7 / 13
敵の策略
しおりを挟む
「ドロイドのスキャンシステムを稼働しろ。」
カピィの声がする。
「ジョセフィーヌ大臣が見えるか?」
そう言われて、スキャンをかけて真下を見つめる。
倉庫だけに、何やら荷物らしきもの、それから微かに動く何かが一つ見える。
「生体反応あり。」
ボクが言うと、急に誰かの声がした。
「そこまでだ。」
機械音声だ。
「誰?」
パロの声。
「この回線は俺たちしか通信できないはずだ。
かなり上のセキュリティシステムに入れる奴しか、こんな割り込みはできない。」
カピィが声を低める。
「よく聞け。
今、そのエレベーターの緊急装置を作動させた。
下手な真似をすると10メートル下の床まで墜落する。
助かりたければ、こちらの指示に従ってもらおう。」
機械音声は勝ち誇ったように言った。
「レオゲルトか?」
カピィが、凄みをきかせた声で話す。
「さあ、誰かな。
言っておくが、今外部との連絡はできないぞ。」
機械音声も凄みをきかせた声になる。
パロがため息をついた。
「ジョセフィーヌ大臣は、やっぱりここにいたんですね。
『誰か』さん。」
と、淡々としかし、はっきりとパロが告げる。
「そうだ。
まさかお前らがここまで来るとはな。
おかげで、ジョセフィーヌを警察署移転後に生き埋めにする計画が台無しだ。」
機械音声は、腹立たしそうに話す。
「とんだ癒着だ」
パロが、そんな機械音声に向かって吐き捨てる。
「あなた方は、ジョセフィーヌ食料大臣を誘拐し、わんウマに大きな貸しを作ることに成功したんですね。
精肉市場の独占を目論むわんウマにとって、彼女はどうしたって邪魔な存在でしたから。」
パロの鋭い言葉に機械音声が返す。
「まあな。
こちらの手を貸した見返りに、金のなる木になってもらったまでだ。
我々のおかげで、市場が独占できる。
いくらでも出せるだろ。」
「ですが一年たった今、わんウマが、あなた方との関係を切ろうと動き出した。
金銭問題で何かトラブルでもおきたんですか?」
機械音声が、高慢のお手本のような声色で吐き捨てる。
「は、何様のつもりだ。
愚民は黙って金を積むのが、当たり前だろうが。
それを滞らせるなど、無礼なんだよ。」
「あなた方の切り札は、ジョセフィーヌ大臣の生存をちらつかせることだった。
彼女は、全てを明るみに出せるから。」
パロが声色を強めて畳み掛ける。
「弱味のあるわんウマに対して、あなたたちの金銭要求は止まらない。
彼らも嫌気がさして、あなた方が大臣誘拐に関わったことを、カピィに漏らしたんじゃないですか?」
ボクはパロの言葉に、思わずカピィに声をかけた。
「カピィ?そうなんですか?」
「・・・、そうだ。
ようやく情報をつかんだ、と俺は喜んだが、今思えば『つかまされた』んだな。
俺が知れば、必ず大臣の行方を追うと踏んでいたんだ、やつらは」
カピィがため息とともに答えた。
「彼らの狙いは、カピィに居場所を特定させることだったでしょうね。
しかし、ここまでやるとは思わなかったはずだ。」
パロは淡々と確認する。
「奴らがどう足掻こうが、ジョセフィーヌ大臣には、この顛末全てわんウマの工作であると思わせていたからな。
だからこそ、この一年金を出させることができた。
だが・・・。」
機械音声は、苦々しく話す。
「わんウマにもう一つの金のなる木、つまり、あなた方によるジョセフィーヌ大臣の血液の売買に勘づかれたとか?」
と、パロが声を低めながら言うと、
「・・・、奴らはそこまで掴んで、カピィに話したのか?」
と、言って機械音声の声は低くなる。
「これでジョセフィーヌ大臣は、完全にあなた方にも危険な存在になったわけだ。
血液売買の利益はあなた方だけが得ている。
ジョセフィーヌ大臣の身柄を抑えた者にしか、できないことだ。」
パロは確信を持って、そう言った。
「そう、どのみちもはや荷物でしかない。
だが、人気が未だに根強いジョセフィーヌ大臣を公然と始末するには、リスクが高い。
密かに始末したかった。
・・・、そこにお前らの事件だ。
利用しない手はない。」
機械音声の冷酷な声が響く。
「これまでのこと全て・・・カピィ。
お前に背負ってもらおうか。」
やはり・・・と、ボクは思った。
奴らにとってボクらは渡に舟なのだ。
「今でも世間では、ジョセフィーヌ大臣を誘拐したのは、当時のSP カピィとその部下ではないかという疑いが持たれている。
そのお前らが、大臣を利用してから殺しても、何も不思議はない。」
機械音声のその言葉に、
「貴様!
