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トゥルーエンディングを迎えて

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茶会を終えて、地下牢から解放されたベクトリアルに会いに行った。

シャーリーンが先に行っていたけど、彼は獄中結婚を他の人としていて、失恋したと言って部屋にこもってしまったの。

私はベクトリアルに助けてもらったお礼を伝えてから、シャーリーンの部屋に行ったんだけど、入れてもらえなかった。

・・・そうよね。
今の私が何を言おうと、失恋したシャーリーンには嫌味にしか聞こえないわ。

そこへケルフェネス王子が来て、
「女の子を元気付けるのは得意。」
と、言ってシャーリーンの部屋を訪ねていた。

ライオネルに相談したら、ケルフェネス王子はシャーリーンに強引なことはしないから、大丈夫と言われたの。

「俺たちが下手に慰めるより、あいつの方が遥かにうまくやるさ。
だからあいつは、この国の女性たちの心を射止められるんだから。」

と、ライオネルは言った。

こういう時に、私が力になれないのは悔しいな。
でも、そっとしておくことも大事だもんね。
シャーリーン・・・早く立ち直ることを祈ってるわ。

俯く私に、ライオネルにが声をかけた。

「俺の使っていた部屋が、まだそのままあるそうだ。
見せたいから、来ないか?」

私はその言葉に頷くと、彼に手を引かれてついていった。

「ここがライオネルの部屋だったの?」

「そう。
あれから変わってない。」

私は、ライオネルが使っていた部屋にやってきた。

私が知らないライオネルの顔を、見れた気がして嬉しかった。

あ、そうだ・・・。

「これからどうするつもりなの?
国にこうして帰ってきたし、王室にも戻らない気なら・・・。」

と、私が言うと、ライオネルは心を決めたような顔をして、

「レモニー様・・・いや、レモニーを妻にしたい。
あなたのお父上にも許してもらいたい。」

と、言った。
嬉しい!
これ、プロポーズよね?

「私もライオネルのこと、父上に頼んでみる。
だってあなたは逆らえない立場だったもの。
本当はわかってるんだと思うの。
もし、だめだったら・・・駆け落ちよ?」

と、言って二人で笑う。

そのまましっかり抱き締め合った。

頭の上にトゥルーエンディングの文字が浮かび上がる。

・・・終わるんだ。

エンディングの曲が流れ始めて、ライオネルの腕の中でライカの手紙を開く。

『終わったね。
レモニー。
素敵なトゥルーエンディング、ありがとう。
運営側から説明があったの。
クランシー・ケリーという人から聞いたわ。
レモニーは、本当にレモニカの生まれ変わりだったんだね。
もう、ライオネルと離れちゃだめだよ?
もうそこは本物の異世界なんだから。
絶対一緒になるのよ?
いざって時は駆け落ちよ!!

・・・ねぇ、私もレモニー好きだよ。
もう一回最初からやり直したいくらい!

でも、クランシーによると、あなたのこのデータはこれっきりだって。

物語を新しく始めたら、普通のレモニーたちに戻るんだって・・・。

次に会えるとしたら後日談とか配信された時だって・・・。

そんなのないよ。
また会いたいよ、レモニー。

私たちはいつまでもチームよ?

このアカウントは無くさない。

後日談が配信されるまで、しばらく私の抜け殻のアバターで我慢してね。
クランシーが言うには、私とほとんど差がないそうよ、よかった。

じゃ、ね。
私の親友、レモニー・ケル。

もうすぐエンドロールが終わる。

あ、保存しますかだって。

はい、します。

またねー。』

ライカの手紙が白紙になった。

新しく攻略対象を変えて、物語を始めるのだろう。

「ライカ様、ありがとうございました。」

私はつぶやいて、ライオネルを抱き締める。

これからは、この世界の中でこうして暮らして行く。

愛しいこの人と助け合いながら。

ライオネルの温もりの中で、私は目を閉じる。

その日の夜、私はレモニカの夢を見た。
火刑台に縛られて、火をつけられそうになっているあの光景が見えた。

「やめて!
やめてよ!!」

私は叫びながら必死になって彼女に駆け寄ろうとした時、騒ぐ村人たちが消えて、ライオネラが現れ、彼女を縛る縄を剣で断ち斬った。

レモニカが驚いて顔を上げて、涙に濡れた顔に笑みが浮かぶ。

二人はそのまましっかり抱きしめ合った。

「来てくれた・・・。
ずっと待ってた・・・。
もう、離れるのは嫌。
愛してる、ライオネラ。」

レモニカがライオネラに語りかけている。

「許してくれ。
やっと君にこうして会えた。
本当にすまない。
もう、どこにも行かないよ。
私も愛してるよ、レモニカ。」

ライオネラもきつく彼女を抱き締めて、誓うように言葉をつむいでいる。

それから二人はゆっくりこちらを向いて、
「ありがとう。」
と、言って消えていった・・・。

これはきっと、私の願望が見せた夢だと思う。
それでも、それでも願わずにいられない。

目を覚ますと、私が泣き腫らしていたので、ライオネルが心配してた。

私は夢の顛末を話し、驚いた。
ライオネルも同じ夢を見た、と言ったの。

レモニカ、ライオネラ、あなたたちが今は幸せだと思っていい?

私はそう思いながら、ライオネルと抱き締め合う。

彼女たちの夢を見たのは、それが最後。

あれから時が経った。

ゲームの中は歳を取らない。
ミアと同じというわけじゃなくて、とてもゆっくり時間が過ぎるというか。
何日経ってもまだ、一か月も経たない感じね。

本当に都合のいい世界。

ライオネルは、無事に許してもらえて、私の婚約者として、父の後継者になった。

その婚約パーティーが、後日談で配信されるそうだ。

みんなでパーティーを楽しんでいる中で、頭の上に『婚約パーティーの出来事』という文字が浮かび上がる。
曲が流れ始めて、ライカのアバターが違う動きを見せ始める。

・・・まさか?

「ライカ様?」
「レモニー様!!!」

すごい力で抱き締められる。

「会いたかった!」
「うん、私も!」

二人で笑って、席について話し始める。

「攻略対象増えたのよ!
もちろん順調に攻略中。」

「うんうん、確かに新しい国と王子が増えたよね。
その国はまだ行ったことないの。
それから?」

「明日にでも行こう!
攻略済みの王子の国は案内できるもん。
オープンワールドだからさ。
シナリオ進めなければ、普通にいけるはずよ。
あ、それでね、新しい機能が付いてさ・・・。」

私たちの話は終わらない。

ライカとのこの話もいつか終わるかもだけど、こうして会えるからいい。

私の話もできるし。
私はいつまでもここにいるからね。

ライオネルとティモシー王子もきて、さらに賑やかになる。

今日もまた、この世界の幸せな夜が更けていく。



~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。

これで本編終了になります。
続けて番外編を投稿致します。
ライオネル、シャーリーンのそれぞれの視点で本編を追うものと、後日談等の追加エピソードも投稿する予定です。


※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
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