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番外編 ライオネル視点(本編)
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「あの夜の約束を、覚えてる?」
レモニーは俺の腕の中で、確認するように尋ねてくる。
「『そばにいて・・・。
どこにも行かないで・・・。』
と、私は言った。
『わかった。
ずっとそばにいる・・・。』
と、あなたは言ったよね。」
と。
確かに言った。
決して離れたくないとも思った。
俺は無言で頷くと、レモニーはこれは永遠に有効な約束だと言う。
「レモニー・・・。」
俺はそう呟くと、胸が苦しくなってきた。
行かせたくない。
このまま攫ってどこかへ隠したくなる。
「生きる、て約束して。
私とまた出会って、今度こそ一緒に生きてくれる?」
レモニーのその言葉は、プロポーズのようにも思えてくる。
「・・・当たり前だ。
そのためにここにいる。」
色気のない返事だが、これは本音だ。
そう当たり前。
ライオネラと同じ轍を踏まないように、俺はここにいる。
そして、あらゆる手段でレモニーが生存できる道を必ず見つけるのだ。
そのために、今は少しだけ、ほんの少しだけ離れる。
俺は腕を緩めて、レモニーを放そうとした時、レモニーの方から頬にキスをしてきた。
・・・!!!
「続きはまた今度ね!
ライオネル!!
行ってきます、シャーリーン!!」
俺はこの瞬間固まってしまった。
女性からキスされるのは、もちろん初めてではないが、実は俺はこの手の不意打ちに無茶苦茶弱い。
相手がレモニーともなると、完全にお手上げだ。
シャーリーンが、俺を相当揺さぶってたそうだが、記憶にない。
「ライオネルのバカ!動いてよ!!」
と、シャーリーンに言われて、ようやく目の焦点が合う。
「レモニー様、行っちゃった・・・。
イベント、て何?逆らえない、てなんで?」
と、シャーリーンが涙ぐみながら尋ねてくる。
説明しても、この世界の枠を疑えない彼女には、理解できないだろう。
「行こう、シャーリーン。俺に考えがある。」
と、言って外に出る。
外では人だかりができており、ペヤパヤ大臣が大声で、
「皆のもの!この者はレモニー・ケル!
現代に蘇った、レモニカ・ケリーの生まれ変わり!!王室を呪った恐ろしい魔女が再来したのだ!!」
と、叫んでいた。
捕まったか!
そう思った俺は、シャーリーンを連れて、ケルフェネスを探す。
まだあいつはいるはずだ、奴が乗ってきた船がまだそこにいるからな!!
俺はすぐにケルフェネスを見つけた。
奴の周りは、女性の人だかりが必ずできる。
彼女たちの間を縫うようにして進むと、ケルフェネスがいた。
俺は奴の腕を捕まえると、素早く耳打ちする。
「えぇ!?
何ですか?いきなり!
レモニー様を追え?
私の船を貸せ?
王宮の私の部屋に潜伏させろ?」
俺は有無を言わせず、ケルフェネスをペヤパヤ大臣たちが乗る船に送り出した。
流石に皇太子を拒める王族はいない。
ケルフェネスが乗り込むのを確認して、俺はケルフェネスの船で一足早く王宮に辿り着いた。
もう来ることはないと思っていた場所。
懐かしの我が家。
俺は戻るや否や、シャーリーンを連れて人目につかない道を辿り、ケルフェネスの隠し部屋へと入っていく。
・・・昔はよくここにきた。
そして・・・俺の記憶通りなら。
隠し部屋は寝室へと繋がっていて、そのベットの下から、箱に入った侍女のドレスが何枚か出てきた。
・・・やっぱりな。
ケルフェネスの寝室に忍んでくる侍女たちのための、替えのドレスだ。
・・・理由は聞くな。
そういうことだ。
俺はシャーリーンを呼んで、ドレスを選ばせた。
レモニーがここにきたら、彼女にもこのドレスを着せて変装させないと。
俺はケルフェネスのクローゼットを開ける。
奴がお忍びで、王宮内の誰かと逢引きするときは必ず侍従の格好をして出かけるのを知っているのだ。
今回だけ借りるぞ。
「ねぇ、なんでここなの?
