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命の危機と世界の秘密
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「だ、誰か!!
ライオネル!!
シャーリーン!!」
私はミア第二王妃に引きずられて、謁見の間を出る。
扉を開くと、煙は王宮内全てを覆ってしまった。
すぐ隣も見えないくらいの濃い煙に、ライオネルたちも、私がどこにいるのか見えないみたい。
私は恐ろしく強い力に、足を踏ん張っても抗えずにいた。
「痛い!
はなしてよ!」
「黙れ!
お前は私の夢を潰した!
また、潜伏してやる。
100年ほど待てば皆忘れるだろう!」
ミア第二王妃の言葉に、また繰り返すつもりなのかと呆れてしまう。
「レモニカを殺したくせに!
許さない!!」
私が叫ぶと、ミア第二王妃は笑った。
「あの女がなんだ!!
私以外は、いてもいなくても同じだ!
お前もな!!」
そういうと、突き飛ばされた。
転んだ先に、藁と薪が積んである。
まさか・・・まさか!!
「お前のための処刑台だ。
無駄にならなくてよかった。」
私は首筋に何かチクッと痛みを感じた。
思わず振り向くと、煙が晴れていって、指輪の先から飛び出した針のようなものをしまう、ミア第二王妃が見えた。
「その毒に解毒薬は存在しない。
心配するな、火葬まで済ませてやる。」
私はそう言われて、逃げ出そうとしたけど、足がふらついて倒れる。
そんな私を笑いながら、ミア第二王妃が、火のついたマッチを私の後ろに投げ入れた。
「いや・・・、いや!」
私は必死に地面に爪を立てて、動こうとするけど、力が抜けて動けなくなっていく。
「ははは!
死んだ連中に同情して敵討ちでもしたつもりか?
自分の身も守れずに、分不相応な真似をするからこうなる。
お前が苦しみながら死ねば、そこからニセバラ蟲が生える。
レモニカも、他の連中も、そうやってニセバラ蟲を生やしていった。
それが私の糧になり、さらに寿命を伸ばしてくれる。
私の新たな命になれ、レモニー・ケル!!」
ミア第二王妃はそう言って、走り去って行く。
後ろからパチパチと燃える音がして、私はもがいた。
助けて・・・誰か!
ライカ!
震える手で手紙を開く。
『レモニー!
しっかりして!
動くの!』
力が入らないの・・・!
目が霞んできた・・・。
『ダメ!!
レモニー!!
・・・そうだ!
禁じ手かもしれないけど、その体を一旦私が預かるわよ!』
どうやるの?
『プレイヤーは、私よ!?
本来は私が動かすの!
レマニカルを持ってるよね?
レモニー!』
あ、シャーリーンが中庭の真ん中からとって来てくれた万能薬・・・。
『飲める!?
齧るだけでいい、て、アイテム紹介欄に書いてある!!』
私は何とかレマニカルを取り出して、口元に持って行くけど、口を開く力が残ってない。
ライカ・・・動かないよ。
『レモニー!!
あとは私がやる!
バグ技でもなんでも使って助けてあげる!!』
ライカの手紙の文字を目で追ったあと、そのまま真っ暗な闇の底に意識を手放した。
・・・カタカタカタ。
また、キーボードの音。
カタカタカタ、カチッ。
その音に目をゆっくり開けると、あの日の夢と
同じ光景が見えてきた。
沢山のモニターと、キーボード。
ここはゲームの世界じゃない。
現実の世界だ・・・。
私は、ゲームから出てきたのかしら。
なんだろ、なんだかモニターの一つに、私映ってるみたい。
でも、この部屋見覚えがあるわ。
「やあ、そのままでいいよ、レモニー。」
誰かが椅子に座ったまま、私が映るモニターに背を向けて、話しかけてくる。
「あなたは?」
「君のいるゲームの世界『僕の隣は君がいい』を作った一人。
ゲーム制作者だよ。」
「・・・エンジニア?」
「そうだ。
そして原作者。
産みの親ともいう。」
「創造主なの?
私、ミア第二王妃に殺されかけたの。
毒で意識を失ってしまっただけのはずなのに、ゲームの世界から現実に戻ってきちゃったの?」
「一時的にね。」
「死んだのではないのね。」
と、私は必死に話しかけることにした。
「もちろん。
この恋愛ゲーム『僕の隣は君がいい』の世界の、居心地はどうだった?
