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番外編

※ランヴァルト視点 助力

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俺はシルヴィアと一緒に湖から帰ってくると、ハンナとフェレミスの前で、今日のことを彼女に打ち明けた。

「知られちゃったね。」

シルヴィアが俯いてしまった。

だましてごめん。でも、シルヴィアも言えないままだっただろ?」

「・・・そうね。」

「あまり驚かないな。」

「・・・気づいてたもの。」

俺たちは、驚いて彼女を見る。
や、やっぱり俺たちの下手な女装なんて、即バレした?

「い、いつから、わかった?」

俺は内心ドキドキしながら尋ねた。

「フェレミスは、ケルベロス・ネオにとどめを刺す時までわからなかった。でも、ランヴァルトは・・・最初から。」

!!
最初・・・から。

「どこでわかったの?化粧も完璧にしてたんだけど。」

フェレミスが、首を捻りながら聞いた。

「・・・目。」

「目?」

「優しい目をしてた。いつもその目を見てるから、すぐにわかったの。」

シルヴィアが、顔を赤くしながら言う。
思わずつられて俺も赤くなった。

「目かぁ。流石さすがにそこは無理だぜ。」

フェレミスが頭を抱えて笑う。ハンナもうんうんとうなずきながら、シルヴィアを抱きしめた。

「辛かったね、シルヴィア。」

「ハンナ・・・。」

「私たちあんたが大好きだから、今日みたいな目にいつも遭わされてるかと思うと、辛いよ。」

「ごめんなさい。ハンナたちに言えば、私と一緒に行って昇格したハンターたちの実績を取り消すと言われたの。」

「なんですって!?」

ハンナが目をいて怒った。
そんなことまで可能なほど、あのイバリンの力は大きいのか?

シルヴィアは、ポツポツとしゃべり出す。

「色んなハンターと組んだし、昇格した人の中には、子供が生まれたばかりの人もいて。生活がかかっていると思うと、怖かったの。」

くそ!あのイバリンめ!!
シルヴィアの性格を見抜いて、がんじがらめにしてきたな!

