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王の追求
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王は私を見て、
「少なくとも、呪いや術の類が原因ではないことがわかった。
どれも客観的に判断できる。
と、いうか、ここまできちんと話を聞いた上での魔女騒動ではなかったのか?」
と、言った。
野次を飛ばしていた人たちも、ペヤパヤ大臣も俯いている。
「レモニカと似た名前と境遇の女がいる、ただそれだけのことだったのでは?」
と、王が言うと、ミア第二王妃が叫んだ。
「いいえ!
この女は魔女にちがいありません!
ライオネル、お前はこの女が許せるのか?
お前の弟を誘惑した女だぞ!?」
そう言われたライオネルは、涼しい顔をして首を振る。
「彼女はそんなことしてません。」
「ケルフェネスと同じベットにいたのだぞ!?
この女の体には確かに私が・・・!」
「確かに、なんです?」
「い、いや・・・。」
「あれは芝居です、ミア第二王妃。
謁見の間に着くまでに、暗殺の危険もあったので、そう見せかけただけ。
彼女は、150年前の真実もこの場で明らかにするため、私たちと共にいるのです。」
「なに・・・?」
ミア第二王妃の顔色が青くなる。
やっぱりね。
痛いところだもの。
「パティスン王子様の手記が、ここにあります。
あの日の全てがここに書いてあります。」
謁見の間にいる人々が、みんな騒ぎ始める。
「ど、どこにあったんでございますか!?
あ、あんなに探したのに!!!」
と、ペヤパヤ大臣が言ったので、王が目を細めてペヤパヤ大臣を見る。
「ほぅ、大臣はどういう理由で探したのだ?」
「い、いえ。
そのぅ・・・。」
ライオネルはそんな大臣を一瞥して、玉座の王に手記を渡した。
「・・・!
確かにこれはパティスン様の手記。」
王も周りの重臣たちも、皆手記を手に取り読んでいく。
「呪いではなく、仕組まれたものだった・・・?」
「ダリア第三王妃のご子息を、唯一の継承者にするための・・・。」
「点と点を繋いでいけば、確かに誰が得したかわかるな・・・。
線が見えてきた。」
ざわめきが大きくなり、視線がミア第二王妃に、集まっていく。
「ミア、レモニーを処刑したあと、気分直しにと、茶会を予定していたな。
野外だからと子供たちにも、虫除けの効果が高い肌着を特注で用意してくれたな。」
と、王が言った。
「・・・は、はい・・・。」
ミア第二王妃が、王に睨まれて返事をする。
「茶葉を持ってこい。
そしてここにケルフェネスの肌着がある。
これをペヤパヤ大臣に着せて、お茶を飲ませてみよう。」
「ええ!?」
「お、王様、それは・・・。」
ミア第二王妃とペヤパヤ大臣が、慌てる。
「どうした?
あれは150年前の出来事。
今はレモニーの処刑は行われていないから、死の呪いの発動もなかろう。
潔白を皆の前で示すいい機会だ。」
と、言って王が顎をしゃくると、ペヤパヤ大臣が侍従に捕らえられ、そのまま外に連れていかれる。
「茶葉をこれへ。」
王が言うと、ミア第二王妃は、
「ち、茶葉はまだ準備が整っておりません。
私が丹精込めて絶妙なブレンドを施すロイヤルティーですので。」
と、言った。
「なら、ここですると良い。
材料を言え。
すぐに揃う。」
「ひ、秘伝のブレンドでございます。
他人に漏らすわけには・・・。」
「首がなくなれば、そのブレンドすらできなくなるぞ、ミア。
お前は私の妃だが、私は自分の子供たちを殺すものに容赦はしないと言ったはずだ。
これ以上時を稼ごうとするなら、カチャリナにあの肌着を着せるぞ。」
ミア第二王妃はそう言われて、初めて王を睨みつけた。
「あの子も王の子です。
それを・・・!」
「そうだ。
かわいい我が子だ。
だが、あの子さえ助かるなら他の子供たちを失ってもいいと、言った覚えはない。
お前は違うのか?」
王はミア第二王妃の視線を、平然と受け止めている。
な、なんだかこの王様、ミア第二王妃より、怖い。
懐は深そうだけど、恐ろしいほど冷酷さも感じてしまう。
王が手を叩くと、大勢の侍従たちが動き始め、王妃の目の前に、茶葉と道具が揃えられていく。
・・・!!!