レモニー。
悪役として登場し、その立場を変えていって、ヒロインまで仲間にして、共に生きていた。
恋愛も経験して、過去に起きた事件まで解明した。」
その人は振り返らずに話し続けている。
「あなたの筋書きでしょ?
ゲームの世界のあらすじは、あなたが書いたのでしょう?」
「いや?
もちろんレールは敷いたが、このゲームの世界はなるべく自由に人生を送れるように、設計されている。」
「あなたは日本の人?」
「いや、違う。
欧州のどこか、とだけ言おう。」
「私・・・私はこの恋愛ゲームの中で幸せだった。
最初は戸惑ったけど、一つ一つみんなと歩いて行けた。
ちゃんと人を愛したし、その人からも愛された。
ゲームの都合の良さに、救われたところも大きいけれど。
ヒロインになってからだって、その効果に助けられたけど、それでも、充実してた。」
キーボードを叩く手が止まる。
「幸せだった?
充実してた?
僕らが作ったこのゲーム『僕の隣は君がいい』の中で?」
噛み締めるように言われて、頷く。
すると、背もたれ椅子がくるりと回って、その人の顔が見えた。
「誰?
あ・・・ク・・・ク・・・。」
「クランシー・ケリー。
レモニカの弟の子孫。」
「そう、クランシー!
あれ、なぜ知ってるんだろ。
でも、ちょっと待って。
レモニカは実在の人!?
ゲームの登場人物じゃないの?」
「ふふ、そう。
レモニカが実在の人間だと知っているのは、僕だけだけど。
僕は、代々レモニカ・ケリーの話を守ってきた一族の一人。」
「まさか、本当に?」
「レモニカの悲劇は魔女狩りが横行したあの暗黒の時代に、現実の世界で起きたことだ。
レモニカの弟は、姉に何が起きたのか細かく調べ上げて、記録した。
その膨大な記録は子孫に受け継がれていき、僕の代になって、この話を基にゲームを作ろうと仲間で話し合って、プログラムを組んだ。」
「それがこのゲーム?」
「そう。」
ライオネル!!
シャーリーン!!」
私はミア第二王妃に引きずられて、謁見の間を出る。
扉を開くと、煙は王宮内全てを覆ってしまった。
すぐ隣も見えないくらいの濃い煙に、ライオネルたちも、私がどこにいるのか見えないみたい。
私は恐ろしく強い力に、足を踏ん張っても抗えずにいた。
「痛い!
はなしてよ!」
「黙れ!
お前は私の夢を潰した!
また、潜伏してやる。
100年ほど待てば皆忘れるだろう!」
ミア第二王妃の言葉に、また繰り返すつもりなのかと呆れてしまう。
「レモニカを殺したくせに!
許さない!!」
私が叫ぶと、ミア第二王妃は笑った。
「あの女がなんだ!!
私以外は、いてもいなくても同じだ!
お前もな!!」
そういうと、突き飛ばされた。
転んだ先に、藁と薪が積んである。
まさか・・・まさか!!
「お前のための処刑台だ。
無駄にならなくてよかった。」
私は首筋に何かチクッと痛みを感じた。
思わず振り向くと、煙が晴れていって、指輪の先から飛び出した針のようなものをしまう、ミア第二王妃が見えた。
「その毒に解毒薬は存在しない。
心配するな、火葬まで済ませてやる。」
私はそう言われて、逃げ出そうとしたけど、足がふらついて倒れる。
そんな私を笑いながら、ミア第二王妃が、火のついたマッチを私の後ろに投げ入れた。
「いや・・・、いや!」
私は必死に地面に爪を立てて、動こうとするけど、力が抜けて動けなくなっていく。
「ははは!
死んだ連中に同情して敵討ちでもしたつもりか?
自分の身も守れずに、分不相応な真似をするからこうなる。
お前が苦しみながら死ねば、そこからニセバラ蟲が生える。
レモニカも、他の連中も、そうやってニセバラ蟲を生やしていった。
それが私の糧になり、さらに寿命を伸ばしてくれる。
私の新たな命になれ、レモニー・ケル!!」
ミア第二王妃はそう言って、走り去って行く。
後ろからパチパチと燃える音がして、私はもがいた。
助けて・・・誰か!
