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番外編 ライオネル視点(本編)

地下牢

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ミア第二王妃が捕まったと、連絡が入った。

国境付近で海外に一人で逃亡しようとしたところを、捕まえたのだという。

その逃走を助けた勢力も、全て網にかかっていて、彼らは移送中という話だ。

俺とレモニーは、王に呼ばれて、地下牢に向かった。

ミア第二王妃は、鏡だらけの異様な地下牢で目だけを光らせてそこに立っている。

「恨み言を言いにきたのか?」

と、ミア第二王妃が睨みつけながら言った。

「何を言おうと、あなたの心に届くとは思わない。」

と、レモニーが言った。

俺もそう思う。
こういう人間は全てわかってやっている。
俺たちにどう思われるかも、自分が何をしたのかも。

「でも、言うわ。
あなたがしたことは、とてもひどいこと。
許せないこと。
あなたは、権力のためと言ったけど、そのために犠牲になるのは他人だった。
あなたではなく。」

「それがどうした。
私をのぼらせるための踏み台は、もちろん他人だ。
踏んでくる足を、よけられないようなものが犠牲になるのだ。
私は地位を望み、権力を望んだ。
そのためにやることをやっただけだ。」

「なら、どうして今そこにいるの?」

「・・・・。」

「なぜ昔、あなたはうまく国を動かせなかったの?
なぜ、あなたについていく人がいなくなったの?」

レモニーの言葉に、ミア第二王妃の顔が歪む。

「私は間違ってない。
周りが悪かっただけだ。
私以外は愚かなものばかりだから。」

「そのあなたがいう愚かな人ばかりの上に、立とうとしたのよね?」

「・・・・。」

「最初から愚かな人しかいないとわかってて。
なのにこうなったのは、その愚かな人のせい?」

「・・・。」

「おかしいのはあなただわ。
あなたが結んだ線の行き先がここだと言うのなら、あなたはやはり間違っていたの。
レモニカたちの犠牲も、みんな間違い。
あなたは、ただ悪いことをした。」

「小娘が!!
お前に何がわかる!?」

「あなたが間違っていたことは、わかる。
そしてあなたは反省などしないことも。」

「く・・・!」

ミア第二王妃が悔しそうに俯く。

そこに王がやってきた。

「お前の刑罰は、ニセバラ蟲の効能を抜くことに決まった。
その美貌の衰えを、毎日その目で眺めるといい。」

と、言う王の言葉に、ミア第二王妃は初めて怯えた目を見せた。

「そ、それだけは・・・!!」

「お前が一番恐れているのは、人に劣るものが目に見えることだ。
お前はその美貌の衰えを最も嫌う。
聞けばレモニカのように、美しい娘たちが苦しんで死んだ場所からニセバラ蟲が生えるそうだな。
レモニカの容姿を、お前は妬んだのではないのか?」

「く!庶民ごときが・・・!
庶民ごときが私より美しいなどと言われて・・・!
あの時の王までレモニカには、鼻の下を伸ばしていたのだ!!
あのキッファもそうだ。
王宮に咲く一輪の美しい花だともてはやされて!
それに、レモニー!!」

ミア第二王妃が、牢屋の格子を掴んで嫉妬の眼差しでレモニーを睨みつける。

「私の欲しかった容姿を、輝きを、見せつけるように持ちおって!!
レモニカのように、燃やし尽くしてこの世から消したかったのに!!」

吠えるミア第二王妃の手を兵士が掴み、腕を格子の外に引き摺り出すと、そこに医師らしき人が現れて注射針を刺す。

その瞬間、ミア第二王妃の栗色の髪に、白髪が現れ始めた。

「あぁ!
王様!
助けて!
体が重くなる!
ニセバラ蟲が抜ける!!」

「お似合いだ。
ミア。
私の子供たちに手を出そうとするものは、たとえお前だろうと容赦しない。
それに、その苦しみは、生きながら焼かれたレモニカの苦しみの半分にもならんわ。
彼女も、ライオネラ様との間に生まれた我が子を残して無惨に殺された。
してきたことの反省すらできぬのなら、せめて生きてきた年数分ここで苦しむといい。」

