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溢れる想い
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「・・・出てって。」
「シルヴィア?」
「出てって!今、シャワー中なのよ?失礼にもほどがあるわ!」
「ごめん。だけど、すごく怒っていたから。」
カチンときちゃう!誰のせいなの!?
私はシャワー室から出ると、脱衣所のドア越しに叫んだ。
「見張りするとか言って、女性のところに行くんだもの!さっさと彼女のところへ戻ったら?」
「だから、それは・・・。」
「お楽しみに行ったと、素直に言えばいいのに!何故誤魔化すの?何故戻ってきたの?あなたは、私の心を弄んだのよ?」
「シルヴィア?見張りを怠けたと、思ったんじゃ?」
もう、何それ!!
言わないとわからないの!?
「私もあなたが好きだったのに!!」
・・・。
・・・。
・・・え?
「ホー・・・。」
モーガンが、羽根で顔を覆っている。
あれ?・・・私、まさか・・・今・・・声に出してた?
ランヴァルトも扉の向こうで沈黙してる。
・・・き、聞こえたよね。
嘘・・・嘘・・・なんでこんなタイミングで言うの?
こんなの、違う・・・告白は穏やかで素敵な雰囲気の中で、もっとこう・・・。
「シ・・・ルヴィア。」
混乱する私に、ドアの向こうからランヴァルトが声をかけてくる。
その声に思わずドキッとして、気がつくと姿勢を正していた。
お、落ち着いて、私。
「・・・部屋で待ってる。」
ランヴァルトはそう言うと、離れていく足音が扉の向こうから聞こえる。
待ってる、て・・・。
え・・・どうすればいいの?
この状況で、彼と話すの?
でも、ここにずっといるわけにいかないし。
体も拭いて、服も着なきゃ。
さ、寒い。
服を着ながら、ずっと考えてた。
どんな顔して、彼の前に出ていけばいいの?
さっきまで怒りで沸騰しそうだったのに、今は別の意味で沸騰しそう。
こ、こんなこと・・・あり得ないはずなのに。
「モ、モーガン・・・。」
モーガンは、私がそろそろと脱衣所の扉を開けると、さっと飛び出してランヴァルトの前を飛び、開いていた窓から外に出てしまった。
そんな、モーガンまでいなくなるなんて!
脱衣所の外に出てきた私を、ランヴァルトがじっと見つめてくる。
う・・・ど、どうしよう。
か、体が震える。
見つめられて怖いの?背中までゾクゾクするわ。
「シルヴィア。」
ランヴァルトが近づいてきて、思わず身構えた。
な、なに?
彼の片手が頬に触れてきて、艶めいた瞳に思考が停止する。
ランヴァルト・・・?
あ!
もう片方の腕で抱き寄せられ、そのまま顔が近づいてきた。
ダメ!・・・そう言おうとしたのに、声にならない。
開きかけた口から、焦った私の吐息ばかりが漏れて、言葉が空回りしているのが自分でもわかる。
次の瞬間、唇に柔らかいものが触れた。
え・・・?
私、私、キスされてる!?
目の前に目を閉じたランヴァルトの顔があって、その近さに驚いてしまう。
閉じ損ねた唇が何度も食まれて、入り込んできた彼の舌が、熱い吐息と共に絡まってきた。
船の中でされた、軽めのキスじゃない。
これは・・・。
コンコン。
誰かドアをノックしてる。だ、誰?
「ランヴァルト、シルヴィアに何かあったのか?」
ダグラス神官様の声だ・・・!
こちらに着いたのね。
ランヴァルトの動きが止まる。
いつもの彼なら、すぐダグラス神官様の元にいくのに。
「ランヴァルト、いるのだろう?」
ダグラス神官様が、もう一度声をかけてきて、ランヴァルトはゆっくり目を開いた。
名残惜しそうに、絡まっていた舌が解かれ、唇が離れていく。
「・・・今、行きます。」
彼は、呼吸を整えて返事をすると、私から離れてドアに向かう。
その間に、私は真っ赤になった顔に両手をあてて、少しでも動揺を抑えようとしていた。
ランヴァルトに、あんなに熱いキスをされたのは、初めて・・・。
ど、どうしよう。あの感触が忘れられない。
私が1人混乱している間に、ランヴァルトはドアを少しだけ開けて、ダグラス神官様に応対した。
「ダグラス神官様、大丈夫です。すみません、今は手が離せなくて。法王府の方はいかがでしたか。」
「ふ、お前たちが気にすることはない。
やることは何も変わらないからな。」
「なすべきことをなせ、ですか。」
「実際我々以外は動けぬのだからな。
あ、シルヴィア、フクロウのモーガンが私のところへきた。しばらく預かっていていいか?」
そう言われて、私がダグラス神官様に応えようとすると、ランヴァルトが遮るように喋った。
「ダグラス神官様、お手数おかけしますが、お願いします。部屋はわかりますか?」
「あぁ、宿屋のご主人がモーガンを覚えていてね。ちゃんとわかるから、大丈夫だ。」
「では、しばらく、お部屋でご休憩ください。パトリシアが、丑三つ時に来るように言っていました。」
「わかった。ではな。」
「はい、失礼します。」
ランヴァルトがドアを閉めると、ダグラス神官様が、離れていく足音がする。
パトリシア・・・て?
