22 / 92
22
しおりを挟む
「というわけで持ってきたわ!」
「あ、凪さん。……徹夜しましたか?」
「そ、そんなことしてないわよ?」
かなでが予想していた通りに依頼した次の日、紙袋を携えて満面の笑みで訪問してくる凪。そんな寝不足の証を目の下にくっきりと見せながら現れた凪に肩を落としながら話しかけると、手をワタワタさせながら慌てて言いつくろう。
「クマ、出来てますよ?」
「え!? ホント!?」
「ホントです、目の下にくっきりと」
「し、してないのよ? その……、一時間は寝たし」
「一時間寝たら徹夜じゃないとでも?」
呆れた顔をしたかなでが笑みを向けていると、凪はそんなかなでの視線から逃げるように目をそらし乾いた笑いをこぼす。そんなとき後ろから会話に入っていなかった静人が二人に近づく。
「とりあえず中で会話しないかい? 二人とも、外は寒いでしょう?」
「あ、凪さんどうぞお入りください」
「あはは、お邪魔します。とりあえずこれが新しい子用の洋服です。サイズは髪に書いてあったとおりにしたからあってると思いますけど」
凪は家の中に入ると同時に紙袋の中から洋服を取り出してかなでに見せる。渡された洋服を目の前につるすと目を瞑りしばらくしてうんうんと頷く。
「凪さんばっちり! サイズ的に合ってるし私がデザインした物そのままです! 実物になるとさらに可愛さが出ますね!」
「ふふふ、でしょ? 今回のも前の物と同じく自信作ですからね。まぁ自信作以外を持ってくることはないですけど」
「これなら桔梗ちゃんも喜んでくれるよ! 早速今日持っていきますね!」
「そこまで喜んでもらえると嬉しいわ。私もあのデザインを使ってかわいい洋服を作れたから満足ね」
「あとで使った洋服の素材とか教えてください。こちらでも用意しますので」
「あら? 本当? 正直ありがたいから助かるけど」
「そのくらいはね。それに僕だけかかわってないのは悲しいじゃないですか」
「えー? しず君は料理とか教えてるんだし、こういうのは私に全て任せてくれてもいいのに」
「確かに教えているけど、プレゼントなら僕も加わりたいじゃないか」
「むむむ、確かに、それじゃあしず君に任せた!」
「任された。それじゃあ、今度来るときに何を買ってくればいいかメモをくれると助かります」
「分かったわ。その時はよろしくね」
静人のお願いに頷いている凪を見て、何かを閃いた顔をしたかなでが凪に顔を向ける。
「というか今から一緒に行けばいいんじゃない? 凪さん、今なら荷物持ちが一人つきますよ?」
「荷物持ちは僕のことかな? それならいっそのことグラさんの所に行ってみないかい?」
「グラにも昨日連絡したけど、まだ返事が来てないのよね。……頼みすぎたかな」
「店長はたまに携帯見ない日があるから、タイミングが悪かったんじゃないかな? あそこは私が働いてる場所だし。いつも使ってる材料も売ってるし助かるけど」
自分の携帯電話を見ながら不安そうな顔をするかなでに、凪は苦笑いを浮かべて語る。そんな凪を見て元気が出たかなではグラの所に行く決心がついた。
「よし、それじゃあ行きましょうか! あ、お昼ご飯どうします?」
「さすがにお昼は帰ろうかな。外食にお金使いたくないですし」
「奢りますよ?」
「うーん、遠慮しときます。さすがにそこまでお世話になるのは……」
「そうですか? そこまで言われたらしょうがないです。ではお昼ご飯まではグラの所で遊びましょう!」
「邪魔にならないようにね?」
元気よく返事をするかなでに苦笑いをしながらササっと準備を済ませ、買い物をしにお店へと向かう。そこまで持っていくものはない静人だったが、不思議そうにかなでのほうを見る。
「いつも使うのよりも大きめのバッグだけど……、中に何が入ってるんだい?」
「え? グラに会うならデザイン渡そうと思って」
「店長、かなでさんのデザイン好きですもん。喜ぶと思います」
「えへへ、そうかな?」
「ええ、私だって嬉しいですもの」
凪の笑顔につられてかなでも笑みを浮かべて隣を歩く。その少し斜め後ろに静人がついていく。そうして三人でグラのお店にたどり着いた。
「ここがグラさんのお店か……」
「グラー! いるー?」
「おろ? 三人で来るなんて珍しいこともあるな。俺も一緒に遊びたいのにずるいぜ」
「お仕事あるからしょうがない。あ、グラに昨日携帯でメールしたんだけど見ました?」
「え、マジ? ……マジみたいだな。わりぃ。昨日は夜早めに寝て、朝は急いで店で裁縫してたから気が付かなかったわ」
