51 / 92
51
しおりを挟む朝食を食べ終えた静人達がまったりと過ごしていると家にチャイムが鳴り響いた。二人で向かうとそこには大きな荷物を地面に置いて手を挙げているみどりの姿があった。
「今日はもみじ達の晴れ着持って来たで」
「え、もう出来たの!?」
「うちの所のは優秀やさかい。このぐらいの時間があればいけるんよ」
「無茶しちゃったりしてない?」
「あはー、まぁ、多少は急かしたけどな? いつも暇そうにしとるからたまにはええんよ」
「あんまり酷いことしちゃだめよ? あれ、仮縫いとかしなくていいの? サイズが違ったりしたら大変なことになるんじゃないかな?」
「大丈夫やよ。もみじ達がいつも着てる巫女服を借りたさかい。そこまでサイズが違うということは無いはずや」
「それならいいけど」
もみじ達の晴れ着を持ってきたことでかなでが驚いていると、そんなかなでを見てみどりは心配は不要だと言わんばかりの顔をして首を横に振り笑う。その様子を見てかなでは安心した様子を見せる。
「今日までに間に合わせんといかんかなと思ってな。大晦日やし。そういえば今日は久しぶりにそば食べるんやったな。けどそれだけで青藍たちが納得するやろか?」
「確かに。そこんとこどうするのしず君?」
「今のところ考えてるのは何かしらのお肉を焼くか魚を焼くことなんだけど。今のところはこれと言って決めてないよ」
「そうなんか。それならケーキ、と言っても普通のケーキやなくてちょっと特別なケーキを用意するのはどない?」
「特別なケーキってなーに?」
みどりの提案に不思議そうな顔をするかなでを見て、みどりは思案顔でしばらく黙った後口を開いた。
「そやなぁ。ブッシュドノエルとかティラミス。まぁ時期が外れとる気がするけど、そんな感じのいつものとは違うのが目に見えて分かるケーキのことや」
「あー、たしかにこの前のもショートケーキとかチョコケーキとかだけで、そういうのは買ってなかったですね」
「それならタルトとかもいいんじゃないかしら!」
「モンブランとかもええと思うで?」
「いや、まぁ、確かにデザートが一番手っ取り早い気はするんですけどね? 正月にこちらに呼ぶときもお菓子作りするって言ってなかったですか?」
「あ、でもほらそれは明日から一日一個はお菓子が出るような気がするし。それが一日早くなるだけだよ、うん。それにこういうのも作れるってわかるとやる気につながると思うの!」
「かなでが食べたいだけとかじゃないならいいけどね?」
「そ、それだけじゃないわよ? いや、まぁもみじちゃんの手作りは食べたいなとは思うけど!」
静人のジトっとした目と共に放たれた言葉にうろたえるかなで、それを見て呆れながらも笑みを見せる静人。
「それはまぁいいけど。うん。あ、みどりさんは今日は何時ぐらいまで大丈夫なんですか?」
「おん? あー、ちょっと仕事があるからなぁ。さすがに今日はこれ渡すだけで帰らんないかんのよ。夕方には来れると思うから夕飯はよろしゅうな?」
「あはは、分かりました。少し大きめなエビを買いましたから楽しみにしててください。それ以外は市販品ですけどね?」
「あはー、楽しみにしとくわ。それじゃあまた」
「ばいばーい。あ、タルトとモンブランってこの前みどりちゃんがおすすめしてたケーキ屋さんで売ってるかな?」
「売っとると思うよ。おすすめ品にはそのまま今日のおすすめって書いてあるからそれを買うのがおすすめや。名前は覚えとる?」
「大丈夫!」
お店の名前はしっかりと覚えてると頷いたかなでを見てみどりが笑みを見せる。そのあとも少しだけ話した後、忙しいのか少し急いだ様子でみどりが帰っていくのを二人で見送る。
「それじゃあそのお店に行こうか、しず君!」
「お店の名前は知ってるけど場所は知ってるの?」
「大丈夫この前みどりちゃんが持ってきてた袋に住所も載ってたから!」
「そっか。それならそこに行こうか」
「ええ、この前食べたのも美味しかったし楽しみね!」
二人はのんびりと会話を交わしながら目的地に出かける準備を始める。みどりと話していたケーキを楽しみにしているのか準備を進める手も早く嬉しさを隠しきれていない様子だった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
私と継母の極めて平凡な日常
当麻月菜
ライト文芸
ある日突然、父が再婚した。そして再婚後、たった三ヶ月で失踪した。
残されたのは私、橋坂由依(高校二年生)と、継母の琴子さん(32歳のキャリアウーマン)の二人。
「ああ、この人も出て行くんだろうな。私にどれだけ自分が不幸かをぶちまけて」
そう思って覚悟もしたけれど、彼女は出て行かなかった。
そうして始まった継母と私の二人だけの日々は、とても淡々としていながら酷く穏やかで、極めて平凡なものでした。
※他のサイトにも重複投稿しています。

UNNAMED
筆名
ライト文芸
「——彼女は、この紛い物のみたいな僕の人生に現れた、たった一つの光なんです!——」
「——君はね、私にはなーんの影響も及ぼさない。でも、そこが君の良さだよ!——」
自身への影響を第一に考える二人が出会ったのは、まるで絵に書いたような理想のパートナーだった。
紛い物の日々と作り物の事実を求めて、二人の関係は発展してゆく——
これはtrueENDを目指す、世にありふれた物語。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる