悪役令嬢は、犯人ではございません!

たからかた

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点と点が結んだ線の結末

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ミア第二王妃は、あれから国境付近で捕まったわ。
本当にびっくりするほどあっさりと。

カチャリナ王子の母親だから、死刑には出来ないけれど、体の中に溜めたニセバラ蟲の効能を少しずつ抜かれていく刑罰を受けている。

ゆっくり彼女は歳をとっていき、それを鏡で毎日確認する残酷な刑罰。

実際150年以上前の人だから、そもそもニセバラ蟲が全部抜けたら、生きているのかしら。

あ、元左大臣マロマロ卿?
国から所長のキリがきて、脱獄犯として連れて帰った。
ペヤパヤ大臣が失脚したから、この国で庇う人いないもの。

もちろん、大人しく捕まる彼じゃない。

「まろは、レモニーと一緒じゃないと、帰らないでおじゃる!
レモニーと結婚して、この国で暮らすでおじゃる!」

と、言って暴れたわ。

だから、彼に言ってやったの。

「私はあなたと結婚なんかしません。
さようなら。
私はライオネルが好きなので。
あなたじゃありません。」

とね。

「レモニー?
まろのどこが嫌いでおじゃるか?」

「私を利用した張本人ですよね。」

「チッチッチ。
昔のことは、食べてしまった夕飯みたいなものでおじゃるよ。
どうでもいいことでおじゃる。
ライオネルとマロの違いは、イケメンであるかどうかでおじゃろ?
心配ないでおじゃる。
まろは容姿、性格、財力、その他何も劣らないイケメンでおじゃるよ!」

「さようなら。
二度と会いたくありません。
大っ嫌い!!」

本当に救い難い人。

あ、脱獄犯としては、ライオネルも同じだけど、マロマロ卿を捕獲した件でチャラに。
本当に都合のいい世界。

地下牢のベクトリアルも助け出したわ。

シャーリーン、嬉しそうだったな。
彼も攻略対象なのかどうか・・・。
真っ赤になって照れて、可愛い男の子が好きならありかもね。

私は今、ライオネルたちと王家の茶会に来ている。

「いや、今回は本当にすまなかった。」

王が自ら頭を下げた。

「い、いいえ。
もうすんだことですから。」

私が手を振ると、ケルフェネス王子が、

「謝らせてくださいよ。
もう、何度もレモニー様は無実だと言っても父上は耳を貸さない。
自分で確かめるまで、何も言うなですから。」

と、言った。

「ま、それが父上ですよね。
わかってました。」

と、ライオネルが言った。

「スワンやケシェティもな、レモニーの言う通りにしたら、元気になったんだよ。
スワンは、皮膚炎を治すことを条件に、ライオネルのサインの偽造に手を貸したんだそうだ。
許してやってくれ。」

と、王が言うのでほっとした。

スワン姫もケシェティ王子も、自分の席からお辞儀をしてくれる。
メロディー姫は嬉しそうに手を振ってきた。

カチャリナは、乳母とケーキを頬張っている。

「それなら、いうことありません。」

私がお辞儀を返して笑うと、王もにっこり笑う。

「それで・・・あの話は本当なのか?
ライオネルとケルフェネスを二人とも籠絡したというのは・・・。」

「い、いえ。
その・・・。」

「そりゃもう、私も夢中ですよ?
ね、レモニー様?
一緒にベットに入った仲ですもんね?」

私が顔を赤くして、ケルフェネス王子を見ると、ライオネルが目の前のケーキにグッサリとフォークを突き立てた。

「こうなりたいか?
ケルフェネス。」

「ま、まさか・・・兄上、たらも・・・。」

ケルフェネス王子が顔を青くして、王の後ろに隠れる。

「怖い怖い。
いや、レモニーの顎を剣ですくった時に、私を見つめる目がとても美しくてな。
あの状況下で、怯まないレモニーに私も思わず惹かれたよ。
ライオネルには勿体ない。」

「本当ですよ。
兄上ばっかりこんな素敵な人と。
あーあ、私がレモニー様を恋人にできる道筋はないものかなー。」

ケルフェネス王子の言葉に、それは他のプレイヤーが選択するかもですよ?と、心の内で答えた。

そして、私はライオネルの手を机の下で握る。

ライオネルも気付いて、しっかりと握り返してくれた。

「さて、ライオネル。
お前はこのままどうするのだ?
王室に戻る気はないか。」

王の言葉に、ライオネルは首を振る。

「私は王室を出たものです。
・・・それに父上は最初から、ケルフェネスを後継者にと思っていたでしょう?」

「知っていたのか。」

「一番長く父上の子供をやってますからね。」

「ま、お前は情が深すぎる。
人としてそれは良くても、王に向かない。
冷酷な判断を情が邪魔して、結局多くを失うことになるからな。
その点ケルフェネスは、それができる。
だが、鋭すぎる刃は流す血を多くする。
ケルフェネスには、さやになる相手が必要だ。」

・・・ケルフェネス王子を攻略対象にするヒロインは、彼のさやになれる人なのね。
ライカ、聞いてる?

さやにね・・・。
レモニー様、さやになってください。
私はレモニー様だったら、いつまでも大人しく収まってますよ。」

「ケルフェネス、お前の刃をここで折るか、錆びさせるかしてやろうか。」

「父上!
兄上のどこが情が深いんですか?
私より冷酷だと思います。」

茶会に笑い声が響く。

もしかしたら、凄惨な茶会になっていたかもしれないこの瞬間を守れたことに、心から安心してるわ。

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