悪役令嬢は、犯人ではございません!

たからかた

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番外編 シャーリーン視点(本編)

無事に済んでよかったものの・・・

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ケルフェネス王子を受け入れるフリをして、絞め技かけたの。

もちろんこれは早く決めないとね。
時間かかりすぎではダメなのよ。

ケルフェネス王子が気を失うのを確認して、ホッとして衝立の向こうで眠った。

レモニー様、大丈夫かな・・・。

翌朝、ケルフェネス王子より少し早く起きて、彼の隣で目覚めたようにみせたんだよね。

それっぽく見せたから、気づかれてないみたい。

「また、ここにおいでね。」

そう言ってケルフェネス王子が、素敵なキスをしてくれた。

うっとりしちゃう。

これが遊びじゃないなら、どれだけいいか。
でも、嘘くさいんだよね、この人の言葉はさ。
そんな人に遊ばれるのは、嫌なんだよね。

ライオネルが、ケルフェネス王子と入れ替わってこの隠し部屋に入ってきた。

身支度を整えてそばに行ったら、何も教えてないのに、心配そうな顔でこっちを見るからさ、ちゃんと伝えたよ。

そしたら、なんとなく肩震わせて可笑しそうにしてた。

「ライオネル、レモニー様大丈夫?」

これはもちろん、いろんな意味で。

「ん?
大丈夫。ミア第二王妃には、ばれてない。」

「ライオネル、たとえこの国の王族の半分の経験値でも、レモニー様や私にとってはものすごい女性経験なんだからね?
レモニー様を泣かせないで。
他の女に手を出さないでよ?
でないと、次に気絶するのは、あんただからね?」

と、私が言うとライオネルは、驚いた顔をした。

「ケルフェネスが何か言ったな?」

「そりゃもう。
一般人とかけ離れた感覚を持ってることを、淡々と認識させられたよ。」

「王族に身を投げ出す女性の多くは、手っ取り早く富と権力を得るためだ。
俺たちと真剣に恋愛しようなんて思ってないからな。」

「でも、やることは同じでしょ?」

「そりゃな。」

「そういうのは、レモニー様は割り切れないよ。
・・・レモニー様はあんたしか知らない。
なのに、あんたを知る女は沢山いる。
そこに愛情があろうとなかろうとさ。」

「ずるいよな。
彼女を他の男が知っていたら、俺は間違いなく嫉妬する。
割り切れるかと言われたら、しこりを感じるな。」

「・・・わかってんじゃん。」

「しかし、もう過去は過去だ。
俺は過去の女性たちに、なんの未練もない。
恋人ヅラされるほど付き合ってもいない。
俺はレモニーだけで沢山だ。
素顔がさらせて、朝まで安心して眠れる相手は彼女が初めてだからな。」

「・・・そんなに恋愛が難しいの?
王族の世界。」

「たとえ無償の愛があっても、生き残れなければ消え去っていくだけだ。
俺は・・・王室のそういうところも嫌いだった。
俺の母親は、王に無償の愛を捧げた女性だったそうだが、王の寵愛を巡る争いの中で潰された一人だ。」

「・・・気を許せなくなるね。
相手にさ。」

「王とケルフェネスも、誰にも気を許してなどいない。
彼女たちとの夜は、あくまで処理の域を超えない。
俺もそうだった、レモニーに会うまでは。」

そこまで聞いて、私はライオネルを見る。

「レモニー様は一番?」

「唯一無二だ。
比較できる女はいない。」

「失礼しました・・・。」

そう言うしかないじゃん。
一番とか言われたら、二番手、三番手を考えちゃうけど。

あ、レモニー様の支度が済んだみたい。

さあ、これから本番!

部屋からぞろぞろ出ていく音が聞こえてくる。

それから、みんなで謁見の間に行って、レモニー様の嫌疑を晴らすことができたんだ。

やった!

と、思ったらさ、なんとあのミア第二王妃が煙幕をはったもんだから、何にも見えなくなっちゃった!!

レモニー様の声がするけど、全然見えない。

ライオネルも、どこにいるのかわからない。

私は大混乱の謁見の間を抜けて、外に出たんだ。

煙がようやく晴れてきた時に、ライオネルの声がしてさ。

そこに行ったら、レモニー様がぐったりしてたの。

もう、死んじゃったと思って、悲しくてたまらなかった。

私はレモニー様が大好きなんだもの。

私や家族の恩人で、一緒にいてとても楽しかった。

昔はわがままで困った人だったけど、正直で嘘のない人だった。

今のレモニー様も、優しくて私を沢山信頼して、必要としてくれた。

メイドの私を、大事な仲間だと言ってくれた人なのに!

ライオネルも私も助けられなかった。

「置いていかないで!」

思わず叫んじゃった。

ライオネルもレモニー様を抱きしめて、嗚咽を漏らしてる。

色んなこと思い出して泣いてたらさ、レモニー様、目を開けてくれた!

嬉しくて嬉しくてたまらなかったよ!

まったく、あのミアのやつ!!

見つけたら、ボゴボゴにしてやるんだから!!

その後、私はレモニー様をライオネルと一緒に部屋に運んで、泥だらけの体を洗ってあげようと思ったの。

その湯浴みがもー大変。
王様が王族専用の浴場使っていいとおっしゃったのはいいんだけど・・・。

王族専用の浴場が広いのなんの!

豪華だし、浴槽がいくつもあるしさ。
使い方もわかんないものが沢山あったの。

レモニー様用にと、湯浴みの侍女が沢山きてね。
私は弾き出されてお世話できなかったよ。

ま、外には何故かケルフェネス王子と、王様まできてて、ライオネルが二人を早く追い返そうとして騒がしかったな。

ようやくレモニー様出てきたんだけど、何故か顔色が悪くて。

嫌な予感がして、部屋に連れて行って話を聞いたら、案の定自称ライオネルの恋人だという人たちもいて、彼と夜を過ごした話を聞いたんだって。

あいたー。

「レモニー様、いいですか?
ライオネルは、レモニー様が唯一無二なんだそうです。
過去の彼女たちは本当に・・・。」

「違うの、シャーリーン。」

「え?」

「話を聞いてたら、私と全然違うの。
他のみんな同じような体験してるのに、私だけ違って話に参加できなかった。
私、他に経験ないから、いいのか悪いのか判断できないの。
どう思う?」

「どうと言われても・・・。」

なんて言えばいいのやら。

「悔しいでしょうけど、我慢してくださいね、とかあの人たち、言うのよ。
でも、悔しく思いたくても違うものはわからないし。
彼女たちが言うような淡白な扱いなんて、受けてないの。
すごく丁寧で・・・。」

「レモニー様、そこまで。
早い話が惚気のろけてるんですね、レモニー様。
私は傷ついてらっしゃるのかと、誤解したんです。」

「き、聞いて、シャーリーン!
悔しく思わない私は、おかしいのかと思って・・・。」

「それは、ライオネルのレモニー様に対する扱いが特別だったからです!
まさか、レモニー様、ご自分がどう扱われたか、彼女たちに話してないですよね?」

「・・・言っちゃった・・・の・・・。
しつこく聞かれたから・・・。
それで、そこにいた半分くらいの侍女たちが、みんな泣いてしまったの。
私・・・、悪いことした?」

「あー・・・まあ・・・トドメを刺したことは間違いないかと。
でも、悪いのはライオネルですから。
レモニー様は堂々としてればいいんです。」

そうそう。
レモニー様は悪くない。
つまみ食いしてたライオネルが悪いんだから!





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