[R-18]あの部屋

まお

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77.受容3

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「ひ…ぁ……っ……、……は……ぁ…」

「っ…は、……はぁ……っ…」

長く続く射精に体力を持っていかれそうになりながら、柏木は小さく喘ぐ朔の身体に密着し目の前の首筋に顔を埋めたままいた。


いつもの絶頂と比べると突き抜ける快楽が強いように感じた。同時にそれよりも圧倒的にいつもと違いを認識したのが、目の前の朔をさらに痛めつけたいと思う嗜虐心が湧いてこないことだった。

いつもは快楽の波が引いていくと、次にどのようにいたぶり、泣かせ、苦しめようかと湧き上がる嗜虐心のまま残虐なセックスをしていた自覚がある。

それが今日は無く、ただこんな風に身体を寄せ合ってお互いの体温を感じていることが心地良いとすら感じた。

そんな都合のいい考えに耽っていると少しずつ冷静さを取り戻し、くっついたままいる朔から身体を離さなければと思いつつもその行動に移せずいた。

朔が今どんな表情をしているのか観察したいという思いと、朔の表情を見るのが恐いと思う気持ちとが拮抗していた。もし涙を見てしまえば、どう対処すればいいのか思いつかなかった。

ただいつまでも抱きつくようにしている訳にもいかず、柏木は肘を立てゆっくりと朔から身体を離した。柏木は目を閉じ一つ息を吐き心を落ち着かせてから、そのまま朔の顔を見下ろした。

そこには頬を朱色に染め、まだ引きずる快楽に唇から薄ら舌を覗かせ、息を乱して目を瞑っている朔の扇情的な表情があった。悲しそうな表情ではないことを確認すると無意識にほっとするのと同時に、朔の淫靡さを纏うその表情と舌をのぞかせる潤む唇が柏木をひどく魅了した。

そのまま視線を下にずらすと、柏木が朔の胎内に吐精したタイミングで朔も果てており、先程よりもさらに多くの白濁を纏う朔のペニスと汚れる腹筋が一緒に視界に入った。
それを目にすると、まだ胎内に収まったままだった柏木のペニスが少し熱を持ち滾る。


全身を駆け巡る快楽の余韻が引かず、朔はただひたすら身体の熱を落ち着かせる為に荒く呼吸を続けていた。

身体が異様な程感じてしまった自覚がある。気付かないふりをしていたが朔の身体は柏木に確実に開発されていた。

快楽と暴力がセットであれば痛みが理性を引き戻してくれるが、それが無い交わりであれば神経は自ずと与えられる快楽全てを拾おうとする。

今日のセックスは柏木からの暴力や辱めがほぼ無く、行為中はひたすら快楽を与えら続けれた。こんな風に抱かれたのは初めてだったが、与えられすぎた快楽のせいで頭の中が朧気でそこに疑問を持つ余裕は今の朔には無かった。

朔は熱に浮かされたまま、まだ胎内に柏木の怒張を咥え込んだまま快楽の余韻がなかなか引いてくれない身体を持て余し、ぞくぞくと背筋を駆け巡る悪寒に喘いでしまいそうなのを目を瞑り耐えていた。

このまま少しでも動かれてしまえばすぐに快感に引き摺られ達してしまいそうな程身体が疼いていた。

視界を遮断し何とか冷静になろうとしていたが、目を閉じていても感じる上から注がれる視線に、堪らずゆっくり瞼を持ち上げる。目の前にはあまり見慣れない熱を含みながらも真剣な眼差しを向ける柏木の表情が朔を見下ろしていた。


「……はや…く、も…っ抜いて…くれ」

朔は上ずりそうになる声を抑えながら何とかふりしぼるように柏木へ訴えかける。


「……」

柏木は黙って朔を見つめるだけで何も返答せず、行動も起こさなかった。ただ無言で朔を凝視していた。

終わった筈なのにまだ行為の延長のように錯覚してしまう柏木からの視線。視線自体に強い欲は感じないのに、朔の熱が引かないままの身体と治まらない高ぶりのせいで勝手にその視線に性感を高められてしまう。


「……み、…るな……っ」

朔は恥ずかしさから紅潮する頬を隠し、柏木の視線から逃れるようにシーツの方に顔を背けた。


柏木は朔の背けられてしまった恥ずかしそうな表情をもっと見たいと思った。もっとじっくり観察したい。

シーツに顔を埋める朔の視線がこちらに向いていないまま、柏木は吸い寄せられるように朔の無防備な頬へと手のひらを這わせる。


「なっ…なに?」

背けていた顔を戻し朔は困惑した様子で柏木に視線を向ける。


「もっと見たい」

「は?何を…」

朔からの問いかけを無視して柏木はその手のひらを下へとずらしまだ熱い朔の首筋をゆっくり撫でる。


「や…っ、やめ…ろ」

朔は落ち着かせようとしている身体の高ぶりを再び呼び起こすような柏木からの触られ方に、思わず語気を強め上体を起こそうとする。


「まだ治まらないだろ?いつも1回じゃ終わらないもんね。俺もまだ足りない…」

「やめ!…っ……」

朔は柏木の動きを制御しようと首筋に這わされていた手を掴み柏木を睨みつけた。しかし、向けられる柏木の表情を見ると、思わず掴んだ手の力を弱めてしまう。

いつもの嘲るような表情では無くて、柏木は先程見た熱を宿した真剣な瞳、そして少し切なげな表情で朔を見つめていた。

掴む手の力が弱まり柏木はそれを簡単に振りほどくと、引き続き朔の身体をゆっくりと撫で回していく。


「んっ… ……っ、……ぁ…」

朔は抵抗できず、柏木が触れるのを許してしまう。そのままそれを許容していると、徐々に身体は高ぶりを取り戻しじわじわと快楽が蓄積されていく。実際にこのまま解放されても柏木の言う通り治まらなかったであろう自覚はあった。


