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しおりを挟むゆっくりとした時間を過ごしていた静人に慌てた様子のかなでが新聞紙を片手に走ってくる。
「しず君しず君大変!」
「どうしたんだい? そんなに慌てて」
「次に着てもらう洋服のこと考えてたんだけど……。いつの間にかクリスマス終わってたわ!」
「あー、いや、まぁ、いつもそこまで気にしてないイベントだったからね。どうしていきなり?」
「確かに今まで祝ってなかったけど! 今回はもみじちゃん達がいたじゃない! 勿体ないことしたわ。サンタとかトナカイとかの洋服着てもらいたかったのに」
「あ、自分がやるわけじゃないんだね。うーん、正月は晴れ着でも来てもらうかい?」
自分たちが着るわけではないと安心した様子の静人にため息をつきながらかなでが頷く。
「さすがにこの年で着るのはねー。あ! でも晴れ着は一緒に着たいわね。どうしましょうかしら。さすがに晴れ着は作れないわよね」
「まぁ、さすがにあれを作るのは骨が折れそうだよね」
「そうよね。みどりちゃんに頼めば案外いけるかもしれないけど」
「あー、それならいけるかもしれないね。でも、晴れ着を着てもらっても写真には写せないからね」
「そっか……、そういえば写真は苦手だったわね。はっ、絵に描いてもらうのはどうかしら!」
「いや、誰に描いてもらうのさ。諦めて脳内保存で我慢しなさい」
「うー、まぁそうね。我慢しないとね。……しず君描けたり?」
「いやさすがに無理かな。かけても風景画ぐらいかな?」
「あ、風景画は描けるのね。しょうがない、脳内保存で我慢しましょうか。とりあえず明日の予定としてはみどりちゃんに晴れ着の話をしましょうか」
「そうだね、作れるなら作ってもらったほうがいいね。それなら来年用にサンタとかトナカイも作っておくかい?」
「うーん。結局いろんなものを着てもらいたいしね。いろんな洋服作ってもらおうかしら」
「ただのコスプレになりそうだ。嫌がることはしないようにね?」
「大丈夫。もみじちゃんなら何でも着てくれると思う!」
「まぁ、うん。青藍ちゃんと桔梗ちゃんは着てくれなさそうだよね。意外にみどりさんはノリノリでやりそうだけど」
「みどりちゃんがしたら桔梗ちゃんもしてくれそう。みんながしたら青藍ちゃんもしてくれそうね」
「というか、何を着させるつもりなんだい?」
「ゴスロリとか? 何を着させてもみんな可愛い気がするのよね。というか着てもらっても次の日にはいつもの服装に戻ってるのが残念なんだけどね」
「大事にしてくれてるってことなんじゃないかな」
「大事にしてもらえるのは嬉しいけど、どうせならどんどん着てほしいわ」
「言っても言った時だけしか着てくれなさそうだよね」
「うー、よし。たくさん洋服をプレゼントしたら毎日着てくれるかもしれないしどんどん渡していこう」
「あはは、そうだね。もしかしたら日常的に着てくれるようになるかもしれないしどんどん渡していこうか」
「よし、それだったらあまり着にくいものはダメよね。ゴスロリは外して普通のにしましょう。ワンピースタイプは着やすいけど料理するときとか危険な気がするし料理用のお洋服も考えなきゃね」
「まぁ、何かのイベントとかでもない限り着ることなさそうだしそれが妥当かな。あ、いっそのことハロウィンの時用の仮装も用意したらいいんじゃないかな」
「ハロウィンと言えばかぼちゃよね? うーん、普通に魔女とかでいいかな。昔ながらの魔女っ娘よりも最近の魔女っ娘みたいにキラキラしてる方がいいかしら」
「魔女っ娘ってあまり聞かないけど……。まぁいいや。そうだね、その辺は二つデザイン案を用意してもみじちゃん達に見て決めてもらったほうがいいんじゃないかな?」
「それもそうね! よーし、それじゃあ今から描いて……」
「今日はもう遅いから寝ようね」
「えー、ちょっとだけ。こういうのは気分が乗ってるときに描くのが一番いいのよ」
「うーん、それじゃあ僕は先に寝ててもいい?」
「むー、ダメ! 一緒に寝るんだから。分かったわ。今日の所はここでやめるから一緒に寝ましょう」
「でも、気分が乗ってるときに描くのが一番いいんでしょう?」
「大丈夫、しず君と一緒に寝たら気分がよくなるから。だから寝ましょう。すぐ寝ましょう。ほら早く早く」
「あはは、分かったから押さないで」
静人の言葉に一人で寝るのが嫌なかなではスケッチブックを片付けて立ち上がる。そのあと静人の背中を押して寝室へと向かって一緒に寝ることに成功したかなでは幸せそうな寝顔で眠りについた。翌日また一人女の子が神社に増えることをまだかなでは知らない。
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