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ホムラの正体
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皆の視線が、今度はスノウティに向かう。
「ア、アイスリー様の顔は馬車でぶつけた怪我ですわ」
スノウティが、平静を装って話し始める。
でも、ファイアストム国の王妃が首を振ったの。
「スノウティカーラ姫。
これは、人の手で殴打された時の腫れ方ですわ。
私にも娘たちがいますが、幼い頃喧嘩で加減知らずにお互いを叩き合い、このような腫れ方をしていましたから」
ファイ様の姉妹のお話よね?
な、なかなか激しいご気性なのかしら。
スノウティは、慌てて両手を両国の王と王妃に見せる。
「ご覧になって!
手袋は綺麗なものでしょう。私が殴打したのであれば、化粧や血がついているはずですわ。
ないということは、私ではありませんの!!」
そりゃ、取り替えてたものね。
おそらく、あの時の手袋も宝石も隠されてるんだろうな。
「アイスリー、私は娘であるお前を信じたい。
だが、殴打した証拠はなく目撃者も名乗り出ないだろう。
また、その兵士も見つからなければ、ベロジュの罪は問えない」
と、お父様である王は言う。
事実そうだと思うわ。
平手打ちに関しては、スノウティが認めなければ、結局有耶無耶になる。
けれどホムラはこの部屋のどこかにいる。
ミユキもそうだと思いたい。
私は部屋を見回した。
この部屋は楽団の人のための準備室。
本番前に音合わせをするところ。
甲冑を着た成人男性は、細身とは言え重たいはず。
そして身長は、多分ファイ様くらい高くて、凍った時は、跪いた姿勢だったわ。
ファイアボールが部屋に入ってくるあの時間で、隠せる場所と言ったら・・・。
私は、ベロジュの息がかかった従者たちが跪いている後ろに、何かあることに気づいた。
楽器のケースと、引き戸の戸板・・・。
楽器はコントラバスやチェロといった、大きな弦楽器のハードケースがいくつも見える。
これだけの数が入るスペースがあれば、男性一人楽に隠せるわ。
まさか・・・壁に埋め込め式の収納場所がある!?
この部屋の片側は全て鏡張りで、楽団の人たちが姿勢や服装を確認できるようになっている。
この鏡の中に、魔法の氷でできているものがあるかもしれない。
物入れの入り口を、それで偽装した可能性がある。
・・・そうだ。
暗くなればわかるはずよ。
鏡の後ろに、壁ではなく物入れのスペースがあれば、透けるはずだわ。
「灯りを落としてみます」
私は言った。
ベロジュが思わず駆け寄ろうとしたんだけど、王の侍従たちに取り押さえられる。
私は指を弾いて、魔法で部屋の灯りを落とした。
「ダイヤモンドダスト、おいで。」
私は暗がりの中、後ろをついてくるダイヤモンドダストを呼ぶと、その神々しく輝く体毛で鏡を照らしていく。
奥にある鏡だけが、他の鏡と違い青白く光りだした。やっぱり、これは氷の魔法でできた鏡。
ダイヤモンドダストを、その青白く光る鏡の前に座らせた。
次第に、淡く光る氷の鏡の奥が浮かび上がってくる。
「あぁ!!」
「こ、これは!!」
跪いた姿勢で凍っている、ホムラの姿がそこにあった。
ベロジュたち以外のみんなは、ざわざわと騒ぎ出す。
「ファイアボール、氷を溶かして!!」
私が言うと、ファイアボールは長い尻尾を一振りして、鏡のような氷を溶かしていく。
ホムラの凍った姿が出てきて、思わず駆け寄ったの。
「ホムラ・・・!!」
私がホムラに触れようとした、その時だ。
パキーン!と、氷が軋む音がして私は飛び出してきたホムラに抱き抱えられて、横に倒れた。
パキパキパキ!!!
ホムラがいた場所に、強力な氷の柱が刺さっている。
ダイヤモンドダストが、私たちの前に飛び出してきて、さらに飛んでくる氷の柱を打ち砕いた。
そのまま、その魔法を放った者に目掛けて鋭い冷気を浴びせる。
「あぁ!!く・・・!」
苦悶の声をあげて、何かが壁に叩きつけられる物音がする。
ファイアストム国の王が、部屋中の蝋燭の火を魔法でつけると、フローズリーが壁に氷で縫いとめられているのが見えた。
私はその様子を見ながら、ホムラの方を見る。
倒れた瞬間に甲冑の兜が外れて、顔が見えていた。
「え!?あなた・・・ファイ様?」
目の前に美しい真紅の髪が広がり、整った顔立ちをした青年が私を見る。
驚いて起き上がると、思わず王のそばにいるファイ様と目の前の彼を見比べた。
そ、そっくり。
いえ、よく見たら少し違うけど。
「影武者の役目、大義である。もう、いいぞ、ホムラ」
彼は立ち上がると、声をかける。
言われた方は、さっと髪を片手で掴むと、真紅の髪の毛を取り払い、瞳からコンタクトレンズを外す。
え!!瞳と髪は偽物だったの?
茶色の髪の青年がそこにいた。
「はい、ありがとうございます。
これより、火炎部隊所属二等兵、かつファイアボールの世話係ホムラに戻ります」
と、言って跪くファイ様・・・もといホムラ。
い、入れ替わってたの?最初から?
