山に登ったら巫女少女と出会ったので遊ぶことにしました

榊空

文字の大きさ
上 下
75 / 92

75

しおりを挟む

 ピザを食べた青藍たちは満足そうにお腹をさすり、幸せそうな顔でピザを食べ終える。


「美味しかった。満足」

「美味しかったのだ。静人もちゃんと食べたのだ?」

「もちろん僕も食べたよ。正直、茜さんのとどこが違うのか分からないくらいには、上手にできてたと思うよ。すごいねもみじちゃん」

「ホント? えへへー、良かった」


 皆からの素直な誉め言葉に照れくさそうに頬をかくもみじだったが、その後ろで茜が戦々恐々とした顔で慄いていた。


「ぴ、ピザの技量まで負けるとあたしの立つ瀬が……。頑張らないと!」

「茜はピザがなくても力持ちっていう個性があるやん」

「確かに! それならいっかー。いいんですかね?」

「ええんやない? なんだかんだでみんないろいろ出来るんやけど、力持ちは茜しかおらんし」


 みどりの言葉に一瞬だけ安心した顔をする茜だったが、すぐに不安そうな顔になる。そんな茜に対して軽い調子で頷く。そんなみどりを見てほっと息を吐いた後に拳を握り締めてやる気を見せる。


「なら、もっといろいろ力が発揮できる場所見つけないと。でも、他に力が必要な物ってあります?」

「なかなかないやろなぁ。でも、畑作るんやし。農作業は力が必要な場面多いからその時でいいんやない?」

「畑かー。畑って難しいイメージあるんですけど」

「まぁ、コツコツと地道に繰り返していけば大丈夫やろ。うちも作ったことないし、そこらへんは本とかで調べながら手探りやな」


 さすがにみどりもそこまでは知識にないのか、若干投げやりな態度だったが、茜は自分にとって得意なことだからとさらにやる気を見せる。


「体動かす系なら地道にやるの得意ですから頑張ります。たまにはみどりさんも手伝ってくださいね?」

「えー? うちが体動かすの得意やないって茜は知っとるやろ?」


 みどりは茜からの手伝いの要請にめんどくさそうな顔を隠そうともしない。茜はそんなみどりの態度に怒った様子を見せることなく、単純に体の心配をしていた。


「知ってますけど。だからって一切体を動かさないって言うのはダメですよ」

「ブーブー、うーん。まぁたまにならええか」

「そうですね。私たちは別に体が衰えることもないですし。気分転換でやるくらいでいいですよ。私の仕事がなくなってしまいそうですし」

「そこまでは頑張るつもりないけどな。まぁ、畑をどのぐらい大きくするかでも変わると思うけど」


 少しぐらいならいいかと請け負うみどりだったが、規模をどれくらいまで広げるかをまだ決めてなかったと考え込む。


「そこまで大きくしたところで私一人じゃあ世話しきれないでしょうしねー」

「小さすぎたらうちの所で買い取れなくなるんよな。まぁ、一応桔梗にも手伝わせる予定やし大きくても大丈夫やろ」

「あれ、作った野菜うちで買い取るんです? それってあたし時間外労働では?」


 作った野菜をどうするかを知らなかった茜はみどりの言葉に目を瞬かせる。そんな茜から目を逸らすみどりは少し言葉に詰まった後に口を開く。相変わらず顔をそむけたままだ。


「まぁ、うん。頑張ってや」

「あれ? そこは否定するところでは!?」

「いや、否定できる要素が見当たらなくってな? まぁ、そこら辺の給料は上げるさかい。それで堪忍してや」


 給料を増やすと言われた茜は喜ぶ様子を少しも見せずに、むしろげんなりした様子で肩を落とす。


「給料増えても使うところがないんですよねー」

「まぁ、買いたいものなかったらお金たまる一方やしな」

「そうなんですよー! 服とかも買うけど一着買うとしばらく着ちゃうから。新しく買うのも結構先になっちゃうし」


 茜はお気に入りの服をたくさん買って着まわすからか、一度にお金を消費するが、そのあとからはまたお気に入りの服が見つかるまでほとんど何も買わないみたいだ。そのことを知っているみどりは呆れた口調で首を振る。


「別に一張羅にする必要もないのに。お気に入りの服だけをたくさん買うから先になるんやろ?」

「いやー、好きな服だけ着ていたいのでそれだけになっちゃうんですよ」

「毎日同じ服やさかい。たまに不安になるんよな」


 お気に入りの服が一種類だけの場合は、その服だけになるので出会うたびに同じ洋服を見ることになる。茜はそんなみどりに首を傾げる。


「ちゃんと洗濯してますよ?」

「それは分かるんやけどな? お店の制服ならまだしも、私服が毎日一緒なんはなぁ」

「綺麗なので大丈夫なんです! というかそれを言ったらもみじちゃん達もずっと同じ巫女服じゃないですか」


 みどりはもみじ達のほうをちらっと見てから口を開く。


「あの巫女服は汚れないようになっとるしなぁ。というか、巫女服はうちの制服のようなもんやろ」

「なんて便利な。私たちにはあーいうの作れないんですか?」

「作れんことは無いんやけど、この世界でしか使えんで? もみじ達もこの世界じゃなくて、静人さんの家に行った時は普通の洋服着とったやろ?」

「確かに。え、あれってそういう意味で着ていたんですか?」


 もみじ達の巫女服はこの世界においてのみ綺麗なまま保存できる。だからこそもみじ達もいつも同じ服を着ている。


「せやよ。まぁ、せっかく外に出るんやし、選んでもらった洋服着て行った方が喜ぶっていう意味もあったけどな?」

「そうだったんですね。ちなみになんですけどあの巫女服を着て外に出た場合どうなるんですか?」

「うーん、しばらくは何ともないんやけど、少しずつ崩れていく感じやな。まぁ、またこっちに戻ってきたら修復するんやけど」

「しゅ、修復機能までついてるんですか……。こっちで畑仕事する時用に作ってもらえませんか?」

「ええよー。デザインはどないする? うちが考えよか?」

「そうですねー。お願いしてもいいですか?」

「その話私も混ぜてもらっていいかしら?」


 みどりは唐突に話に入ってくるかなでのほうを向き呆れたような声を出す。そこには今までずっとお酒を飲み続けていたはずのかなでがいつものように立っていた。呂律がおかしくなっていることもなく、ふらふらしている様子も無く素面と言われても信じられるほどだ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

「今日でやめます」

悠里
ライト文芸
ウエブデザイン会社勤務。二十七才。 ある日突然届いた、祖母からのメッセージは。 「もうすぐ死ぬみたい」 ――――幼い頃に過ごした田舎に、戻ることを決めた。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

古屋さんバイト辞めるって

四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。 読んでくださりありがとうございました。 「古屋さんバイト辞めるって」  おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。  学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。  バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……  こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか? 表紙の画像はフリー素材サイトの https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...