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ライオネルとケルフェネス
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服を着て改めて横になると、シャーリーンが部屋の外にいるライオネルを呼んできた。
「た、助けてくれてありがとうございます。」
と、私はしどろもどろになりながら、言った。
ライオネルは、ホッとしたような顔をして、
「いいえ。
助かってよかった。
ここは安全です。
安心して休んでください。」
と、穏やかな声で言った。
ドキドキする。
止まって!!
お願い!
この人は命の恩人!
落ち着いて・・・。
と、とにかく話し続けよう!!
「ラ、ライオネルは、この国の人?」
「・・・はい。
事情があって離れておりました。
刑期を終えたら戻るつもりでございました。」
「敬語はいりません。
あなたはもう、侍従じゃないし、恩人だから。」
「わかりました。
改めて聞くけど、手紙は読んでない?」
・・・ライオネル、普段通りで、なんてことのないように話すな。
顔も別に赤くないし、取り乱してもいない。
彼の中では、本当に大したことじゃないんだ・・・。
私一人・・・、意識してるのが悔しくなってくる。
彼は大人なんだ。
変に意識する私の方が、おかしいんだ。
「ええ。」
もう、いいや。
私だけの空回りなんだ、この気持ち。
・・・段々冷静になってきた。
「そうか。
そこまであの野郎は手を回したか・・・。」
「元左大臣の逃亡を阻止したらしいと、聞いたわ。」
「何かするだろうとは思っていた。
長く仕えていたから、思考回路は把握できてるからね。」
「あなたは、管理者でしょ?
全ての情報を入手できるのでは?」
「レモニーパートへと続く裏シナリオのゲートを開いた時から、その役目を終えて、普通のキャラクターになったんだよ。
その力は今はない。
同時に、俺本来の自分を取り戻すことができた。
ありがとう。
レモニー様。」
「本来の自分・・・。
じゃ、ここからはあなたも知らない展開になるのね?」
「そう。
とりあえず、体を回復させよう。
今後のことはおいおい・・・。」
その時、部屋のドアをノックする音がした。
シャーリーンが出て確認している。
「レ、レモニー様。
ケルフェネス王子がいらっしゃいました。」
「え!?」
私は驚いて起きあがろうとして、眩暈を起こして横になる。
「・・・そのまま。
レモニー様。」
ケルフェネス王子が、部屋に入ってくる。
私が混乱していると、ライオネルが立ち上がり、礼儀正しく挨拶をした。
「やめてください、兄上。
弟の私にそのような。」
ケルフェネス王子が、恐縮してお辞儀をする。
「え?
兄上?」
私が呟くと、ライオネルと、ケルフェネス王子に同時に見つめられる。
似てる・・・。
でも、それはライオネルが、ケルフェネス王子の原型と言われたキャラクターだからで・・・。
「・・・すみません。
秘密にしていたのですね?」
ケルフェネス王子が、申し訳なさそうに言う。
「いや、いい。
いずれわかることだから。」
ライオネルが伏し目がちに、頭を掻いた。
「ライオネルは、王子様なの?」
私が尋ねると、ライオネルは言いにくそうに表情を曇らせた。
「長男ではあるけど、前王妃の子供なんだ。
ケルフェネスは、前王妃が亡くなってから嫁いできた今の第一王妃の子供。
つまり異母兄弟。」
ケルフェネス王子もため息をついた。
「よくある後継者争いが起きたんです。
私は兄上が継ぐべきだと言ったんですが、母が諦めなくて。
一族同士の、血で血を洗うような抗争が起きることに嫌気がさした兄上は、身分を隠して隣国へ逃げたんです。
その時亡命のお世話になったのが、あの左大臣なんです。」
よりによってあんな人に・・・。
でも、あんな人だからこそ、そういうコネを持っているものかもしれない。
「国に帰れば抗争が待っている。
しかし、レモニー様の国で身分がバレれば国際問題になる。
身分を隠して生きるには、あいつのそばが好都合ではあった。」
「もしかして、その眼帯は・・・。」
「これは、暗殺者に襲われた時に負傷した。
ケルフェネスを、同じ目に遭わせるわけにはいかないと、決心させた傷。
ま、俺としては、ケルフェネスとの顔の差がついて、かえって利用できると思ったけどね。」
「ご兄弟は仲がよろしいのですね。」
私が言うと、ケルフェネス王子が頷いた。
「私は兄上が大好きですよ。
強くて、優しくて。
小さい頃はよくついて回って、遊んでもらったものです。」
その頃から面倒見がよかったんだ、この人。
だからこそ・・・管理者なんて役目が与えられたのかな。
「兄上が左大臣と一緒に投獄されたと聞いた時は、正直肝が冷えました。
あの、毒入りワインの事件の時も、手を出すな、シャトラ国の王子としてのみ振る舞えと、厳しく言われていたのです。
兄上の厳命だから従ったのですよ。」
ケルフェネス王子の苦しそうな顔を見て、あの時この人もハラハラしていたのだと、気づいた。
「ライオネル、刑期を終えたら戻るつもりと言ってたね。
後継者争いは、終わったの?」
私の質問に、ケルフェネス王子が難しい顔をする。
「私が皇太子に任命されたので、形の上では、問題ないかと。
ただ・・・。」
ケルフェネス王子が私を見る。
「ある事件の犯人に、またレモニー様のお名前があがったのです。」
「ええ??
今目が覚めた私が一体なんの?」
「それをご説明するためにきました。
兄上も、聞いてください。」
「わかった。」
「いいですか?