グラはかなでに言われて自分の携帯電話の画面を確認すると、申し訳なさそうな顔をしてかなでに頭を下げる。
「ううん。いいんですよ。それでその内容なんですけど……、実は新しい洋服を用意してほしいって話だったんです。前のよりも少し大きめの洋服を用意してほしくて」
「マジ!? もしかしてちょっとサイズ間違ってたりしたか? 今はちょっと忙しいから少し時間かかるけどいいか?」
「いえ、それが新しく女の子が増えまして。でも、凪さんが作ってくれてたので大丈夫です。そのことの報告と素材を買いに来たんですよ」
「なるほどな。暇になったら俺にもなんか作らせてくれよ。あ、素材ならそっちにあるから好きに見ていいぜ」
納得できたのか頷くグラにかなでは笑顔で話を続ける。グラはかなで達の来た目的を思い出したのか素材があるところを指さして見送る。静人と凪が指さされた方に歩いていくなか、かなでは一人残り持ってきたカバンの中を漁る。
「あ、そうだ。今日デザイン持ってきたんですよ。暇な時でいいのでよろしくお願いします」
「お、うん。やっぱりかなでちゃんの作るデザインはいいな! よし分かった。暇なときに作るわ!」
「はい、よろしくお願いします!」
渡されたデザインを見て目を輝かせたグラは、いつも以上にテンションを上げてデザインを大切にしまう。そんなグラに元気に頭を下げるかなでは先に素材を見に行った静人達の後を追う。
「しず君どう?」
「僕は何とも……、凪さんは嬉しそうにはっちゃけてるよ」
「あ、ホントだ。楽しそう。というか目を輝かせていろんなものを見てるね」
「ふふ、そうだね。なんというかああいうのを見ると年下なんだなって思えるよ。あ、グラさんとの話はもういいのかい?」
「うん。デザインは渡したし伝えたいことは伝えたから大丈夫!」
「ならよかった。それじゃあ僕たちは洋服を選ぼうか。素材を見てもわからないしね」
洋服づくりに必要になるのだろう物を見て、嬉しそうに目を輝かせている凪の姿が見える。静人はそんな凪を見て苦笑しつつ後ろを通り過ぎて、並んでいる洋服の場所に向かおうとする静人だったが、かなでは素材を見て考え込むようにして呟く。
「小物作りとかしようかしら……」
「小物? あー、小物なら僕にも作れるかな……?」
「難しいものじゃなかったら行けるとは思うけど……。そこらへんもあとで調べてみる? どうせならもみじちゃん達と一緒に作れたらいいんだけど」
「そうだね。自分で作るのも良い経験になるから、今度みんなで作れそうなのを調べてみようか」
かなでの疑問に少し考えた静人はその方がもみじ達が喜ぶと思ったのか、かなでに頷きながら素材を見て回る。どう使うのかは分からなくてもデザインとしてなら覚えることができるのか、かなではひとつひとつ吟味しながら頷いている。静人はあまりわからないとはいえ、なんとなく頭の中で思い浮かんだイメージを実現できそうなものを探す。
「いいのは見つかった?」
「これとか会いそうだと思ったんだけどどうかな?」
「あ、これはもみじちゃんで、こっちが青藍ちゃん。これが桔梗ちゃんね?」
「分かるかい? かなでが見ただけで何も言ってないのに分かるってことは大丈夫かな?」
「あとはそれをどういう小物にするかよね……」
「そういえば一人一人の趣味とかは知らないからね」
「青藍ちゃんは本を読むのが好きらしいから栞とかかしら? もみじちゃんは料理だと考えて手に付けるものは邪魔になるから……。あ、髪が長いからシュシュとかかしら。桔梗ちゃんは会ったばかりだから分からないけど」
「うーん。どうせなら初めての贈り物は三人一緒の物のほうがいいんじゃないかな? 例えば髪を結ぶシュシュだったら、一人ひとり色を変えて送るのはどうだろう。時間をかけて趣味が分かったらその時に渡す感じで」
「それもそうね。そうしましょうか。でも色を変えるだけだと味気ない気もするし、一人ひとりデザインを変えようかな。そこまで大きくは変えれないから刺繍で名前を入れたり、動物の絵柄を入れたりかしらね」
「洋服に入れたみたいにワンポイントで入れるのは確かにいいかもしれないね」
「あ、そうだ。洋服と一緒に小物もプレゼントするときにケーキ作りましょう!」
「ケーキか……。そういえばケーキは作ってあげたことなかったね。うん、フルーツたっぷりのケーキを作ろう! その日は作って持っていこうかな」
「よし、それなら急いで帰って準備しなきゃね!」
