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65.罪1
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柏木は恐怖で引き攣る朔の表情を眺めながら拘束する手を引き部屋へと朔を連れていった。
途中抵抗する朔の剥き出しの腹部にナイフの先端を近づけると、朔はすぐに大人しくなった。
部屋へと連れて行き柏木は朔をベッドの上に突き飛ばした。すぐに逃げ出そうとする朔の首に残っていた首輪をチェーンで思い切り引いた。
「ぐぅ゛ッ」
抵抗が弱まる朔の腹部に柏木は勢いをつけた重い拳をめり込ませる。痛みの衝撃に朔は柏木のベッドの上で蹲った。
「ぅ…ッ…ゔっ」
痛みに顔を歪め身を守ることで精一杯の朔を他所に柏木は朔の下半身を包んでいたバスタオルを剥ぎ取った。
「あのまま余計なこと言わなければ家に帰してやったのに」
柏木は横向きでベッドに身体を沈める朔の顕になった太腿の側面と臀部の境目をゆっくり手のひらでなぞった。朔は身体を丸めたまま耐えるようにキツく目を閉じる。
「…っ……死…にたくな…ぃ…」
朔は顔を伏せたまま震える声で独り言のように呟いた。
「死にたくない…か。死にたくないって思いながら死ぬのってどんな気分なんだろうね。野坂も気にならない?」
柏木は小さく笑いながら今度は朔の首筋を手のひらでさすった。優しいばかりの刺激が余計に恐怖心を煽った。
「でも野坂は気づかないうちに死ぬことになるよ。野坂の精神は必要ないからね。壊れて何もわからない野坂を殺したいんだ。どうせみんないつか死ぬんだから、ゴールが同じならその命俺に委ねてよ。綺麗なままの野坂を殺してあげる。でも野坂はなかなか壊れてくれないよね」
意味のわからない柏木の理論に朔は反論する余裕が無かった。今までも散々嬲られ脅されてきたが、今までの痛めつける目的の道具と違い、小さいとはいえナイフを使われると恐怖で上手く思考が回らなかった。
「縮こまって震えてばかりで何も言ってくれないね。これならどうかなー」
「ひッ─!」
最初に撫でられていた臀部の近くに熱く鋭い痛みが走る。柏木は躊躇なくそこにナイフの刃を走らせた。
浅く切り裂かれた皮膚から血液が力なく溢れ出し、5cmくらい直線に入った傷口を赤く染めていく。
「やっぱハサミと違って切れ味いいなー。野坂の血見ると興奮する。次はもっと深く刃を入れようね」
柏木は出来たばかりのその傷口に優しく口付ける。溢れた血液が柏木の唇を赤く染めた。そしてそこをゆっくり舌でなぞっていく。
痛みと恐怖で朔の瞳から堪えきれずに涙が溢れ出した。
「もっと啼きなよ。野坂の悲鳴聞かせて」
柏木は優しく語りかけるように顔を伏せたままの朔の耳元に唇を寄せた。
次にどんなことをされるのか状況がわからないと恐怖が増長され、思わず朔はすぐ横にある柏木の顔を見上げた。
朔が上を向くと柏木の顔と距離がぐっと近づいた。
長いまつ毛ときめのこまかい白い肌、高い鼻筋と射抜くように見つめる柏木の色素の薄い茶色い瞳。その瞳からは煮え滾るような暗い感情が溢れていた。
そして同時にその奥から僅かに感じ取れたのは、悲しさのようなものだった。
それを感じ取れたのは、同じだったから。朔は拓人と柏木の瞳の奥にある感情が似ていると感じた。
柏木は急に近づいた朔の顔との距離に一瞬ドキリとさせられる。その瞳は涙で濡れていてやはり恐怖を色濃く滲ませていた。
それでいいのに、やはりその恐怖の表情を見るともやもやとした不快と焦燥を感じた。
そして目が合う前は嗜虐的な思考で満ちていた頭の中が、朔と目が合うとスっと静まるような感覚に陥る。なんでそんな風に感じるのか理解出来なくて腹立たしかった。腹立たしさついでに頬を殴ろうと思い拳を握りしめた。朔の絶望や苦しみが深ければより目的達成に近づく。暴力や蹂躙で少しずつ朔の精神を壊せばいい。