レモニー様は大丈夫なの?」
シャーリーンが、説明を求めてくる。
「レモニーはケルフェネスがうまくやれば大丈夫。
敵の狙いはレモニーが魔女として処刑されることだ。
おそらくパム村の悲劇を再現して、後継者候補を全滅させるための生贄にするつもりだろうから。」
「そんな・・・!」
「だが昔と違い、奴らも勝手はできない。
俺の父親、即ち王は曖昧なことが大嫌いだ。
処刑の裁可は王が下す。
王を納得させた方が、レモニーを確実に助けることができるからな。」
「も、もし、ケルフェネス王子がうまくやれなかったら・・・?」
と、シャーリーンが一番言って欲しくない核心を突いてくる。
「・・・レモニーは火刑になる。
恐らく薬物を使って、みんなの前でレモニーに王族を害させる手段にでるだろう。
この国では最も重い罪だ。
はっきりしているだけに、王もすぐ許可するはずだ。」
「そんな!!」
「そうはならない!!
絶対に!」
俺は言い聞かせるように言った。
こういう時、王室を出てしまった自分の立場が恨めしくなる。
それがなければ自分がやったのに。
いや、王室を出ていなければ、レモニーに会うことはなかった。
俺たちは祈るような気持ちで、レモニーたちを待っていた。
そこへもう一隻の船が入港してきて、ケルフェネスがレモニーを抱き抱えて降りてくるのが見える。
あいつ、うまくやったな!
ほっとしていたが、レモニーの様子がおかしい。
まるで媚薬を飲んだかのように、ケルフェネスにもたれかかっている。
まさか・・・本当に薬を飲ませたんじゃないか!?
あいつ・・・!!!
気が気ではないが、とにかくこの部屋に来るまで待つしかない。
「ケ、ケルフェネス王子、まろのレモニーをどこへ連れて行くでおじゃる?
あ、部屋に連れて行くでおじゃるか?
ま、まろの花嫁になる女でおじゃるよ!!
レモニー!!
まろはここでおじゃるよー!」
と、素っ頓狂なマロマロ卿の声が聞こえてくる。
・・・なんでお前のレモニーなんだよ。
どいつもこいつも!!
レモニーは俺の腕の中で、確認するように尋ねてくる。
「『そばにいて・・・。
どこにも行かないで・・・。』
と、私は言った。
『わかった。
ずっとそばにいる・・・。』
と、あなたは言ったよね。」
と。
確かに言った。
決して離れたくないとも思った。
俺は無言で頷くと、レモニーはこれは永遠に有効な約束だと言う。
「レモニー・・・。」
俺はそう呟くと、胸が苦しくなってきた。
行かせたくない。
このまま攫ってどこかへ隠したくなる。
「生きる、て約束して。
私とまた出会って、今度こそ一緒に生きてくれる?」
レモニーのその言葉は、プロポーズのようにも思えてくる。
「・・・当たり前だ。
そのためにここにいる。」
色気のない返事だが、これは本音だ。
そう当たり前。
ライオネラと同じ轍を踏まないように、俺はここにいる。
そして、あらゆる手段でレモニーが生存できる道を必ず見つけるのだ。
そのために、今は少しだけ、ほんの少しだけ離れる。
俺は腕を緩めて、レモニーを放そうとした時、レモニーの方から頬にキスをしてきた。
・・・!!!
「続きはまた今度ね!
ライオネル!!
行ってきます、シャーリーン!!」
俺はこの瞬間固まってしまった。
女性からキスされるのは、もちろん初めてではないが、実は俺はこの手の不意打ちに無茶苦茶弱い。
相手がレモニーともなると、完全にお手上げだ。
シャーリーンが、俺を相当揺さぶってたそうだが、記憶にない。
「ライオネルのバカ!動いてよ!!」
と、シャーリーンに言われて、ようやく目の焦点が合う。
「レモニー様、行っちゃった・・・。
イベント、て何?逆らえない、てなんで?」
と、シャーリーンが涙ぐみながら尋ねてくる。
説明しても、この世界の枠を疑えない彼女には、理解できないだろう。
「行こう、シャーリーン。俺に考えがある。」
と、言って外に出る。
外では人だかりができており、ペヤパヤ大臣が大声で、
「皆のもの!この者はレモニー・ケル!