戸惑う私たちの目の前で、ファイアストム国の付き人たちが、ファイ様とホムラの周りを取り囲み、布で目隠しをして二人を着替えさせ始めた。
やがて布が外されて、そこには衣装を着替えた二人がいる。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
「ア、アイスリー様の顔は馬車でぶつけた怪我ですわ」
スノウティが、平静を装って話し始める。
でも、ファイアストム国の王妃が首を振ったの。
「スノウティカーラ姫。
これは、人の手で殴打された時の腫れ方ですわ。
私にも娘たちがいますが、幼い頃喧嘩で加減知らずにお互いを叩き合い、このような腫れ方をしていましたから」
ファイ様の姉妹のお話よね?
な、なかなか激しいご気性なのかしら。
スノウティは、慌てて両手を両国の王と王妃に見せる。
「ご覧になって!
手袋は綺麗なものでしょう。私が殴打したのであれば、化粧や血がついているはずですわ。
ないということは、私ではありませんの!!」
そりゃ、取り替えてたものね。
おそらく、あの時の手袋も宝石も隠されてるんだろうな。
「アイスリー、私は娘であるお前を信じたい。
だが、殴打した証拠はなく目撃者も名乗り出ないだろう。
また、その兵士も見つからなければ、ベロジュの罪は問えない」
と、お父様である王は言う。
事実そうだと思うわ。
平手打ちに関しては、スノウティが認めなければ、結局有耶無耶になる。
けれどホムラはこの部屋のどこかにいる。
ミユキもそうだと思いたい。
私は部屋を見回した。
この部屋は楽団の人のための準備室。
本番前に音合わせをするところ。
甲冑を着た成人男性は、細身とは言え重たいはず。
そして身長は、多分ファイ様くらい高くて、凍った時は、跪いた姿勢だったわ。
ファイアボールが部屋に入ってくるあの時間で、隠せる場所と言ったら・・・。
私は、ベロジュの息がかかった従者たちが跪いている後ろに、何かあることに気づいた。
楽器のケースと、引き戸の戸板・・・。
楽器はコントラバスやチェロといった、大きな弦楽器のハードケースがいくつも見える。
これだけの数が入るスペースがあれば、男性一人楽に隠せるわ。
まさか・・・壁に埋め込め式の収納場所がある!?
この部屋の片側は全て鏡張りで、楽団の人たちが姿勢や服装を確認できるようになっている。
この鏡の中に、魔法の氷でできているものがあるかもしれない。
物入れの入り口を、それで偽装した可能性がある。
・・・そうだ。
暗くなればわかるはずよ。
鏡の後ろに、壁ではなく物入れのスペースがあれば、透けるはずだわ。
「灯りを落としてみます」
私は言った。
ベロジュが思わず駆け寄ろうとしたんだけど、王の侍従たちに取り押さえられる。
私は指を弾いて、魔法で部屋の灯りを落とした。
「ダイヤモンドダスト、おいで。」
私は暗がりの中、後ろをついてくるダイヤモンドダストを呼ぶと、その神々しく輝く体毛で鏡を照らしていく。
奥にある鏡だけが、他の鏡と違い青白く光りだした。やっぱり、これは氷の魔法でできた鏡。
ダイヤモンドダストを、その青白く光る鏡の前に座らせた。
次第に、淡く光る氷の鏡の奥が浮かび上がってくる。
「あぁ!!」
「こ、これは!!」
跪いた姿勢で凍っている、ホムラの姿がそこにあった。
ベロジュたち以外のみんなは、ざわざわと騒ぎ出す。
「ファイアボール、氷を溶かして!!」
私が言うと、ファイアボールは長い尻尾を一振りして、鏡のような氷を溶かしていく。
ホムラの凍った姿が出てきて、思わず駆け寄ったの。
「ホムラ・・・!!」
私がホムラに触れようとした、その時だ。
パキーン!と、氷が軋む音がして私は飛び出してきたホムラに抱き抱えられて、横に倒れた。
パキパキパキ!!!
ホムラがいた場所に、強力な氷の柱が刺さっている。
ダイヤモンドダストが、私たちの前に飛び出してきて、さらに飛んでくる氷の柱を打ち砕いた。
そのまま、その魔法を放った者に目掛けて鋭い冷気を浴びせる。
「あぁ!!く・・・!」
苦悶の声をあげて、何かが壁に叩きつけられる物音がする。
ファイアストム国の王が、部屋中の蝋燭の火を魔法でつけると、フローズリーが壁に氷で縫いとめられているのが見えた。
私はその様子を見ながら、ホムラの方を見る。
倒れた瞬間に甲冑の兜が外れて、顔が見えていた。
「え!?あなた・・・ファイ様?」
目の前に美しい真紅の髪が広がり、整った顔立ちをした青年が私を見る。
驚いて起き上がると、思わず王のそばにいるファイ様と目の前の彼を見比べた。
そ、そっくり。
いえ、よく見たら少し違うけど。
「影武者の役目、大義である。もう、いいぞ、ホムラ」
彼は立ち上がると、声をかける。
言われた方は、さっと髪を片手で掴むと、真紅の髪の毛を取り払い、瞳からコンタクトレンズを外す。
え!!瞳と髪は偽物だったの?
茶色の髪の青年がそこにいた。
「はい、ありがとうございます。
これより、火炎部隊所属二等兵、かつファイアボールの世話係ホムラに戻ります」
と、言って跪くファイ様・・・もといホムラ。
い、入れ替わってたの?最初から?
戸惑う私たちの目の前で、ファイアストム国の付き人たちが、ファイ様とホムラの周りを取り囲み、布で目隠しをして二人を着替えさせ始めた。
やがて布が外されて、そこには衣装を着替えた二人がいる。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
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