柏木が手をかざすと朔の肩はびくりと震えより一層恐怖を伝えてくる。そのまま手を勢い良く振りかざして頬を思い切り殴ればいい─
柏木はその掲げた手を下ろした。
下ろしたその手は朔の頬に添わせていた。ゆっくり包み込むように。
そして頬に這わせた手のひらで朔の目の下に残った涙を拭っていた。その一連の動作に何の思惑も無く、いつの間にか意志とは関係なく行っている行動だった。
「……」
「……」
お互い驚きの表情を隠すことなく無言で相手の様子を見つめていた。
「……か…しわぎ……?」
先に口を開いたのは朔だった。
その声を耳に捉えると柏木は我に返ったように慌てて頬に添えていた手のひらで朔の口を乱暴に覆った。
「……何なんだよ…お前…」
柏木は俯いたまま低い声でボソッと呟いた。
自分の中に沸きおこる様々な感情がごちゃ混ぜにになって収集が付かなくなっていた。しまいには無意識に行動にまでその混沌が現れてしまい柏木は驚き焦っていた。
柏木は目を閉じひとつ深呼吸をした。
そのままゆっくり目を開き、ベッドの端に投げ捨てたバスタオルを掴みそのバスタオルをナイフで切り裂いた。
驚いたようにその様子を見上げる朔の顔にそのバスタオルの切れ端を巻き付けた。
「なっ、!?」
鼻と口だけ出るように顔の大部分を隠すように切り裂いたバスタオルを朔の頭の後ろでキツく縛った。
視界を奪われた朔は慌てて空いている手でその頭の後ろの結び目を解こうとする。
柏木はその手を引き剥がしベッドの上に縫いつけた。
「外せっ…!──ッ!?アァア゛ッッ!!!」
柏木は引き剥がし掴んで押さえつけていた朔の左手のひらにナイフを数センチ突き刺した。裂けた皮膚から血液が一気に溢れ朔の手のひらとベッドのシーツを赤く染めていく。
「貫通させられたくないなら大人しくしてろよ」
柏木はその血の付いたナイフをベッドの上に投げ捨てるとそのまま朔の両脚を持ち上げた。
「ひっぅ…ぅうッ……っ……っ」
ズキズキと脈と共に疼く強烈な痛みとあまりの恐怖で朔は抵抗も、大声を上げることさえも出来無かった。そのまま無抵抗な朔の身体を押し開き陵辱の痕跡が色濃く残る後孔に柏木は怒張を捩じ込んだ。
「ぁあ゛ぁあッ」
柏木は朔の絶望に喘ぐような悲鳴を聞きながらその身体を最初から容赦なく突き上げ始めた。
「ぁッぅッアァッ痛…ぅ゛ぅッひァア」
先程の朔へ抱いていた感情が影を潜め思い出したような嗜虐的な思考がまた柏木の頭の中を満たしていく。
朔の表情や瞳を覆い隠したことで自身の中に沸き起こる感情の揺さぶりから目を背け、混沌とした感情が嗜虐的な思考へと収まり柏木は安心感を抱いた。
「やっぱり苦しんでる野坂を見るのが1番興奮する」
まるで自分へ言い聞かせるように呟き、柏木は朔の脚を身体が折り曲がる程持ち上げより深く怒張を胎内へ押し込む。
「─っは、ぁっ……ぁあっ」
朔は苦しさと痛さと恐怖で乱れる呼吸で何とか肺に空気を送り込む。しかしそれを掻き乱すように柏木は無遠慮にガツガツと朔の胎内に怒張を打ち込み、上書きされる痛みと快楽に朔の意識は朦朧としていった。
「ぁっ…!…は…ぅ……ッ…っ……」
「また気失うの?そうやってすぐ逃げて楽になろうとするところも腹立たしいよな」
苛立ちを滲ませたまま柏木は更に朔の身体に体重をかけ怒張を奥へと挿入する。
「アッ!ぁあっッ!ゃ…はぁっやだッぁあ」
朔の身体がびくんと大きく痙攣し、胎内の最奥へ迫り来る凶器から身を守るように内壁をぎゅっと収縮させる。
「淫乱。こんなに締め付けて喜んで、全部嫌がるふりなんだろ?」
悪いのは全て朔だと言わんばかりに罵り、柏木は朔の膝裏を持ち上げベッドの上に押さえつけると、ドスンと勢いをつけて朔の最奥の壁を貫いた。
「ひぃいィイッッぁ゛あぁあ゛ぁあッッ──」
「あはは、いい悲鳴だ。結腸もすぐ抜けるようになったし締まりもいいし俺好みの肉便器だ」