あ!ミア第二王妃が大きく動揺した!
「これはお前がペヤパヤ大臣と、こそこそ準備していたという茶葉だ。
王宮内の情報戦で、私を出し抜くには詰めが甘かったな。」
王が冷徹な眼差しで、ミア第二王妃を見ている。
私はライオネルをチラリと見た。
ライオネルも、なんとも言えない顔で見ている。
本当に親子?
ライオネルに、ここまでの厳しさは感じなかった。
私の視線を感じたのか、ライオネルもこちらを見る。
「怖いか?」
私は頷く。
「あれがあの人だ。
こうなると決して追求の手を緩めない。
例え愛した相手でも。
他人なら尚更。」
「だから、私もここへ連れてきたの?
逃げられないから。」
「そうだ。
はっきりさせないと、本当に八つ裂きにされる。
例え、君が隣国の左大臣の娘だろうと、俺が愛した人だろうと関係ない。
俺ごと踏み潰してでも、君を仕留める。」
「そんな・・・。
胸が痛まないのかしら・・・。」
「痛んだとしても、それはそれなんだよ。
表に出さずに、やるべきことをやる。
そしてまた、王として人の前に立つ。
そういう人だ。」
・・・人の上に立つ、て、覚悟がいるし本当に難しい。
「ケルフェネス王子も、そんな王様になるのかな。」
「あいつは一番王に似ている。
おそらくな。」
私は、思わずケルフェネス王子を見る。
ケルフェネス王子は、こちらの視線に気づくと、美しい顔でにっこり笑った。
「少なくとも、呪いや術の類が原因ではないことがわかった。
どれも客観的に判断できる。
と、いうか、ここまできちんと話を聞いた上での魔女騒動ではなかったのか?」
と、言った。
野次を飛ばしていた人たちも、ペヤパヤ大臣も俯いている。
「レモニカと似た名前と境遇の女がいる、ただそれだけのことだったのでは?」
と、王が言うと、ミア第二王妃が叫んだ。
「いいえ!
この女は魔女にちがいありません!
ライオネル、お前はこの女が許せるのか?
お前の弟を誘惑した女だぞ!?」
そう言われたライオネルは、涼しい顔をして首を振る。
「彼女はそんなことしてません。」
「ケルフェネスと同じベットにいたのだぞ!?
この女の体には確かに私が・・・!」
「確かに、なんです?」
「い、いや・・・。」
「あれは芝居です、ミア第二王妃。
謁見の間に着くまでに、暗殺の危険もあったので、そう見せかけただけ。
彼女は、150年前の真実もこの場で明らかにするため、私たちと共にいるのです。」
「なに・・・?」
ミア第二王妃の顔色が青くなる。
やっぱりね。
痛いところだもの。
「パティスン王子様の手記が、ここにあります。
あの日の全てがここに書いてあります。」
謁見の間にいる人々が、みんな騒ぎ始める。
「ど、どこにあったんでございますか!?
あ、あんなに探したのに!!!」
と、ペヤパヤ大臣が言ったので、王が目を細めてペヤパヤ大臣を見る。
「ほぅ、大臣はどういう理由で探したのだ?」
「い、いえ。
そのぅ・・・。」
ライオネルはそんな大臣を一瞥して、玉座の王に手記を渡した。
「・・・!