「取りあえず選んだものは買っていこうか。これとこれ……」
「これもかしら……。これも似合いそうね」
かなでは静人と一緒に、もみじ達に似合いそうなものを見つけては買い物かごに入れる作業を繰り返す。凪は使った素材を買い物かごの中で別々に分けていたらしく、たくさん買っている静人達の所に持ってきて渡してくる。
「今回使ったのはこれくらいね。あとは私がまた別のに使うものだからこっちだけね」
「それじゃあ、先に清算しときますね。僕達も自分で買う分があるので」
「ええ、お願い。それが終わったら帰るわね。家で作りたいものがまだあるし、ちょっと眠いから」
「はい、今回はありがとうございました。とはいえあまり無理はしないようにしてくださいね?」
「ええ、分かったわ」
凪から買い物かごを預かった静人はグラのもとに向かって清算する。かなではまだ時間がかかるのか素材のほうをウロチョロしていたが、静人が生産している間に凪とのあいさつは済ませたらしく、買ったものを静人に預かった凪は手を振って帰っていった。それを見送った静人はかなでのもとに向かうと、かなでも吟味が終わったらしく買い物かごを笑顔で持って静人のところ歩いてくる。
「もう他に買うものはないかい?」
「大丈夫! あったらまた買いに来る!」
「まぁ、そうだね」
「お! たくさん買っていくなー。よし! こんなに買ってくれるなら少しはサービスしなきゃな! おまけで買った色に合う布を付けとくわ」
「ありがとう! かわいい小物作りますね!」
「おう、楽しみにしとくわ」
笑顔でグラに見送られながら店を後にした静人達は、たくさんの荷物を抱え込みながらもワクワクした顔で家に帰るのだった。
「あ、凪さん。……徹夜しましたか?」
「そ、そんなことしてないわよ?」
かなでが予想していた通りに依頼した次の日、紙袋を携えて満面の笑みで訪問してくる凪。そんな寝不足の証を目の下にくっきりと見せながら現れた凪に肩を落としながら話しかけると、手をワタワタさせながら慌てて言いつくろう。
「クマ、出来てますよ?」
「え!? ホント!?」
「ホントです、目の下にくっきりと」
「し、してないのよ? その……、一時間は寝たし」
「一時間寝たら徹夜じゃないとでも?」
呆れた顔をしたかなでが笑みを向けていると、凪はそんなかなでの視線から逃げるように目をそらし乾いた笑いをこぼす。そんなとき後ろから会話に入っていなかった静人が二人に近づく。
「とりあえず中で会話しないかい? 二人とも、外は寒いでしょう?」
「あ、凪さんどうぞお入りください」
「あはは、お邪魔します。とりあえずこれが新しい子用の洋服です。サイズは髪に書いてあったとおりにしたからあってると思いますけど」
凪は家の中に入ると同時に紙袋の中から洋服を取り出してかなでに見せる。渡された洋服を目の前につるすと目を瞑りしばらくしてうんうんと頷く。
「凪さんばっちり! サイズ的に合ってるし私がデザインした物そのままです! 実物になるとさらに可愛さが出ますね!」
「ふふふ、でしょ? 今回のも前の物と同じく自信作ですからね。まぁ自信作以外を持ってくることはないですけど」
「これなら桔梗ちゃんも喜んでくれるよ! 早速今日持っていきますね!」
「そこまで喜んでもらえると嬉しいわ。私もあのデザインを使ってかわいい洋服を作れたから満足ね」
「あとで使った洋服の素材とか教えてください。こちらでも用意しますので」
「あら? 本当? 正直ありがたいから助かるけど」
「そのくらいはね。それに僕だけかかわってないのは悲しいじゃないですか」
「えー? しず君は料理とか教えてるんだし、こういうのは私に全て任せてくれてもいいのに」
「確かに教えているけど、プレゼントなら僕も加わりたいじゃないか」
「むむむ、確かに、それじゃあしず君に任せた!」
「任された。それじゃあ、今度来るときに何を買ってくればいいかメモをくれると助かります」
「分かったわ。その時はよろしくね」
静人のお願いに頷いている凪を見て、何かを閃いた顔をしたかなでが凪に顔を向ける。
「というか今から一緒に行けばいいんじゃない? 凪さん、今なら荷物持ちが一人つきますよ?」
「荷物持ちは僕のことかな? それならいっそのことグラさんの所に行ってみないかい?」
「グラにも昨日連絡したけど、まだ返事が来てないのよね。……頼みすぎたかな」