柏木は満足そうに微笑み目隠しから少しだけ覗く朔の真っ青な頬を撫でる。口の横の傷はまだじくじと傷口が湿っており血が滲んでいた。
そのまま朔の唇を見つめる。血色の良い柔らかそうな唇が苦痛に歪んでいた。痛々しくて同時に扇情的でもあった。思い出したようにその唇に触れたいと思った感情がぶり返す。
今なら目隠しをしているし怯えられることなく触れることが出来る、と自分の中に言い訳がましい考えが沸いてきて慌ててその考えを振り払う。
「……うぜえ…」
小さく吐き捨てて柏木は本格的な抽挿で朔の最奥を穿ち始める。
「ぁあ゛ひぃぅっあ゛ぁあッ」
ギシギシとベッドが激しく軋みその律動の激しさを物語った。
突き上げると切なげに媚肉は柏木の肉棒を締め付け取り込むように煽動する。その刺激に柏木の息も上がり興奮が高まっていく。
「淫乱のまんこそのものって感じだな。欲しくて仕方ないって言ってるね。野坂を喜ばせたい訳じゃないんだけど」
「は…っぁ…ひ…っ…やっ──ッ」
痛みと共に無理矢理与えられる快楽に朔の身体も精神も擦り切れる寸前だった。終わらない律動と共に朔の身体はどんどん硬直して上り詰めていく。
「あっぁ…っんんッぁあッ…いっ…クっ──」
媚肉を乱暴に掻き分け胎内の奥に侵入して暴れ回る柏木の肉棒にしがみつくように肉襞を絡ませ朔は痙攣しながら絶頂した。
びくんびくんと身体を何度も震わせ唇の端からは涎が伝っていく。
「…いやらしくてはしたないね。メスにされてもう男としての普通の生活できないね」
ベッドの上で震えながら脱力する朔を見下げながら柏木は朔の太腿横にナイフでつけた傷口に爪を立てる。
「イッ─!」
血で固まっていた傷口から再び鮮血が流れていく。
「痛ぃ…ッ…ゃ……っ…」
朔が小さく抵抗するように声をあげ、その声は次第にすすり泣くような嗚咽に変わった。
柏木はそれを無視してもう一度身体を折り曲げさせ一方的な叩きつけるような律動を開始させる。
「俺イってないから。まだ終わらせねえからな」
「もっ…やっ…ぁあッ」
柏木は朔の両脚を肩にかけ体重をかけながら深く激しく奥を穿った。
無理矢理で激しい無慈悲なピストンに朔は思わず負傷していない右手で力なく柏木の身体を押し返す。
「抵抗すんじゃねぇよ。こんなのまだ序の口なんだよ。もっと苦しめ」
柏木はその右手を払い退け、ベッドの上に捨ててあったナイフを手にとるとその払い退けた朔の右手にナイフの刃の先端を軽く押し当てた。
「ひっ」
視界は奪われていてもその鋭利な先端を手のひらに感じると朔の全身は恐怖で引き攣った。
「こっちも血塗れにされたい?それとも脇腹とか腰とかを切り裂かれた方が興奮するかな?」
柏木は律動を続けながら傷が出来るか出来ないかの強さで刃を押しつけた。
「あー、それか野坂の性感帯全部に傷つけるのも面白いね。ちんぽにはもう傷できてるし後は乳首とかまんことか全部切っていこうか」
恐ろしい提案に朔の身体の震えは大きくなる。
「や…め……」
視界を奪われ、柏木がどんな表情で言っていてどの程度本気なのかがわからず、朔は大きく抵抗も拒絶も出来ず震える声で制止を求めることしか出来なかった。
柏木は弱々しい抵抗の朔の首に残ったままだった首輪を外した。
「野坂、俺の物になるって言ってよ。こんなに痛くて苦しいこと嫌だろ?俺の物になったら気持ちいいも優しいも野坂に沢山与えてあげる。野坂の無駄な精神も色んな薬で徐々に無くしてさ、最後は楽に死ねるようにしてあげるから」
外された首輪の下の細い頚部を柏木は優しくなでながら先程とはうってかわって優しい口調で朔の耳元で囁いた。
朔が何も答えず震えたままいると、突然また激しい抽挿が再開された。
「ひっァッぁあッ」
「どうなんだよ、なあ!?めんどくせえからさっさと言えよ。野坂の意志で俺の物になるって言え」
柏木は苛立ちのまま朔を突き上げながら首を片手で絞める。
