[R-18]あの部屋

まお

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5.事実

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次に目が覚めた時、はじめは自分の部屋のベットの上だった。辺りは薄暗く日が暮れかけていることだけはわかった。

(あれ、俺何してたんだっけ…。今何時だ…スマホ…)


体を動かそうとした瞬間、腕の痛み、目の痛み、背中の痛みが一気に襲い起き上がろうとしても体が動かなかった。


「よく寝てたね。薬多かったかな」


自分の部屋から自分じゃない声が響いて朔は驚いて反射的に声の方に顔を勢い良く向ける。そこにいたのはベッドの横で微笑み朔を見下ろす柏木だった。一気に記憶が蘇る。

(そうだ、俺、コイツに変なスプレーかけられて眠らされたんだ…)

朔は忘れていた柏木への恐怖感に一気に支配された。
逃げなきゃ…
腕を動かそうとすると、腕は頭上で固定されている様で動かせなかった。

「野坂、さっきは手荒なことしてごめんね。大丈夫?」

柏木が朔の寝かされてるベットを覗き込み朔をいつもと変わらない笑顔で見下ろしてくる。

「…おい!!これ、どーゆうことだよ!?手ほどけ!!離れろっ!!」

「あはは、手放したら逃げちゃうでしょ?離す訳にはいかないんだ。」

「っ…、てめぇ、何が目的だ」


まるでいつもと変わらない様子で普通に話している柏木に朔は底知れぬ恐怖を感じた。それを押し殺し精一杯の威嚇を柏木に向ける。


「震えてる…かわいい」

柏木は朔の頬を手でさすり微笑んだ。朔は背中に走るゾワッとした嫌悪感を拭いきれず思い切り首を振り抵抗し始める。

「やめろ!!気色悪い!触んじゃねぇ!!離せっ!!!!」

柏木は朔の拒絶に対し表情一つ変えずベッドの横にしゃがみこみ朔と視線の高さを合わせ問いかけてくる。


「ねえ野坂、俺が誰かわかる?」

「…は?柏木だろ。訳わかんねーこと言ってないでさっさとこの手をほどけ!!」

「美伯 拓人」


朔は急に出てきたその名前に思考が止まった。驚きすぎて声も出せず目を丸くして柏木を見返した。


その名前を忘れるはずがなかった。忘れたくても忘れられない、朔の人生を狂わした張本人、家庭教師の名前だった。

「…って知ってる?……って聞かなくても充分みたいだね。」

「…なん…」

「なんで俺がその名前を知ってるかってことだよね?」


柏木は朔の頬を撫でていた手を自分の制服のポケットにうつし、ポケットの中からスマホを取り出す。そのスマホの背面を朔に向けて何か操作をし始めた。

「俺さ、旧姓美伯って言うの。」

ピッという音の後に右手に持ったスマホを下から上になめるように動かし朔をムービーに収めているようだった。柏木は朔の顔の前にスマホを固定し表情を愉快そうにスマホ越しに眺める。

「どうも、兄貴がお世話になりましたー」

とニヤっと笑いながらスマホの中の驚愕と困惑を表した朔の表情を見つめながらそう言い放った。


朔の頭の中は混乱していた。

(─柏木の旧姓が美伯。兄がお世話に?)


「驚いた?君をめちゃくちゃにした家庭教師の拓先生は俺の兄貴なの。ほら、笑った時の目元とかよく似てるって言われるけど覚えてる?」

朔は柏木を凝視した。
そうだ、柏木に対して抱いていた警戒心と恐怖。言われてみれば先生とよく似ていた。顔の造形は柏木の方が華やかではあるが、それこそ笑った時の目元の感じはよく似ていた。
だからこそ、朔の本能が朔に恐怖心と拒否反応という危険信号を送っていたんだ。

「やっぱり映像より本物の方が可愛いいなー。君と初めて話した時は本当に興奮したよ。勃ってるのバレないかヒヤヒヤしたわ。」

発言の内容に反した爽やかな笑顔でそう言いながら柏木は朔の表情をずっとスマホ越しに見ている。その内容への嫌悪感より、とにかく状況を理解するのに朔は手一杯だった。そしてこの状況に対する危機感や、その他にも聞きたいことが山ほどあって、朔は何から言葉を発していいのかわからず言葉を言いあぐねていると柏木は話を続けた。

「俺さ、こんな底辺のバカ高校に入ったのも全部君に近づくためだった。君のことは兄貴が警察に捕まる少し前から知っていた。兄貴さ、家族やみんなの前でお手本のような優等生ぶってたから、まさか部屋のパソコンから君とのハメ撮り映像が出てくるなんて夢にも思わなかったよ。それを見つけた時は腰が抜けるほど驚いた。もちろん兄貴には言わなかった。でもたまに盗み見るたびに君との映像が増えていって、初めはショックだったけど次第に俺も君にとても興味が湧いた。兄貴が捕まってから君を探して家も特定した。どこの中学に通ってるのか、普段何をしてるのか、彼女はいるのか、どこの高校に入るのか…君のこと全部見てきたから、俺もここの高校に入学することを決めたんだ。」

話を聞いて朔の記憶が蘇ってきた。
家庭教師と体の関係以上になった時、よく映像を撮られていたような気がした。記憶は定かではないが、怖くて朔は全て受け入れていた気がする。
まさか、それを見られていたなんて。
そして、まるでストーカーのような柏木の異常性に恐怖と嫌悪感を抱いた。これ以上話の続きを聞きたくなくて、柏木から離れたくて、本来の目的を思い出し朔は抵抗した。
そう、この場から逃げなければ。

「黙れッ!!離せ!!いいからこの手をほどけ!!今なら誰にも言わない、だから手を解いてこの部屋から出ていけ!!!」

朔は柏木を見たくなかった。混乱から一気に嫌悪感が襲ってきた。

気持ち悪い。思い出したくない。
そして、このままだとまずい。
そう朔の本能が警鐘を鳴らしていた。


「ははは、この状況で誰にも言わない?それは俺のセリフだろ?兄貴とのこと言われたら困るの君だよね。あとさ、手も解かないしこの部屋からも出ていかない。俺の目的何も果たされてないからね。」

そう言い柏木は持っていたスマホをベッド横の本棚にカメラに2人が映るように立てかけ、ベッドにあがりこみ馬乗りになって朔を真上から見下ろす。優しい笑顔を向け朔の頬に手を添え言い放った。


「君は今からね、俺に犯されるんだよ。」



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