[R-18]あの部屋

まお

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2.クラス

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入学式が終わり新入生はそれぞれのクラスへ移動した。


はじめは1年C組に振り分けられた。



「なあ、はじめ!お前全然校長の話聞いてなかっただろ?」

朔に話しかけてきたのは、同じ中学の悪友、東海林哲史 しょうじ てつしだった。哲史てつしとは小学生からの同級生で、中学からは一緒に学校をサボったり悪さをしてきた腐れ縁の友人だった。そして唯一のこの高校に入った同じ中学の人間でもあった。


「あんな話真剣に聞いてる奴いねーだろ」

「確かにな!てか、まさかはじめと同じクラスになるとはな!改めてよろしくー!」

「むり、遠慮する。」

「は!?ひでえな!!」


教室で朔は哲史と話していると、担任の教師が教室内に入ってきた。そして教師の後ろから一緒に入ってきたのが柏木だった。


「きゃーー!!柏木君と同じクラス!!」

「優等生くんと同じクラスかよー、息つまるわー」

教室内は柏木が入ってきた瞬間どよめき立つ。
朔はまた柏木から目が離せなかった。


勝手に震えだす両手に力を入れ握りこんで抑える。

なんでこんなに柏木が気になるのか、恐怖を感じるのか、朔はやはり分からなかった。そもそも柏木と朔は初対面であり、恐怖を感じる原因が全く検討もつかなかった。
柏木は朔の斜め後ろの席に座った。


(なんでコイツと同じクラス…。しかも微妙に席ちけーし。)


朔は心の中で悪態をついた。






入学して1週間はあっという間に過ぎ去った。
いくらやる気が無いとはいえ今までサボってばかりだった中学生の時と生活が一変して、新生活のリズムに身体を慣らすのに1週間はかかった。
中学と違って休み過ぎると留年する可能性がある。朔は最初は様子見で毎日登校した。


「はじめが毎日学校にいるのすげー不思議な光景なんだけど。」

哲史が1限目終了後の休み時間、朔の机の横に来て話しかける。

「俺はお前と違ってやれば出来るからな。今までやってなかっただけ。」

「いちいち突っかかってきて可愛くないんだからー。はじめちゃんはー」

「その呼び方やめろ、クソが。」

「口も悪いしねー」


クスッ

不意に後ろから聞こえる笑い声。
朔はハッとして後ろを振り返る。

後ろに立っていたのは、入学して以来1度も話した事が無かった柏木だった。反射的に朔の身体中に緊張が走る。


「あ、ごめん。あまりにも2人が仲良さそうに話してたからつい。自己紹介遅れたけど、俺は柏木颯希って言うから。同じクラスだしよろしく。」

柏木は女が見たらキャーキャー騒ぎそうな優しい微笑みで2人に話しかけてきた。


「いや、わかるわ!柏木のことはさすがに。今年の学年で柏木のこと知らねえ奴いないだろ。あ、俺は東海林哲史って言うからーよろしくー!ちなみにコイツは野坂はじ…」

「俺、次抜けるわ」

朔は哲史の言葉を遮るように席を立ち2人を後にして教室を出ていった。


廊下に出て自身の右手の震えを左手で抑え込む。
なんで…柏木が怖いのか。
恐怖を覚える要素なんて無いはずなのに。
朔は上がった心拍と震える身体を抑えるように深呼吸をしてから屋上に向かった。



入学して1週間。てっきりこの学校では異端児である柏木はクラスから浮く存在かと思いきや、女からはもちろん、その見た目の華やかさとは裏腹に親しみやすく誰とでも打ち解けることができる柏木は、男達からも信頼を得てクラスの中心的な人物になっていた。

このまま柏木とだけ話さないのは不自然だとは思っていたが、いざ本人を目の前にすると予想以上に朔の身体は拒絶反応を示した。






「はじめ、どーしたんだろ急に…」


教室に残された哲史は不思議そうに朔が出ていった教室の入口を見つめながらボソッとつぶやく。


「…なあ、東海林は野坂と同じ中学だったんだよな?」

「あ?そーだよ。はじめとは小学生の時から同じ学校で仲良かったんだけどさ、アイツ昔はあんな性格じゃなかったんだよなー」


哲史は思い出すようにポツリと呟いた。


「そうなんだ?昔はどんな性格だったの?」

「んー、小学生の時は本当に可愛い…って言ったらはじめに怒られそうだけど、なんてゆーか人懐っこくていつも笑ってて誰とでも仲良くなれるし、何より周りのことをよく見ててすぐ声とか掛けてくれるような奴だったんだよな。俺と違って成績もめっちゃ良かったし。中2に上がってすぐの頃かな?急に人が変わったようになって、誰も寄せ付けないような雰囲気で勉強も全然しなくなってさー。急にグレ始めたって感じ?」

「そうなんだ…。何かあったんだろうか」


柏木は考え事をするように腕を組み口元に手を寄せる。



考える素振りを見せながら柏木は、その不敵に上がった口角を顔に寄せていたその手の下に隠した。



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