「っ…ぅッ……ん……ッ」
朔は怒ったり優しく語りかけたりしてくる柏木が何を考えているのか分からなくて恐ろしくて目隠しをされ首を絞められながら死の恐怖に震える一方、同時にどこか少しずつ頭の中が冷静になっていった。
「…やっぱ首絞めると中も締まるね。結腸の奥に出すからな」
宣告の後柏木は長大な雄を激しく出し挿れさせ朔の腰骨が折れるのでは無いかという程乱暴に律動を続けた。
「ぅあぁあッッゔっ……ぁッ────っっ」
朔の悲鳴、ベッドの軋み、肌がぶつかる音、荒い呼吸、様々な音が交差し部屋内は異様な空間と化していた。
結腸の奥の奥まで届く怒張に痛みと恐怖、無理矢理押し開かれるほどに感じてしまう暗い悦楽がごちゃ混ぜになり朔に襲いかかった。
「っ…」
「──っ!」
胎内でびくびくと大きく震える柏木の怒張を感じると、程なくして身体の奥の方に熱い飛沫を感じた。
「はぁ、はぁ…」
柏木は上がる息を整えながら組み敷いた朔を観察する。
左手からの出血にくわえ、右手もいつの間にかナイフの刃が刺さっていたようで少量の血液が流れ出ていた。流れ出た血液は手首を伝い腕やベッドのシーツを赤く染めて殺人現場を彷彿とさせるような酷い有様だった。
朔はぐったりしており気を失っているのか脱力したまま身体を投げ出していた。
「野坂ー、また中に出されてイっただろ?中出しの後のケツマンの痙攣すごかったよ」
嘲りながら目隠しをされたままの朔の太腿を煽るような手つきで撫でた。朔はそれでも何も反応を示さなかった。
「ッチ、また寝やがって」
柏木は舌打ちを打つと、胎内に収まっていた萎えた男根を引き抜いた。暫くするとドロドロと白い粘液が後孔の空間から溢れ出してシーツを汚していった。
「…全部お前のせいだからな。この程度で止めてやるつもりないから」
柏木は独り言のように呟いた。
そのまま自身の身を清めて服を整えてから横たわったままの朔の目隠しを解いた。
目隠しを乱雑に外すと、朔は起きていたようで力なく目を開いたままいた。柏木は寝ていると思っていた朔の意識があったことに少し驚いて一瞬動きを止める。
朔はぼんやり空間を見つめていた視線をゆっくり柏木の方へと向けた。
「…俺……の、……せい……」
朔が小さく呟いた言葉は先程独り言のように呟いた柏木の言葉を指しているようだった。
「……そうだよ。こんな目に遭ってるのは自分自身で撒いた種のせい」
柏木はベッドの上の朔に冷たい視線と言葉を返しそのまま部屋をあとにしようと出口の方へ歩みを進めていく。
「…せんせ…おかしくさせたのも、柏木…の笑顔奪った…のも、俺の……せい?」
朔はベッドから起き上がれなく寝たまま顔だけを柏木の方に向け、先より少し力強く言葉を発し柏木の背に問いかけた。
「……そうだよ」
柏木は振り向き朔の顔を無表情で見つめながら返答した。色々な事の歯車が合わなくなりおかしくなったのは朔のせいだけでは無い。ただ、それを否定してやる義理も無いので柏木は敢えて肯定した。
「…………そうか…」
少し沈黙し、朔は小さい声で呟いた。
柏木はまた踵を返してドアの方に向かった。ドアノブに手をかけ部屋を出ようとしたタイミングで後ろからまた朔に声をかけられる。
「………どうすれば…良かったんだ……」
柏木がまた振り返り朔の様子を見る。寝たまま顔だけ向ける朔の表情は空虚な瞳で生気がまるでなかった。
「…俺は…、どうするのが正解…だったんだ……。わからないよ…何もかも……。…なん…で…………」
生気がなくまるで人形のような表情のままぽつりぽつりと話続ける朔の頬には、溢れた涙が次々と伝っていった。
何を考えているのか読めない涙。
柏木はそれを目にすると金縛りにあったように動けなくなった。
感情的に流す涙、苦痛から流す涙とも違う初めて目にする全貌が読めない涙。
また襲ってくる焦燥感。それは今までの何倍もの焦りと不安だった。