驚かないでくださいね?」
ケルフェネス王子は、慎重に言葉を選びながら、話し始めた。
「た、助けてくれてありがとうございます。」
と、私はしどろもどろになりながら、言った。
ライオネルは、ホッとしたような顔をして、
「いいえ。
助かってよかった。
ここは安全です。
安心して休んでください。」
と、穏やかな声で言った。
ドキドキする。
止まって!!
お願い!
この人は命の恩人!
落ち着いて・・・。
と、とにかく話し続けよう!!
「ラ、ライオネルは、この国の人?」
「・・・はい。
事情があって離れておりました。
刑期を終えたら戻るつもりでございました。」
「敬語はいりません。
あなたはもう、侍従じゃないし、恩人だから。」
「わかりました。
改めて聞くけど、手紙は読んでない?」
・・・ライオネル、普段通りで、なんてことのないように話すな。
顔も別に赤くないし、取り乱してもいない。
彼の中では、本当に大したことじゃないんだ・・・。
私一人・・・、意識してるのが悔しくなってくる。
彼は大人なんだ。
変に意識する私の方が、おかしいんだ。
「ええ。」
もう、いいや。
私だけの空回りなんだ、この気持ち。
・・・段々冷静になってきた。
「そうか。
そこまであの野郎は手を回したか・・・。」
「元左大臣の逃亡を阻止したらしいと、聞いたわ。」
「何かするだろうとは思っていた。
長く仕えていたから、思考回路は把握できてるからね。」
「あなたは、管理者でしょ?
全ての情報を入手できるのでは?」
「レモニーパートへと続く裏シナリオのゲートを開いた時から、その役目を終えて、普通のキャラクターになったんだよ。
その力は今はない。
同時に、俺本来の自分を取り戻すことができた。
ありがとう。
レモニー様。」
「本来の自分・・・。
じゃ、ここからはあなたも知らない展開になるのね?」
「そう。
とりあえず、体を回復させよう。
今後のことはおいおい・・・。」
その時、部屋のドアをノックする音がした。
シャーリーンが出て確認している。
「レ、レモニー様。
ケルフェネス王子がいらっしゃいました。」
「え!?」
私は驚いて起きあがろうとして、眩暈を起こして横になる。
「・・・そのまま。
レモニー様。」
ケルフェネス王子が、部屋に入ってくる。
私が混乱していると、ライオネルが立ち上がり、礼儀正しく挨拶をした。
「やめてください、兄上。
弟の私にそのような。」
ケルフェネス王子が、恐縮してお辞儀をする。
「え?
兄上?」
私が呟くと、ライオネルと、ケルフェネス王子に同時に見つめられる。
似てる・・・。
でも、それはライオネルが、ケルフェネス王子の原型と言われたキャラクターだからで・・・。
「・・・すみません。
秘密にしていたのですね?」
ケルフェネス王子が、申し訳なさそうに言う。
「いや、いい。
いずれわかることだから。」
ライオネルが伏し目がちに、頭を掻いた。
「ライオネルは、王子様なの?」
私が尋ねると、ライオネルは言いにくそうに表情を曇らせた。
「長男ではあるけど、前王妃の子供なんだ。
ケルフェネスは、前王妃が亡くなってから嫁いできた今の第一王妃の子供。
つまり異母兄弟。」
ケルフェネス王子もため息をついた。
「よくある後継者争いが起きたんです。
私は兄上が継ぐべきだと言ったんですが、母が諦めなくて。
一族同士の、血で血を洗うような抗争が起きることに嫌気がさした兄上は、身分を隠して隣国へ逃げたんです。
その時亡命のお世話になったのが、あの左大臣なんです。」
よりによってあんな人に・・・。
でも、あんな人だからこそ、そういうコネを持っているものかもしれない。
「国に帰れば抗争が待っている。
しかし、レモニー様の国で身分がバレれば国際問題になる。
身分を隠して生きるには、あいつのそばが好都合ではあった。」
「もしかして、その眼帯は・・・。」
「これは、暗殺者に襲われた時に負傷した。
ケルフェネスを、同じ目に遭わせるわけにはいかないと、決心させた傷。
ま、俺としては、ケルフェネスとの顔の差がついて、かえって利用できると思ったけどね。」
「ご兄弟は仲がよろしいのですね。」
私が言うと、ケルフェネス王子が頷いた。
「私は兄上が大好きですよ。
強くて、優しくて。
小さい頃はよくついて回って、遊んでもらったものです。」
その頃から面倒見がよかったんだ、この人。
だからこそ・・・管理者なんて役目が与えられたのかな。
「兄上が左大臣と一緒に投獄されたと聞いた時は、正直肝が冷えました。
あの、毒入りワインの事件の時も、手を出すな、シャトラ国の王子としてのみ振る舞えと、厳しく言われていたのです。
兄上の厳命だから従ったのですよ。」
ケルフェネス王子の苦しそうな顔を見て、あの時この人もハラハラしていたのだと、気づいた。
「ライオネル、刑期を終えたら戻るつもりと言ってたね。
後継者争いは、終わったの?」
私の質問に、ケルフェネス王子が難しい顔をする。
「私が皇太子に任命されたので、形の上では、問題ないかと。
ただ・・・。」
ケルフェネス王子が私を見る。
「ある事件の犯人に、またレモニー様のお名前があがったのです。」
「ええ??
今目が覚めた私が一体なんの?」
「それをご説明するためにきました。
兄上も、聞いてください。」
「わかった。」
「いいですか?
驚かないでくださいね?」
ケルフェネス王子は、慎重に言葉を選びながら、話し始めた。
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