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懲りない奴ら
※キャロン視点 こんな目に遭わせた女に復讐を
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「これ、キャロン、イバリン。さっさと支度をせよ。」
グフフフ、純血の吸血鬼のご主人様、『ルーシー様』がお呼びだ。
もうすぐ棺に眠る時間なので、手足のマッサージと、人の血を数滴落としたワインを準備する。
少し前まで他人に傅かれ、命令するだけで物事が済んでいたあの頃と違い、僕となった我々は甲斐甲斐しく彼女の世話をする。
グフン・・・一晩中働かされて、クタクタなのに、次から次へと要求は止まらない。
他にも僕はいるのだが、彼女の相棒のハンターに付き従うよう命令されている。
昼間の討伐に、純血は参加できないから、彼等がその穴を埋めているのだ。
我々は戦闘技術が高くないので、雑用係として日々過ごしている。
だが、しかし!!
主人が棺に眠ってしまえば、目覚めるまで自由なのだ。
僕の特権。
さっさと寝ろ!
と、思いながら、彼女の指を丁寧にマッサージする。
「・・・嫌らしい揉み方よの。」
ルーシー様は、扇子の先で私の顎を持ち上げてくる。
「す、すみません、ルーシー様。」
しおらしく俯きながら、心の中で悪態をついた。グフン!何が嫌らしいだ!失礼にもほどがある!
私が触れた女性たちは、みんな喜んでいたぞ?
金を積んだ後ではあったが。
グフフ、この吸血鬼、きっと皮膚感覚がおかしいに違いない。
イシュポラは元より、あのシルヴィアですら、私に触れられてまんざらでもなかったのに!
シルヴィアか・・・またあの腰にしがみつきたい。
グフフ。あの時、喜んでいたみたいだから、もう一度触ろうとしたら、思いっきり引き剥がされた。
そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。
次に天幕の中で出会った時は、あのランヴァルトが立ち塞がって彼女に近寄れなかった。
まったく、小生意気な若造め!!
あいつの姉シルヴィアも、私のものにしてやろうとしたのに、散々邪魔してきおったしな!
そうしているうちに、ディミトリが彼女を襲ってしまった。
グフフ・・・なんという悲劇。
「これ、手を止めるでない。」
ルーシー様に注意されて、慌ててマッサージを再開する。
彼女はワインを飲み干すと、イバリンに足の裏をマッサージさせ始めた。
そして、我々二人を扇子で指しながら、
「今日、ラピタル国から私と同じ共闘の盟約に従った吸血鬼が顔合わせにやってくる。粗相なく出迎えよ。」
と、言った。グフフフ?なぬ?ラピタル国の共闘の盟約に従った吸血鬼といえば…あのシルヴィアのことではないか?
なんという偶然!!
「フハン、あの吸血鬼が来るのですか。」
イバリンが、低い声でルーシー様を見上げている。
グフフ、イバリン。
あのシルヴィアがくるのだぞ?
あわよくば、またあの腰に抱きつけるかもしれんのだ。
グフフ、いや、いっそ眠り薬でも仕込んで、私の部屋に連れ込むか・・・?
そんなことを考えていると、ルーシー様が私を睨んできた。
「その下品な顔を引っ込めよ!」
「グフフ!すみません。」
「まったく、そなたらは使えぬ上に、ろくでもないことばかり考えるようだな。」
「グフフ、そんなことはございません。」
「そんなことはある。最初からお前たちは、私を利用しようとあれこれしてきたからな。」
「グフフ、私どもは、ルーシー様の忠実な僕にございますれば。」
「キャロン、隠さずに申せ。」
「グフフ・・・はい、あの ・・・彼女の腰に抱きつきたいと・・・。」
「下衆が!!」
「はい!申し訳ございません!!」
床に額をつけて、必死に詫びる。
グフン・・・こんなことはしたくない。
だが僕になった今、ルーシー様は絶対の存在だ。
彼女が死ねば、私もイバリンも共倒れ。
反撃することもできない。
ルーシー様はゆっくりと棺に横になり、眠り始めた。
途端に、私もイバリンも自由にものが言えるようになる。
「フハン!まったく!忌々しい吸血鬼が!!」
イバリンは、棺の蓋を蹴り上げた。
これくらいで起きはしないが、後でお仕置きされるかもしれないのに。
「グフフ、よせ、イバリン。」
「フハン、叔父さん、彼女の牙を抜いて移植しましょう!ディミトリみたいに。自由になるんです!!」
「グフフ?馬鹿をいうな。純血の牙に適合せねば、ただ消滅するだけだぞ?」
「フハン?なんですって?適合するかどうか、どうやって知るんです?」
「グフフ、もちろん自分で牙を抜いて、彼女から抜いた牙を傷口に差し込むだけだが。」
「前もって、適合するか知ることは?」
「不可能。」
「博打ではないですか!」
「グフフ、そういうものなのだ。」
そもそも、ディミトリの存在がなければ、そんなやり方があることもわからなかったが。
「フハン!これからもこのままなのですか!?」
「グフフ、永遠にな。」
「フハン!嫌だ、嫌だ!!!人の命令を聞く立場なんて!!これも全部あの吸血鬼のせいだ!!あいつをひどい目に遭わせてやるんだ!!」
「グフフ?どうやって?」
「ここに出迎えるなら、罠を張るのです。ルーシー様の相棒のハンターも、大物狙いですからすぐには戻りません。」
「グフフ、罠とは?」
「ウィンスロットたちも一緒に来るでしょうから、美女に誘惑させて裏切らせるか、目の前で恋人の吸血鬼を奪うか。」
「グフフ?後者の方がいいが、できるのか?」
「フハン。あの吸血鬼は、情に脆いところがある。例えば幼い子供を人質に取れば、いうことを聞くでしょう。」
「グフフ、悪いやつだな。」
「フハハハハ!恋人との仲を割けばあの吸血鬼は、失意から言いなりになる!これからは、俺の女としても役に立ってもらおう!!」
「グフフ、私にも譲れ。」
二人で大声で笑い、下準備に取り掛かる。
イバリンの隠し財産を使って、美しい女性たちを招き、子供を一人攫ってきた。
グフフ、おいで、シルヴィア。
お前を捕まえる支度は整った。
グフフフ、純血の吸血鬼のご主人様、『ルーシー様』がお呼びだ。
もうすぐ棺に眠る時間なので、手足のマッサージと、人の血を数滴落としたワインを準備する。
少し前まで他人に傅かれ、命令するだけで物事が済んでいたあの頃と違い、僕となった我々は甲斐甲斐しく彼女の世話をする。
グフン・・・一晩中働かされて、クタクタなのに、次から次へと要求は止まらない。
他にも僕はいるのだが、彼女の相棒のハンターに付き従うよう命令されている。
昼間の討伐に、純血は参加できないから、彼等がその穴を埋めているのだ。
我々は戦闘技術が高くないので、雑用係として日々過ごしている。
だが、しかし!!
主人が棺に眠ってしまえば、目覚めるまで自由なのだ。
僕の特権。
さっさと寝ろ!
と、思いながら、彼女の指を丁寧にマッサージする。
「・・・嫌らしい揉み方よの。」
ルーシー様は、扇子の先で私の顎を持ち上げてくる。
「す、すみません、ルーシー様。」
しおらしく俯きながら、心の中で悪態をついた。グフン!何が嫌らしいだ!失礼にもほどがある!
私が触れた女性たちは、みんな喜んでいたぞ?
金を積んだ後ではあったが。
グフフ、この吸血鬼、きっと皮膚感覚がおかしいに違いない。
イシュポラは元より、あのシルヴィアですら、私に触れられてまんざらでもなかったのに!
シルヴィアか・・・またあの腰にしがみつきたい。
グフフ。あの時、喜んでいたみたいだから、もう一度触ろうとしたら、思いっきり引き剥がされた。
そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。
次に天幕の中で出会った時は、あのランヴァルトが立ち塞がって彼女に近寄れなかった。
まったく、小生意気な若造め!!
あいつの姉シルヴィアも、私のものにしてやろうとしたのに、散々邪魔してきおったしな!