ダグラス神官様、行っちゃった・・・。
ご挨拶もせずにいいのかしら。
ランヴァルトが、振り向いて戻ってくる。
ま、また、さっきみたいにキスされるの?
「シルヴィア。」
目の前に、真剣な目をしたランヴァルトがいた。
初めて見る。彼のこんな目。
吸い寄せられるようにその目を見ていたら、また彼の顔が近くなってくる。
え・・・!
「ランヴァルト・・・!?・・・わ!」
そのまま、私の頬が優しく彼の両手に包まれる。
「シルヴィア、やっとシルヴィアの気持ちが聞けた・・・。」
「え・・・。」
ぼーっとなった頭に、さっき自分が言ったことが思い出される。
あ!そうだ。わ、私さっき告白しちゃったんだ!!は、恥ずかしい!
顔から湯気が出そうなほど、赤くなっていく。
で、でも、ランヴァルトは、さっきの女性と仲良くしようとしてたんじゃないの?
そう考えている間に、唇が優しく重ねられる。
そのまま、背中を壁に押し付けるように接近されて、離れることもできない。
「ん・・・!ランヴァ・・・ルト!」
「もう、止まらない・・・こんなに本気で誰かを愛したことがないし、気持ちに応えてもらえるなんて、思ってなかった・・・から。」
え・・・本気で愛した、て言った・・・?
今・・・彼は私を愛してる・・・と?
も、もう一度聞きたい。
ランヴァルトは、何度も熱いキスをしてくる。
すごく気持ちいい・・・体が熱い。
恥ずかしさと快感がせめぎ合い、次第に体の力が抜けて、目を閉じる。
それでも・・・。
愛してる、て、ちゃんと聞きたいよ、ランヴァルト。
もう一度、いいえ、何度でも。
「シルヴィア?」
「出てって!今、シャワー中なのよ?失礼にもほどがあるわ!」
「ごめん。だけど、すごく怒っていたから。」
カチンときちゃう!誰のせいなの!?
私はシャワー室から出ると、脱衣所のドア越しに叫んだ。
「見張りするとか言って、女性のところに行くんだもの!さっさと彼女のところへ戻ったら?」
「だから、それは・・・。」
「お楽しみに行ったと、素直に言えばいいのに!何故誤魔化すの?何故戻ってきたの?あなたは、私の心を弄んだのよ?」
「シルヴィア?見張りを怠けたと、思ったんじゃ?」
もう、何それ!!
言わないとわからないの!?
「私もあなたが好きだったのに!!」
・・・。
・・・。
・・・え?
「ホー・・・。」
モーガンが、羽根で顔を覆っている。
あれ?・・・私、まさか・・・今・・・声に出してた?
ランヴァルトも扉の向こうで沈黙してる。
・・・き、聞こえたよね。
嘘・・・嘘・・・なんでこんなタイミングで言うの?
こんなの、違う・・・告白は穏やかで素敵な雰囲気の中で、もっとこう・・・。
「シ・・・ルヴィア。」
混乱する私に、ドアの向こうからランヴァルトが声をかけてくる。
その声に思わずドキッとして、気がつくと姿勢を正していた。
お、落ち着いて、私。
「・・・部屋で待ってる。」
ランヴァルトはそう言うと、離れていく足音が扉の向こうから聞こえる。
待ってる、て・・・。
え・・・どうすればいいの?
この状況で、彼と話すの?
でも、ここにずっといるわけにいかないし。
体も拭いて、服も着なきゃ。
さ、寒い。
服を着ながら、ずっと考えてた。
どんな顔して、彼の前に出ていけばいいの?
さっきまで怒りで沸騰しそうだったのに、今は別の意味で沸騰しそう。
こ、こんなこと・・・あり得ないはずなのに。
「モ、モーガン・・・。」
モーガンは、私がそろそろと脱衣所の扉を開けると、さっと飛び出してランヴァルトの前を飛び、開いていた窓から外に出てしまった。
そんな、モーガンまでいなくなるなんて!