「店長はたまに携帯見ない日があるから、タイミングが悪かったんじゃないかな? あそこは私が働いてる場所だし。いつも使ってる材料も売ってるし助かるけど」
自分の携帯電話を見ながら不安そうな顔をするかなでに、凪は苦笑いを浮かべて語る。そんな凪を見て元気が出たかなではグラの所に行く決心がついた。
「よし、それじゃあ行きましょうか! あ、お昼ご飯どうします?」
「さすがにお昼は帰ろうかな。外食にお金使いたくないですし」
「奢りますよ?」
「うーん、遠慮しときます。さすがにそこまでお世話になるのは……」
「そうですか? そこまで言われたらしょうがないです。ではお昼ご飯まではグラの所で遊びましょう!」
「邪魔にならないようにね?」
元気よく返事をするかなでに苦笑いをしながらササっと準備を済ませ、買い物をしにお店へと向かう。そこまで持っていくものはない静人だったが、不思議そうにかなでのほうを見る。
「いつも使うのよりも大きめのバッグだけど……、中に何が入ってるんだい?」
「え? グラに会うならデザイン渡そうと思って」
「店長、かなでさんのデザイン好きですもん。喜ぶと思います」
「えへへ、そうかな?」
「ええ、私だって嬉しいですもの」
凪の笑顔につられてかなでも笑みを浮かべて隣を歩く。その少し斜め後ろに静人がついていく。そうして三人でグラのお店にたどり着いた。
「ここがグラさんのお店か……」
「グラー! いるー?」
「おろ? 三人で来るなんて珍しいこともあるな。俺も一緒に遊びたいのにずるいぜ」
「お仕事あるからしょうがない。あ、グラに昨日携帯でメールしたんだけど見ました?」
「え、マジ? ……マジみたいだな。わりぃ。昨日は夜早めに寝て、朝は急いで店で裁縫してたから気が付かなかったわ」
グラはかなでに言われて自分の携帯電話の画面を確認すると、申し訳なさそうな顔をしてかなでに頭を下げる。
「ううん。いいんですよ。それでその内容なんですけど……、実は新しい洋服を用意してほしいって話だったんです。前のよりも少し大きめの洋服を用意してほしくて」
「マジ!? もしかしてちょっとサイズ間違ってたりしたか? 今はちょっと忙しいから少し時間かかるけどいいか?」
「いえ、それが新しく女の子が増えまして。でも、凪さんが作ってくれてたので大丈夫です。そのことの報告と素材を買いに来たんですよ」
「なるほどな。暇になったら俺にもなんか作らせてくれよ。あ、素材ならそっちにあるから好きに見ていいぜ」
納得できたのか頷くグラにかなでは笑顔で話を続ける。グラはかなで達の来た目的を思い出したのか素材があるところを指さして見送る。静人と凪が指さされた方に歩いていくなか、かなでは一人残り持ってきたカバンの中を漁る。
「あ、そうだ。今日デザイン持ってきたんですよ。暇な時でいいのでよろしくお願いします」
「お、うん。やっぱりかなでちゃんの作るデザインはいいな! よし分かった。暇なときに作るわ!」
「はい、よろしくお願いします!」
渡されたデザインを見て目を輝かせたグラは、いつも以上にテンションを上げてデザインを大切にしまう。そんなグラに元気に頭を下げるかなでは先に素材を見に行った静人達の後を追う。
「しず君どう?」
「僕は何とも……、凪さんは嬉しそうにはっちゃけてるよ」
「あ、ホントだ。楽しそう。というか目を輝かせていろんなものを見てるね」
「ふふ、そうだね。なんというかああいうのを見ると年下なんだなって思えるよ。あ、グラさんとの話はもういいのかい?」
「うん。デザインは渡したし伝えたいことは伝えたから大丈夫!」
「ならよかった。それじゃあ僕たちは洋服を選ぼうか。素材を見てもわからないしね」
洋服づくりに必要になるのだろう物を見て、嬉しそうに目を輝かせている凪の姿が見える。静人はそんな凪を見て苦笑しつつ後ろを通り過ぎて、並んでいる洋服の場所に向かおうとする静人だったが、かなでは素材を見て考え込むようにして呟く。
「小物作りとかしようかしら……」
「小物? あー、小物なら僕にも作れるかな……?」
「難しいものじゃなかったら行けるとは思うけど……。そこらへんもあとで調べてみる? どうせならもみじちゃん達と一緒に作れたらいいんだけど」
「そうだね。自分で作るのも良い経験になるから、今度みんなで作れそうなのを調べてみようか」
かなでの疑問に少し考えた静人はその方がもみじ達が喜ぶと思ったのか、かなでに頷きながら素材を見て回る。どう使うのかは分からなくてもデザインとしてなら覚えることができるのか、かなではひとつひとつ吟味しながら頷いている。静人はあまりわからないとはいえ、なんとなく頭の中で思い浮かんだイメージを実現できそうなものを探す。
