[R-18]あの部屋

まお

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6.本性1

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はじめは信じられない気持ちで柏木を凝視していると、柏木に唇を奪われた。
一瞬何が起こったかわからなかったが、触れた唇から嫌悪感と同時に、記憶が引きずり出されそうな恐怖に襲われた。
思い出したくない。
こわい。
本能的にそう感じ朔は慌てて抵抗し柏木の唇に思い切り噛み付いた。


「ッー…」

柏木は朔から顔を離し噛まれた唇を手の項で押さえる。唇は切れて血が流れた。


「…何すんだッ離せよ!!なんで…こんなことするんだ!?」

「…容赦ないなー…。まあ、抵抗してくれた方が犯しがいがあるけどね。」


柏木は朔の罵声を無視して目を細めニヤッと笑うと、ベッド横に置いてあった自分のスクールバッグの中から大きなハサミを取り出す。朔はその凶器を目にしてギョッとし、自分の顔から血の気が引いていくのがわかった。

「な…っ、……何する……」

「動いたら刺さっちゃうかも。血まみれになりたくないなら静かにしててね。」

その銀色に光る刃の部分でわざと朔の胸の中心をTシャツの上からなぞるように下に沿わせて裾の部分まで移動させる。柏木の脅しに朔は動きを止め、恐怖で震えそうな身体を何とか抑え込みその刃の行方を見守る事しか出来なかった。
裾の部分にハサミが到達すると、そのままTシャツの生地を両の刃に挟み、ざくっざくっとなんの躊躇もなく柏木はハサミで朔の着ていたTシャツを縦に切り裂いていく。生地をハサミで切りすすめる中で、冷たい無機質な刃の一部がたまに朔の肌を直接掠めた。本当は叫んで暴れて抵抗したかったが、柏木の狂気を目の前にすると何も行動を起こすことは出来なかった。


「野坂の肌すべすべ。乳首も小さくて可愛い。」

そう言いながら裸に剥かれた上半身をハサミを持っていない左手で優しく撫でさすられる。


「…や、めろ!気持ちわりぃんだよ!この…変態が…ッ」

まだ持ったままのハサミに気を取られながらも、朔は精一杯の嫌悪感を目の前の柏木に向け、鋭く睨みつけた。柏木はいつも通りの優しい笑みを朔に返す。そしておもむろにハサミを持ったままの右手を振りかざすと、思いっきりその手を朔の左耳のすぐ横に突き落とした。その手の中に握られた閉じられたままのハサミの刃が突き刺さった枕は無惨にも布が裂けて中の綿が衝撃で舞った。


「──ッ」

あまりのことに、朔は言葉が出なかった。そしてそのまますぐ自分の左横の視界に入る銀色のハサミの刃におそるおそる視線を向ける。あの勢いで少しでもこちら側にズレていれば、大怪我では済まされないことは枕の損傷具合を見れば容易に想像できた。


「ごめんごめん。手が滑ったよ。野坂に刺さらなくて良かった。」

先程の笑顔から全く表情を変えず、柏木は枕にハサミを突き刺したまま、空いた右手で朔の左頬を優しく包み込むように撫でた。思わずその動作に恐怖からビクッと朔の身体が竦む。柏木はどう見ても故意なのに心配するような言葉を投げかけてきた。


「…っ…」

朔は何も言葉が出なかった。いや、出せなかった。ここまでの一連の流れで、目の前の男の異常性は嫌という程伝わった。


「野坂大丈夫?顔色が真っ青だ…。寒い?このハサミは危ないから捨てようね。」

本当に心配そうな表情で柏木は朔を覗き込み、そのまま枕に突き刺さったハサミを引き抜くと部屋の壁の方に投げ捨てた。壁にハサミが当たり、高くて鋭い衝突音を部屋の中に響かせる。


「顔色治らないね。寒いなら…温めてあげるよ。」

そのまま柏木は、切り裂かれたTシャツの下の朔の素肌に顔を寄せ、舌を這わせ始めた。


「…ッ!ゃ…やめろ…!離れろ!いやだ!!」

朔は少し正気を取り戻すと、固定された手を左右に揺すり必死に抵抗し始めた。目の前の男から逃げたい。そして、中学の時のような
─もうあんな思いはしたくない。
思い出したくない。そんな抵抗を全く意に介さず柏木は胸の中心から舌を移動させそのままゆっくり朔の胸の突起を舌で優しく捉える。


「─アッ!」

思わず漏れた声と、反射的に飛び上がる朔の身体。舌で嬲られた胸の突起は、すかさず硬さを持ち柏木の舌先に主張を示す。


「かわいい声ー。感度もばっちりだね。昔からココ弱いもんね。動画の中でも兄貴に舐められてあんあん可愛く喘いでたね。」

「ッ黙れ!!やめろ…もう、やめろよ!!」


曖昧な、閉じ込めた記憶を引きずり出されそうになる嫌悪感、そして目の前の異常者から逃れられない焦り。圧倒的に不利なこの状況に、朔は徐々に不安と恐怖で押しつぶされそうになる。


「っ、お前の…目的は何なんだ…」

どうにか逃げる方法を模索しながら目の前の男に問いかけた。


「さっきも言っただろ。俺は野坂を犯したいだけだよ。」

「……な…んで……っ、そんな事がしたいんだよ!」

「なんで?それは、野坂に興味があるからだよ。動画の中で沢山見せてくれた、野坂の苦しむ顔や悲しむ顔、気持ちよさそうな顔も見たいし、嫌がりながらドロドロに溶かされる野坂も見たい。怯えながら支配される野坂も見たいな。色んな野坂の表情が見たいんだ。他の誰かにこんな気持ちを抱いた事は今までなかった。…俺は野坂の事が好きみたいだ。」

