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番外編 ライオネル視点(本編)

真実を探して

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「扉を開けろ!
誰も入ってくるな!」

ケルフェネスの声がして、部屋の扉が開く。

寝室のドアが開いて、ケルフェネスがレモニーを連れてきた。

・・・!?
なんでしっかり抱きついてるんだ!?
見た瞬間に嫉妬の炎が身の内を焼く。

ケルフェネスは、目を閉じたレモニーを椅子に座らせると、扉を閉める。
ケルフェネスによって縄で縛られた手を解かれてから、レモニーは解毒薬を取り出して飲もうとしたが、手元がおぼつかずに入れ物の小瓶を床に落としてしまった。

俺は目を閉じたまま、床を手探りするレモニーに近づき、小瓶を拾って渡そうとしたら、体がぶつかった。

レモニーはその勢いで目を開き、じっとこちらを見つめてくる。

「ちゃんと飲め、レモニー様。」

俺は解毒薬を渡そうとして、彼女の目が完全に情欲のとりこになっていることに気づいた。

ヒメボレトは、目を閉じて最初に目にした異性を強く求める効能がある。

レモニーはかぶりつくように抱きついてきた。

熱い!

彼女の体は恐ろしく熱くなっている。
首筋に、熱く荒い彼女の息がかかり、さすがの俺まで流されそうになった。

薬を・・・そう思った瞬間、彼女は熱烈に口づけしてきた。

またくらった不意打ちに、体が動かなくなる。
レモニーの熱い吐息に誘われ、完全に思考が停止した。

・・・この時の記憶はほとんどない。

気がつくと、レモニーがとろけるような顔をして、体の力を抜きそのまま床にくずれそうになっていた。

俺は慌てて背中を支えると、小瓶の蓋を開けて、薬を飲ませる。

やがて彼女は落ち着き、恥ずかしそうに唇を押さえて、

「ご、ごめんなさい。」
と、あやまっていた。

俺はまだこの時、半分意識が飛んでいたので、

「・・・薬のせいだ。
気にしなくていい。」 

とだけ言った。

その後レモニーが深呼吸を繰り返して、完全に落ち着きを取り戻し、

「もう、大丈夫。」

と、言ったので、こちらも安心して抱き締める。

「見せつけてくれますねー。
静かにお願いしますよ。」

と、ケルフェネスがからかうようにいうので、俺は媚薬を飲ませたことを小声で叱った。

すると、飲ませたのはミア第二王妃だという。

・・・!!
彼女か。

やはりカチャリナの母親が出てきたか。

彼女が相手なら、ますます証拠固めをしっかりしないと。

細かいところまで目がいく、恐ろしい女性なのだ。

真面目に考えているのに、ケルフェネスとシャーリーンから、散々レモニーのキスで俺が思考停止を起こしたことを指摘された。

ほっといてくれよ!
と、いうか、目を逸らすとか閉じるとかしろよお前ら!
なんでしっかり目撃してるんだよ!!

そう思った時、ケルフェネスが俺たちに隠れるよう小声で鋭く指示を出してきた。

ケルフェネスが、レモニーを抱きしめてベットに倒れ込むと、マロマロ卿が、レモニーを探して叫びながら部屋に乱入してきた。

「レモニー!
結婚は慣れでおじゃる!
妻は9人もいるから、過ちは許すことばかりで、慣れているでおじゃるよ!
気にしなくていいでおじゃるー!」

と、言っている。
・・・ほざいてろよ。
というか、9人の奥さんを大事にすりゃいいだろ。

こんなやつに仕えていたかと思うと、頭が痛くなる。

マロマロ卿が引き摺り出されて、扉が閉められる。

これでケルフェネスとレモニーが、関係を持ったと周りは誤解してくれるだろう。

俺は、なかなか離れようとしないケルフェネスの襟を掴んで、レモニーから引き離した。

弟だからなんとか耐えられる。
それでも、二度と見たくない光景だ。

俺はレモニーを侍女の服に変装させると、開かずの宮へと誘った。

あそこには、パティスンの手記があると言う。

ミア第二王妃の目論見を潰すには、どうしても必要だ。

開かずの宮には先客がいて、ミア第二王妃とペヤパヤ大臣がパティスンの手記を探していることを話している。

そして、彼女がひどくレモニーを警戒していることもわかった。

二人は手記が見つからないので諦めて出ていき、俺たちは一縷の望みをかけて探し回る。

そんな時、レモニーがプレイヤーライカの手紙を開いてぶつぶつ言っている。

・・・あれなんだ?

まさか、あれがプレイヤーライカとの連絡手段?

よくわからない仕組みだ。

そのうち、シャーリーンとぶつかったレモニーが、鏡を落として、その鏡を用いて手記の隠し場所を特定してくれた。

さらにしまってある場所の仕掛けまで解いてくれて、パティスンの手記を手に入れることができた。

内容を読んで、150年前の事件のことの顛末がはっきりする。

元々王位継承者を殺す計画があり、それが毒を用いた方法であったため、その道に明るいレモニカの存在が、黒幕であるダリア第三王妃にとって邪魔な存在だったこと。

そして彼女は、魔女として祭り上げられ始末された。

サインの偽造に協力したのは、当時強引な結婚話を強要されて、追い詰められていたキッファ王女であったこと。

その存在を隠すために、媚薬を飲まされたパティスンが、生前のレモニカに迫らせられたこと。

そしてレモニカの呪いの名のもと、お茶会で末息子以外が毒殺されたこと。

どうやら鍵はお茶会当日、野外での茶会を考慮した虫除けの効果がある肌着であったことが、明らかになった。

手記には当時の肌着の切れ端と、その時飲んだお茶の茶葉が入っていて、レモニーは茶葉にニセバラ蟲という、フレーバーが入っていることを看破した。

そして、肌着の方にもカゲリナ草という、虫除け効果は高いものの、ニセバラ蟲と相性が悪い草の繊維が編み込まれていたことなど、次々と明らかになっていく。

当日その肌着を着たのは王の後継者たちだけ。

皮膚から吸収されたカゲリナ草の成分が、ニセバラ蟲のフレーバーの入ったお茶を飲むことで、体内で猛毒化して彼らは死んだ。

この結末を招くために、レモニカの死は作られたのだ。

俺の身の内で、ライオネラの慟哭どうこくが聞こえてくるようだった。

魔女も何も関係ない。
邪魔だったから始末された。
そしてその死まで利用されて、王家の後継者が死んだ理由にまでされた。

レモニカは、利用されただけだったのだ。

権力を欲したダリア第三王妃によって。






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