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糾弾の始まり

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「私以外にあなたの後ろ向き発言を受け流せるのは、ファイ様くらいのものです。
ファイ様、婚儀までには、もう少しこの考え方を抑えさせますので、どうぞお見捨てになりませんよう」

ミユキが、まだ顔の赤いファイ様に頭を下げると、ファイ様は首を振った。

「今のままでも、大丈夫。
もう、このままファイアストム国へ連れて行きましょうか。実は既に、アイスリー様が住む『氷の宮』は、完成しているのです」

ええ!?気が早い!
さっき出会ったばかりのはず・・・よね?
それとも・・・。

「ファイ様、その・・・私たちは今日初めてお会いしたんでしょうか。
私は、昔あなたに似た男の子に出会ったことがあるんです。
間違っていたら、ごめんなさい」

ファイ様が答えようとした時、馬車が止まった。

迎賓館に着いたのだわ。
まだ、やらなくてはいけないことがある。

私たちは馬車を降りて、迎賓館に入った。
今度は準備室ではなく、晩餐会の席に通される。

そこには、両国の王と王妃、それからベロジュとスノウティ、フローズリーたちがいた。

私たちは挨拶をして、王と王妃たちに報告をする。

ミユキは跪く。

「アイスローズ様付きの侍女、ミユキ・シャルルただ今戻りました。
ご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございません。アイスローズ様とファイバーン様に助けていただいたこと、感謝いたします」

周りの人々もミユキが実在したので、驚きと困惑の声をあげている。

「そなたであったか。その顔は見覚えがある。
目端がきいて、その利発さは昔のベロジュのようだと、古参の侍女が言っていたのを覚えています。無事でよかった」

と、お母様が言ったの。
ベロジュは、面白くなさそうにミユキを見て、

「ふん、こんな不良品が産んだガラクタなど・・・」

と、言いかけたのを、

「ありがとうございます。光栄ですわ、宮廷女官長様」

と、満面の笑みでミユキが遮るように言った。

その時、椅子に座らせられていたスノウティが、立ち上がる。

彼女は、顔が半分凍結させられていて、ミユキを見ながら叫んだ。

「く・・・薬はドコ!?
早く・・・早くチョウダイ!!」


私はミユキから貰った薬を、近くにいた侍従長に渡す。

侍従長は薬を水で薄めて、そのグラスをスノウティに渡した。

スノウティは、すぐにそのグラスの水を飲み干して、大きく息を吐く。

「はぁ、痒みが・・・引いてきたわ。」

と、呟くスノウティの隣で、ベロジュは苦虫を噛み潰したような顔をして私たちを見ている。

そこへ、兵士たちに捕まえられたバックリーが連れてこられた。

私は思わず、両親を見た。
お父様は立ち上がり、

「お前がアイスリーの乗った馬車を、中つ森に放置したのは、ベロジュの命令か?」

と、糾弾し始めた。
バックリーは震えながら、ベロジュの方を見たのだけど、ベロジュは無表情のまま答えない。

「正直に言わねば、お前一人が全責任をかぶるぞ?それでもいいのなら、そのまま黙っているがいい」

と、国王が言ったので、バックリーは必死に口を開いて訴える。

「お待ちください!
王室付きの御者の仕事を取り上げないでください!!それをお約束してくだされば・・・全てお話します!!」

それを聞いたフローズリーが鼻で笑って歌い出す。

「馬~鹿なや~つ~。
アイスリー様を裏切った時点で~お前は御者としては、残れぬ~わ。
せいぜい~馬小屋の掃除係として残れれば上出来だ~ろ~」

バックリーは、悔しそうにフローズリーを睨みつける。

お父様はその様子を見て言った。

「正直に話せば、その掃除係から一年で御者の仕事に戻してやる。話せ、バックリー。」

フローズリーが驚いたように王を見て、ベロジュはフローズリーに肘鉄をくらわせた。

バックリーは感無量の表情になる。

「ありがとうございます!
はい、私にアイスリー様を森の奥に放置するよう命令したのは、ベロジュ宮廷女官長様です。
なるべく魔狼の多い森の奥に、置いてこいと」

ベロジュは、目を閉じて口を真一文字に引き結んだ。

「殺す気だったな」

お父様はベロジュを睨みつけて、低い声で一言言い放つ。

ベロジュは何も答えない。認めたようなものね。

「お前の予想に反して、皇太子ファイがアイスローズ姫を救出。
だから準備室に閉じ込めて、そのまま追い返そうとしたのだな。ところが、彼女は予想以上に粘った。我らの目をごまかすために、姫は頭をうっておかしくなった、と言ったのだな」

と、ファイアストム国王も言った。
ベロジュはまだ無言。

「もう認めちゃいなさいよ~。
どのみち、無罪にはならないってアナタのオツムでわかるでしょ~が」

フローズリーが歌っている。
こいつ、自分はどうなの!?

「お前も糾弾するぞ、フローズリー。
何故、嘘をついてまでアイスリーの瞳の色を変えたのだ」

ブリザードゥ国王は、語気を強めてフローズリーを睨んだ。

「アタシは、大神官長になりたかったんですよねぇ~」

フローズリーは相変わらず、ふざけたような表情のまま。

「でもぉ、当時のアタシは大神官長様に嫌われてて、推薦を受けられませんでしたのぉ。
そんな時、アイスリー様が神獣と同じ瞳を持ってお産まれになってぇ。
アタシは一目で恋をしたんですよぉ~」

と、言って粘着くような視線で、私を見る。
思わず腕に鳥肌が立って、両腕で自分を抱きしめた。



~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
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