確かにこれはパティスン様の手記。」
王も周りの重臣たちも、皆手記を手に取り読んでいく。
「呪いではなく、仕組まれたものだった・・・?」
「ダリア第三王妃のご子息を、唯一の継承者にするための・・・。」
「点と点を繋いでいけば、確かに誰が得したかわかるな・・・。
線が見えてきた。」
ざわめきが大きくなり、視線がミア第二王妃に、集まっていく。
「ミア、レモニーを処刑したあと、気分直しにと、茶会を予定していたな。
野外だからと子供たちにも、虫除けの効果が高い肌着を特注で用意してくれたな。」
と、王が言った。
「・・・は、はい・・・。」
ミア第二王妃が、王に睨まれて返事をする。
「茶葉を持ってこい。
そしてここにケルフェネスの肌着がある。
これをペヤパヤ大臣に着せて、お茶を飲ませてみよう。」
「ええ!?」
「お、王様、それは・・・。」
ミア第二王妃とペヤパヤ大臣が、慌てる。
「どうした?
あれは150年前の出来事。
今はレモニーの処刑は行われていないから、死の呪いの発動もなかろう。
潔白を皆の前で示すいい機会だ。」
と、言って王が顎をしゃくると、ペヤパヤ大臣が侍従に捕らえられ、そのまま外に連れていかれる。
「茶葉をこれへ。」
王が言うと、ミア第二王妃は、
「ち、茶葉はまだ準備が整っておりません。
私が丹精込めて絶妙なブレンドを施すロイヤルティーですので。」
と、言った。
「なら、ここですると良い。
材料を言え。
すぐに揃う。」
「ひ、秘伝のブレンドでございます。
他人に漏らすわけには・・・。」
「首がなくなれば、そのブレンドすらできなくなるぞ、ミア。
お前は私の妃だが、私は自分の子供たちを殺すものに容赦はしないと言ったはずだ。
これ以上時を稼ごうとするなら、カチャリナにあの肌着を着せるぞ。」
ミア第二王妃はそう言われて、初めて王を睨みつけた。
「あの子も王の子です。
それを・・・!」
「そうだ。
かわいい我が子だ。
だが、あの子さえ助かるなら他の子供たちを失ってもいいと、言った覚えはない。
お前は違うのか?」
王はミア第二王妃の視線を、平然と受け止めている。
な、なんだかこの王様、ミア第二王妃より、怖い。
懐は深そうだけど、恐ろしいほど冷酷さも感じてしまう。
王が手を叩くと、大勢の侍従たちが動き始め、王妃の目の前に、茶葉と道具が揃えられていく。
・・・!!!
あ!ミア第二王妃が大きく動揺した!
「これはお前がペヤパヤ大臣と、こそこそ準備していたという茶葉だ。
王宮内の情報戦で、私を出し抜くには詰めが甘かったな。」
王が冷徹な眼差しで、ミア第二王妃を見ている。
私はライオネルをチラリと見た。
ライオネルも、なんとも言えない顔で見ている。
本当に親子?
ライオネルに、ここまでの厳しさは感じなかった。
私の視線を感じたのか、ライオネルもこちらを見る。
「怖いか?」
私は頷く。
「あれがあの人だ。
こうなると決して追求の手を緩めない。
例え愛した相手でも。
他人なら尚更。」
「だから、私もここへ連れてきたの?
逃げられないから。」
「そうだ。
はっきりさせないと、本当に八つ裂きにされる。
例え、君が隣国の左大臣の娘だろうと、俺が愛した人だろうと関係ない。
俺ごと踏み潰してでも、君を仕留める。」
「そんな・・・。
胸が痛まないのかしら・・・。」
「痛んだとしても、それはそれなんだよ。
表に出さずに、やるべきことをやる。
そしてまた、王として人の前に立つ。
そういう人だ。」
・・・人の上に立つ、て、覚悟がいるし本当に難しい。
「ケルフェネス王子も、そんな王様になるのかな。」
「あいつは一番王に似ている。
おそらくな。」
私は、思わずケルフェネス王子を見る。
ケルフェネス王子は、こちらの視線に気づくと、美しい顔でにっこり笑った。
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