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柏木は朔を背負ったまま屋上前の階段を降りる。周りの様子を確認した後、階段の下段の方から先程朔に宣言した通り朔を背中から落とし朔の身体を蹴って階段から身体を転がした。
無抵抗な朔の身体はそのまま2、3段の段差から転げ落ちて踊り場の床の上に仰向けで留まる。朔はぐったりしたまま起きる気配は無かった。
その朔の身体を跨いで柏木は何事も無かったように、さらに階段を降りていき自分の教室のある階へと向かった。
「…すみません、遅れてしまって…」
柏木は授業終了まで残り10分というタイミングでクラスへ1人戻った。
普段成績も授業態度も良く欠席もしない柏木に対し教師は驚いた様子を見せたがとくに咎めることはしない。
「柏木、朔は…?」
哲史は授業中にも関わらず席に着いたばかりの柏木に少し遠い席から声をかけ朔の所在を確認した。
柏木は肩を落とし無言で首を横に振った。
「ほら、授業中だぞ!」
教師は私語をする哲史を注意してそのまま授業は進行した。
「柏木、どの辺探した?俺も一緒に探す。朔に連絡入れたんだけど全然既読にならないし…」
休み時間哲史は柏木に話しかける。
「心配だよな…。俺のせいだ…」
「柏木は悪くないだろ?でも……朔も何であんな態度取るんだろう…」
「俺やっぱり野坂に嫌われてるだと…思う。俺ももう一回探す。ちゃんと野坂に謝りたいし。カバンはあるから学校には居るはずなんだけど…。俺は1階から2階とグラウンドと体育館の方を探すよ。東海林は、3、4階と…屋上見てくれるか?」
「わかった!」
哲史は頷き先に教室を出ていく。それを確認してから柏木は動き出した。
哲史は柏木に言われた通り教室のある3階から調べる。音楽室やパソコン室、男子トイレの個室まで調べるが朔の姿は無かった。
(朔の行きそうな場所……行くとしたら体育館倉庫とか中庭かな…。でもそっちは柏木が調べるって言ってたし…)
哲史は朔の行きそうな所、サボれそうな所を順番に探していく。そして朔を探しながら朔の行動を思い返していた。
(…やっぱり、朔は柏木のこと苦手なのかな…。あんなに怒る朔久しぶりに見た…)
朔はどちらかと言うといつも無気力だった。昔はよく笑う子どもだったが、中学からの朔は無気力で腹の底から笑うことも怒ることも少なかったように思える。そんな朔の様子にやはり驚きを隠せなかった。
そのまま4階も見回ったが朔の姿は無かった。
(あとは…屋上か…。屋上は……はじめ行きそうだな!)
今更ながら有力な候補場所を思いつき哲史は慌てて学校の西側にある屋上へ繋がる階段へ向かう。ダンボールや荷物が密集して置かれる場所で少し奥まっているためあまり普段は使わないその階段。哲史も屋上は入学してから2回ほどしか立ち入ったことが無かった。
その階段を上り折り返そうとした踊り場に、寝ている人物を発見した。先輩かと思って警戒した哲史だったが、それがすぐよく見知った人物だということがわかった。
「え……。は、…じめ…?おい!!はじめ!!大丈夫か!?」
床に仰向けで倒れていたのは朔だった。哲史は朔に慌てて駆け寄り身体を譲ろうとして、さらにはっとさせられる。
「血が……。はじめ!!起きろ!大丈夫か、はじめッ!!」
哲史が朔の額から出血しているのを確認すると、血相を変えて朔の肩を大きく譲った。朔の意識は戻らない。
「はじめ!はじめ!!」
パニックになる哲史の後ろからすっと人影が忍び寄る。
「野坂!!」
哲史がその人物を見上げると、見上げた人物─柏木が慌てた様子で同じように倒れている朔に声をかけている。
「柏木…どうしよ…はじめが……っ」
「……大丈夫だ。息はしてる。頭の傷も深くはない。もしかしたら階段から踏み外したのかもしれない」
柏木は朔の様子を一瞬で見極める。哲史はそれを見て少し安心した。
柏木はそのまま自分のスマホをポケットから取り出し何処かに電話をかけた。
「東海林、野坂をタクシーで病院まで運ぶ。お前は先生に伝えて野坂のカバン教室から取ってきくれないか。下にタクシー呼んでるからそこまで持ってきて欲しい」