ライカ!
震える手で手紙を開く。
『レモニー!
しっかりして!
動くの!』
力が入らないの・・・!
目が霞んできた・・・。
『ダメ!!
レモニー!!
・・・そうだ!
禁じ手かもしれないけど、その体を一旦私が預かるわよ!』
どうやるの?
『プレイヤーは、私よ!?
本来は私が動かすの!
レマニカルを持ってるよね?
レモニー!』
あ、シャーリーンが中庭の真ん中からとって来てくれた万能薬・・・。
『飲める!?
齧るだけでいい、て、アイテム紹介欄に書いてある!!』
私は何とかレマニカルを取り出して、口元に持って行くけど、口を開く力が残ってない。
ライカ・・・動かないよ。
『レモニー!!
あとは私がやる!
バグ技でもなんでも使って助けてあげる!!』
ライカの手紙の文字を目で追ったあと、そのまま真っ暗な闇の底に意識を手放した。
・・・カタカタカタ。
また、キーボードの音。
カタカタカタ、カチッ。
その音に目をゆっくり開けると、あの日の夢と
同じ光景が見えてきた。
沢山のモニターと、キーボード。
ここはゲームの世界じゃない。
現実の世界だ・・・。
私は、ゲームから出てきたのかしら。
なんだろ、なんだかモニターの一つに、私映ってるみたい。
でも、この部屋見覚えがあるわ。
「やあ、そのままでいいよ、レモニー。」
誰かが椅子に座ったまま、私が映るモニターに背を向けて、話しかけてくる。
「あなたは?」
「君のいるゲームの世界『僕の隣は君がいい』を作った一人。
ゲーム制作者だよ。」
「・・・エンジニア?」
「そうだ。
そして原作者。
産みの親ともいう。」
「創造主なの?
私、ミア第二王妃に殺されかけたの。
毒で意識を失ってしまっただけのはずなのに、ゲームの世界から現実に戻ってきちゃったの?」
「一時的にね。」
「死んだのではないのね。」
と、私は必死に話しかけることにした。
「もちろん。
この恋愛ゲーム『僕の隣は君がいい』の世界の、居心地はどうだった?
レモニー。
悪役として登場し、その立場を変えていって、ヒロインまで仲間にして、共に生きていた。
恋愛も経験して、過去に起きた事件まで解明した。」
その人は振り返らずに話し続けている。
「あなたの筋書きでしょ?
ゲームの世界のあらすじは、あなたが書いたのでしょう?」
「いや?
もちろんレールは敷いたが、このゲームの世界はなるべく自由に人生を送れるように、設計されている。」
「あなたは日本の人?」
「いや、違う。
欧州のどこか、とだけ言おう。」
「私・・・私はこの恋愛ゲームの中で幸せだった。
最初は戸惑ったけど、一つ一つみんなと歩いて行けた。
ちゃんと人を愛したし、その人からも愛された。
ゲームの都合の良さに、救われたところも大きいけれど。
ヒロインになってからだって、その効果に助けられたけど、それでも、充実してた。」
キーボードを叩く手が止まる。
「幸せだった?
充実してた?
僕らが作ったこのゲーム『僕の隣は君がいい』の中で?」
噛み締めるように言われて、頷く。
すると、背もたれ椅子がくるりと回って、その人の顔が見えた。
「誰?
あ・・・ク・・・ク・・・。」
「クランシー・ケリー。
レモニカの弟の子孫。」
「そう、クランシー!
あれ、なぜ知ってるんだろ。
でも、ちょっと待って。
レモニカは実在の人!?
ゲームの登場人物じゃないの?」
「ふふ、そう。
レモニカが実在の人間だと知っているのは、僕だけだけど。
僕は、代々レモニカ・ケリーの話を守ってきた一族の一人。」
「まさか、本当に?」
「レモニカの悲劇は魔女狩りが横行したあの暗黒の時代に、現実の世界で起きたことだ。
レモニカの弟は、姉に何が起きたのか細かく調べ上げて、記録した。
その膨大な記録は子孫に受け継がれていき、僕の代になって、この話を基にゲームを作ろうと仲間で話し合って、プログラムを組んだ。」
「それがこのゲーム?」
「そう。」
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