柏木はその場から動けないままベッドに横になって嗚咽も漏らさず静かに涙を流し続ける朔を眺めることしか出来なかった。
途中抵抗する朔の剥き出しの腹部にナイフの先端を近づけると、朔はすぐに大人しくなった。
部屋へと連れて行き柏木は朔をベッドの上に突き飛ばした。すぐに逃げ出そうとする朔の首に残っていた首輪をチェーンで思い切り引いた。
「ぐぅ゛ッ」
抵抗が弱まる朔の腹部に柏木は勢いをつけた重い拳をめり込ませる。痛みの衝撃に朔は柏木のベッドの上で蹲った。
「ぅ…ッ…ゔっ」
痛みに顔を歪め身を守ることで精一杯の朔を他所に柏木は朔の下半身を包んでいたバスタオルを剥ぎ取った。
「あのまま余計なこと言わなければ家に帰してやったのに」
柏木は横向きでベッドに身体を沈める朔の顕になった太腿の側面と臀部の境目をゆっくり手のひらでなぞった。朔は身体を丸めたまま耐えるようにキツく目を閉じる。
「…っ……死…にたくな…ぃ…」
朔は顔を伏せたまま震える声で独り言のように呟いた。
「死にたくない…か。死にたくないって思いながら死ぬのってどんな気分なんだろうね。野坂も気にならない?」
柏木は小さく笑いながら今度は朔の首筋を手のひらでさすった。優しいばかりの刺激が余計に恐怖心を煽った。
「でも野坂は気づかないうちに死ぬことになるよ。野坂の精神は必要ないからね。壊れて何もわからない野坂を殺したいんだ。どうせみんないつか死ぬんだから、ゴールが同じならその命俺に委ねてよ。綺麗なままの野坂を殺してあげる。でも野坂はなかなか壊れてくれないよね」
意味のわからない柏木の理論に朔は反論する余裕が無かった。今までも散々嬲られ脅されてきたが、今までの痛めつける目的の道具と違い、小さいとはいえナイフを使われると恐怖で上手く思考が回らなかった。
「縮こまって震えてばかりで何も言ってくれないね。これならどうかなー」
「ひッ─!」
最初に撫でられていた臀部の近くに熱く鋭い痛みが走る。柏木は躊躇なくそこにナイフの刃を走らせた。
浅く切り裂かれた皮膚から血液が力なく溢れ出し、5cmくらい直線に入った傷口を赤く染めていく。
「やっぱハサミと違って切れ味いいなー。野坂の血見ると興奮する。次はもっと深く刃を入れようね」
柏木は出来たばかりのその傷口に優しく口付ける。溢れた血液が柏木の唇を赤く染めた。そしてそこをゆっくり舌でなぞっていく。
痛みと恐怖で朔の瞳から堪えきれずに涙が溢れ出した。
「もっと啼きなよ。野坂の悲鳴聞かせて」
柏木は優しく語りかけるように顔を伏せたままの朔の耳元に唇を寄せた。
次にどんなことをされるのか状況がわからないと恐怖が増長され、思わず朔はすぐ横にある柏木の顔を見上げた。
朔が上を向くと柏木の顔と距離がぐっと近づいた。
長いまつ毛ときめのこまかい白い肌、高い鼻筋と射抜くように見つめる柏木の色素の薄い茶色い瞳。その瞳からは煮え滾るような暗い感情が溢れていた。
そして同時にその奥から僅かに感じ取れたのは、悲しさのようなものだった。
それを感じ取れたのは、同じだったから。朔は拓人と柏木の瞳の奥にある感情が似ていると感じた。
柏木は急に近づいた朔の顔との距離に一瞬ドキリとさせられる。その瞳は涙で濡れていてやはり恐怖を色濃く滲ませていた。
それでいいのに、やはりその恐怖の表情を見るともやもやとした不快と焦燥を感じた。
そして目が合う前は嗜虐的な思考で満ちていた頭の中が、朔と目が合うとスっと静まるような感覚に陥る。なんでそんな風に感じるのか理解出来なくて腹立たしかった。腹立たしさついでに頬を殴ろうと思い拳を握りしめた。朔の絶望や苦しみが深ければより目的達成に近づく。暴力や蹂躙で少しずつ朔の精神を壊せばいい。
柏木が手をかざすと朔の肩はびくりと震えより一層恐怖を伝えてくる。そのまま手を勢い良く振りかざして頬を思い切り殴ればいい─
柏木はその掲げた手を下ろした。
