[R-18]あの部屋

まお

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48.感情1

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朔は目の前の柏木から差し出されたお盆を見つめていた。


「早く受け取れ」

考え事をしていたのもあり、朔はぼーっとしていてそう言われて始めてそのお盆が自分に渡されたものだと理解し、慌ててそれを柏木から受け取った。

そのお盆の上には、小さな土鍋に入ったお粥と、その横にネギや梅干し、漬物等の薬味が数種類乗った皿、そしてデザートのリンゴと封の開いていない500mlの水のペットボトルが乗っていた。


「…これ」

朔は受け取ったそのお盆の上の食事を目にすると忘れていた空腹感が堰を切って溢れ始めた。


「何日食ってない?餓死なんてくだらない死に方させる気ないから。さっさと食べろ」

柏木はまた机の椅子に腰掛け興味無さそうに朔へそう声をかけた。


「……いただきます…」

朔は少し戸惑いと柏木から与えられる食物に若干の警戒心を抱いたが、本能には逆らえずその食事に手をつけた。

土鍋から器にお粥を盛って蓮華でそれを口に運ぶ。久しぶりに取り込んだ栄養に身体が歓喜するように朔の手を急かした。次々に口に運ぶお粥は瞬く間に消えていく。
優しい味付けや久しぶりの食事に感極まって泣きそうになるのを堪えながら朔は一心不乱にお粥を平らげた。柏木のせいで極限に追い込まれたのは確かだが、自分で食事を疎かにしていたことも事実だった。少しづつ空腹が満たされると、柏木が色々気を使ってくれていた事に関しては礼を言うべきか等と考えていた。


「ごちそうさまでした。…すげー美味かった」

ものの10分程度でお盆の上の食事を完食した朔の顔色は血色が良くなった。
そして少しはにかんだような嬉しそうな表情で食事の入っていた食器を眺めていた。

柏木は驚いて朔のその様子を見つめた。
初めて目にした朔のその表情に何かざわつきのようなものを感じる。またよく分からない感情が自分に訴えかけてくる気持ち悪さを感じ、今度はむかつきを覚えた。


「……この床の上でヤったこと覚えてる?」

柏木はその苛立ちをぶつけるように朔の座るベッドに近づき、少し乱暴に朔の膝の上に乗っていたお盆を取り上げると上から見下ろすようにして朔に声をかけた。


「……断片……的…に」

柏木を見上げた朔は、先程までの緩んだ表情は一瞬にしてなりを潜め、いつも通りの緊張と恐怖の混じった顔で柏木を見つめた。


「……」

柏木はそのいつもの表情にも苛立ちを感じた。さっきの緩んだ初めて見る表情は、柏木の得体の知れない感情に訴えかけて煩わしいし、このいつもの恐怖と緊張の表情も何故か今は腹立たしくて仕方がない。


「野坂さ俺の部屋で、この床の上でまたお漏らししたんだよ。電気流されて1人で気持ち良くなって小便まで漏らしてはしたなかったなー。もはやゴミみたいだよ、お前は」

柏木はいつもの調子で見上げる朔に笑顔で暴言を吐いた。朔は一瞬驚いた表情を見せてから、今度は少し悲しそうな表情を見せてまた恐怖と緊張と嫌悪の表情で柏木を睨みつける。コロコロ変わる朔の表情をこんなに気にしたことは今まで無かった。いや、気にならなかった。苦しんで悲しんで絶望に泣き叫んでいる表情は柏木を興奮させたが、他は別にどうでも良かった。

柏木はいつもの泣き叫んでいる朔の表情を見ればこの訳の分からない感情を塗りつぶせると考えた。柏木はお盆を机の上に置いてから朔をベッドの上に押し倒した。


「快気祝いにちんぽ恵んでやるよ」

ベッドの上に縫い付けられた朔は、驚いた表情で柏木を見上げたあと、悔しそうに顔を歪めた。


「……少しでも…お前を…見直そうと思った俺が……間違っていたんだな…」

朔は柏木から視線を逸らし悔しさを噛み殺すように言葉を振り絞った。
柏木は朔のその表情にやはり気を取られる。悔しさや怒りと一緒に少しだけ混じる悲しみの表情。

身体の奥がズキズキと痛みだす。身に覚えのない痛みが不快で堪らなかった。内蔵の痛みでは無い。では何の痛みなんだ?
柏木は先から立て続く把握出来ない感情に振り回され続け湧き上がる焦燥と怒りの矛先を目の前の朔に向けた。


「…そうやって感情表現してくんな。クソうぜぇな、死ねよ」

低い声で柏木が唸るように吐き捨てる。そして朔の首に両手を軽くかけた。
いきなり絞められた訳ではなく軽く頚部にかかる両手の感触だけで、朔は顔色を真っ青にし、恐怖が身体を支配し全身が強ばる。


