悪役令嬢は、犯人ではございません!

たからかた

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新世界

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「まさか、レモニカのこと実話だなんて・・・。」

「身分や、登場人物や、出てくるものや顛末は変えてあるけど、もとになる実話があってこそできたもの。
魔女狩りは本当に酷いものだった。
元のまま反映してたら、君には耐えられないよ。
そのくらいのむごさだ。
君はそこまでは覚えてないようだな。
よかった。
覚えてなくていい。
あんなひどいこと。」

「・・・。」

「まあ、今でもネット上で似たようなことが起きているから、人は大して変わってない。
他人を踏み潰すときだけ、生を感じる人間を生産しやすい状況は、昔も今も変わらない。」

「・・・。」

「僕はね、レモニカが生まれ変わって幸せになる世界を作りたかった。
架空の世界で構わない。
せっかくなら、今を生きる人にも、楽しんで参加してほしくて。
それで、今流行りの乙女ゲームを作ったんだよ。」

そう言ってパソコンのモニターを、軽く叩いた。

「やっぱりゲームの設定では、レモニカの生まれ変わりがレモニー?」

「そうだよ。」

「な、なんで悪役にしたの?
そこまで言うならヒロインにした方が・・・。」

「シャーリーンから聞いただろ?

『あなたは、昔から人間的には最低。
なんでも口ばかりで、責任は全部他人。
そのくせ、いいことが他人に起きるのは許せない。
奪い取って、自分のために使ってしまおうとする。
他人は見下す。
そう言われて成長した』

とね。」

「ええ、冷血、冷酷、厚顔無恥。
散々な言われよう。」

「かつて、現実のレモニカがそう言う人間だと、吹聴されていたらしいんだよ。

本人の知らないところで、誰かが言い出した悪評が一人歩きしてね。

だから、その生まれ変わりとしてレモニーは、悪役に位置づけた。

しかし、真実は君が見てきた通り、そう見えるだけのものでしかなかったわけだ。」

「でも、そんなにいい性格でもないよね?
乙女ゲームの悪役令嬢の中でも、指折りの嫌われ者だったし。」

「あれは、他のスタッフが脚色しすぎたんだよ。
悪役は、せめて元の性格も多少悪くないと、ヒロインが映えないし、商売として成り立たないから、て。」

「ふうん・・・。」

「そのせいでトゥルーエンディングへと入るための、レモニーを信じて左大臣を見極めると言う要素がわかりにくかったことは認める。
ごめんね。
散々ユーザーにも叩かれたよ。」

「でしょうね。」

「それでも、自分でもよくできたゲームだと思う。

オープンワールドで、キャラクターたちが生き生きと動き回り、プレイヤーのフリートークにも臨機応変に対応可能。

乙女心をくすぐる、アバターとその身を飾る美しい装飾品の数々。

見た目もCGとは思えないほどのハイクォリティーで、美形揃いの王子たち。

各キャラクターは、本当に生きてそこにいるかのように血の通った動きを見せる。

そしてファンタジー要素を含みながらも、どこか現実的な展開の数々。

もはや、この世界はもう一つの現実の世界だ。
それくらい生々しい世界を、僕と仲間たちは作りあげたんだ。」

クランシーの言葉に私も納得するわ。

とっても生々しいし、愛情も憎しみも生身の人間のそれと何も変わらない。

だからこそ、恋愛ゲームとはいえ、本当に恋しているかのようにはまれるの。

でも・・・。

「最初ライオネルの役目は、管理者だったね。
一番辛い役目よ?
あんな優しい人にこんな・・・。」

「かつて、レモニカを処刑台に送ったのは、ライオネラだ。
これはレモニカの実録に沿っている。

騙されて、処刑執行書にサインしたと祭り上げられたんだ。
そして不在の隙に、レモニカは処刑された。
どうしようもなかったとしても、彼にも罪がある。

ライオネルはライオネラの生まれ変わりとして、その罰を背負うキャラクターなんだよ。

ヒロインパートの毒入りワイン事件で、プレイヤーたちが基準を満たせなかった時は、愛するレモニーを処刑台へと送り出す役目を担わせた。」

「ライオネル・・・。」

胸が痛くなってくる。
現実の人間の罪を、こんな風に背負わされるなんて。
プログラムとはいえ、辛いわ。

「感情までリアルに描き過ぎよ。
プログラムとは思えないほど、彼は苦しんでいたわ。
私がプレイヤーとしてゲーム参加していた時は、ここまでリアルなゲームではなかったはずよ。」

「これが配信ゲームである以上、プレイヤーは、何十万といる。
もちろん、その数だけヒロイン、レモニー、ライオネルたちがいる。
だが、その中で最も不可思議な存在が、プレイヤーライカがアクセスするゲームの世界のレモニー、君だ。」

「え?」

「君は突然、魂を宿した。

この恋愛ゲームの世界がプログラムの世界である以上、君の存在ももちろんその一つのはずなのに。

君が宿った時から、プレイヤーライカ以外のキャラクターたちも、次第に制御不能になっていった。

ゲームの世界全体が、命を宿したように動き始め、キャラクターたちも役割を基に独自の意思や感情を持ち、自由に動き始めた。

運営側もなんとかしようとしたが、我々の干渉すら跳ね返して独立した存在のままだ。

後日談の追加や、新しいキャラクター、続編の追加、ヒロインのアバターの更新など、追加要素は受け付けても、それ以外は受け付けない。」

「どういうことなの?」


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