言わせておけば・・・!」
と、カピィの怒声がマイクに響く。
車のシートが軋む音と、パロの落ち着いて!という声が聞こえてくる。
「わざわざ一年も、警察署の地下の忘れ去られた倉庫に、カピィたちが監禁?
それで今殺すなんて、無理がありませんか?」
パロが間髪入れずにさらりと質問する。
「カピィがわんウマの手先であると、でっち上げてやる。
それができるだけの、準備はしてある。」
機械音声は勝ち誇ったように言う。
「それより、カピィ。
端末を見てみろ。」
機械音声は淡々と指示している。
「・・・、リンクが送り付けられてる。」
「開け。」
「何をさせる気だ。」
「逆らうなら、そこから墜落だと言ったはずだ。」
「くそ!」
カピィが忌々しそうに、操作する音が聞こえる。
「パロさん?
何ですか?」
ボクは恐々パロに確認する。
「これは・・・、上の方にジョセフィーヌ大臣のバイタル値。
真ん中にシリンダーのような図形。
それから、一番下に何かのコードが入った画面ですね。」
パロの声がする。
「これから、お前には我々の言う通りの操作をしてもらう。」
機械音声が淡々と告げる。
「まさか・・・。」
ボクは嫌な予感がする。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、ブックマーク登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
カピィの声がする。
「ジョセフィーヌ大臣が見えるか?」
そう言われて、スキャンをかけて真下を見つめる。
倉庫だけに、何やら荷物らしきもの、それから微かに動く何かが一つ見える。
「生体反応あり。」
ボクが言うと、急に誰かの声がした。
「そこまでだ。」
機械音声だ。
「誰?」
パロの声。
「この回線は俺たちしか通信できないはずだ。
かなり上のセキュリティシステムに入れる奴しか、こんな割り込みはできない。」
カピィが声を低める。
「よく聞け。
今、そのエレベーターの緊急装置を作動させた。
下手な真似をすると10メートル下の床まで墜落する。
助かりたければ、こちらの指示に従ってもらおう。」
機械音声は勝ち誇ったように言った。
「レオゲルトか?」
カピィが、凄みをきかせた声で話す。
「さあ、誰かな。
言っておくが、今外部との連絡はできないぞ。」
機械音声も凄みをきかせた声になる。
パロがため息をついた。
「ジョセフィーヌ大臣は、やっぱりここにいたんですね。
『誰か』さん。」
と、淡々としかし、はっきりとパロが告げる。
「そうだ。
まさかお前らがここまで来るとはな。
おかげで、ジョセフィーヌを警察署移転後に生き埋めにする計画が台無しだ。」
機械音声は、腹立たしそうに話す。
「とんだ癒着だ」
パロが、そんな機械音声に向かって吐き捨てる。
「あなた方は、ジョセフィーヌ食料大臣を誘拐し、わんウマに大きな貸しを作ることに成功したんですね。
精肉市場の独占を目論むわんウマにとって、彼女はどうしたって邪魔な存在でしたから。」
パロの鋭い言葉に機械音声が返す。
「まあな。
こちらの手を貸した見返りに、金のなる木になってもらったまでだ。
我々のおかげで、市場が独占できる。
いくらでも出せるだろ。」
「ですが一年たった今、わんウマが、あなた方との関係を切ろうと動き出した。