「はっ……ぁ……っ」

柏木の触れ方は、優しく撫でるように触れているが、敢えてなのか無意識なのか、性感帯は避けているようだった。もどかしさに焦燥感を抱きながら朔は縋るような視線を柏木へと向けてしまう。


「……触っていいの?」

「ぇ……」

いつもなら触って欲しいのか、自分から強請れと嘲笑混じりに辱めの言葉がかけられそうだったが、まさかの問いかけに朔は呆気に取られて黙り込んだ。


「触るよ」

「ッぁう」

朔の無言を肯定と受けとり断りを入れてから柏木はすぐに朔の期待でツンと勃ち上がっていた乳首に指先で触れた。


「ンっ…ぁ…あっ…くッ」

優しいタッチからは想像できない痺れるような刺激に朔は押し殺し切れない喘ぎ声を漏らす。
柏木は勃ち上がる乳首を親指と中指で挟みくにくにと両端を揉みながら、たまに人差し指で突端を啄き、擦り、撫でながら軽く引っ掻くように刺激する。


「ひっ ぁ…、あぁ…んん…」

胸の刺激が腰へと伝わり朔はとろんとした表情で腰を小さく揺らめかし始めた。


「ぁ、んん…っ、その…触り方…やめっ…っ」

「でも気持ち良さそう。腰動いてるし野坂のナカも締まってきた。興奮する…」

その宣言の後、それを証明するように未だ抜き去られて居なかった柏木の怒張は、朔の胎内を押し上げるようにグイッと質量を増したのがわかった。


「ひあっ」

「舐めるよ」

その言葉掛けの後にすぐ触れられ硬く尖る胸の果実は温かくぬめる柏木の粘膜に覆い尽くされる。


「ひぃアッ…!」

朔は与えられる悦楽に無意識にそこを献上するように胸を突き出す。柏木は胸の果実を舌で嬲り、舌先で硬さを確認しながら吸い付き、たまに悪戯に痛みを感じない程度に軽く歯を立てる。そして空いている方の乳首はゆっくり円を描くように突端を指で転がし続けた。


「あ…あっぅっ…ひッ」

乳首を口に含んだまま柏木は朔の表情を見上げる。上気した頬と潤む瞳は相変わらず柏木の情欲を掻き立てた。

そしてそれよりも気になるのは、その血色の良いふっくらとした少し開いている唇だった。

その柔らかい唇の感触はよく知っている。朔によくわからない感情を抱く前は普通にしていた口付けが、今は出来ない。

意識すると余計に出来なく、それをすることは柏木にとって理性の歯止めが効かない敗北であり失態と変わらないものだと認識していた。


「んぁあっ ん…強…っい」

乳首を吸いながら頭の中はキスのことばかり考えていた。こんな風に唇に吸い付いたらどんな感触で、どんな反応が返ってくるのか。

抱き合い舌を絡ませ合いながら全身をもっと弄りたい。同じように唇を強く吸われてみたい。ただ触れるだけで感じる柔らかい唇の感触と熱だけでもいい。甘やかすような優しい口付けをしてみたい。求め合うようにする口付けとはどんなものだろうか─

柏木の頭の中は朔と口付ける妄想で埋め尽くされる。


「んんっあ…!痛いっ」

朔からの切羽詰まった訴えが耳に入り、柏木は我に返る。口付けのことを考えながらいつの間にか朔の乳首を強く吸いすぎていたようでゆっくりそこから唇を離す。朔の乳首は強く吸いつかれ真っ赤に腫れて唾液が絡まり照り光りながら痛々しく勃ち上がっていた。

朔は快楽に侵されながらも痛みに少し眉を寄せて自身の腫れた胸の肉粒を見つめていた。

そんな朔の顔を覗き込むようにして柏木は顔を近づける。そして無意識に朔の唇に指を這わせる。朔は柏木の行動に驚きと困惑の様子を見せながら柏木の顔を見上げる。


「なっ……に」


───キスしていい?


そう喉元まで出かかって柏木はすんでのところでそれを飲み込んだ。理性がまだしっかり仕事をしていたことに安心する。

同時に、このまま感情のままキスをしてしまえば、何かを失うと柏木は直感で感じた。

柏木はまた暴走しそうな自分自身の感情に苛立ちと不安を感じた。この感情というものは、柏木が思っているより随分と厄介な様だった。


「大丈夫…か…?」

突然の奇行の後、険しい表情で考え黙り込んでいた柏木の様子を見兼ねて、朔がおそるおそる声をかけてきた。


「……」

自分が他人を心配出来るような状況じゃないのに平然とそれをやってのける朔に、柏木は理解できないその思考回路に得体の知れない恐怖にも似た感情を抱いた。


柏木は一旦冷静になりたかった。またいつ自分自身が暴走してしまうのか、もう自分で自分が信用出来なかった。

まだ少し反応を示したまま朔の胎内に残されている自身の男根を抜こうと腰をゆっくり引いた。


「ひッ!ぁあぁッ───」

その瞬間、朔は甲高い嬌声を響かせながら胎内で強烈に柏木を締め付け、背筋を弓形に反らせ身体を大きくびくびくっと痙攣させた。

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