悪役令嬢は、犯人ではございません!

たからかた

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情報収集

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交易都市『カチャガチャ』に着いた。

私の変装は、念には念を入れて、髪の色を金髪に変えている。

ライオネルは、うっすら青い髪、シャーリーンは、緑色。

なかなか似合ってる。

流石に人が多くて、迷いそうになる。
交易都市というだけあって、沢山の外国人もいるようだ。

知らない言葉も聞こえてくる。

いろんな物資が行き交い、もちろん私の国からの物もここに届く。

風に乗って、潮の香りも届くくらい海に近い街だ。

情報収集か・・・。
早くパム村に行きたいな・・・。

ライオネルは、私とシャーリーンから離れて、聞き込みに行ってしまった。

私たちは、小さなカフェで、彼を待っていた。
小さいけれど、個室に入れるところで、外から見えないから都合が良かった。

壁は薄いけど。

飲んだことない珍しい紅茶を注文して、味をシャーリーンと話していた時、聞き慣れた声が聞こえた。

「暑いでおじゃる!
ペヤパヤ大臣、ここで何か飲ませてくれでおじゃる!」

「静かに!
左大臣、いや、マロマロ卿。

ケルフェネス王子が我々に気付いて、探りを入れ始めてるでございます。

おまけに、あのライオネルまで戻ったとなると、さらに厄介。

決して本国に戻さぬようにと、あれほど言ったではございませんか!?」

・・・向こうからくるなんて。
ほんっと都合のいい世界。
そのまま二人で、隣の個室に入っていく。
飲み物を注文して、それがくると、下品な音を立てて飲んでいる。

「ふぃー、落ち着いたでごじゃる。
その件は、すまんでおじゃる。
それにしても、レモニーを魔女に仕立てて利用するとは、ペヤパヤ大臣は賢いでおじゃるな?」

「ふふふ、元々あなたの国では名の知れた悪女でございましょう?

いくら全てあなたの策略による、印象操作だったと知られたとはいえ、人の心や見方は一朝一夕に変わることはありませんでございます。

ならば、実は魔女だと言う話を加えれば、さらに賛同するものも出てくるでございます。」

「むほほ・・・、まあ、まろとレモニーの式をいずれあげさせてくれるのであれば、ご利用くださいでおじゃる。
今後はどうするでおじゃる?」

「一番邪魔なのは、皇太子のケルフェネスでございます。

レモニーの領地から送られてくる茶葉に、毒草を仕込んでゆっくり弱らせる作戦は、奴に気づかれて失敗しました。

かくなる上は、暗殺もしくは誘拐によって、排除せねば。」

「むぅ、皇太子ともなれば警備も厳重。
そう簡単にいかんでおじゃる。」

「ふふふ、だからこそ、魔女レモニーが必要なのでございます。
ライオネルを籠絡した女。
ケルフェネスすら手玉に取れるでしょう。」

・・・何なのよ!
人を利用して!

「しかしでおじゃる。
もはや、貴国の魔女狩りは行われていないでおじゃる。
なのに、今更魔女と言って、国民がついてくるのでおじゃるか?」

「パム村の悲劇を利用するのでございます。」

「パム村の?」

「あの悲劇は、最後の魔女狩りの悲劇として、国民には有名な話でございます。
・・・、実はあの話には後日談がございます。」

「おじゃ?」

「魔女として処刑されたレモニカは、処刑執行のサインをした、恋人の領主に深い恨みを抱いて死んだのでございます。」

「なんと!
引導を渡したのは恋人でおじゃるか。」

私の心臓がドクリ!と音を立てて鳴った。

「それ以降、レモニカの怨念のためか、当時の王家は、後継者候補の者たちがことごとく亡くなったのでございます。
残ったのは、末のご子息だけだったのでございます。」

「おや、領主ではなく王家が?」

「はい。
当時、王家には5人の兄弟がおりまして、後継者となれる年齢の王子は、長男ライオネラと、次男のパティスン。

もちろん、それぞれの王子を立てようと、争いが起きました。

そこで、長男ライオネラは、王家の跡目争いを避けるために自らこの辺の領主の養子となり、次男が皇太子の座についたのでございます。

・・・似ておりませぬか?
貴国に亡命したライオネル、そして、そのために皇太子になった、ケルフェネス。」

「た、確かに。」

私は二人の会話を聞きながら、ライオネラという名前に反応してしていた。

懐かしいような、悲しいような不思議な感覚がしてしてる。

「そしてレモニカは元々この村の生まれではなく、貴国から来て住み着いた女。

レモニカもまた貴国で噂の多い女だったとか。
そして、レモニカを連れてきたのは、貴国に外遊中に知り合った領主ライオネラ。

偶然とはいえ、名前や状況まで、よく似ているのでございます。」

「ほほう。」

「レモニカの死は謎も多いのですが、一説によると、領主ライオネラの弟である皇太子も彼女を愛してしまい、兄に取られる前に手を回して彼女を殺したとも言われているのでございます。」

「嫉妬は、恐ろしいでおじゃるな。」

「そうでございます。
とにかく、肝はレモニーを魔女として祭り上げ、処刑を執り行い、その呪いで彼らが死んだかのように見せることでございます。」

「なに!?
まろのレモニーを殺すのでおじゃるか!?」

「死んだように見せればいいのでございます。
庶民にとって事実は意味を成しません。
マロマロ卿がその後、彼女の名前を変えて、娶ればいいのでございます。」

「むほほほ。
レモニーもまろがピンチの時に助けに来れば、それこそころりと惚れるでおじゃろう。」

それを聞いて、飲みかけた紅茶を吐きそうになってしまった。

どこまでおめでたい人なの。

全部聞こえてるわ。

シャーリーンも、笑いを堪えて肩が震えている。

そこへ、ライオネルが戻ってきた。

慌てて指を立てて、隣の話を聞かせる。

「大筋はそう言うことにするでございます。
計画の詳細は、城に戻ってからいたしますでございます。」

そう言って二人は出て行った。

「・・・まったく救い難い男だな。」

詳細を聞いてライオネルは、ため息をつく。

「とりあえず、パム村へこのまま行きましょう。
彼らの計画がその伝説に沿うなら、詳細を知っておきたいし。」

そう言うと、3人でパム村へと行く。

そこは、とても小さな村でのどかなところだった。

昔、そんなに恐ろしいことが起きたなんて信じられない。

村はレモニカの事件を観光資源にしていて、話を聞けばいくらでも教えてくれた。

「レモニカの家は今も、村の外れにありますよ。」

と、村人に教えてもらってそこへ歩いていく。

道を歩きながら、なぜが歩き慣れた道のように早足になっていった。

・・・知ってる・・・知ってる!!

「レ、レモニー様?
待ってください!」

シャーリーンとライオネルが、駆け足で追ってくる。

息を切らせてたどり着いた先に、確かに見知った家があった。

「ここ・・・私、知っているわ・・・。」

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