神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。

文字の大きさ
上 下
6 / 48

第6話 平原の怪しい魔物使い?

しおりを挟む
 アルキバガン森を抜け、目の前に広がる平原を駆け巡る。

 近くには大きな街が見えていて、遠目からでも活気溢れる街なのが分かる程だ。

 もう一つ気になるのは、街の大きさ。

 俺が思っていた街とはまるで違う街並みで、一番奥の高台の部分に巨大なお城があり、そこを城壁が囲って、美しい家々が並んで、そこをまた城壁が囲っているという不思議な構造の街だ。

 壁も真っ白な色に染まっているが、お城の空高く聳え立つ屋根は明るい赤色に塗られていて、街全体が赤と白の色で調和されたとても美しい街となっている。

 どこか――――母さんを思わせるのは、街がとんでもない大きさで広がっているからかも知れない。

 森の中には魔物が大勢いるのに、平原には魔物らしい魔物が全く見当たらない。

 何となく周囲を歩き回っている赤白の鎧を着た兵士さん達が倒しているのではないかと思う。

 前世でもあったけど、こうして治安を維持するのはその国が豊かである事を示している。

 母さんからあまり人前では力を見せびらかすのは、やめておいた方が良いとアドバイスを貰ったので、平原は走らず、のんびりと歩いていく。

 前世の会社でも仕事ができる人はすぐに先輩からこき使われていたし、女性からアプローチを受けるものならとことん嫌味な事を押し付けられていた。

 それを考えれば、やっぱり自分の力をあまり見せびらかすのは良くないかもな。

 この世界がどのくらいの基準で強さを有しているかは、今の俺には分からない。

 だが前世の自分と今の自分を比べるととんでもない差がある。それを鑑みて、今の世界での自分が“普通”から掛け離れているかも知れないと思っておくべきだ。

 ゆっくり歩いていると、俺を見かけた兵士達が真っ先にこちらに向かって走ってくる。

 周囲に俺達以外の気配がないので、間違いなくその目的が俺達である事は明白だ。

 ただ歩いているはずなのにどうしてだ…………?

「止まれ!」

 一番前の兵士が俺に向かって声を上げる。

 念のため、周囲を見回して俺達以外誰もいない事を確認して、その場に止まって兵士を見つめる。

「あの~俺に何か御用ですか?」

「すまぬが、冒険者プレートを見せて貰ってもよいか?」

 冒険者プレート?

 もちろん――――持っているはずもない。

「すいません。そのようなモノは持っていないのですが」

「なに!? 冒険者ではないのか?」

「はい。えっと、田舎・・から出てきたので、こちらの街には初めて来ます」

 そう答えても兵士は怪しそうに思うかのような視線をこちらに向け続ける。

 俺ってそんなに怪しいのか?

「すまないが、その肩に乗せている魔物・・は、どうして『従魔の輪』を付けていないのだ?」

「ま、魔物!?」

 もしかして俺の妹と弟を見て、魔物と言うのか!?

「ん? どう見ても魔物だろう? 君は『魔物使い』なのだろう?」

 ダメだ。母さんから世界の現状――――国などは聞いていたが、こういう細かい話は聞いていないので、さっぱり話が通じない。

【私達が魔物ですって!?】

 案の定、妹が怒りだす。

 無理もない。神獣は魔物とは天と地ほどの差がある。単純に人を猿と比較するくらいには差があるはずだ。

「すいません。少しだけ待ってもらえますか?」

「うむ?」

 俺は兵士達から背を向けて、小さい声で怒っている妹達に声をかける。

「クレア。ルーク。いいかい? もしかしたら人族って神獣を見分ける事ができないかも知れない。だから君達を魔物と勘違いしてしまうかも。例えばさ、人族って猿っぽいでしょう?」

【うん~猿と人族って違うの?】

「ほら。凄く違うんだよ。だからね。間違えられても仕方ないと考えよう?」

【分かった!】

 どうやらふたりとも納得してくれたみたいで良かった。

 もう一度振り向いて兵士達と顔を合わせる。

 その時。

 後ろから猛スピードでこちらに走ってくる人が一人。

 遠くからでも土煙が上がるのが見える程で、周りの兵士達もざわつき始める。

 こちらにやってくるのをただ眺めていると、あっという間にこちらにやってきたのは、赤い髪をなびかせた美少女だった。

 前世の感覚からすると、テレビとかに出て来るようなアイドルと言っても過言ではないくらい美人で、肌は綺麗だし、スタイルもいいし、顔も整っている。

 もしかして異世界人ってみんなこんなに綺麗なのか?

 周りの兵士達の反応を見る感じ、彼女の美貌にうっとりしている感じがするから、もしかしたらみんなではないかもな。

「あ、あの~!」

 思ったよりも大きな声で、元気いっぱいの声だ。

「遅くなってごめんね~!」

 と言いながら、俺に近づいてきた彼女は俺の右腕に抱き着いた。

 女の子特有の柔らかい感覚が右腕から伝わってくる。

「あ、ああ」

「ん? 君は?」

「はいはい~ランク冒険者のシャリーです! ほら、冒険者プレートです。こちらは私の故郷の子で、都を案内しようと連れてきたんですけど、途中ではぐれてしまって~」

「確かに黄色いプレートだな。はぐれないようにな」

「は~い。ありがとう~」

 手際よく兵士を巻いた女の子が遠ざかる兵士達に向かって手を振る。

 元気いっぱいの笑みに兵士達もちらちらこちらを見ては手を振った。

 やっぱり美人というだけで武器にはなるが、兵士達はそれでいいのか?

 兵士達がある程度遠ざかると、女の子が俺達に向かって満面の笑みを向けてきた。

「初めまして! 私はシャリー。貴方は?」

 彼女はそう名乗った。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

第3次パワフル転生野球大戦ACE

青空顎門
ファンタジー
宇宙の崩壊と共に、別宇宙の神々によって魂の選別(ドラフト)が行われた。 野球ゲームの育成モードで遊ぶことしか趣味がなかった底辺労働者の男は、野球によって世界の覇権が決定される宇宙へと記憶を保ったまま転生させられる。 その宇宙の神は、自分の趣味を優先して伝説的大リーガーの魂をかき集めた後で、国家間のバランスが完全崩壊する未来しかないことに気づいて焦っていた。野球狂いのその神は、世界の均衡を保つため、ステータスのマニュアル操作などの特典を主人公に与えて送り出したのだが……。 果たして運動不足の野球ゲーマーは、マニュアル育成の力で世界最強のベースボールチームに打ち勝つことができるのか!? ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...