「わ、わかった!……でも…救急車じゃなくていいのか…?」
「救急車なら大事になるし、野坂も嫌だろ。…俺の親は医者だ。親の病院に一旦野坂を運ぶよ。俺も付き添うから安心して野坂を任せてくれ」
「わ…わかった。とりあえず先生に言って、はじめと柏木の荷物も持ってくるな!」
「ありがとう」
そう言うと哲史は2人を残して慌てて教室へと向かった。
屋上へ向かう階段の踊り場は意識の無い朔と柏木の2人きりになる。
「…救急車なんかで運ばれたら…色々バレたくない傷、バレて困るもんね、野坂」
柏木は眠り続ける朔のネックウォーマーを指で引き上げる。朔の首には締められた跡とキスマークが幾つも色濃く残っていた。
そのままゆっくり頬を撫でる。
「エッチでイきすぎて疲れちゃったか…」
柏木はそのまま眠る朔を抱き抱えその場を後にする。休み時間は終わっていて廊下は静かだった。
そのまま校門へ向かうと呼んでいたタクシーが停まっている。柏木は朔を抱き抱えて後部座席に寝かせるように乗せた。
「柏木ー!荷物取ってきた!先生には言っておいたから!」
「何から何まで悪いな…ありがとう東海林」
「俺はいいんだけど…はじめ大丈夫か…?」
「大丈夫、俺の親父がちゃんと診てくれるから。多分大したことは無いと思うけど一応頭打ってるかもしれないし、検査入院になると思う…。だけど、うちの病院見舞いは家族だけだから東海林は心配かもしれなけど家で待機な。野坂にも言っておくから」
「…わかった」
「じゃ、行ってくる。俺はまた学校戻るから野坂の状況後で伝えるな」
「おう!」
柏木はタクシーの助手席へ乗り込むと、タクシーは学校を後にした。
そして、そのまま柏木が告げた住所。病院では無く、柏木の自宅へとタクシーは2人を乗せて向かった。
無抵抗な朔の身体はそのまま2、3段の段差から転げ落ちて踊り場の床の上に仰向けで留まる。朔はぐったりしたまま起きる気配は無かった。
その朔の身体を跨いで柏木は何事も無かったように、さらに階段を降りていき自分の教室のある階へと向かった。
「…すみません、遅れてしまって…」
柏木は授業終了まで残り10分というタイミングでクラスへ1人戻った。
普段成績も授業態度も良く欠席もしない柏木に対し教師は驚いた様子を見せたがとくに咎めることはしない。
「柏木、朔は…?」
哲史は授業中にも関わらず席に着いたばかりの柏木に少し遠い席から声をかけ朔の所在を確認した。
柏木は肩を落とし無言で首を横に振った。
「ほら、授業中だぞ!」
教師は私語をする哲史を注意してそのまま授業は進行した。
「柏木、どの辺探した?俺も一緒に探す。朔に連絡入れたんだけど全然既読にならないし…」
休み時間哲史は柏木に話しかける。
「心配だよな…。俺のせいだ…」
「柏木は悪くないだろ?でも……朔も何であんな態度取るんだろう…」
「俺やっぱり野坂に嫌われてるだと…思う。俺ももう一回探す。ちゃんと野坂に謝りたいし。カバンはあるから学校には居るはずなんだけど…。俺は1階から2階とグラウンドと体育館の方を探すよ。東海林は、3、4階と…屋上見てくれるか?」
「わかった!」
哲史は頷き先に教室を出ていく。それを確認してから柏木は動き出した。
哲史は柏木に言われた通り教室のある3階から調べる。音楽室やパソコン室、男子トイレの個室まで調べるが朔の姿は無かった。
(朔の行きそうな場所……行くとしたら体育館倉庫とか中庭かな…。でもそっちは柏木が調べるって言ってたし…)
哲史は朔の行きそうな所、サボれそうな所を順番に探していく。そして朔を探しながら朔の行動を思い返していた。
(…やっぱり、朔は柏木のこと苦手なのかな…。あんなに怒る朔久しぶりに見た…)
朔はどちらかと言うといつも無気力だった。昔はよく笑う子どもだったが、中学からの朔は無気力で腹の底から笑うことも怒ることも少なかったように思える。そんな朔の様子にやはり驚きを隠せなかった。
そのまま4階も見回ったが朔の姿は無かった。
(あとは…屋上か…。屋上は……はじめ行きそうだな!)
