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〜ウドレッダ姫の受難〜

※ウドレッダ視点 みてなさぁい?

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なぜ、こんなことになっちゃったの!?

鬼の世界に来て、あの美形の鬼のおさに愛されながら、贅沢な毎日を送る予定が……。

「ウドレッダ! 何してるんザマス?」

この館の主人、千目鬼ことマザージモミが、叱りつけてくる。

「呼び捨てはやめてくださらない? 私はれっきとした姫ですのよ?」

モップで床を磨いていた最中よ?
何をしているかなんて、見りゃわかるでしょうに。

「んま! 生意気ザマス! ほら、そこにもここにも、汚れが残ってるんザマスよ!!」

マザージモミも負けない。何せ千個も目があるから、細かい埃やゴミも見逃さないの。

あー、もう、面倒くさい!!

こういうのは、あいつの仕事だったのよ!? クローディア。

あいつを連れてきてさせればいい。

なぜ、私がやるの?
こんな日々を送るために、来たんじゃないわ!

マザージモミは、ため息をつきながら椅子に腰掛けて私を見る。

「まーったく、その美貌は認めるザマスが、何やらせても、あーたは全然使えない女ザマス。それでも、シュラ様の命令だから面倒見るザマス」

「ふん、私は鬼のおさの伴侶に相応しい女よ。いずれこんなところを出て行って、見返してやるんだから」

「あーたが、どう息巻こうと、ここを出て生きる術はないザマス。たまに、鬼の世界に迷い込む人間もいるザマスが、生活ができずに路頭に迷うんザマス」

「く……」

「さあさあ、今日はおさが、クローディア様と来店される日ザマス。粗相は許さないザマスよ?」

「!?」

私はモップを思わず落とす。
おさが来る!?

しかも、あいつまで!!

「クローディアが来るの?」

「クローディア様、と呼ぶんザマス!! しかもあーたは、雇い主に敬語が使えないんザマス?」

「あいつは10年以上、私の侍女だったのよ。呼び捨てにして、当然の下っ端なの」

「人間の世界の身分は、ここでは意味をなさないザマス。過去がどうあれ、今はあちらが立場が上。おまけにうちの上客……VIPザマス」

「なんでよ、おさの伴侶だから?」

「当然ザマス。それに、クローディア様は今や 光鬼天羽族こうきてんうぞくという、数百年ぶりに誕生した希少種の鬼であらせられる」

「光鬼……なに?」

 光鬼天羽族こうきてんうぞく。美しい翼をもち、陽光に負けぬ光を放てる最強の鬼ザマス。まさに、おさの伴侶として相応しい種族ザマスねぇ」

「あいつ、鬼になったの? なぜ?」

「人は鬼と交わると、鬼に生まれ変わるんざます。『異形転生』という現象ザマス」

「交わ……つまり何、あいつおさと関係もったということ!? 私のおさと!?」

「何が悪いんザマス? お二人はとても仲睦まじいと、聞くザマス。特におさは毎日、デレデレになっているという噂で……」

「いやぁぁ!!」

私はモップを拾って投げ捨てた。
デレデレにするのは、私なのに……!!

あいつ、私の推しに何してくれてんの!?

許さない。
あいつは、私の下じゃなきゃいけないの。

あいつのモノは、何もかも私のモノ。
だから、おさも私のモノよ!!

マザージモミは、呆れたように私を見ている。

「とにかく、クローディア様にご注文いただいた、御衣装が完成したので、試着していただくんザマス。掃除、やり直しておくザマスよ」

マザージモミは、そう言い捨てて作業場に戻って行った。

ふん、何が御衣装よ。
城にいた頃は、特注のドレスを何着も持っていたわ。

みんな、私のだった。
みんな……。

私は掃除をなんとか終えると、衣装の保管場所へと向かった。

ここに来て一カ月あまり。
場所も、なんとなく把握している。

上客用の衣装は確か……。

あ。

トルソーにかけられた、美しい衣装が目に留まる。

これだ……。
これをあいつが?

下働きしていた女には勿体無いわ!

でも、盗むわけにもいかない。
隠すくらいじゃ、腹の虫がおさまらない。

ズタズタにしないと!!

いえ……羽があるということは、あいつ飛べるのよね?

飛びながら衣装が裂けたら、どうなるんだろう。

みっともない体を晒して、おさに嫌われるんじゃない?

くくく。これよ。
女の復讐は、わかりやすいものじゃダメ。

あくまで『主犯としてバレないように、でも、相手には確実にダメージを与える』形でないと。

そして、苦しむ相手を目の前で楽しむ。
自分は、無関係に思わせて。

『どうしたの? こんなのひどいよね。誰がやったんだろ』

これよ。

周りからは、“いい子”として見られ、当事者から疑われもしない、バレても疑った本人を悪者に。

あくまで、“私は悪くない”を通す。

ククク。

私は笑いながら、ハサミを取り出した。

シャキン、シャキン。

ここと、ここと、ここ。

ふふ、せいぜい大恥かいて、おさに嫌われなさい。そして、みんな私に気づく。

あんな女より、私の方が素晴らしいことに。

うふふふ、クローディア、早くいらっしゃい。
私より大事にされているなんて、生意気なの。

あんたは情けなく、地べたを這いずり回る方が似合ってんのよ。

私に敵わないと泣いてちょうだい。
悔しがって、落ち込んで。

私のプライドを満たしてね。

いい気持ちにさせてもらうわよ、クローディア。




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