山に登ったら巫女少女と出会ったので遊ぶことにしました

榊空

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「暇になったさかい遊びにきたでー。って誰もおらんやん。どこ行ったんやろ?」



 みどりはいつものようにもみじ達がいる場所にやってきたのだが、誰にも出会えずに寂しくなってきたところでかなでがやってきた。



「あれ、みどりちゃん。忙しいんじゃなかったの?」

「お、かなでさんやん。いや、意外に早く終わってもうてな? 暇になったから遊びに来たんよ。他のみんなはどこいったん?」

「ほら、この前みどりちゃんが青藍ちゃんにものづくりお願いしてたでしょ?」

「せやな、お、もしかして今作っとるん?」

「作ってるって言うかもう作り終わったというか」

「え、もう作り終わったん!? あ、小さいのを作ったん?」

「えっと、小屋を作り終わって今は机と椅子を作るみたいな話になったところね」

「はやない? え? はやない?」

「そうよね。早いわよね。一月を予定していたのに小屋作りに一日かからないっておかしいのよね。今は机のデザインを考えててって話を昨日したと思ったらもう作り終わってるのよね」

「早すぎやろ……。え、天職やん。ちゃんと楽しんでやっとるん?」

「一人で黙々とするのが好きみたいなのよ。無表情だけど楽しそうよ」

「まぁ、楽しそうならよかったわ。あ、かなでさんこっちに来たってことはなんかあったんやないの?」

「机が出来上がりそうだからあっちでご飯を食べようって話になってね。ご飯自体はもう出来上がったから今から持って行こうとしてたのよ。みどりちゃんも一緒に食べましょう? 調子に乗って作りすぎちゃったのよね。一人で持って行くのにも多いから手伝ってくれると嬉しいわ」

「ええで。ほな一緒に行こか? あれ、もみじちゃんと料理一緒にせんかったん?」

「昨日服のデザインを考えてみたいって言っていたから紙とペンを渡したんだけど、思いのほか熱中しちゃったみたいで。昨日あんまり寝てないみたいなのよ。だから、今日の所は私に任せてってあっちで寝てもらってるわ」

「大丈夫なん? もみじちゃん頑張りすぎなところ有りそうやもんな」

「そうなのよ。頑張りすぎたみたいでね。今日なんて、目をこすりながら出迎えに来たのよ?」

「はは、かわええやんか。少し心配になってまうけど」

「とりあえず頭を撫でてお膝に乗せたわ」

「なんだかんだで堪能しとるやん。それならうちはもみじちゃんと一緒に添い寝しようかな」

「えー、ずるい! 私も今日泊まっていこうかしら」

「お、ええんやない? まぁ一緒に寝るのはうちやけどな」

「ふふふ、もみじちゃんは私がもらうわ。というか一緒に寝ればいいのでは? よし、しず君には帰ってもらって四人一緒に寝ましょう!」

「静人さんと一緒に寝るわけにはいかんもんな。それやったら寝る前には女子会でもしよか。この前のトランプもあるし。なんやったらTRPGとかで遊んでみてもええな」

「TRPG? なにそれ?」

「あー、うーん。テーブルトークロールプレイングゲームの略でな? ロールプレイングゲームは知っとる?」

「うん。子供のころに好きでやってたわ」

「それをサイコロとか使ってやるんやけど、あー、今日シンプルな奴持ってくるさかいそれやってみよか。やってみたら何となくわかるはずや」

「楽しみにしてるわ。まぁ、しず君なら知ってそうだしあとで聞いとこうかな」

「せやなー、なんでか分からんけど知っとる気がするわ。知らんことあるんやろうか」

「それはもういろいろあるわよ。……多分。職業柄しょうがない気もするけどね」

「そういえば職業は何をしとるん?」

「え? 言ってなかったかしら。しず君は一応小説家よ」

「小説家なん!? どんな本書いとるん?」

「えっと、ミステリーものかな。ふふん、売れっ子なのよ? ペンネームは『静かな人』ね」

「さすがにペンネームでは覚えとらんよ。題名はなんなん?」

「あはは、それもそうよね。代表作は『猫はまどろみ狐は微笑む』よ。名前だけじゃどういう物語か分からないわよね」

「おー! あれか。うちも読んだことあるで。確かに名前じゃミステリーとはわからんやろな」

「そうなのよねー。他にもいろいろと書いてるからいろいろと調べたり実践したりしてたら覚えていったらしいわ」

「それにしたって知りすぎな気がするけどな」

「まぁ、それはしず君だからで納得してもらうしかないわね。っと、早くご飯持って行かないと青藍ちゃんが涙目になるから早く持って行きましょうか」

「あはー、せやな。とりあえずはよ持って行こか」



 青藍の涙目を想像したみどりは笑みを浮かべながら料理を運んでいく。かなでの案内した先には想像通りの青藍の姿があった。



「おそい……。あ、みどりも来てたんだ」

「暇になったから遊びに来たんよ。ほい、お待ちかねの料理」

「ありがとう。早く食べよう」

「あ、みどりちゃんだ! こんにちは!」

「こんにちは、もみじちゃん。あれ、静人さんはどこいったん?」

「ここにいるよ。ちょっと後片付けに手間取ってね」

「お、みんな揃ったようやし料理食べよか。持ってくるときにいい匂いがして楽しみにしてたんよ」

「作りすぎちゃったから遠慮せずに食べてね。あ、もみじちゃん今日泊まってもいい?」

「うん! いいよ!」

「うちも泊ってええ?」

「もちろんだよ!」

「あ、青藍ちゃんも一緒に今日お泊り会しましょう? しず君は抜きで女子だけでね」

「いいよ、でもなんでおにいさんだけ仲間外れ?」

「大人にはいろいろあるのよ……」

「えー、仲間外れはダメだよ。お兄さん可哀そう」

「あはは、ありがとうもみじちゃん。でも僕にもちょっと用事があってね。だから、今回は四人だけで楽しんでね。次の機会があったら一緒にお泊り会しようね」

「うーん。分かった! 約束ね!」

「うん。約束」



 静人はもみじに自分が男だからと言っても納得してくれなさそうな気配を感じたのか、用事があることを説明して説得を始めた。もみじは一瞬顔をしかめた後頷き約束したときに笑顔を見せた。



「(嘘はばれることを忘れてるんやろな……。まぁ、そのあとの約束は嘘じゃないって分かったみたいやし笑顔やからええか)」



 その光景を見ていたみどりは首を横に振りながら静人ともみじを見つめるのだった。

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