「へー、お利口になったね。自分の状況をすぐ理解出来るようになったんだ。あんなに苦しめられるの、嫌だもんね?」

柏木は手に力を少し込めたり緩めたりを繰り返しながら朔の様子を観察する。するとそれを引き剥がすように朔の手が柏木の手を掴んだ。


「離せ…!」

朔は手だけではなく全身を大きく揺すり柏木の下から逃げ出そうと強く抵抗を始めた。


「ここで騒ぐ?オーディエンスが欲しい?」

そう言われて思い出す先程の間中という女性の存在。朔はピタッと動きを止めた。彼女は1階にいるし、距離もだいぶある。相当な大声で叫ばない限り聞こえないし、何よりこの悪魔から助けてもらえるならその方が朔にとっては望む事の筈。しかし朔は何も言えずに動きを止めた。


「そう、物分りいいね。男に犯されてる所なんて見られたら軽蔑されるっていうのは野坂が一番良くわかってるもんね」

そう言われなくても、朔の頭の中にはあの時の映像が目の前の現実のように流れ込んでいた。拓人との行為中に母親に見つかってしまったあの時のこと。

母親の剣幕、取り乱し方、その後憔悴し辛そうにすごす母の様子。父親からの言葉。医者や警察等から向けられる哀れみの目。
見られなければ、バレなければ何もかも丸く納まった。日常が壊れることも無かった。
朔の中にはその時の出来事が、その時の感情が
頭の奥の方まで染み付いていた。


「君のお母さんは大変だったね。見られる側が被害者だと思ってるんだろうけど、見せられる側の方が精神的に苦痛だよな。野坂はお母さんを苦しめたし、そうやってまた被害者を増やしたくないよね?」

柏木は朔だけが一方的に悪いような言い方をする。冷静であればそれに反論だって出来たが朔はまた過去の記憶に囚われ怯え軽いパニックに陥っていた。


「…野坂が大人しく声抑えていればバレないよ。月曜もちゃんと学校に来て俺の言うこと聞けばいいんだよ。約束破ったり俺から逃げようとするなら動画送って兄貴の時と同じく親の目の前で犯してやるよ。でも野坂が約束守るなら、お母さんに辛い思いをさせないし、野坂は親孝行出来るね」

柏木は朔をさらに追い詰めるように優しい口調で畳み掛ける。小さく震える朔を優しく抱き寄せるようにして柏木は朔に覆い被さる。征服欲が満たされ嗜虐心が湧いてくる。それを確認して柏木はどこかほっとしていた。一つ一つの朔への行動の中で自分は何も変わっていないことを確認していく。

服を全て脱がせるとやせ細って痣だらけの身体が現れる。さっき食べさせたし少し乱暴に抱いても大丈夫だろうと考えながら抵抗してこない朔の後ろ孔にだ液で濡らした指を埋めていく。


「ひィっ…」

か細い悲鳴が漏れるが柏木は無視して今度は無理矢理3本の指をそこに突っ込む。


「ァア…ッ!」

シーツに皺がより、朔の方に視線を向けると自由な手でシーツを掴み痛みに耐えるように顔を横に背けていた。


「もっと痛くて、もっと気持ちいいことするからね…」

ゾクゾクしてもっと苦しめたくなる。
この数日は朔を散々蹂躙し続けた。兄と関係を持っていた頃から知っている朔の存在。兄の物だった朔を好き勝手に扱うことができる優越感や性的興奮。楽しくて夢中になり犯すことで満たされ放出される快楽物質に酔いしれた。
今もそのまま本能の赴くままに犯してもまだまだ飽きることも無く楽しめそうだったが、柏木は散々犯して少し余裕が出来た今、より楽しめる方法を考えた。
柏木は朔の顔を真上から見下ろす。


「痛い?ごめんね。可哀想に…泣かないで」

柏木は痛みに耐え涙を溜める朔の頬を優しく撫でた。いきなり態度を変えられ朔も驚き柏木を見上げた。
埋められた指はいつの間にか1本だけになり、朔は詰めていた息を無意識に解放する。


「お詫びに痛み無しで野坂を気持ち良くさせてあげるね」

「……の、…ぞんでない…」

朔は意図の読めない柏木の言葉にただ恐怖しか感じなかった。
柏木はそんな朔の言葉を無視して朔の首元に顔を寄せ鎖骨から首筋を舌でゆっくりなぞった。


「ッんっ」

朔は戸惑いながら声を抑え、そして柏木を引き剥がそうと肩を押し返す。すかさず柏木は朔の胎内に埋まった指で的確に朔の前立腺を刺激する。


「んんンっ」

思惑通り朔の身体は簡単に快楽を拾いそこをぎゅっと強く締め付け、反対に柏木を押し返す腕の力は弱まってしまう。

柏木は痛みに歪み絶望に咽び泣く朔の表情を最高に引き立たせるものとして、あえて対極にある「優しさ」と「快楽」を最大限に与えようと考えた。優しく快楽で溶かされ気持ちが高揚した瞬間に突き落とすように苦痛を与える。
その落差に朔の顔がどんな絶望と苦しみに歪むのかを想像すると、身体の中心が熱く滾った。
そうやって沢山遊んでからゆっくり弱らせて殺すのも有りだなと柏木は考えを巡らせる。

兄の拓人は朔の死を知った時、どんな表情をするのだろう。柏木はそれを想像してほくそ笑んだ。

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