「いいのは見つかった?」
「これとか会いそうだと思ったんだけどどうかな?」
「あ、これはもみじちゃんで、こっちが青藍ちゃん。これが桔梗ちゃんね?」
「分かるかい? かなでが見ただけで何も言ってないのに分かるってことは大丈夫かな?」
「あとはそれをどういう小物にするかよね……」
「そういえば一人一人の趣味とかは知らないからね」
「青藍ちゃんは本を読むのが好きらしいから栞とかかしら? もみじちゃんは料理だと考えて手に付けるものは邪魔になるから……。あ、髪が長いからシュシュとかかしら。桔梗ちゃんは会ったばかりだから分からないけど」
「うーん。どうせなら初めての贈り物は三人一緒の物のほうがいいんじゃないかな? 例えば髪を結ぶシュシュだったら、一人ひとり色を変えて送るのはどうだろう。時間をかけて趣味が分かったらその時に渡す感じで」
「それもそうね。そうしましょうか。でも色を変えるだけだと味気ない気もするし、一人ひとりデザインを変えようかな。そこまで大きくは変えれないから刺繍で名前を入れたり、動物の絵柄を入れたりかしらね」
「洋服に入れたみたいにワンポイントで入れるのは確かにいいかもしれないね」
「あ、そうだ。洋服と一緒に小物もプレゼントするときにケーキ作りましょう!」
「ケーキか……。そういえばケーキは作ってあげたことなかったね。うん、フルーツたっぷりのケーキを作ろう! その日は作って持っていこうかな」
「よし、それなら急いで帰って準備しなきゃね!」
「取りあえず選んだものは買っていこうか。これとこれ……」
「これもかしら……。これも似合いそうね」
かなでは静人と一緒に、もみじ達に似合いそうなものを見つけては買い物かごに入れる作業を繰り返す。凪は使った素材を買い物かごの中で別々に分けていたらしく、たくさん買っている静人達の所に持ってきて渡してくる。
「今回使ったのはこれくらいね。あとは私がまた別のに使うものだからこっちだけね」
「それじゃあ、先に清算しときますね。僕達も自分で買う分があるので」
「ええ、お願い。それが終わったら帰るわね。家で作りたいものがまだあるし、ちょっと眠いから」
「はい、今回はありがとうございました。とはいえあまり無理はしないようにしてくださいね?」
「ええ、分かったわ」
凪から買い物かごを預かった静人はグラのもとに向かって清算する。かなではまだ時間がかかるのか素材のほうをウロチョロしていたが、静人が生産している間に凪とのあいさつは済ませたらしく、買ったものを静人に預かった凪は手を振って帰っていった。それを見送った静人はかなでのもとに向かうと、かなでも吟味が終わったらしく買い物かごを笑顔で持って静人のところ歩いてくる。
「もう他に買うものはないかい?」
「大丈夫! あったらまた買いに来る!」
「まぁ、そうだね」
「お! たくさん買っていくなー。よし! こんなに買ってくれるなら少しはサービスしなきゃな! おまけで買った色に合う布を付けとくわ」
「ありがとう! かわいい小物作りますね!」
「おう、楽しみにしとくわ」
笑顔でグラに見送られながら店を後にした静人達は、たくさんの荷物を抱え込みながらもワクワクした顔で家に帰るのだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
古屋さんバイト辞めるって
四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。
読んでくださりありがとうございました。
「古屋さんバイト辞めるって」
おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。
学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。
バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……
こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか?
表紙の画像はフリー素材サイトの
https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる