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危機は去ったはずなのに・・・
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ティモシー王子と、プレイヤーのアバターであるライカ姫との婚約パレードは、滞りなく終わったらしい。
私は、シャーリーンを伴って、贈答用のワインを持ってティモシー王子の部屋を訪れていた。
プレイヤーとしていつも見ていた画面の裏で、キャラクターたちが、こんなに生き生きと動いてたのね。
改めてすごいゲームだと思う。
とても細やかで、精密。
このゲーム世界の凄さを噛み締める私のそばで、BGMが流れて、ティモシーのテーマ曲が流れていることに気づいた。
「レモニー、何の用だ?」
ティモシー王子が現れ、予想通りの塩対応をしてくる。
わかってはいたけど、やっぱり落ち込みそう。
とりあえず型通りの挨拶をした後、
「はい、お二人の門出を祝してこちらのワインをお送りしたくて持って参りました。
どうぞ、お受け取りください。」
と、言った。
「・・・、何を企んでいる?」
ティモシー王子が、睨みつけてくる。
「何も企んでなどおりません。」
「そなたのこれまでしてきたことを思えば、その言葉を信じろという方が無理だ。」
うん。
私がプレイヤーとして、このゲームをしていた時でも、こういうやりとりだったな。
「これは、父の領地の中でも屈指のワイン農家が納めてきた極上のワインでございます。
どうぞ、お納めを。」
私はゲーム内のセリフを思い出しながら、言った。
「婚約パレードでも、何もしてこなかったな。」
ティモシー王子が、これまでにないセリフを口にする。
このゲームは自由度が高くて、キャラクターも話すセリフが毎回同じとは限らないからかな。
確かプレイヤーのフリートークにも反応する仕組みだもんね。
整理してみよう。
確かゲームの中で起こった嫌がらせといえば、パレードの馬車の車輪が外れて馬が暴走し、ヒロインと王子は互いを庇い合いながら、危機を脱するという流れだったはず。
そこで改めてお互い惚れなおすんだっけ。
だけど、そんなことが起こらなくても、お互い好きならいいじゃない。
そう思っていると、ティモシー王子の後ろから、ライカ姫が現れた。
うわ・・・!
かわいい。
この人が今このゲームをプレイしている、プレイヤーなんだ・・・!
プレイヤーは、ヒロインの容姿をパーツごとにアレンジできる。
かなりセンスの良い人が、やってるみたい。
そう思ってみていると、ライカ姫が怯えたようにこちらを見ているのに気づいた。
まあ、ここにくるまでに相当な嫌がらせをされてるはずだから、この反応も当然と言えば当然。
「あの、ライカ様この度は・・・。」
おめでとう。
それから、これまでのことごめんなさい・・・と、続けようとしたその時、
「ちゃんと悪役をやってください。
レモニー様。」
と、言った。
私は唖然とした。
こんなセリフあったっけ?
プレイヤーのフリートーク?
「あなたは、無知で、非情で、血も涙もない冷血な女!
その対比で、この私が清く、賢く、優しくて、儚いながらも美しいヒロインとして、みんなに愛されるんです。
このままじゃ、私まで平凡なヒロインになっちゃうでしょ?」
ライカ姫は、詰め寄ってくる。
「悪役がいないと平凡?」
「この世界で、平凡はあり得ないの。
すごく悪いか、すごく良いかのどちらかなの。
これじゃ、モブキャラと変わらなくなる。
今すぐ何か酷いことを言って!
私が泣いて、ティモシー王子が私を庇ってあなたを叱る。
この、盛り上がりのシーンを台無しにしないでよ!」
・・・、そう言われてもな。
「嫌です。」
私は、はっきり言った。
ライカ姫もティモシー王子も、目を丸くして驚いている。
「悪役がひどいことしないと盛り上がらない恋なんて、本物ではありません。
日々の積み重ねによる行為でお互いを想い合う、それでいいじゃないですか。
私は邪魔なんかいたしません。
シャーリーン、帰るわよ。」
私はシャーリーンを連れて、部屋を出ようとした。
「レモニー!
なぜ、私を責めない?」
ティモシー王子が声をかけてきた。
「私は幼い時にそなたを妻にすると、約束していた。
それを一方的に反故にした。
つい昨日まであれだけ非難していたのに、今日はどうして・・・?」
私は振り向いて、個人的にも大好きだったキャラクターであるティモシー王子を見た。
「別にあなたは、必要ないからです。」
「え・・・。」
「目の前に新しい女性が現れて、そっちに食いついたということは、元々その程度しか想われていなかったということ。
どうして、そういう扱いしてくるあなたに、こだわらないといけないんですか?
私だけ苦しくて、あなたたちは毎日薔薇色なんでしょ?
私だって、薔薇色にしてくれる相手といたいんですよ。」
私は思っていることを言った。
そういえばレモニーが非道な振る舞いをしだしたのも、ティモシー王子の態度が変わってからだったな。
やり方は、確かに問題だったけど荒れてたし。
妙な沈黙が流れる中、どかどかと足音がして、隣国の王子の一団が踏み込んできた。
あれ、この人は確か隣国シャトラの王子、『ケルフェネス。』
まだ、攻略キャラとして解禁されていない美形キャラだったな・・・。
もしかして、私この人と恋ができるのかな?
そんな淡い期待をした瞬間、王子は目の前でサーベルを抜いて、私の喉元に刃を突きつけてきた。
「レモニー・ケル。
我ら親善の使節団に対し、毒入りのワインを送りつけた罪は許さん。
我が国に連行して、死刑にしてやる。」
ケルフェネス王子は、厳しい声でそう言った。
えええ!?