金銭問題で何かトラブルでもおきたんですか?」
機械音声が、高慢のお手本のような声色で吐き捨てる。
「は、何様のつもりだ。
愚民は黙って金を積むのが、当たり前だろうが。
それを滞らせるなど、無礼なんだよ。」
「あなた方の切り札は、ジョセフィーヌ大臣の生存をちらつかせることだった。
彼女は、全てを明るみに出せるから。」
パロが声色を強めて畳み掛ける。
「弱味のあるわんウマに対して、あなたたちの金銭要求は止まらない。
彼らも嫌気がさして、あなた方が大臣誘拐に関わったことを、カピィに漏らしたんじゃないですか?」
ボクはパロの言葉に、思わずカピィに声をかけた。
「カピィ?そうなんですか?」
「・・・、そうだ。
ようやく情報をつかんだ、と俺は喜んだが、今思えば『つかまされた』んだな。
俺が知れば、必ず大臣の行方を追うと踏んでいたんだ、やつらは」
カピィがため息とともに答えた。
「彼らの狙いは、カピィに居場所を特定させることだったでしょうね。
しかし、ここまでやるとは思わなかったはずだ。」
パロは淡々と確認する。
「奴らがどう足掻こうが、ジョセフィーヌ大臣には、この顛末全てわんウマの工作であると思わせていたからな。
だからこそ、この一年金を出させることができた。
だが・・・。」
機械音声は、苦々しく話す。
「わんウマにもう一つの金のなる木、つまり、あなた方によるジョセフィーヌ大臣の血液の売買に勘づかれたとか?」
と、パロが声を低めながら言うと、
「・・・、奴らはそこまで掴んで、カピィに話したのか?」
と、言って機械音声の声は低くなる。
「これでジョセフィーヌ大臣は、完全にあなた方にも危険な存在になったわけだ。
血液売買の利益はあなた方だけが得ている。
ジョセフィーヌ大臣の身柄を抑えた者にしか、できないことだ。」
パロは確信を持って、そう言った。
「そう、どのみちもはや荷物でしかない。
だが、人気が未だに根強いジョセフィーヌ大臣を公然と始末するには、リスクが高い。
密かに始末したかった。
・・・、そこにお前らの事件だ。
利用しない手はない。」
機械音声の冷酷な声が響く。
「これまでのこと全て・・・カピィ。
お前に背負ってもらおうか。」
やはり・・・と、ボクは思った。
奴らにとってボクらは渡に舟なのだ。
「今でも世間では、ジョセフィーヌ大臣を誘拐したのは、当時のSP カピィとその部下ではないかという疑いが持たれている。
そのお前らが、大臣を利用してから殺しても、何も不思議はない。」
機械音声のその言葉に、
「貴様!
言わせておけば・・・!」
と、カピィの怒声がマイクに響く。
車のシートが軋む音と、パロの落ち着いて!という声が聞こえてくる。
「わざわざ一年も、警察署の地下の忘れ去られた倉庫に、カピィたちが監禁?
それで今殺すなんて、無理がありませんか?」
パロが間髪入れずにさらりと質問する。
「カピィがわんウマの手先であると、でっち上げてやる。
それができるだけの、準備はしてある。」
機械音声は勝ち誇ったように言う。
「それより、カピィ。
端末を見てみろ。」
機械音声は淡々と指示している。
「・・・、リンクが送り付けられてる。」
「開け。」
「何をさせる気だ。」
「逆らうなら、そこから墜落だと言ったはずだ。」
「くそ!」
カピィが忌々しそうに、操作する音が聞こえる。
「パロさん?