ニコッと人受けしそうな可愛らしさと爽やかさを兼ね備えた笑顔を見せる柏木。


「…そん…なの…─好きなんかじゃない…!お前は狂ってる…異常者だよ!」

そう怒鳴りながら、朔は妙な違和感を感じた。でもその違和感の正体はこの状況下で突き止めることは出来なかった。


「…なら、今日は異常者にイかされて絶望する野坂も見れる…って訳だ」

先程の笑顔から一変、鋭い絡みつくような蛇のような視線を朔に向ける柏木。それに警戒する間もなく柏木は朔の首筋に顔を埋めると、ゆっくりと耳に舌を這わせ、ねじ込んでいく。


「ヒッ…いやだ!!」

朔は首を左右に振り耳を攻める舌から逃れるように抵抗する。大きくかぶりを振っていると、顔を寄せていた柏木の頬に朔の頭が勢い良くぶつかった。小さな反撃でも向こうへダメージを与えられた事でどうにか隙を見つけようとしていた矢先に、朔は柏木に髪を思いっきり鷲掴みにされ首を固定された。


「─痛ッ!」

さらに柏木は頭を乱暴に固定されて動けない朔の耳元で囁く。


「兄貴との事、忘れて無かったことにしたかった?…全て思い出させてやるよ。そしてそれを上書きするくらい俺が沢山野坂を汚してあげるね。」

囁かれた直後、先程舌で優しく刺激され立ち上がっていた朔の胸の突起に柏木は口を寄せ、思い切りそこに歯を立てた。


「ぁあ"ぁあ"ッくッ…はな…っせ!!」

あまりの痛みに身体が飛び跳ねる。柏木は噛み切る勢いで力を徐々に強めていった。


「痛いッ!いだぃ"ッやめろ!!」

固定された腕ごと身体を左右に揺すると、掴まれたままの髪の毛がブチブチと抜ける嫌な音が脳内に響きさらに別の痛みを上乗せする事になる。痛みで朔の瞳に生理的な涙が溢れる。涙目で何とか柏木に目でやめろと訴えようとすると、胸の突起に歯を立てたまま笑みを浮かべている柏木と視線が合う。


「のさかのちくび、このまま噛み切ってもってかえろうかな」

その言葉が冗談に思えないくらいの力で噛まれ、朔の瞳から溜まっていた涙が一筋こぼれ落ちた。


「嫌だ…ッ!お願いだから、離して…くれっ!」

柏木に視線を向けてそう懇願した際に痛みの元である胸の突起にも目を向けると、そこは噛まれて傷つき滲んだ血と柏木の唾液とが混じり合い胸の端へと伝っていた。それを目にしてしまうと本当に噛み切られるのでは無いかという焦燥感とその部位への痛みが増す。


「ひッ!は、離せ!離して…ッ」

すると、柏木はあっさりそこから口を離し、掴んでいた髪からも手を退けた。やっと痛みの原因が無くなり、朔は慌ててもう一度頭を上げて胸の突起を再度確認する。噛みちぎられてはいないが、真っ赤に腫れており隅の方がやはり切れて血が滲んでいた。傷の深さを確認するのに気を取られていると、柏木が一瞬の間ベッドから離れていた事を、歩いて近づいてきた柏木の姿を見上げて気づいた。


「てめ……っ警察に…………───!」

罵倒を浴びせようとしてベッド横に立ったままの柏木を睨みつけてすぐに、朔はその違和感に気づくと、息を呑む。立ったままの柏木の手には、さっき壁に向かって投げ捨てられた筈のハサミが握られていた。


「気づかなくてごめんね。歯で噛みちぎるより、こっちでスパッと切ってあげた方が苦しまなくて済んだね。今やってあげるからね」

そのままハサミを片手に近づいてくる柏木に、朔の背筋に恐怖の戦慄が走る。


「ヒッ…や、やめ!!くるな…っ、やめっ…」

柏木の表情は穏やかな微笑みを浮かべている。
でもその目はとても冷ややかでまるで海峡や洞窟かのように暗くて闇深かった。朔は、腕をベッドに拘束されているせいで逃げる事は出来ない。じりじりと近寄ってくる柏木に、そのうち恐怖で言葉が詰まり始める。


「やっ…や……だっ………っ…る…なっ」

ギィっと柏木が朔の寝かされているベッドの上に膝をつき、朔の身体に覆い被さるように腕をつく。


「…今の野坂の表情……凄く綺麗。」

真上から熱っぽい表情で朔の顔を覗き込み、柏木は持っているハサミの先端を朔の顎から喉元へと滑らせる。


「はぁ…、野坂、すごいよ。どうしよう……。やっぱりこの喉仏もすごくセクシーだし、その綺麗な唇も欲しくなっちゃったな。全部このハサミで切り取ってコレクションしようかな」

友達と談笑でもしているかのような楽しそうな笑顔とじっとりした熱い視線を交えながら一方的に猟奇的なことを朔に語りかけてくる柏木。


「でも、まずは乳首だね。赤く腫れて痛そうだから早く切り取ってあげようね。」

そう言うと持っていたハサミを朔の胸に刃が並行になるように押し当てて持ち手にかかる指を左右に広げる。


「や、やだッ!!やめろっ──!!」


腫れる突起にハサミの刃が軽く食い込み朔が悲鳴のように叫んだ。


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