現代に蘇った、レモニカ・ケリーの生まれ変わり!!王室を呪った恐ろしい魔女が再来したのだ!!」
と、叫んでいた。
捕まったか!
そう思った俺は、シャーリーンを連れて、ケルフェネスを探す。
まだあいつはいるはずだ、奴が乗ってきた船がまだそこにいるからな!!
俺はすぐにケルフェネスを見つけた。
奴の周りは、女性の人だかりが必ずできる。
彼女たちの間を縫うようにして進むと、ケルフェネスがいた。
俺は奴の腕を捕まえると、素早く耳打ちする。
「えぇ!?
何ですか?いきなり!
レモニー様を追え?
私の船を貸せ?
王宮の私の部屋に潜伏させろ?」
俺は有無を言わせず、ケルフェネスをペヤパヤ大臣たちが乗る船に送り出した。
流石に皇太子を拒める王族はいない。
ケルフェネスが乗り込むのを確認して、俺はケルフェネスの船で一足早く王宮に辿り着いた。
もう来ることはないと思っていた場所。
懐かしの我が家。
俺は戻るや否や、シャーリーンを連れて人目につかない道を辿り、ケルフェネスの隠し部屋へと入っていく。
・・・昔はよくここにきた。
そして・・・俺の記憶通りなら。
隠し部屋は寝室へと繋がっていて、そのベットの下から、箱に入った侍女のドレスが何枚か出てきた。
・・・やっぱりな。
ケルフェネスの寝室に忍んでくる侍女たちのための、替えのドレスだ。
・・・理由は聞くな。
そういうことだ。
俺はシャーリーンを呼んで、ドレスを選ばせた。
レモニーがここにきたら、彼女にもこのドレスを着せて変装させないと。
俺はケルフェネスのクローゼットを開ける。
奴がお忍びで、王宮内の誰かと逢引きするときは必ず侍従の格好をして出かけるのを知っているのだ。
今回だけ借りるぞ。
「ねぇ、なんでここなの?
レモニー様は大丈夫なの?」
シャーリーンが、説明を求めてくる。
「レモニーはケルフェネスがうまくやれば大丈夫。
敵の狙いはレモニーが魔女として処刑されることだ。
おそらくパム村の悲劇を再現して、後継者候補を全滅させるための生贄にするつもりだろうから。」
「そんな・・・!」
「だが昔と違い、奴らも勝手はできない。
俺の父親、即ち王は曖昧なことが大嫌いだ。
処刑の裁可は王が下す。
王を納得させた方が、レモニーを確実に助けることができるからな。」
「も、もし、ケルフェネス王子がうまくやれなかったら・・・?」
と、シャーリーンが一番言って欲しくない核心を突いてくる。
「・・・レモニーは火刑になる。
恐らく薬物を使って、みんなの前でレモニーに王族を害させる手段にでるだろう。
この国では最も重い罪だ。
はっきりしているだけに、王もすぐ許可するはずだ。」
「そんな!!」
「そうはならない!!
絶対に!」
俺は言い聞かせるように言った。
こういう時、王室を出てしまった自分の立場が恨めしくなる。
それがなければ自分がやったのに。
いや、王室を出ていなければ、レモニーに会うことはなかった。
俺たちは祈るような気持ちで、レモニーたちを待っていた。
そこへもう一隻の船が入港してきて、ケルフェネスがレモニーを抱き抱えて降りてくるのが見える。
あいつ、うまくやったな!
ほっとしていたが、レモニーの様子がおかしい。
まるで媚薬を飲んだかのように、ケルフェネスにもたれかかっている。
まさか・・・本当に薬を飲ませたんじゃないか!?
あいつ・・・!!!
気が気ではないが、とにかくこの部屋に来るまで待つしかない。
「ケ、ケルフェネス王子、まろのレモニーをどこへ連れて行くでおじゃる?
あ、部屋に連れて行くでおじゃるか?
ま、まろの花嫁になる女でおじゃるよ!!
レモニー!!
まろはここでおじゃるよー!」
と、素っ頓狂なマロマロ卿の声が聞こえてくる。
・・・なんでお前のレモニーなんだよ。
どいつもこいつも!!
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