何ですか?」
ボクは恐々パロに確認する。
「これは・・・、上の方にジョセフィーヌ大臣のバイタル値。
真ん中にシリンダーのような図形。
それから、一番下に何かのコードが入った画面ですね。」
パロの声がする。
「これから、お前には我々の言う通りの操作をしてもらう。」
機械音声が淡々と告げる。
「まさか・・・。」
ボクは嫌な予感がする。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、ブックマーク登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
虚像のゆりかご
新菜いに
ミステリー
フリーターの青年・八尾《やお》が気が付いた時、足元には死体が転がっていた。
見知らぬ場所、誰かも分からない死体――混乱しながらもどういう経緯でこうなったのか記憶を呼び起こそうとするが、気絶させられていたのか全く何も思い出せない。
しかも自分の手には大量の血を拭き取ったような跡があり、はたから見たら八尾自身が人を殺したのかと思われる状況。
誰かが自分を殺人犯に仕立て上げようとしている――そう気付いた時、怪しげな女が姿を現した。
意味の分からないことばかり自分に言ってくる女。
徐々に明らかになる死体の素性。
案の定八尾の元にやってきた警察。
無実の罪を着せられないためには、自分で真犯人を見つけるしかない。
八尾は行動を起こすことを決意するが、また新たな死体が見つかり……
※動物が殺される描写があります。苦手な方はご注意ください。
※登場する施設の中には架空のものもあります。
※この作品はカクヨムでも掲載しています。
©2022 新菜いに
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
そして何も言わなくなった【改稿版】
浦登みっひ
ミステリー
高校生活最後の夏休み。女子高生の仄香は、思い出作りのため、父が所有する別荘に親しい友人たちを招いた。
沖縄のさらに南、太平洋上に浮かぶ乙軒島。スマートフォンすら使えない絶海の孤島で楽しく過ごす仄香たちだったが、三日目の朝、友人の一人が死体となって発見され、その遺体には悍ましい凌辱の痕跡が残されていた。突然の悲劇に驚く仄香たち。しかし、それは後に続く惨劇の序章にすぎなかった。
原案:あっきコタロウ氏
※以前公開していた同名作品のトリック等の変更、加筆修正を行った改稿版になります。
審判【完結済】挿絵有り
桜坂詠恋
ミステリー
「神よ。何故あなたは私を怪物になさったのか──」
捜査一課の刑事・西島は、5年前、誤認逮捕による悲劇で全てを失った。
罪悪感と孤独に苛まれながらも、ひっそりと刑事として生きる西島。
そんな西島を、更なる闇に引きずり込むかのように、凄惨な連続殺人事件が立ちはだかる。
過去の失敗に囚われながらも立ち向かう西島。
彼を待ち受ける衝撃の真実とは──。
渦巻く絶望と再生、そして狂気のサスペンス!
物語のラストに、あなたはきっと愕然とする──。
パパー!紳士服売り場にいた家族の男性は夫だった…子供を抱きかかえて幸せそう…なら、こちらも幸せになりましょう
白崎アイド
大衆娯楽
夫のシャツを買いに紳士服売り場で買い物をしていた私。
ネクタイも揃えてあげようと売り場へと向かえば、仲良く買い物をする男女の姿があった。
微笑ましく思うその姿を見ていると、振り向いた男性は夫だった…
家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。
春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。
それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。
にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。
ツミビトタチノアシタ
板倉恭司
ミステリー
偶然の出会いは、悪魔を生み出す。罪を犯してしまい無気力に生きる小林綾人、口先だけで気楽に生きるチンピラ上田春樹、若くして裏の仕事人として生きる西村陽一、全てを失い犯罪者に身を堕とした元ボクサー坂本尚輝。架空の町に住む全く無関係だったはずの四人の人生が、ささいな出来事をきっかけに交わっていき、やがて恐ろしい事件へと発展していく……ノワール風の群像劇です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる