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番外編 シャーリーン視点(本編)

私の恋は失恋だけど

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それから数日経った。
今日も城の半分の侍女たちが、傷心のために休んでいるらしく、城の中は閑散としていた。

みんな何があったのかと、右往左往してたけど、本当に何があったのかしらねぇ?

どこかのお嬢様が、ライバルたちに天然ならではのトドメを刺したからじゃないかしら?

そんな時、ミア第二王妃が捕まり、マロマロ卿が強制送還されてたと聞いた。
ホッとしている私に、レモニー様が地下牢のベクトリアル・ダナンが釈放されたと教えてくれた。

わー!!
会いにいかないと!!

「私たちはお茶会に出るけど、シャーリーンは、先に会いにいってあげて。
後から私たちも行くから。」

と、レモニー様が言った。

やった・・・!
二人だけで会える!!

私が会いにいくと、ベクトリアルも喜んでくれた。

ふふ、可愛い。
反応が素直。

「お顔が見れてよかったです。
安心しました。」

と、私が言ったら、顔を真っ赤にして、

「あ、ありがとうございます。」

と、言ったの!

この女慣れしてないところが、いいなー。

彼を見た後で、ケルフェネス王子やライオネル見たら、擦れてるとさえ感じてしまう。

やっと・・・こう汚れのない純粋なことに触れられたというか。

癒されるなあ。

「シャーリーンさん、お怪我がなくてよかったです。」

「嬉しい!
名前覚えていてくださったんですね?」

「えぇ。
あの、名前覚えるのは得意なんです。」

にこにこと笑って話す彼に、胸が温かくなってくるのを感じる。

私もレモニー様みたいに貴族だったらなあ。

お付き合いしてください、て言えるのに・・・。

「レモニー様たちはお茶会だそうですね。」

「はい、後でお会いしたいそうです。」

「よかった。
もうすぐ妻が来るので、一緒にご挨拶しようと思ってました。」

「・・・え?
妻?」

「はい!
昨日、獄中結婚しました。
地下牢に入って怖い思いをしていたら、その世話係の女性と親しくなりまして。
沢山励ましてくれて、優しくしてくれて・・・。
彼女の身分は庶民なんですけど、僕は気にしません。
ライオネラ・ダナンの恋人、レモニカも庶民ですからね。」

 「そ・・・そうですか・・・。
お、おめでとう・・・ござい・・・ます。」

失恋しました・・・。
レモニー様たちが、お茶会を終えて来てくれたんだけど、私は泣いてそのままお部屋に戻っちゃった。

レモニー様たちは恋が実ったけど、私はダメでした。

そうそう実るもんじゃないよね、恋は。

レモニー様が、心配して部屋に訪ねてきたの。

「一人にしてください。
話したくないんです。」

「シャーリーン、ベクトリアルのこと聞いたわ。
力になりたいの。」

「いいんです。
今はレモニー様にも酷いこと言いそう。
お願いします。」

「・・・わかった。」

ごめんなさい、レモニー様。

恋の実ったあなたの姿は、今の私には辛いんです。

そのまま泣いてたら、また誰か来た。

「レモニー様?
もう、今日はほっといて・・・。」

「大丈夫?」

と、ドアを開けると、そこにいたのはケルフェネス王子だった。

「な、なんです?」

「失恋して泣いてると聞いたから、慰めにきた。」

「慰め・・・?
いいえ!
あなたたちのいう慰めは、自分の慰めでしょ!?」

「そうともいう。」

「・・・!!
出て行ってください!
私にもプライドがあるんです!」

「この間は、素敵な絞め技ありがとう。」

「!!」

「気づいてないとでも?
初めてだよ、狙った相手に気絶させられるの。」

「すみません。」

「いいの、いいの。
それよりさ。」

そのまま強引に部屋に入ってこられた。

「・・・あの!?」

「いいことしようよ、ね?」

「だから、私はそういうのは・・・。」

「これこれ。」

そういうと、ケルフェネス王子が、手品みたいに小さな小箱を取り出して見せた。

そして部屋にある机に置くと、中から美味しそうなケーキが出てくる。

「わぁ・・・。」

「それから、これね。」

また何もないところから、花束を取り出してみせる。

とても綺麗で、いい香りがした。

私が好きな色で整えられた花束を、さりげなく部屋の花瓶に飾ってくれる。

いつもなら、こんなことされたら、下心を感じてすぐにお帰りいただくけど、今日は心が弱ってるせいか心遣いが嬉しくなる。

「君は素敵だよ、シャーリーン。
辛さはさ、私もレモニー様に失恋したから、わかるんだよ。」

ケルフェネス王子が言う。

「目の前にいるのにさ、ダメなんだもんな。
こっちを向いて欲しいのに、その目は兄上しか見てない。
沢山の女性たちとなんなく愛し合えたのに、レモニー様だけだめなんてさ。」

「他の女性がいるじゃありませんか。」

「ふん、兄上に聞かなかった?
計算尽くしの女たちなんだよ。
私の容姿と未来の王という立場にだけ惹かれて、中身なんてどうでもいいんだから。
君やレモニー様くらいだよ、私の中身を見ようとしてくれるのは。」

「愚痴ですか?
口説いてるんですか?」

「両方。
私はパティスン皇太子が、本当にレモニカが好きだったんじゃないかと思う。
こう言う王宮の中の、駆け引きばかりの世界とは無縁のひたむきな愛は、眩しいもんさ。」

「その愛を得るには、他の女性たちから守らないといけませんよ?」

「本人達に任せる・・・とか。」

「単なる逃げでしょ、それ。
ライオネルのお母様はそれで・・・。」

「あぁ・・・。父上の人格を根本から変えてしまったレイカ様ね。」

「何があったんです?」

「父上が初めて愛した女性と言われた人でね。
でも、父上も立場上彼女だけを妃とするわけにいかずに、複数の妃たちを娶ったんだが、父上がレイカ様だけを寵愛するものだから、他の妃や侍女たちが嫉妬してね。
父上が視察に出ている隙に、レイカ様は兄上を宿したまま、当時の王の母親である皇太后を味方につけた勢力に追われて、強引に郷にさがらされたらしい。」

「王の子供を宿してるのに?」

「不義の子だと難癖をつけられたんだと。
ひどくいじめて追い出したらしい。
王はレイカ様を信じていたけど、皇太后が違うという思い込みを変えなかった。
息子のくせに逆らうのかと押し通されてね。
結果、兄上を出産したあと、レイカ様はそのまま亡くなった。
王は最後まで会えずじまい。」

「どうやって王の子だとわかったの?」

「これは遺伝なんだけど、私たちは必ず体のどこかにこの形のアザがでるんだよ。
このアザがすなわち王の子の証。
兄上にもあった。
周りはあっさり間違いを認めてたってさ。
もちろん皇太后も。」

ケルフェネス王子はそういうと、片袖を脱いで、上腕の所にある、薔薇の形のアザを示した。

「王はレイカ様を深く愛してたからさ、それはそれは嘆き悲しんで、それ以降人が変わったそうだ。
今のように、物事を徹底的に追求して、相手が身内だろうがなんだろうが、はっきりするまで決して信用しない。
レイカ様の嫌疑が晴れた時の、周りの手の平を返した時の反応は今でも忘れないそうだ。」

「そうなんですか・・・。」

「話は逸れたけど、このケーキ食べて元気になって。
ね?
そして、その気になったら私の部屋に忍んでおいで。
これは君のいう『慰め』になるけどさ。
それまで、これで我慢しとくからさ。」

そして、ケルフェネス王子がまた、素敵なキスをしてくれた。

きっと他の女性にも、普通にやってることなんだろうけど・・・。

でも、この日だけは、私の流す涙を一番すくってくれたのは、ケルフェネス王子のこのキスだったのはいうまでもない。

私が彼のところに忍んでいったかどうかは・・・、秘密にしとくね。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。


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