下ろしたその手は朔の頬に添わせていた。ゆっくり包み込むように。
そして頬に這わせた手のひらで朔の目の下に残った涙を拭っていた。その一連の動作に何の思惑も無く、いつの間にか意志とは関係なく行っている行動だった。
「……」
「……」
お互い驚きの表情を隠すことなく無言で相手の様子を見つめていた。
「……か…しわぎ……?」
先に口を開いたのは朔だった。
その声を耳に捉えると柏木は我に返ったように慌てて頬に添えていた手のひらで朔の口を乱暴に覆った。
「……何なんだよ…お前…」
柏木は俯いたまま低い声でボソッと呟いた。
自分の中に沸きおこる様々な感情がごちゃ混ぜにになって収集が付かなくなっていた。しまいには無意識に行動にまでその混沌が現れてしまい柏木は驚き焦っていた。
柏木は目を閉じひとつ深呼吸をした。
そのままゆっくり目を開き、ベッドの端に投げ捨てたバスタオルを掴みそのバスタオルをナイフで切り裂いた。
驚いたようにその様子を見上げる朔の顔にそのバスタオルの切れ端を巻き付けた。
「なっ、!?」
鼻と口だけ出るように顔の大部分を隠すように切り裂いたバスタオルを朔の頭の後ろでキツく縛った。
視界を奪われた朔は慌てて空いている手でその頭の後ろの結び目を解こうとする。
柏木はその手を引き剥がしベッドの上に縫いつけた。
「外せっ…!──ッ!?アァア゛ッッ!!!」
柏木は引き剥がし掴んで押さえつけていた朔の左手のひらにナイフを数センチ突き刺した。裂けた皮膚から血液が一気に溢れ朔の手のひらとベッドのシーツを赤く染めていく。
「貫通させられたくないなら大人しくしてろよ」
柏木はその血の付いたナイフをベッドの上に投げ捨てるとそのまま朔の両脚を持ち上げた。
「ひっぅ…ぅうッ……っ……っ」
ズキズキと脈と共に疼く強烈な痛みとあまりの恐怖で朔は抵抗も、大声を上げることさえも出来無かった。そのまま無抵抗な朔の身体を押し開き陵辱の痕跡が色濃く残る後孔に柏木は怒張を捩じ込んだ。
「ぁあ゛ぁあッ」
柏木は朔の絶望に喘ぐような悲鳴を聞きながらその身体を最初から容赦なく突き上げ始めた。
「ぁッぅッアァッ痛…ぅ゛ぅッひァア」
先程の朔へ抱いていた感情が影を潜め思い出したような嗜虐的な思考がまた柏木の頭の中を満たしていく。
朔の表情や瞳を覆い隠したことで自身の中に沸き起こる感情の揺さぶりから目を背け、混沌とした感情が嗜虐的な思考へと収まり柏木は安心感を抱いた。
「やっぱり苦しんでる野坂を見るのが1番興奮する」
まるで自分へ言い聞かせるように呟き、柏木は朔の脚を身体が折り曲がる程持ち上げより深く怒張を胎内へ押し込む。
「─っは、ぁっ……ぁあっ」
朔は苦しさと痛さと恐怖で乱れる呼吸で何とか肺に空気を送り込む。しかしそれを掻き乱すように柏木は無遠慮にガツガツと朔の胎内に怒張を打ち込み、上書きされる痛みと快楽に朔の意識は朦朧としていった。
「ぁっ…!…は…ぅ……ッ…っ……」
「また気失うの?そうやってすぐ逃げて楽になろうとするところも腹立たしいよな」
苛立ちを滲ませたまま柏木は更に朔の身体に体重をかけ怒張を奥へと挿入する。
「アッ!ぁあっッ!ゃ…はぁっやだッぁあ」
朔の身体がびくんと大きく痙攣し、胎内の最奥へ迫り来る凶器から身を守るように内壁をぎゅっと収縮させる。
「淫乱。こんなに締め付けて喜んで、全部嫌がるふりなんだろ?」
悪いのは全て朔だと言わんばかりに罵り、柏木は朔の膝裏を持ち上げベッドの上に押さえつけると、ドスンと勢いをつけて朔の最奥の壁を貫いた。
「ひぃいィイッッぁ゛あぁあ゛ぁあッッ──」
「あはは、いい悲鳴だ。結腸もすぐ抜けるようになったし締まりもいいし俺好みの肉便器だ」
柏木は満足そうに微笑み目隠しから少しだけ覗く朔の真っ青な頬を撫でる。口の横の傷はまだじくじと傷口が湿っており血が滲んでいた。
