悪役令嬢は、犯人ではございません!

たからかた

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番外編 ライオネル視点(本編)

好意は本物だろうか

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その日はもう夢は見なかった。

顔に誰か触れる気配がして目を覚ますと、俺の腕枕の上でレモニーがこちらの目を見つめていて、

「ありがとう、ライオネル。
もう、大丈夫。」

と、言って笑った。

ほっとして、もう癖になってしまった彼女の顔を撫でる動作をする。

最初は彼女もこうされて驚いていたが、今はさほど驚かずに受け入れてくれている。

彼女の頬の感触を感じながら、一つの考えが浮かんだ。

俺は・・・まさか、本当にライオネラの生まれ変わりなのか?

管理者であった頃、そういう位置付けのキャラクターであると言うデータを見た。

レモニーが宿ってからというもの、この世界が異世界化している事実を考えたら、現実のライオネラの魂が俺と言う器に宿ってもおかしくはない。

だとしたら、このレモニーはまさか・・・。

そう考えると自然と体が動いて、彼女の唇にキスしていた。

・・・この感触・・・、俺は知って・・・。

そう思った時、シャーリーンが部屋に入ってきて、俺は部屋を叩き出された。

いかん、いかん!

俺は顔を洗って身支度を整えた。

何が彼女の恋路を邪魔しない、だ!

まだ、よくお互いの気持ちも伝え合えてない。

それなのに、俺たちの距離ばかり近くなる。

昨夜のことも、あれだ、悪夢を見たからああなっただけ!

しっかりしろ!!

顔を叩いて鏡を見る。

自分の目を見つめて自問自答をした。

俺は・・・彼女が好きなのか?

プログラム設定を引きずってるわけでもなく、レモニーのヒロイン効果の影響でもなく・・・。

ケルフェネスやマロマロ卿がレモニーに近づくのを嫌ったり、夢の中の男にまで気を回すのは、嫉妬ではないとでも?

気を抜けば、彼女を壊しかねないほど抱きしめたくなるのは、男にありがちな単なる異性に対する衝動に過ぎないのでは?

なら、シャーリーンにも、同じように思うか?

「わかんねー・・・。」

ただ彼女のそばを離れたくない。
それだけは一貫している。

悶々としていると、部屋の窓に伝書鳩が来ていた。
ケルフェネスの伝書鳩だ。

届いた手紙には、交易都市『カチャガチャ』にマロマロ卿が王室の急進派のペヤパヤ大臣と一緒によく現れる。
今日、茶葉の搬送ルートの調査を兼ねて自分もそこへ行くつもりだと書いてある。

ペヤパヤ大臣は末の弟カチャリナの後見人だ。
かつて、カチャリナの母親であるミア第二王妃を王の侍女として紹介してきた男で、ミア第二王妃が王の寵愛ちょうあいを受けてカチャリナを出産してから、何かと肩入れしている。
レモニーの件に何か関わりがあるに違いない。

しかし、マロマロ卿のやつ、この国に来ていたか。
しつこい野郎だ。

とにかく俺もカチャガチャへ行こう。
交易都市だけに、いろんな情報も手に入るからな。

俺はレモニーの部屋に呼ばれて、パム村に行きたいと願う彼女のために、シャーリーンも加えて三人でカチャガチャへ行くことになった。

髪の色を染め直し、服もそれなりに変えて、交易都市に溶け込む。

レモニーたちをカフェに待機させ、俺は情報収集をしに行った。

わかったことは、マロマロ卿の莫大な資金を使って、何やら特注の茶葉やら、薬草やらを購入しているということ。

そして、ここ何日か俺の弟や妹たちが、病や事故に遭って、不運が続いているということ。

そして、こう言う都市にありがちな闇ルートが使われて、特注の肌着が最近届いたとのこと。

きな臭い話ばかりだ。

その時、港にケルフェネスがよく使う船が着港するのが見え、さりげなく近づくと、情報交換をする。

「・・・へぇ、茶葉に薬草に肌着ですか。
しかし、何に使うのやら。
毒草の類ならかえって網にかかりやすいんですけど、抜けるところを見ると、害になるものではないかもしれませんね。」

ケルフェネスは腕を組んで考え込む。

「とにかく、わかったことはこれくらいだ。
俺は今からパム村へ行く。
この近くだからな。」

と、俺が言うと、ケルフェネスが片眉を上げた。

「あそこに何かあるんですか?」

「レモニーが行きたがってるんだ。」

「レモニー様が?
・・・て、え、いつから兄上、呼び捨てにするようになったんです?」

ケルフェネスが流し目で睨んでくる。

「・・・なんでもいいだろう。」

「まさかもう関係持ったんですか?
うわ、私のこと手が早いとかなんとか言ってる癖に自分はなんです?
抜け駆けはずるいですよ!」

「俺と彼女はそんなんじゃ・・・。」

「ええ?
なんですか、その親しげなものの言い方。
違うと言うなら、私が誘っても怒りませんよね?」

「お前は遠慮しろ。
誘えばその舌を引き抜くぞ。」

「うわ!
ひっどいなあ。
もう俺のもの扱いしてるじゃないですか。
はいはい、わかりましたよ!」

「じゃな。」

むくれるケルフェネスと別れて、レモニーたちの元へ戻る。

なんと隣の個室にマロマロ卿と、ペヤパヤ大臣が来ていて、怪しげな密談をしていた。

奴らが行ってから、レモニーたちからも話を聞くと、やはりレモニーを王位継承者殺害の計略に利用するつもりだということがわかった。

俺は思わず拳を握りしめる。

これではなんのために、王室を出たのかわからない。
親族同士の殺し合いを防ぐためだったのに。

とにかく今はこれ以上のことは、わからない。

とりあえず三人でパム村を目指した。

パム村。

レモニカを魔女として処刑した、歴史上最後の魔女狩りが起きた場所。

そこでレモニーが不思議なことを言い出した。

それはレモニカの家に近づくほど、顕著になってくる。

家の中に入るや否や、レモニカの家の間取りや内装などを言い当て、そこに住んでいたかのように振る舞う。

俺は確信した。
彼女はやはりレモニカ自身の生まれ変わりだと。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。










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