すぐにフェレミスも飛んできて、ハンナにわってシルヴィアを抱きしめた。

「ちくしょう!あの野郎!!シルヴィア・・・シルヴィア、ごめんな。色んな経験して欲しかったけど、これは違う。」

「ううん、フェレミス。色んなことを学べたのは、本当によかったの。あのイバリンがからむまで、普通だったのよ。」

「そうか。シルヴィア、ちゃんと話してくれ。俺たちが動くから。」

フェレミスの言葉に、シルヴィアは、戸惑うような表情になった。

「みんながひどい目にわない?それに、これは甘えにならない・・・かな。」

イバリンの呪縛か。

俺はフェレミスの腕をかせて、シルヴィアの肩に手を置いた。

「ならない。シルヴィアをこんな扱いして、いいわけないだろ。」

「ランヴァルト・・・。」

「二度と繰り返したくないし、させる気もない。」

「・・・!!」

「恋人がいいようにされて、大人しく引っ込めるかよ。今まで受けた体の痛みは、俺がいくらでも忘れさせてやれる。」

それを聞いたシルヴィアの顔が、一瞬でがる。

フェレミスも隣で「ヒュー、ヒュー!」と言って、やかましい。

「でも、シルヴィアの心の傷は、簡単に治せないだろ?」

俺は語気を強めた。
他人に道具として扱われる屈辱は、やられた方が深く残るものだ。

イバリンにきちんと対処する。
これ以外に癒すすべはない。

「それに、そのハンターたちは、このままじゃ実力の足りない状況で、命を落とすことにつながるぞ。」

「!!」

「高ランクの依頼がダブルブッキングしたら、シルヴィアが行けない方はそうなるんだ。」

「・・・あ。」

シルヴィアは、目を見開いた。

「俺たちは強い。シルヴィア、大丈夫だから、話してくれ。」

と、俺が言うと、シルヴィアは静かに語り出した。

きっかけは、シルヴィアと組んだハンターの一人が、ランクDからBに飛び級したこと。

そのハンターは、シルヴィアのおかげだと彼女の活躍を周りに話したらしい。

特に熱心に話を聞いていたのが、そのイバリンだったそうだ。

以来、ランクCやBのハンターから、シルヴィアに指名が入るようになり、イバリンが同行するのが常態化して、今のようになったとか。

「ランクCやBは、なかなか昇格できない伸び悩みのランクでもあるのよね。」

ハンナは頬杖ほおづえをつく。
そんなハンナの肩に軽く手を置くフェレミスが、俺を見た。

「昔はさ、ハンターランクはパーティ全体のランクだったんだぜ、ランヴァルト。」

「あぁ、確か昔はパーティは固定で、他の奴とも組めなかったらしいな。」

「そう。でも、それだと個別の能力の差が評価されにくくてさ。」

「代表者がくずだと、最悪だしね。」

ハンナが、何かを思い出すようにため息をつく。

フェレミスが、うなずきながら話し続ける。

「埋もれていく才能を潰さないために、ハンターランクは個人になった。そして、上級者から学びやすくなるよう、高ランクによる低ランクの指名が可能になった。」

「悪い代表者が、邪魔できないように、指名を断れなくしたのよね。」

ハンナが、フェレミスの話に補足をつける。
当時は画期的だったはずだ。

優秀なハンターが、最良のパーティで成果を出すための、仕組みの一つとして。

「飛び級も、そんな中で生まれてきた制度のはずだ。」

俺が言うと、フェレミスはうんうんと、肯定する。

「いい、悪いじゃねーんだよな。それなりの年数が経てば、Aランク辺りで横並びになるし。早くに才能を見せる奴もいるから、そいつらのためのものね。」

切磋琢磨できるよう、上位ランクになれば報酬も高くなる仕組み。

それだけの力をもっているから、生還率も高くなる。

「でも、才能がない人はみじめな思いで終わるんだって、イバリンが言ってたの。」

ここで、シルヴィアが口を挟んだ。
確かに、それはあるかもな。

「チャンスがないばかりに、下に甘んじてる人もいる。その機会を作れるなら、立派な人助けだろ?て、言われた。」

シルヴィアは、胸に手を当てる。
口のうまい奴だ。
こう言われて、詐欺さぎに感じる奴はいない。

きな臭さは感じるが。

「それが、シルヴィアの能力で討伐を完遂して、成果をメンバーに振り分ける・・・てやつか。」

俺が言うと、シルヴィアは頷く。

「えぇ。でも、最初はそうじゃなかったの。
強い相手に隙を作ったり、難易度の高いトラップを、仕方なく発動させて仕組みを調べて次に活かしたりとか、そんな感じだったの。」

なるほどな。シルヴィアの説明を聞いて、俺はピンときた。

このやり方は確かに、勉強にはなる。
無駄にならない経験だと思う。

だが欠点が1つ。時間がかかってしまう。

効率をある程度考えないと、日が暮れても討伐は終わらないだろう。

「イバリンが、らちかないと言い出して、その・・・私は不死身で怪我もその場で治るし、毒を受けても死なない。だから・・・。」

「何もかも、シルヴィア任せになったんだな。」

「えぇ、そう。私が頑張れば頑張るほど、みんな自分でやらなくなった。でも、中には本当に機会がなかっただけの人も何人かいたの。」

「イバリンはやり手だな。本物をそうやって何件か挟んで、シルヴィアにやり甲斐がいを感じさせて逃げられなくしたんだ。」

「今思えばそうね・・・。」

現実はこんなものだと年配に言われれば、シルヴィアくらいの年齢だと信じてしまうだろう。

ハンナが懐から紙を取り出して、机の上に置いた。

「イバリンについて調べてみたのよ。」

「悪人なんだろ?」

俺が言うと、ハンナはうなずいた。

「ハンターの敵よ。魔物の方がまだ可愛いくらい。」

俺たちは彼女の周りに集まった。


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