そのまま朔の唇を見つめる。血色の良い柔らかそうな唇が苦痛に歪んでいた。痛々しくて同時に扇情的でもあった。思い出したようにその唇に触れたいと思った感情がぶり返す。
今なら目隠しをしているし怯えられることなく触れることが出来る、と自分の中に言い訳がましい考えが沸いてきて慌ててその考えを振り払う。
「……うぜえ…」
小さく吐き捨てて柏木は本格的な抽挿で朔の最奥を穿ち始める。
「ぁあ゛ひぃぅっあ゛ぁあッ」
ギシギシとベッドが激しく軋みその律動の激しさを物語った。
突き上げると切なげに媚肉は柏木の肉棒を締め付け取り込むように煽動する。その刺激に柏木の息も上がり興奮が高まっていく。
「淫乱のまんこそのものって感じだな。欲しくて仕方ないって言ってるね。野坂を喜ばせたい訳じゃないんだけど」
「は…っぁ…ひ…っ…やっ──ッ」
痛みと共に無理矢理与えられる快楽に朔の身体も精神も擦り切れる寸前だった。終わらない律動と共に朔の身体はどんどん硬直して上り詰めていく。
「あっぁ…っんんッぁあッ…いっ…クっ──」
媚肉を乱暴に掻き分け胎内の奥に侵入して暴れ回る柏木の肉棒にしがみつくように肉襞を絡ませ朔は痙攣しながら絶頂した。
びくんびくんと身体を何度も震わせ唇の端からは涎が伝っていく。
「…いやらしくてはしたないね。メスにされてもう男としての普通の生活できないね」
ベッドの上で震えながら脱力する朔を見下げながら柏木は朔の太腿横にナイフでつけた傷口に爪を立てる。
「イッ─!」
血で固まっていた傷口から再び鮮血が流れていく。
「痛ぃ…ッ…ゃ……っ…」
朔が小さく抵抗するように声をあげ、その声は次第にすすり泣くような嗚咽に変わった。
柏木はそれを無視してもう一度身体を折り曲げさせ一方的な叩きつけるような律動を開始させる。
「俺イってないから。まだ終わらせねえからな」
「もっ…やっ…ぁあッ」
柏木は朔の両脚を肩にかけ体重をかけながら深く激しく奥を穿った。
無理矢理で激しい無慈悲なピストンに朔は思わず負傷していない右手で力なく柏木の身体を押し返す。
「抵抗すんじゃねぇよ。こんなのまだ序の口なんだよ。もっと苦しめ」
柏木はその右手を払い退け、ベッドの上に捨ててあったナイフを手にとるとその払い退けた朔の右手にナイフの刃の先端を軽く押し当てた。
「ひっ」
視界は奪われていてもその鋭利な先端を手のひらに感じると朔の全身は恐怖で引き攣った。
「こっちも血塗れにされたい?それとも脇腹とか腰とかを切り裂かれた方が興奮するかな?」
柏木は律動を続けながら傷が出来るか出来ないかの強さで刃を押しつけた。
「あー、それか野坂の性感帯全部に傷つけるのも面白いね。ちんぽにはもう傷できてるし後は乳首とかまんことか全部切っていこうか」
恐ろしい提案に朔の身体の震えは大きくなる。
「や…め……」
視界を奪われ、柏木がどんな表情で言っていてどの程度本気なのかがわからず、朔は大きく抵抗も拒絶も出来ず震える声で制止を求めることしか出来なかった。
柏木は弱々しい抵抗の朔の首に残ったままだった首輪を外した。
「野坂、俺の物になるって言ってよ。こんなに痛くて苦しいこと嫌だろ?俺の物になったら気持ちいいも優しいも野坂に沢山与えてあげる。野坂の無駄な精神も色んな薬で徐々に無くしてさ、最後は楽に死ねるようにしてあげるから」
外された首輪の下の細い頚部を柏木は優しくなでながら先程とはうってかわって優しい口調で朔の耳元で囁いた。
朔が何も答えず震えたままいると、突然また激しい抽挿が再開された。
「ひっァッぁあッ」
「どうなんだよ、なあ!?めんどくせえからさっさと言えよ。野坂の意志で俺の物になるって言え」
柏木は苛立ちのまま朔を突き上げながら首を片手で絞める。
「っ…ぅッ……ん……ッ」
朔は怒ったり優しく語りかけたりしてくる柏木が何を考えているのか分からなくて恐ろしくて目隠しをされ首を絞められながら死の恐怖に震える一方、同時にどこか少しずつ頭の中が冷静になっていった。