脱衣所の外に出てきた私を、ランヴァルトがじっと見つめてくる。
う・・・ど、どうしよう。
か、体が震える。
見つめられて怖いの?背中までゾクゾクするわ。
「シルヴィア。」
ランヴァルトが近づいてきて、思わず身構えた。
な、なに?
彼の片手が頬に触れてきて、艶めいた瞳に思考が停止する。
ランヴァルト・・・?
あ!
もう片方の腕で抱き寄せられ、そのまま顔が近づいてきた。
ダメ!・・・そう言おうとしたのに、声にならない。
開きかけた口から、焦った私の吐息ばかりが漏れて、言葉が空回りしているのが自分でもわかる。
次の瞬間、唇に柔らかいものが触れた。
え・・・?
私、私、キスされてる!?
目の前に目を閉じたランヴァルトの顔があって、その近さに驚いてしまう。
閉じ損ねた唇が何度も食まれて、入り込んできた彼の舌が、熱い吐息と共に絡まってきた。
船の中でされた、軽めのキスじゃない。
これは・・・。
コンコン。
誰かドアをノックしてる。だ、誰?
「ランヴァルト、シルヴィアに何かあったのか?」
ダグラス神官様の声だ・・・!
こちらに着いたのね。
ランヴァルトの動きが止まる。
いつもの彼なら、すぐダグラス神官様の元にいくのに。
「ランヴァルト、いるのだろう?」
ダグラス神官様が、もう一度声をかけてきて、ランヴァルトはゆっくり目を開いた。
名残惜しそうに、絡まっていた舌が解かれ、唇が離れていく。
「・・・今、行きます。」
彼は、呼吸を整えて返事をすると、私から離れてドアに向かう。
その間に、私は真っ赤になった顔に両手をあてて、少しでも動揺を抑えようとしていた。
ランヴァルトに、あんなに熱いキスをされたのは、初めて・・・。
ど、どうしよう。あの感触が忘れられない。
私が1人混乱している間に、ランヴァルトはドアを少しだけ開けて、ダグラス神官様に応対した。
「ダグラス神官様、大丈夫です。すみません、今は手が離せなくて。法王府の方はいかがでしたか。」
「ふ、お前たちが気にすることはない。
やることは何も変わらないからな。」
「なすべきことをなせ、ですか。」
「実際我々以外は動けぬのだからな。
あ、シルヴィア、フクロウのモーガンが私のところへきた。しばらく預かっていていいか?」
そう言われて、私がダグラス神官様に応えようとすると、ランヴァルトが遮るように喋った。
「ダグラス神官様、お手数おかけしますが、お願いします。部屋はわかりますか?」
「あぁ、宿屋のご主人がモーガンを覚えていてね。ちゃんとわかるから、大丈夫だ。」
「では、しばらく、お部屋でご休憩ください。パトリシアが、丑三つ時に来るように言っていました。」
「わかった。ではな。」
「はい、失礼します。」
ランヴァルトがドアを閉めると、ダグラス神官様が、離れていく足音がする。
パトリシア・・・て?
ダグラス神官様、行っちゃった・・・。
ご挨拶もせずにいいのかしら。
ランヴァルトが、振り向いて戻ってくる。
ま、また、さっきみたいにキスされるの?
「シルヴィア。」
目の前に、真剣な目をしたランヴァルトがいた。
初めて見る。彼のこんな目。
吸い寄せられるようにその目を見ていたら、また彼の顔が近くなってくる。
え・・・!
「ランヴァルト・・・!?・・・わ!」
そのまま、私の頬が優しく彼の両手に包まれる。
「シルヴィア、やっとシルヴィアの気持ちが聞けた・・・。」
「え・・・。」
ぼーっとなった頭に、さっき自分が言ったことが思い出される。
あ!そうだ。わ、私さっき告白しちゃったんだ!!は、恥ずかしい!
顔から湯気が出そうなほど、赤くなっていく。
で、でも、ランヴァルトは、さっきの女性と仲良くしようとしてたんじゃないの?
そう考えている間に、唇が優しく重ねられる。
そのまま、背中を壁に押し付けるように接近されて、離れることもできない。
「ん・・・!ランヴァ・・・ルト!」
「もう、止まらない・・・こんなに本気で誰かを愛したことがないし、気持ちに応えてもらえるなんて、思ってなかった・・・から。」
え・・・本気で愛した、て言った・・・?
今・・・彼は私を愛してる・・・と?
も、もう一度聞きたい。
ランヴァルトは、何度も熱いキスをしてくる。
すごく気持ちいい・・・体が熱い。
恥ずかしさと快感がせめぎ合い、次第に体の力が抜けて、目を閉じる。
それでも・・・。
愛してる、て、ちゃんと聞きたいよ、ランヴァルト。
もう一度、いいえ、何度でも。
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