今更ながら有力な候補場所を思いつき哲史は慌てて学校の西側にある屋上へ繋がる階段へ向かう。ダンボールや荷物が密集して置かれる場所で少し奥まっているためあまり普段は使わないその階段。哲史も屋上は入学してから2回ほどしか立ち入ったことが無かった。
その階段を上り折り返そうとした踊り場に、寝ている人物を発見した。先輩かと思って警戒した哲史だったが、それがすぐよく見知った人物だということがわかった。
「え……。は、…じめ…?おい!!はじめ!!大丈夫か!?」
床に仰向けで倒れていたのは朔だった。哲史は朔に慌てて駆け寄り身体を譲ろうとして、さらにはっとさせられる。
「血が……。はじめ!!起きろ!大丈夫か、はじめッ!!」
哲史が朔の額から出血しているのを確認すると、血相を変えて朔の肩を大きく譲った。朔の意識は戻らない。
「はじめ!はじめ!!」
パニックになる哲史の後ろからすっと人影が忍び寄る。
「野坂!!」
哲史がその人物を見上げると、見上げた人物─柏木が慌てた様子で同じように倒れている朔に声をかけている。
「柏木…どうしよ…はじめが……っ」
「……大丈夫だ。息はしてる。頭の傷も深くはない。もしかしたら階段から踏み外したのかもしれない」
柏木は朔の様子を一瞬で見極める。哲史はそれを見て少し安心した。
柏木はそのまま自分のスマホをポケットから取り出し何処かに電話をかけた。
「東海林、野坂をタクシーで病院まで運ぶ。お前は先生に伝えて野坂のカバン教室から取ってきくれないか。下にタクシー呼んでるからそこまで持ってきて欲しい」
「わ、わかった!……でも…救急車じゃなくていいのか…?」
「救急車なら大事になるし、野坂も嫌だろ。…俺の親は医者だ。親の病院に一旦野坂を運ぶよ。俺も付き添うから安心して野坂を任せてくれ」
「わ…わかった。とりあえず先生に言って、はじめと柏木の荷物も持ってくるな!」
「ありがとう」
そう言うと哲史は2人を残して慌てて教室へと向かった。
屋上へ向かう階段の踊り場は意識の無い朔と柏木の2人きりになる。
「…救急車なんかで運ばれたら…色々バレたくない傷、バレて困るもんね、野坂」
柏木は眠り続ける朔のネックウォーマーを指で引き上げる。朔の首には締められた跡とキスマークが幾つも色濃く残っていた。
そのままゆっくり頬を撫でる。
「エッチでイきすぎて疲れちゃったか…」
柏木はそのまま眠る朔を抱き抱えその場を後にする。休み時間は終わっていて廊下は静かだった。
そのまま校門へ向かうと呼んでいたタクシーが停まっている。柏木は朔を抱き抱えて後部座席に寝かせるように乗せた。
「柏木ー!荷物取ってきた!先生には言っておいたから!」
「何から何まで悪いな…ありがとう東海林」
「俺はいいんだけど…はじめ大丈夫か…?」
「大丈夫、俺の親父がちゃんと診てくれるから。多分大したことは無いと思うけど一応頭打ってるかもしれないし、検査入院になると思う…。だけど、うちの病院見舞いは家族だけだから東海林は心配かもしれなけど家で待機な。野坂にも言っておくから」
「…わかった」
「じゃ、行ってくる。俺はまた学校戻るから野坂の状況後で伝えるな」
「おう!」
柏木はタクシーの助手席へ乗り込むと、タクシーは学校を後にした。
そして、そのまま柏木が告げた住所。病院では無く、柏木の自宅へとタクシーは2人を乗せて向かった。
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