そんな・・・、どうして?
私は、シャーリーンを伴って、贈答用のワインを持ってティモシー王子の部屋を訪れていた。
プレイヤーとしていつも見ていた画面の裏で、キャラクターたちが、こんなに生き生きと動いてたのね。
改めてすごいゲームだと思う。
とても細やかで、精密。
このゲーム世界の凄さを噛み締める私のそばで、BGMが流れて、ティモシーのテーマ曲が流れていることに気づいた。
「レモニー、何の用だ?」
ティモシー王子が現れ、予想通りの塩対応をしてくる。
わかってはいたけど、やっぱり落ち込みそう。
とりあえず型通りの挨拶をした後、
「はい、お二人の門出を祝してこちらのワインをお送りしたくて持って参りました。
どうぞ、お受け取りください。」
と、言った。
「・・・、何を企んでいる?」
ティモシー王子が、睨みつけてくる。
「何も企んでなどおりません。」
「そなたのこれまでしてきたことを思えば、その言葉を信じろという方が無理だ。」
うん。
私がプレイヤーとして、このゲームをしていた時でも、こういうやりとりだったな。
「これは、父の領地の中でも屈指のワイン農家が納めてきた極上のワインでございます。
どうぞ、お納めを。」
私はゲーム内のセリフを思い出しながら、言った。
「婚約パレードでも、何もしてこなかったな。」
ティモシー王子が、これまでにないセリフを口にする。
このゲームは自由度が高くて、キャラクターも話すセリフが毎回同じとは限らないからかな。
確かプレイヤーのフリートークにも反応する仕組みだもんね。
整理してみよう。
確かゲームの中で起こった嫌がらせといえば、パレードの馬車の車輪が外れて馬が暴走し、ヒロインと王子は互いを庇い合いながら、危機を脱するという流れだったはず。
そこで改めてお互い惚れなおすんだっけ。
だけど、そんなことが起こらなくても、お互い好きならいいじゃない。
そう思っていると、ティモシー王子の後ろから、ライカ姫が現れた。
うわ・・・!
かわいい。
この人が今このゲームをプレイしている、プレイヤーなんだ・・・!
プレイヤーは、ヒロインの容姿をパーツごとにアレンジできる。
かなりセンスの良い人が、やってるみたい。
そう思ってみていると、ライカ姫が怯えたようにこちらを見ているのに気づいた。
まあ、ここにくるまでに相当な嫌がらせをされてるはずだから、この反応も当然と言えば当然。
「あの、ライカ様この度は・・・。」
おめでとう。
それから、これまでのことごめんなさい・・・と、続けようとしたその時、
「ちゃんと悪役をやってください。
レモニー様。」
と、言った。
私は唖然とした。
こんなセリフあったっけ?
プレイヤーのフリートーク?
「あなたは、無知で、非情で、血も涙もない冷血な女!
その対比で、この私が清く、賢く、優しくて、儚いながらも美しいヒロインとして、みんなに愛されるんです。
このままじゃ、私まで平凡なヒロインになっちゃうでしょ?」
ライカ姫は、詰め寄ってくる。
「悪役がいないと平凡?」
「この世界で、平凡はあり得ないの。
すごく悪いか、すごく良いかのどちらかなの。
これじゃ、モブキャラと変わらなくなる。
今すぐ何か酷いことを言って!
私が泣いて、ティモシー王子が私を庇ってあなたを叱る。
この、盛り上がりのシーンを台無しにしないでよ!」
・・・、そう言われてもな。
「嫌です。」
私は、はっきり言った。
ライカ姫もティモシー王子も、目を丸くして驚いている。
「悪役がひどいことしないと盛り上がらない恋なんて、本物ではありません。
日々の積み重ねによる行為でお互いを想い合う、それでいいじゃないですか。
私は邪魔なんかいたしません。
シャーリーン、帰るわよ。」
私はシャーリーンを連れて、部屋を出ようとした。
「レモニー!
なぜ、私を責めない?」
ティモシー王子が声をかけてきた。
「私は幼い時にそなたを妻にすると、約束していた。
それを一方的に反故にした。
つい昨日まであれだけ非難していたのに、今日はどうして・・・?」
私は振り向いて、個人的にも大好きだったキャラクターであるティモシー王子を見た。
「別にあなたは、必要ないからです。」
「え・・・。」
「目の前に新しい女性が現れて、そっちに食いついたということは、元々その程度しか想われていなかったということ。
どうして、そういう扱いしてくるあなたに、こだわらないといけないんですか?
私だけ苦しくて、あなたたちは毎日薔薇色なんでしょ?
私だって、薔薇色にしてくれる相手といたいんですよ。」
私は思っていることを言った。
そういえばレモニーが非道な振る舞いをしだしたのも、ティモシー王子の態度が変わってからだったな。
やり方は、確かに問題だったけど荒れてたし。
妙な沈黙が流れる中、どかどかと足音がして、隣国の王子の一団が踏み込んできた。
あれ、この人は確か隣国シャトラの王子、『ケルフェネス。』
まだ、攻略キャラとして解禁されていない美形キャラだったな・・・。
もしかして、私この人と恋ができるのかな?
そんな淡い期待をした瞬間、王子は目の前でサーベルを抜いて、私の喉元に刃を突きつけてきた。
「レモニー・ケル。
我ら親善の使節団に対し、毒入りのワインを送りつけた罪は許さん。
我が国に連行して、死刑にしてやる。」
ケルフェネス王子は、厳しい声でそう言った。
えええ!?
そんな・・・、どうして?
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