「…やっぱ首絞めると中も締まるね。結腸の奥に出すからな」
宣告の後柏木は長大な雄を激しく出し挿れさせ朔の腰骨が折れるのでは無いかという程乱暴に律動を続けた。
「ぅあぁあッッゔっ……ぁッ────っっ」
朔の悲鳴、ベッドの軋み、肌がぶつかる音、荒い呼吸、様々な音が交差し部屋内は異様な空間と化していた。
結腸の奥の奥まで届く怒張に痛みと恐怖、無理矢理押し開かれるほどに感じてしまう暗い悦楽がごちゃ混ぜになり朔に襲いかかった。
「っ…」
「──っ!」
胎内でびくびくと大きく震える柏木の怒張を感じると、程なくして身体の奥の方に熱い飛沫を感じた。
「はぁ、はぁ…」
柏木は上がる息を整えながら組み敷いた朔を観察する。
左手からの出血にくわえ、右手もいつの間にかナイフの刃が刺さっていたようで少量の血液が流れ出ていた。流れ出た血液は手首を伝い腕やベッドのシーツを赤く染めて殺人現場を彷彿とさせるような酷い有様だった。
朔はぐったりしており気を失っているのか脱力したまま身体を投げ出していた。
「野坂ー、また中に出されてイっただろ?中出しの後のケツマンの痙攣すごかったよ」
嘲りながら目隠しをされたままの朔の太腿を煽るような手つきで撫でた。朔はそれでも何も反応を示さなかった。
「ッチ、また寝やがって」
柏木は舌打ちを打つと、胎内に収まっていた萎えた男根を引き抜いた。暫くするとドロドロと白い粘液が後孔の空間から溢れ出してシーツを汚していった。
「…全部お前のせいだからな。この程度で止めてやるつもりないから」
柏木は独り言のように呟いた。
そのまま自身の身を清めて服を整えてから横たわったままの朔の目隠しを解いた。
目隠しを乱雑に外すと、朔は起きていたようで力なく目を開いたままいた。柏木は寝ていると思っていた朔の意識があったことに少し驚いて一瞬動きを止める。
朔はぼんやり空間を見つめていた視線をゆっくり柏木の方へと向けた。
「…俺……の、……せい……」
朔が小さく呟いた言葉は先程独り言のように呟いた柏木の言葉を指しているようだった。
「……そうだよ。こんな目に遭ってるのは自分自身で撒いた種のせい」
柏木はベッドの上の朔に冷たい視線と言葉を返しそのまま部屋をあとにしようと出口の方へ歩みを進めていく。
「…せんせ…おかしくさせたのも、柏木…の笑顔奪った…のも、俺の……せい?」
朔はベッドから起き上がれなく寝たまま顔だけを柏木の方に向け、先より少し力強く言葉を発し柏木の背に問いかけた。
「……そうだよ」
柏木は振り向き朔の顔を無表情で見つめながら返答した。色々な事の歯車が合わなくなりおかしくなったのは朔のせいだけでは無い。ただ、それを否定してやる義理も無いので柏木は敢えて肯定した。
「…………そうか…」
少し沈黙し、朔は小さい声で呟いた。
柏木はまた踵を返してドアの方に向かった。ドアノブに手をかけ部屋を出ようとしたタイミングで後ろからまた朔に声をかけられる。
「………どうすれば…良かったんだ……」
柏木がまた振り返り朔の様子を見る。寝たまま顔だけ向ける朔の表情は空虚な瞳で生気がまるでなかった。
「…俺は…、どうするのが正解…だったんだ……。わからないよ…何もかも……。…なん…で…………」
生気がなくまるで人形のような表情のままぽつりぽつりと話続ける朔の頬には、溢れた涙が次々と伝っていった。
何を考えているのか読めない涙。
柏木はそれを目にすると金縛りにあったように動けなくなった。
感情的に流す涙、苦痛から流す涙とも違う初めて目にする全貌が読めない涙。
また襲ってくる焦燥感。それは今までの何倍もの焦りと不安だった。
柏木はその場から動けないままベッドに横になって嗚咽も漏らさず静かに涙を流し続ける朔を眺めることしか出来なかった。
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