そうしているうちに、ディミトリが彼女を襲ってしまった。
グフフ・・・なんという悲劇。
「これ、手を止めるでない。」
ルーシー様に注意されて、慌ててマッサージを再開する。
彼女はワインを飲み干すと、イバリンに足の裏をマッサージさせ始めた。
そして、我々二人を扇子で指しながら、
「今日、ラピタル国から私と同じ共闘の盟約に従った吸血鬼が顔合わせにやってくる。粗相なく出迎えよ。」
と、言った。グフフフ?なぬ?ラピタル国の共闘の盟約に従った吸血鬼といえば…あのシルヴィアのことではないか?
なんという偶然!!
「フハン、あの吸血鬼が来るのですか。」
イバリンが、低い声でルーシー様を見上げている。
グフフ、イバリン。
あのシルヴィアがくるのだぞ?
あわよくば、またあの腰に抱きつけるかもしれんのだ。
グフフ、いや、いっそ眠り薬でも仕込んで、私の部屋に連れ込むか・・・?
そんなことを考えていると、ルーシー様が私を睨んできた。
「その下品な顔を引っ込めよ!」
「グフフ!すみません。」
「まったく、そなたらは使えぬ上に、ろくでもないことばかり考えるようだな。」
「グフフ、そんなことはございません。」
「そんなことはある。最初からお前たちは、私を利用しようとあれこれしてきたからな。」
「グフフ、私どもは、ルーシー様の忠実な僕にございますれば。」
「キャロン、隠さずに申せ。」
「グフフ・・・はい、あの ・・・彼女の腰に抱きつきたいと・・・。」
「下衆が!!」
「はい!申し訳ございません!!」
床に額をつけて、必死に詫びる。
グフン・・・こんなことはしたくない。
だが僕になった今、ルーシー様は絶対の存在だ。
彼女が死ねば、私もイバリンも共倒れ。
反撃することもできない。
ルーシー様はゆっくりと棺に横になり、眠り始めた。
途端に、私もイバリンも自由にものが言えるようになる。
「フハン!まったく!忌々しい吸血鬼が!!」
イバリンは、棺の蓋を蹴り上げた。
これくらいで起きはしないが、後でお仕置きされるかもしれないのに。
「グフフ、よせ、イバリン。」
「フハン、叔父さん、彼女の牙を抜いて移植しましょう!ディミトリみたいに。自由になるんです!!」
「グフフ?馬鹿をいうな。純血の牙に適合せねば、ただ消滅するだけだぞ?」
「フハン?なんですって?適合するかどうか、どうやって知るんです?」
「グフフ、もちろん自分で牙を抜いて、彼女から抜いた牙を傷口に差し込むだけだが。」
「前もって、適合するか知ることは?」
「不可能。」
「博打ではないですか!」
「グフフ、そういうものなのだ。」
そもそも、ディミトリの存在がなければ、そんなやり方があることもわからなかったが。
「フハン!これからもこのままなのですか!?」
「グフフ、永遠にな。」
「フハン!嫌だ、嫌だ!!!人の命令を聞く立場なんて!!これも全部あの吸血鬼のせいだ!!あいつをひどい目に遭わせてやるんだ!!」
「グフフ?どうやって?」
「ここに出迎えるなら、罠を張るのです。ルーシー様の相棒のハンターも、大物狙いですからすぐには戻りません。」
「グフフ、罠とは?」
「ウィンスロットたちも一緒に来るでしょうから、美女に誘惑させて裏切らせるか、目の前で恋人の吸血鬼を奪うか。」
「グフフ?後者の方がいいが、できるのか?」
「フハン。あの吸血鬼は、情に脆いところがある。例えば幼い子供を人質に取れば、いうことを聞くでしょう。」
「グフフ、悪いやつだな。」
「フハハハハ!恋人との仲を割けばあの吸血鬼は、失意から言いなりになる!これからは、俺の女としても役に立ってもらおう!!」
「グフフ、私にも譲れ。」
二人で大声で笑い、下準備に取り掛かる。
イバリンの隠し財産を使って、美しい女性たちを招き、子供を一人攫ってきた。
グフフ、おいで、シルヴィア。
お前を捕まえる支度は整った。
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