と、王は言うと、俺たちを促して出るように歩かせた。

本当にこの人は怖い人だ。
何を一番恐れているかも、この人はよく見抜いてくる。

レモニーが手を握ってくるので、手を繋いで地下牢の通路を歩いていると、先の方にキリ所長が見えた。

ちょうど地下牢から、マロマロ卿が引き摺り出されるところにでくわしたのだ。

「キリ所長!」

レモニーが声を出したので、キリ所長が振り向く。

そしてマロマロ卿もこちらを見て、いきなり暴れ出した。

「まろは、レモニーと一緒じゃないと、帰らないでおじゃる!
レモニーと結婚して、この国で暮らすでおじゃる!」

と、言っている。
こいつの思考回路のここだけは理解不能だ。

レモニーは、手を離してスタスタと歩み出ると、

「私はあなたと結婚なんかしません。
さようなら。
私はライオネルが好きなので。
あなたじゃありません。」

と、はっきり言った。
そして戻ってくると、俺の腕にしっかりしがみつく。

「レモニー?
まろのどこが嫌いでおじゃるか?」

と、マロマロ卿が確認してくる。
わからない。
なぜ好かれると思うんだ、あんた。

「私を利用した張本人ですよね。」

レモニーが冷たい目でマロマロ卿を睨む。

「チッチッチ。
昔のことは、食べてしまった夕飯みたいなものでおじゃるよ。
どうでもいいことでおじゃる。
ライオネルとマロの違いは、イケメンであるかどうかでおじゃろ?
心配ないでおじゃる。
まろは容姿、性格、財力、その他何も劣らないイケメンでおじゃるよ!」

「さようなら。
二度と会いたくありません。
大っ嫌い!!」

レモニーはマロマロ卿から顔を背けると、俺の腕を引っ張って地下牢を歩く。

「ライオネルは許せるのでおじゃるか?
そいつは実行犯でおじゃるよ?
命令はまろがしたでおじゃるが、手を下したのはそいつでおじゃるのに。」

その言葉にレモニーは、ぴたりと足を止める。

俺もその点は引っかかっていた。

レモニーは俺を見つめるので、俺も彼女を見る。

「彼は、ちゃんと償ってくれた。」

と、レモニーは言う。

そしてまた不意打ちで、頬にキスをした。
もちろん俺は固まる。

「いやー!
レモニー!
まろというものがありながら、なぜでおじゃる!
こ、これも愛の試練でおじゃるな。
どこまで許せるか試されているのでおじゃるな!」

・・・正直この男のポジティブさは、理解を超える。
てか、9人の奥さんたちはどうしたんだ?

王が後ろで大笑いをして、キリ所長と話を始める。

「息子の件だが、マロマロ卿捕獲と引き渡しで、放免ということを貴国の王にも話をつけている。」

王の言葉にキリ所長も、

「はい。
話はうかがっております。
ご子息の犯行も実害はなく、ティモシー王子の嘆願もありまして、元々短い刑期でございました。
問題ございません。」

と、答え、マロマロ卿を引きずるように連れ出していく。

「レモニー!
まろの愛は不滅でおじゃる!!
どれほど離れようと、この放置状態に耐えるでおじゃるよ!
それでまろの愛を信じてたもれー!!!」

マロマロ卿の姿がみえなくなり、王がレモニーに尋ねる。

「あれは、なんだね。
君のファン?」

レモニーは首を振った。

「ただのストーカーです。
嫌いと言ってるのに、好かれてると思ってる変な人なんです。
私はライオネルがいいんです。」

そう言って俺に笑いかけるレモニーに、俺も微笑んだ。





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