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懲りない奴ら 

※キャロン視点 格下を馬鹿にして何が悪い?

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「よかった、子供は無事よ!」

シルヴィアが、地下のルーシー様の棺から、一緒に寝かせていた子供を救出してきた。

子供は泣きじゃくりながら、シルヴィアにしがみついていた。

グフ!チッ・・・、もう少しだったのに!!

「うぇーん、ひっ・・・ひっく。」

「よしよし、いい子。ママのところに帰ろうね。」

シルヴィアは、子供をあやしながら外に向かう。

何故かそこには、騎士団らしき一団がきていた。

グフ?な、なんだ?こいつら。

私たちが戸惑っていると、騎士団長らしき人が、子供を受け取ってシルヴィアに頭を下げていた。

「どうか、このことは、ご内密にお願いします。」

生真面目そうな騎士団長が、真剣な顔で告げている。

「わかっています。『何も起きなかった』ことにしますから。じゃね、ぼうや。」

と、答えたシルヴィアは、裂けたシャツを片手で押さえながら、去っていく騎士団に手を振った。

「フハン?ど、どういうことだ?」

イバリンは、戻ってきたシルヴィアに尋ねている。

グフフ、わ、私も知りたーい。

「誰の子供か、よく調べずに攫ったのですね。」

シルヴィアは、キッと私たちを睨みつける。

グフフ?なんだなんだ。その辺の町民の子供を適当にさらっただけだが?

「あの子は、この国の王のご落胤だ。つまり隠し子。寵愛を受けていた側室が、嫉妬した王妃によって追い出され、身分を剥奪されて市井しせいで暮らしていたらしい。」

と、ランヴァルトが言って、彼女に自分の上着を着せる。

シルヴィアはありがとうと言って、私たちに背を向けてボタンをとめ始めた。

グフ!なんと・・・おとなしそうなガキだったから、特に何も考えずに眠らせて連れてきたが、とんでもない血筋だったな・・・!

ん?しかし、なぜ、こいつらそれを知っている?

「グフ、お前らこそどこでそれを知った?」

私の質問に、フェレミスが銃口を向けたまま答える。

「当然、ギルドに救出依頼が出てたんだよ。お前たちの仕業だと、俺らはすぐにピンときた。シルヴィアに復讐しようとするなら、子供を使うだろうとわかっていたからな。」

「グフフ、企みを知っていて、ここへきたのか。」

「何かあると想定はしていたからな。シルヴィアが・・・子供を巻き込むのは許せないと言って、俺たちに手を出すなとお願いしてきたんだよ。自分でやり遂げたいと。」

ダン!!
足を踏み鳴らしたのは、ランヴァルトだった。

「シルヴィアの頼みだったから、お前らが彼女に仕掛けるのを我慢していたが・・・正直ズタズタにしても足りないくらいの怒りを感じている。」

今にも剣を抜きそうだ。
怖い・・・こわい!

「特にお前だ。シルヴィアに手を上げて、服を破いたんだろ?」

ランヴァルトは、イバリンに鋭い眼光を向ける。

イバリンは縮み上がって、目が泳いでいた。

「フハ・・・。」

「俺の前で、はずかしめるとか言ってたな。」

「フハ・・・さぁ~。」

「そうすれば、彼女は失意の中、前みたいに言いなりにできるとふんだんだろ。」

「・・・。」

「させると思うか?」

グフ、イバリンに殺気を立ちのぼらせたランヴァルトが、一歩ずつ近づく。
まずい・・・すごい迫力・・・。

八つ裂きにされそう。

「ランヴァルト。」

と、その時、シャツのボタンを止め終えたシルヴィアが、振り向いてランヴァルトに抱きついた。

ランヴァルトの殺気が、少しずつ収まるのがわかる。

「・・・シルヴィア、怖かっただろ?」

ランヴァルトが、優しくシルヴィアを抱きしめていたわわるように言った。

「平気よ。ちゃんと目の細かい鎖帷子くさりかたびらを着ていたから、見えてないもの。安心して、あなた以外に見せないし、触らせない。」

「あぁ、わかってる。」

「愛してるわ。」

「俺もだよ。」

グフフ!!!なんなんだ、こいつら!!
見せつけるだけ、見せつけやがって!!
甘ったるい空気に、ジェラシーが湧き上がる。

「グフ!イチャつきやがって!目障めざわりだ!」

「フハ!そうだ、そうだ!他所よそでやれ!!」

私とイバリンは悔しくて、地団駄を踏んだ。
それを見たフェレミスが、ケタケタと笑い出す。

「やーい、うらやましいんだろー。女性にモテたかったら、いきなりお触りしたり、脅したりなんて無効だっつーの。おわかり?」

私たちはフェレミスを睨んだ。
グフフ!?なにおう!?

「グフ!偉そーに!!」

「フハ!従えばなんでもいいんだよ!相手に、恐怖と諦めさえあれば、好きにできるんだ!!」

それを聞いたフェレミスが、目を細めて苦笑いする。

「はーぁ、つまり自分だけが楽しけりゃ、相手が不快でもいいってわけか。」

「フハ、不快かどうかわからんぞ?本当は喜んでるさ。」

「自分が面白いからだろ?相手の嫌な顔を見ても、それでも自分に逆らえないとわかれば、カタルシスに酔えるからな。」

「フハン、酔ってるんじゃない、事実だ。俺はこの吸血鬼を従えられて当然なんだ。」

「なんでぇ?」

「フハ、俺が上だからだ。」

「上?何が上なの?」

「格だ。」

「ブフ!」

フェレミスが盛大に吹き出した。
イバリンは、青筋を立てて睨みつける。

「フハ!何がおかしい!」

「お前の頭だ。」

今度は、ランヴァルトがイバリンに話しかけた。

グフフ、2対1とは卑怯な。
私が味方してやろう。

「グフフ、イバリンは何もおかしくないぞ。シルヴィアは、イバリンの言うことを聞いて、ハンティングしていたじゃないか。」

そそのかされてな。」

グフフ、ランヴァルトが、冷たい目で私を睨む。こ、怖いが、顔には出さぬ。

これも年を重ねて得た面の皮の厚さ。

「グフフ。唆されるということは、格下の証拠だ。いいようにされて抗えないのは、弱いからた。」

「新人だった彼女につけ込んで、脅した挙句に利用したあの状況は、誰だって簡単に抗えない。彼女に関わったハンターのランクを、人質に取った卑怯なやり方だったからな。」

「グフフ、そこを『1人でなんとかできる』のが、強い奴だろ?」

「違うね。解決に必要な助力を受けて、行動が起こせて、前を向けるものが強い。彼女がそうだ。」

「グフフ、お前らが手助けしたからだろうが。本来なら、全部1人で・・・!」

「1人でことが成せるというが、所詮様々な状況や運に恵まれてのことだ。」

「グフフ、運も実力のうちだぞ。」

「なら、彼女が俺たちの介入によって、状況を解決したことも、立派な実力だな。」

「グ・・・!へ、屁理屈こねおって!!」

「大体、お前らに直接の制裁もせずに、見逃してくれた彼女にもっと感謝すべきだと思うけどな。彼女がその気になれば、お前らの首はすぐ飛ぶんだぞ?」

「!!」

「さっきから、手加減されてること、理解しているのか?彼女の刃の切れ味を、2人とも知らないとは言わせない。この世で彼女の刃を防げるものは、ないんだぞ?」

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