はビゼルと言うみたいだな。

「頼む! 研究のためにどうしても必要なんだ! 金貨を一枚払おう!」

 金貨を支払えるのだから、間違いなく貴族だと思われる。百万円相当をポンと出せるんだからな。

 身なりからしても、高級そうな衣服だ。

「えっと……金貨依頼なのに断るんですか?」

 シャリーの疑問はもっともでそもそも金貨程の利益を出せる依頼なんだから、受け手も多いだろうに。

 ミールさんが大きな溜息を吐いた。

「あのね。いくら高い額とはいえ、聖なるアルキバガン森の深部にある植物を取りに行くのはダメよ。あの深部に向かって帰って来た人間なんていないんだから、冒険者ギルドでは誰も行かせないと決めているの」

 アルキバガン森の深部。

 その言葉に、以前母さんが言っていた事を思い出す。

 俺達が生まれたのは深部にある世界樹という高い樹木の頂なのだが、その下には強力な魔物が住んでいるらしい。俺達が生まれて数か月でその場所を離れて、少し獲物が多いと言っていた場所で母さんの狩りを見ながら育った俺達。

 実際深部にどの魔物が出て来るかは分からないけど、15歳になるまでも母さんからは絶対に入らないように言われていた。

「はぁ…………メガル草は十年前ならたまに深部の手前からでも取れてたけど、何故か十年前からぴったり取れなくなって、需要のある植物だからここまで高騰を続けているの」

 メガル草……十年前…………?

「それは私も聞いてます。手のひらサイズで多くのポーションを作れるし、色んな錬金術で使われているとか?」

「ええ。ここにいらっしゃるビゼルさんは凄腕錬金術師の一人であり、今まで多くの命を救った錬金術師なの。でも――――メガル草を取りに行って命を亡くす冒険者が後を絶たないから依頼はもう受けないんです。ビゼルさん」

「し、知っている! だが画期的な品が目の前なんだ! もしこれが完成すれば、従来のポーションよりも二倍の効果を持った超濃厚ポーションを作れるかも知れないのだ!」

「それは私達も応援したいのは山々なんですけど…………ギルドマスターの指示ですので…………」

「そこを何とかしてもらいたい! ギルドマスターに私から直接話そう!」

 最初はただ無理難題の難癖をつけてくる客だと思ったら、なんと英雄扱いされている錬金術師との事だ。

 それにしても魔法があるのは凄い世界だなと思ったら錬金術というのもあるのか。錬金術がどういうモノなのか興味が出てきた。

 メガル草くらい・・・山ほどあるから、一つ売るからお願いしてみようか。

「あの~」

 三人が一斉に俺に注目する。

「そのメガル草とやらを売ってあげますので、錬金術を見せて貰えますか?」

「「「!?」」」

 血相を変えて俺の手を握ってくるビゼルさんは、先ほどとは違う意味で目をキラキラさせていた。

「何でもする! 頼む! 売ってくれ!」

「いいですよ? 錬金術さえ見せて貰えるなら」

「さあ、ここでは何だから俺の工房に行こう」

 ビゼルさんに手を引っ張られ、冒険者ギルドから出る事になった。





 まさか…………十年前からあの森の全ての植物を回収し続けていたのが、こういう事になっているとは思いもしなかった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...